忍びが転生したら〝異世界珍道中〟になった件   作:にゃんころ缶

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 お待たせしました。111話です







111話 聖魔対立・ヒナタ編//終章

 

 

 

 ――聖なる場所、奥の院――

 

 

 そこでは、〝七曜の老師〟長たる〝日曜師〟グランがその日の仕事を終え、同僚の帰還を待ちわびていた。

 

 ヒナタの抹殺計画に綻びが生じたらしく、火曜師(アーズ)から緊急応援要請が届き、失敗は許されぬとして急ぎ月曜師(ディナ)金曜師(ヴィナ)が出陣していた。

 

(あの女は頭が切れすぎる。何としてもここで消えてもらわねば、私の計画の妨げになろう。神ルミナス――いや、あの魔王を利用して、私こそが真の支配者となるのだ)

 

 〝日曜師〟グランはそうした野望を密かに抱き、数百年以上の長きに渡りルミナスに仕えて来たのだ。

 

 そう、有能過ぎる者が出ぬよう、危険な芽は早々に潰しながら。

 

 同僚にして部下の〝七曜〟達を上手く言いくるめて、〝日曜師〟グランは敬虔(けいけん)なる神の信徒を演じ続けている。

 

 他の者を動かすのは、至極簡単だった。

 ルミナスの寵愛(ちょうあい)を受けた者への嫉妬心をくすぐるだけで、面白いように動いてくれるのだから。

 

 

 今回もまた、彼等は〝日曜師(グラン)〟の意のままに動いていく……。

 

 

 火曜師(アーズ)は密かに始末していた聖騎士ギャルドに変装し、ヒナタの暗殺に向かっている。

 

 変装は月曜師(ディナ)の幻術によるもので、見破れる者などいない。

 

 そして、ヒナタに与えた竜破聖剣(ドラゴンバスター)には仕掛けが施されており、任意のタイミングで破壊可能だった。

 

 魔王リムルの攻撃に合わせて破壊すれば、そこでヒナタの敗北が確定する。

 破壊した時の余剰エネルギーで、ヒナタを始末出来るのだから。

 

 仕込みは万全のはずだった。

 

 

 それなのに、ヒナタは竜破聖剣(ドラゴンバスター)を使わずに、魔王リムルと優勢に戦っていたのだ。

 更に、傭兵商会ルヴナンは表立って行動はしないと踏んだのに、戦場にその姿を確認していた。

 

 それを聞いた〝日曜師(グラン)〟は、急遽計画の筋書きを変える事にする。

 

 魔王リムルがヒナタを始末すれば良し。

 もし、失敗しても、火曜師(アーズ)がヒナタを始末するだろうと。

 

 それも失敗したとしても、ヤスケが確実にヒナタを抹殺する。

 二重に保険を掛けた策に抜かりはない。

 

 その後、〝七曜〟の手で目撃者全員を始末してから、魔王リムルの怒りを解けばいい。

 番外魔王に関しては、利益にならない事に首を突っ込まない事は過去の行動を(かんが)みれば明白なので、こちらから利益を提示すれば問題はないだろうと。

 

 ただし、番外魔王の怒りを買う事だけは無いように、これを徹底させる。

 

 これは、ヤスケが番外魔王ツキハに一騎打ちを申し込めば、その注力はヤスケに向くだろう。

 そしてこれにより、番外魔王コハクは、刺激しなければ動かないだろうと判断する。

 

 それから魔王リムルから信用を得て、今後も上手く取り入れる方針へと切り替えたのだった。

 

 

 だが、アクシデントは起きるものだ。

 

 

 ファルムス王国ニドル領において、悪魔とそれに付き添う魔物が予想以上に強かった。

 

 そして、悪魔は狡猾(こうかつ)だった。

 

 悪魔は自身の強さを誇示し、その強引なまでの力技で、せっかく集めた各国の報道陣に疑念を抱かせる事に成功したのだ。

 

 もう一つ最悪な事があった。

 

 想定外な者、これは〝日曜師(グラン)〟すらも予測出来なかった。

 

 番外魔王眷属の(おさ)が、悪魔に付き従っていた事。

 

 悪魔が他の眷属を付き従えるなど、普通ならば有り得ない事なのだ。

 ましてやそれが、番外魔王眷属の(おさ)ならば尚更(なおさら)である。

 

 監視していた土曜師(ザウス)から報告を受けて〝日曜師(グラン)〟は、慌てて水曜師(メリス)木曜師(サルン)を派遣したのだった。

 

 こうなった以上、目撃者は全員始末するのみ。

 その上で悪魔と魔物に、全ての罪を着せる。

 

 結局は悪魔と魔物、魔王の配下であり、その魔王に(くみ)する者の配下。

 

