忍びが転生したら〝異世界珍道中〟になった件   作:にゃんころ缶

115 / 239

 お待たせしました。115話です

 ※作中に出てくる言葉の《たわけ》は、愚か者とか馬鹿者とか、人を(ののし)る時に使う言葉です。


 ツキハ

【挿絵表示】


 コハク

【挿絵表示】











115話 酒と料理があたしらを待っている! 

 

 

 手早く風呂を済ませたリムルは、建築中の迎賓地区に来ていた。

 

 ここに自身の『胃袋』で精製した魔鉱を使い鉄骨を作り、それを吐き出すと、待機していたゴブキュウ達と猪人族(ハイオーク)達が手早く鉄骨を組み、体育館形式の建物を作っていく。

 

 魔法と能力(スキル)の合わせ技建築。

 

 リムルが元いた世界の建築技術など、比べようもない、反則級の建築技法である。

 

 あっという間に建物の骨組みが出来上がると、今度はリムルが『胃袋』から壁と天井の外壁などを吐き出していく。

 

 それを次々と骨組みの枠に固定していき、壁と天井が出来上がる。

 次に、床下の組み上げに入り、同じくリムルが『胃袋』内で作った畳を吐き出していった。

 それを待っていたかのように猪人族(ハイオーク)達が畳を肩に担ぎ、手早く畳を敷いていく。

 

 そして、所要時間一時間にも満たない速さで、体育館並みの広さの宴会場が出来上がったのだ。

 

 魔鉱で作った鉄骨は時間が経てば、大気中の魔素を取り込み魔鋼へと変質するだろう。

 これにより、鉄骨の強度は倍になる。

 

 この国には魔素量(エネルギー)の豊富な魔人が多い。

 だから、魔素には困らないのだ。

 

 リムルが中に入ると、畳敷きされた吹き抜けの空間が広がっていた。

 

(よし。これくらい広ければ十分だろう)

 

 リムルが宴会場の出来栄えに満足していると。

 

 長方形のテーブルが次々に運び込まれてきて、上座を中心に、左右に分かれてテーブルがコの字型に置かれていき、テーブルが置き終わると、すぐに人数分の座布団が置かれていった。

 

 次に、続々と料理が運び込まれてくる。

 

 忙しそうにゴブリナ達が、料理と酒をテーブルに並べていく。

 

 今日の料理は、天麩羅(てんぷら)

 

 見た目は完璧、味も最高と、リムル、イチ押しの料理である。 

 

 今日の料理長はシュナ。

 その料理の手腕は、魔国で敵う者はいない。

 

 この天麩羅は、リムルが人間の頃に食べた物の記憶をシュナに見せて再現した一品である。

 

 他には、ミリムが絶賛したカラアゲ、ハンバーグ、カレーにコロッケに、エビフライ。

 

 この、リムルが人間の頃に食べた日本の料理を、この世界にも再現したい、いや、食べたい!

 

 その思いをシュナが取り込み、たゆまない努力の末再現したのが、この日本の料理の品々である。

 

 現在進行形で今も、様々な日本料理が研究中なのだ

 

 その中にはスイーツもある。

 

 スイーツといえば、異世界人でイングラシア王国で喫茶店を経営している吉田薫氏。

 

 喫茶店で出すケーキが絶品で、誰にも真似出来ない味を誇り、天帝エルメシアもお気に入りのケーキであった。

 

 だがしかし、この世界には酒の種類が少なくて、再現が難しいケーキが多いと(なげ)いていた。

 

 そこへ、リムルがイングラシア王国に学校の教師として滞在中、吉田氏と知り合い、魔国で造っている酒を見せた時の吉田氏の喜びようはなかった。

 

 そして、魔国産酒の定期的な供給を約束したのは、記憶に新しいところだ。

 これにより、吉田氏のケーキのレパートリーが増えたのは言うまでもない。

 

 

(うんうん、天麩羅もほんと美味しそうだな。日本料理の再現も順調順調。ただ、その素材集めが大変なんだよなぁ……)

 

 日本料理の差材集め。

 これが、中々に大変なのである。

 

 まず、鰹節(かつおぶし)に似たものを作る為、海まで行って、様々な種類の魚を大量に獲って来た。

 

 そこから、カツオに似た魚を何種類か厳選し鰹節を作り、日本料理に使う鰹節と(そん)色のない魚を見つけた。

 

 因みに、魔国の近くに流れる川で、鮎に似た魚もいた。

 

 これは、ツキハとコハクが昔から食べているアユモドキと呼んでいる魚で、形態は鮎にそっくりで、味も鮎とほぼ同じであった。

 

 これを教えてもらったリムルは、川魚の調査も本格的に始めたのだ。

 

 そして、能力(スキル)による『空間転移』で、鮮度を保ったままの移送手段を隔離した今、色々な食材を調達出来るようになっていた。 

 

 後々は、能力(スキル)に頼らない運搬手段を確立したいとリムルは考えていた。

 

(食事は文化の極みだよね。食文化は豊であって困る事はないからな。まあ、俺個人の考えだから、人それぞれだろうけど、俺は、食には(こだわ)りたいね! だからこそ、色々な料理開発を今現在も行っているんだけどね)

 

 リムルは並べられていく料理を見ながら、ここまで辿り着く苦労を、今一度しみじみと嚙み締めていた。

 

 リムルは()ず、この世界にある食材を徹底的に調べた。

 

 麦系は、一般的に普及していて手に入りやすかった。

 

 白パン、これはイングラシア王国で日常的に見かけた。

 

 地方に行っても、黒パンに白パンが食されていた。

 

 そう、この世界にも天然酵母製造方法があったのだ。

 

 パンをふっくらと焼き上げる為に必要不可欠な酵母菌である。

 

 ワインを造る葡萄(ぶどう)があれば、普通に食べる葡萄も勿論存在する。

 

 その食べる葡萄からレーズン(干しぶどう)を作り、更にそのレーズンを水と砂糖を混ぜた瓶に詰めて発酵させて、天然酵母を作っていたのだ。

 

 他にも、様々な季節の果物などで作ったりもしていたのである。

 

 砂糖の原材料となるサトウキビとサトウヤシ、てん菜は、この世界にも似たものがあり、それが各地で作られていた。

 

 スバイス系では、胡椒(コショウ)と塩が一般的に使われていて、ニンニク、ナツメグ、唐辛子、ショウガ、ゆず、山椒、マスタード等などは、魔国で似た植物を見つけて来ては、品種改良などをシオンのユニークスキル『料理人(サバクモノ)』で行い、栽培を始めている。

 

 そして、山葵(ワサビ)に似た植物を武装国家ドワルゴンに連なるカナート山脈と、ジュラの大森林の国境沿いに位置する山の(ふもと)に地下水が湧き出る小さな滝の支流の浅瀬に群生するのを見つけて、リムルはそこをワサビの栽培地として整備した。

 

 そこの警備は、サンコが訓練したグレイヒヒ達が交代で栽培地の警備に当たっている。

 

 後、黒胡椒に関しては、とある地域でしか育たず、行商隊ガットエランテが各国家へ渡り卸していた。

 

 そのとある地域とは、長きに渡り秘匿され、どこの地方なのかも特定出来てはいなかった……。

 

 近々、魔王リムルの要請により、大量の黒胡椒を納めに、その行商隊が魔国に訪れる事になっていたのだ。

 

 

(やっぱり、調味料も各種揃えたいよな。ワサビも何とか収穫出来たし、後は白米なんだけど。これは、品種改良が難しかったよなぁ。まあ、これも結局はシオンのユニークスキル『料理人』でパパッと解決したんだけど、毎回シオンの力で収穫する訳にもいかない。とりあえず、研究は継続させているから食材が豊富に揃うのは、もう少し時間がかかるだろうよ)

 