 悪魔の残虐非道な行いを許さず神罰を下した――

 そう説明する事で〝七曜〟の正当性を主張すればいい。

 

 それでも交渉が難航するようなら、その時こそ神ルミナスの出番。

 西側諸国に基盤を築きたい魔王リムルにとって、〝神敵〟認定されるのは困るだろう。

 

 番外魔王に至っては、〝触れざる者〟認定を解除するつもりはない。

 ましてや、〝神敵〟認定などもっての(ほか)であるというのが、日曜師(グラン)の見識である。

 

 何故なら、番外魔王を〝神敵〟認定した瞬間、嬉々として西方聖教会を潰しに来るのはわかり切っていたから。

 

 過去に、ワザと西方聖教会にちょっかいを出し、自分達を討伐しに来るように仕向けていたのを、日曜師(グラン)がその意図を見抜き、あわや〝神敵〟認定される寸前に日曜師(グラン)がそれを阻止し、〝触れざる者〟として認定させていたのだ。

 

 そういう経緯もあり、番外魔王に対する対策も万全であった。

 

 だから、交渉の余地は十分にあるはずだった。

 

 

 日曜師(グラン)は状況をそう読み解き、計画の成功を疑わない。

 

 

 懸念(けねん)があるとすれば、悪魔とそれに付き従う番外魔王の眷属の異常なまでの強さなのだが……。

 

 自分に次ぐ実力者である木曜師(サルン)まで向かった。

 

 ならば、勝利は確実であると、日曜師(グラン)は確信する。

 

 

 だがそれなのに……。

 

 同僚の帰りが遅い。

 

 

『アヤツらはいったい、何をしておるのだ――』

 

 思わず口をついて出る不満の声。

 答える者などいないはずのその声なのに、そこへ、答える者がいた。

 

「どうされましたか? 酷く苛立(いらだ)っておられるようですね」

『貴様……何をしに、ここへ――?』

 

 驚きを隠し、日曜師(グラン)がその者に問う。

 

 唐突(とうとつ)に断りもなく部屋に入って来たのは、ヒナタの腹心――

 

 ニコラウス枢機卿(すうききょう)だった。

 

「一つ、面白い発見をしましてね」

 

 と、言いながらニコラウスは一つの水晶球を取り出した。

 

 日曜師(グラン)は『発見? それが何だ』と、平静を装いつつ内心訝し気にその水晶球を見る。

 

 それにニコラウスは、「いえ、些細な事です。これに、細工をされた形跡を発見しました」と、平然と言ってのけたのだった。

 

 この伝説的な英雄に対して行うには、あまりにも非礼な行為であるが、ニコラウスは毛ほども気にはしていなかった。

 

 

 その無礼な行いに不快に思いつつも、日曜師(グラン)は水晶球を見た。

 

 そこには――

 削除し改竄(かいざん)したはずの内容が復元され、正しい伝言を映し出していたのだ。

 

『――ッ!?』

 

 一瞬動揺した日曜師(グラン)を見抜いたニコラウスは、続けて言う。

 

「私はね、アナタ方の目的が何であろうと、別に興味はないのですよ。アナタ方が神ルミナスの寵愛を欲しようとも、ましてや、その力を利用しようと企むのも、どうでもいいのです」

『何を言う? 神は概念であり、皆の心の内に――』

「やめましょう、誤魔化しは不要です。神ルミナスが実在する、そんな事はとっくの昔に気付いていましたよ。ヒナタ様が秘密にしていたので、私もそれに従ったまで。だから、本当に興味はなかったのですよ。そうですね、はっきりとおっしゃった方がよろしいですか? アナタが神を利用しようとしているのも、ね――」

 

 真の目的を言い当てられた日曜師(グラン)は目を見開き、ニコラウスを見る。

 

 ニコラウスはその怜悧(れいり)な顔で日曜師(グラン)を見据え、その瞳だけは深淵(しんえん)なる闇のように不気味で、感情の色をまるで見せていない。

 

『貴様――』

 

 そんなニコラウスに日曜師(グラン)が何か言いかけるも、それをニコラウスは許さなかった。

 

「老害は、滅ぶがいい。〝霊子崩壊(ディスインテグレーション)〟!!」

『な――ッ!?』

 

 何を、とでも叫びたかったのか、驚きの表情のまま日曜師(グラン)は光の粒子に包まれて消滅した。

 

「クソ虫が。ヒナタ様を害しようとするなど、私が許すと思ったか、愚か者」

 

 ニコラウスはそう言葉を残し、何事もなかったように自分の執務室へ戻って行った……。

 

 ニコラウス・シュペルタス枢機卿――

 

 ヒナタの腹心にして、熱狂的なヒナタの〝信者(ファン)〟である。

 