 そうリムルは最初、様々な方向から品種改良を自力で試みていたのだが……。

 中々上手くは出来ずにいた。

 

 その時、智慧之王(ラファエル)に相談したところ。

 告げられた方法は、シオンの『料理人』で結果を改竄(かいざん)するというもの。

 

 結果を(いじ)れるのだから、これで品種改良も簡単に行えるようになった。

 

 この時リムルは、こんな方法は邪道では? と思ったが、酒造りの時にも色々やらかしていたので、今更だなと割り切った。

 

 これにより、魔法で育成させて早期の収穫にまで()ぎ着けたのだ。

 冬場の育成は困難なので、今は管理された屋内で少量の白米用の稲を育てている。

 

 まだまだ流通させるには絶対量が少ないので、今のところリムル個人の食事か、たまにツキハとコハクに売っていたり、後は祝い事で使うのみであった。

 

 そして今回は、特別な日である。

 

(魔王ルミナスもいる事だし、盛大に奮発するかね。この国の宣伝と、異世界の料理を堪能してもらおう)

 

 ほぼ宴会の料理と酒の準備が整うと、ゴブリナ達が後ろに下がり一列に並んで、魔王ルミナスとその一行を待つべく待機する。

 

 それを見ながらリムルは、風呂から上がってくるルミナス達の到着を待つ。

 

 

 

 ◆◆◆時を、ルミナス達が風呂に入る時間まで少し戻そう◆◆◆

 

 

 ヴェルドラやベニマル達は男湯の方に入っていき、懲りずにツキハがシュナの目を盗んで混浴の方へ行こうするも、シオンに抱き抱えられて女湯の方へ強制連行されていた。

 

 

「あーあ。何で混浴がアカンねん! ええやん、別に混浴でもさ」

「ツキハ、アンタ、言葉がおかしゅうなっとるで? それやと、うちと同じや」

「ほっとけ。まあ、いっか~。次のチャンスを待とうかねぇ」

 

 肩まで温泉に浸かりながら、愚痴るツキハ。

 

 その横で長い髪を上に結い上げたコハクが、気持ちよさそうに手でパシャリパシャリと、肩に湯をかける。

 

 女湯にいるのはツキハとコハク、シオンにサンコ。

 それにルミナスにヒナタと女性の聖騎士達。 

 

 丸く大きな風呂がある女湯の方に女性聖騎士達が入っていた。

 

 もう一つある女湯の方は、シオン達がよく利用する風呂であり、そこへ、ツキハとコハクにサンコとシオンが入り、後はルミナスとヒナタが入っていた。

 

 ヒナタは疲れを癒すように肩まで浸かり、静かに目を閉じていた。

 

 それを気付かれぬように凝視するルミナス。

 

 するとそこへ。

 

『ルミナス。あんさんも、ええ趣味しとりますなぁ。今は、その()がお気に入りなんか? 相変わらずどすな。ふふ』

 

 ヒナタを見るルミナスの視線に気付いたコハクが、『思念伝達』でルミナスに話しかけて来た。

 

『フンッ。貴様にだけは言われたくはないわ』

『うちはツキハ一筋ですねん。あんさんとは、違いますえ?』

『どの口が言う。一人も二人も同じであろうが。このたわけが!』

『ふっふっふ。喧嘩売ってますのん?』

『今は良い。そんな気分ではないわ』

『さよか~。ほんなら、そう()う事にしときますわ。ふふっ』

 

 そこでコハクは『思念伝達』の会話を終えると、人知れずツキハに視線を固定して、うっとりとした表情を浮かべる。

 

 結局は、コハクとルミナスは同じ穴の(むじな)なのである。 

 

「ふにゃにゃ~。シオンのお胸はいつ見ても大きいのニャ。どうすればこんなに大きくなるんニャ?」

 

 シオンの前に来たサンコが、両手でポムポムとシオンの胸を触り言う。 

 

「サンコ! な、な、な、何をしてるんですか! いきなり人の胸を触るのは不謹慎です!」

「いいのニャー、気にするなニャよ~。アチシは本当にシオンが(うらや)ましいのニャよ。見ろ、アチシの胸を。いまだに、ペッタンコなのニャ。無念(きわ)まりないニャ」

 

 申し訳程度に膨らんだ自分の胸に目を落とし、(なげ)くサンコ。 

 

「そうは言っても、サンコは精神生命体なのですから、成長の見込みはないと思いますけど? それでも聞きます?」

「シオン。アチシの可哀想な胸に塩を塗る気かニャ?」

「は? そっちから言いだしたんですよね? それと、胸に塩ではなく、傷に塩をが正しい言葉の表現ですよ、サンコ。聞いてます?」

「にゃ~そこはお世辞でもいいから、小さな胸も可愛いとか()めるのが友達ニャよ?」

「いやいや、本当に私の話を聞いてます? いいですか、胸の小ささを嘆いていたんですよね? 何でそこで、小さな胸を褒めるになるんですか!?」

「ニャ? なんで?」

「はい!?……」

 

 サンコの会話脱線に巻き込まれ、言葉が出ないシオン。 

 

 コミュニケーション崩壊娘サンコの会話について来られるのは、魔国側では未だにベニマルとシュナ、そしてリムルだけなのである。

 

 シオンは、まだまだだったのだ。

 

 そんなやり取りを聞いていたヒナタが閉じていた目を開け、口を開く。

 

「そう言えば、番外魔王ツキハ。貴女の流派は何て言うの? 差し支えなければ、教えてもらえないかしら?」

「ん? 天牙影千流(てんがえいせんりゅう)だよ」

「天牙影千流……。やはり、昔からこの世界で語られている番外魔王が使う、剣術の流派。でも、私のいた世界では聞いた事がないかもね。ねえ、あ――」

「だから言ったじゃん。リムルと仲良くなったらって。和解しただけじゃ、駄目だぞ」

「ええ、そうだったわね。わかってるわ」

 

 唐突にツキハの剣術の流派を聞き、それ以上の事を聞き出そうとしたヒナタだが、ツキハから前に言われた条件を満たせと返される。

 

 そこに、黙って聞いていたルミナスがツキハに問いかけて来た。

 

「ほう。それはなんじゃ? (わらわ)も聞いてみたいものよ」

「いや、アンタは、そこのヒナタの裸でも堪能してろよ」

「え?」

 

 ルミナスがツキハに、ヒナタとの約束事とは何だ? と聞いて来て、それにツキハがヒナタの裸でも見てろと返したものだから、当のヒナタは頭に? を浮かべてルミナスを見る。

 

「フンッ。バカネコの言う事じゃ。気にするでないわ、ヒナタ」

「は、はい」

 

 ヒナタの困惑の視線など意に介せず、ピシャリと言い切るルミナス。

 それにヒナタは、素直に返事をしてルミナスから視線を外す。

 

「バカネコさんから、エロ吸血姫に告げる。エロはほどほどに、以上」

「そっくりその言葉を返すぞ。馬鹿は程々にな、たわけめ」

 

 軽く(にら)み合うツキハとルミナス。

 

 だがしかし、また喧嘩が始まると思いきや、二人ともフンッと鼻を鳴らしただけで納まった。

 

 この時ヒナタの脳裏からは、番外魔王に対する見方が揺らいでいた。

 世に知れた、人類に仇名す残虐非道な魔物という、認識。

 

 確かに油断のならない魔物ではあるが、教団内で言われている話が通じない非道なる魔物とは違うと感じていた。

 

 だがしかし、過去に小国を二つ滅ぼしたという事実がヒナタの考えを迷わせる。

 

(魔王リムルと同じ転生者だとすれば……。でも、時代が合わないのよねぇ。本当に何者? と、言いたいわね……)

 

 聖騎士になり、多くの魔物を討伐して来たヒナタ。

 