 

 そんな彼にとって宗教とは、ヒナタと繋がる手段の一つにしかない。

 

 

 ニコラウスは異端である。

 

 

 法皇庁の最高位に立ちながら、神を信じてはいない。

 

 彼の信仰心は、ヒナタのみに捧げられるのだから……。

 

 

 

 

  ◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 

 暖炉の火が揺れる暖かい部屋の中で。

 

 

 重厚感溢れるゆったりとした椅子に腰掛けて、瞑想していたグランベル・ロッゾ。 

 

 

「ぬ、ぬう……おのれ……ニコラウスめ……」

 

 と、呟き目を開ける。

 

 脳裏に浮かび上がるのは、自分を焼き尽くす〝霊子崩壊(ディスインテグレーション)〟の(まばゆ)い光。

 

 

 そう、この人物こそ――

 

 〝七曜の老師〟の長、日曜師(グラン)の正体なのだ。

 

 

 グランベルは自分の精神体(スピリチュアル・ボディー)を飛ばし、他人に憑依する力を持っていた。

 

 つい先日、新しい肉体に乗り換えたばかりなのに、それを壊されて憤慨する。

 

 とはいえ、これがもし本体だったらと考えると、流石に肝が冷える気持ちは否定出来ないでいた。

 それが余計に、グランベルの怒りに火を付けるも、これも潮時であったと納得せざるを得なかった。

 

 そして目を覚ますと同時に、屋敷に向かって来るグレンダの気配を感じた。 

 

 打ち合わせになかった事態。

 つまりは、作戦は失敗したという事になる。

 

 

 部屋に飛び込んで来たグレンダは、グランベルを見るなり矢継(やつ)(ばや)に叫び言う。

 

「グランベル様、あれは無理さね。アタイじゃ手に負えないような、とんでもない化け物だよ!」

 

 その顏には、全力で逃亡して来たのだと一目でわかるような疲労の色が浮かんでいた。

 疑いようもなく、それは真実なのだろうと、グランベルはその言葉を信じる。

 

「他の〝三武仙〟はどうした? 同時にかかれば――」

「いいや、無理だ。そんなレベルじゃなかったね。アタイは、戦場での死の匂いには敏感なのさ。だからヤバイと判断して、サーレに押し付けて逃げて来たんだよ。番外魔王の眷属の(おさ)イチコはヤバイ、あれに敵う者などそうそういないだろうね。それにあの悪魔も、ヤバイを通り越した何かだよ。あれは、魔王クラス――いや、もっと上かも知れないねえ……」

 

 そう言ったグレンダは、どっと疲れが押し寄せたように、ガクッと肩を落とす。

 

 

 それを聞いたグランベルは大袈裟なと思ったが、同僚たる他の〝七曜〟からの連絡がいまだにない。

 

 気になって探ってみると、反応が一つも無かった。

 

 と、同時に、ヤスケにかけていた魂の制約が解除されたのを感知し、ヤスケの魂が消滅したのも確認した。

 

「まさか、ヤスケまでも……」

 

 グランベルが驚愕して疑うも、その事実は覆る事はなかったのだ。

 

 

 

 そして数日後――

 

 各地に放っていた密偵から、エドワルド失脚の報告を受ける。

 各国の報道陣も皆無事だったようで、大々的に報道が広まっていたのだ。

 

 

 その魔国連邦(テンペスト)は、国内で盛大なお祭り騒ぎが計画されているという噂が、ブルムンド王国経由で流れて来た。

 

 

 これにより、集まる情報を統合して判断するに、グランベルの計画は失敗したのだと判断するしかなかった。

 

 

 グランベルを含めて、〝七曜の老師〟は全滅。

 

 これでもうグランベルは、神ルミナスの名を利用する事は出来なくなってしまったのだ……。

 

 

 そして、最愛のマリアベルの予言めいた言葉――

 

「危険よ、危険だわ。あの街は危険すぎる!」

 

 いきなり出た言葉に意味が分からず、グランベルは問い返す。

 

「――天使の襲来かね?」

「いいえ。違うわ、御爺様。あの魔王は、経済で世界を支配するつもりなのよ」

 

 経済での人類圏支配―― 

 それこそが、ロッゾ一族の悲願。

 

 現在進行形で、グランベルが進めている計画そのものである。

 

 

「まさか……」 

「本当よ。本当にそうなるわ。あの、各国を渡り歩くガットエランテという行商隊。あれがもし、傭兵商会ルヴナンの傘下組織なら、尚更危険なのよ。魔王があの行商隊と結託したら、各国との貿易のノウハウすらも、簡単に手に入れられる事になるの。だからこそ――潰さなければならないの」

「ガットエランテか……。あれは限りなくグレーな行商隊だ。特に、行商隊リーダーのリアナ・アルクセールという人物は、一筋縄ではいかぬらしいからな」

「ええ、そうなの。決して、たかが行商隊などと、(あなど)ってはいけないの。あまりにも正体が不明過ぎるのよ、ヤツらは……」

 

 今まで、マリアベルの言葉に嘘はなかった。

 

 ――そう、今までは。

 

 だからこれからも、その言葉には聞く価値があるのだろう。

 

「なるほど。お前がそう言うのなら、そうなのだろうね」

 

 

 何故ならマリアベルは、グランベル直系の子孫にして――

 

「ええ、御爺様。次こそは、必ず。この私〝強欲〟のマリアベルの名に懸けて!」

 

 ――転生者なのだ。

 

 

 〝異世界〟の知識と類希(たぐいまれ)なる力を有する、ロッゾ一族の希望。

 

 マリアベルがいる限り、ロッゾ一族の敗北はない。 

 

 ――そう考えるグランベルの中で、再び野望の火が渦を巻き激しく燃え上がり始める……。

 

 

 

 

 ◇◇◆◆◆◆◆◇◇

 

 

 色々とあったリムルだが、無事ルミナスと和解を果たす。

 ヒナタとの誤解も解けた。

 

 その詫びとして、西方聖教会の名において、リムル達が無害であると宣言する事を約束してくれたのだ。

 

 これも誤解や、相互理解の難しさから起きた事。

 

 今後もこうした問題は起きるだろうが、今回の件を教訓として、乗り越えていこうと決意するリムル。

 

 

 そして、魔国連邦(テンペスト)と神聖法皇国ルベリオスとの関係も、見直される事となる。

 

 

 当面の不可侵条約を締結し、互いに互いの行動を黙認する事で(まと)まった。

 

 ただし、とある人物達(ヴェルドラ、ツキハ、コハク)の一件が問題となったりはしているが、そこはそれ。

 

 ヴェルドラに関しては個人的な問題であるとして、我が国とは関係ないという態度を貫いた。

 

 ツキハとコハクに関しては、あくまで個人ではなく、〝傭兵商会ルヴナン〟という組織と契約しただけという、ごり押しながらも、一個人ではなく組織と契約しただけだと、これも貫き通した。

 

 ルミナスは渋ったが、その人物達の事に関しては口は挟まないとリムルが誓った事で、不承不承(ふしょうぶしょう)ながらも合意に至った。

 

 

(――でもまあ、究極能力(アルティメットスキル)『暴風之王』がある以上、ヴェルドラは不死身みたいなもんだから、万が一あったとしても問題ないだろうな。ツキハとコハクもほぼ死なないみたいだから、大丈夫だろう) 

 

《解。問題ありません》

 

(うむ。なので友を売るようで申し訳ないけど、ヴェルドラさん生贄よろしく。後、契約主のツキハさんとコハクさんは、あの一件は自分達が仕出かした事なんで、自分達で何とかしてね、と、いったところで、ルミナスの怒りを鎮める生贄となってもらった次第なんだけどな。ただ一人だけ、ちゃっかり回避してるのがいるんだけどね。ククッ)

 

「ぬお、我を見捨てる気か――ッ!?」

「ちょっ、アンタねえ、それはないんじゃねえか!?」

「おバカが、二人。死ぬまでやってなはれ、しょうもな」

「ぬ、コハクよ。お前も共犯なのだぞ?」

「テメエ、何一人で逃げてんのよ!」

「なんやねん、そんなん知らんわ! 見て見なはれ、あんさんら二人だけ睨まれてるで」

「「えっ、何で!?」」

 

(バカ二人の必死な声に、策士のコハク。まあ、あの時点であれを思い付く判断の素早さは、凄いと思うわ。まあ、あれだ。そもそも三人の自業自得な面もあるし、そこまでは面倒見切れないってなものよ。悲しいけれど、これも大人の処世術なんだよ。スマンな、三人とも) 

 

 

 こうして小さな犠牲の上に、リムル達に平和が訪れたのであった。

 

 

(そういえば、どういう流れでそうなったのか知らないけども、ヨウムの即位が決定したらしい。後は、戴冠式を待つばかりだとういうし、順調そうで何よりだね。さて、次に待つのは国を挙げてのお祭り騒ぎかぁ。また、忙しくなるな……)

 

 こうして、クレイマンから始まった問題が、一気に片付いたリムル達。

 

 

 

 そしてこの日以降――

 

 魔国連邦(テンペスト)は正式に、西側諸国に受け入れられる事になるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 





 この作品を読んで頂きありがとうございます!

 次回から始まる〝新章〟を、よろしくお願いします!






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