 そのヒナタが、番外魔王は魔王リムルと同じ転生者じゃないかと薄々感付き始めていたが、まだそれが決定的な結論へとは至らなかった。

 

 それからツキハ達は、各々(おのおの)に洗い場で髪を洗い、身体を洗い流していく。

 

 ツキハが体を洗っていると、コハクがツキハのお尻を撫でようと後ろから忍び寄る。

 

 すると、ツキハの尻尾で張り飛ばされたコハクが大きく丸い湯船の方まで飛んで行き、派手に水柱を立ててお尻を上にしてプカリと浮かんでいた。

 

 それを見たヒナタが「え?」っと目を丸くして、ルミナスが「まだやってるのか、懲りないヤツめ」と吐き捨てた。

 

 サンコは何故かシオンに髪を洗ってもらっていて、気持ち良さそうに喉をゴロゴロと鳴らしていた。

 

 ルミナスに至っては、ヒナタに背中を流してもらい、満足そうな表情を浮かべていた。

 

 

 そして体を洗い終わったツキハ達は再び温泉に浸かり、それぞれがこの後の宴会料理に思いを巡らしていく。

 

 良く温まり、火照(ほて)った身体を冷やす為に湯船から上がるツキハ。

 引き締まった身体から湯気を立ち昇らせ、脱衣場に入る。

 

 その後ろをコハクが顔を(ほころ)ばせ、ツキハの裸を記憶に焼き付けるように視線を()わせていく。

 

「触ったらドつくからね?」 

「もう、いけずなんやからぁ、ツキハは。うふふ」

 

 お触り警戒するツキハの右横に立つコハク。

 

 サンコも温泉から上がって来てツキハの左横に立ち、自分の着替えが入った(かご)を見る。

 

 続いてシオン、ルミナスにヒナタも脱衣場に入って来る。

 

 ツキハとサンコは顔を合わせてニッと笑うと、用意された物を着ていく。

 二人が着たもの、それは、甚平(じんべい)だった。

 

「な!? アンタら何着てますのや!」

 

 コハクが怒ったような口調で二人に言う。

 

「何って、甚平だよ?」

「にゃあ、そうニャよ?」

 

 二人してコテッと首を(かし)げて言い返す。

 

「女の子がそないな無粋なもん着て、どうしますのや! 女の子らしく浴衣を着なはれ、浴衣を!」

「やだ。こっちの方が動きやすいもん」

「同じくニャ。こっちの方が着心地がいいのニャー」

「アカン! 二人ともそこに正座しなはれ!」

 

 口答えする二人にコハクは床を指差して、怒ったように言い放つ。

 

 だがしかし。

 

「ばーか。誰が座るか! 行くぞサンコ、〝酒と料理があたしらを待っている!〟」

「はいニャ! ツキハ様!」

 

 脱衣場の入り口でツキハはコハクに向かって舌を出して言い捨てると、サンコを連れて宴会場に猛ダッシュで逃げていった。

 

「あんの、あほんだらがあ!」

 

 拳を握り締め、わなわなと体を震わせるコハク。

 

 それを見ていたヒナタが声を殺して笑っていた。

 自分より遥かに長く生きている魔物が取る行動には見えなくて、笑っていたのだ。

 

 ぶつぶつと文句を言いながら浴衣を着ると、同じく浴衣を着終えたシオンと共に宴会場へと向かっていくコハク。

 

「ほんまに、いつまで経っても子供なんやから。少しはおしゃれをしろと、いつも()うとるのに、困ったもんや」

「まあまあコハク様、あれも似合ってるじゃないですか――」

「アカン。うちの目の保養が出来しまへんやないか! 少し浴衣を着崩したツキハの姿、想像するだけで、もうアカンねん……。それがあの野暮ったい甚平などと、言語道断どすえ! 色ぽっさが欲しいねん! うちの〝推しの子(ツキハ)〟に、エロさが足りまへんのや!!」

 

 このエロモード全開のコハクの姿も見慣れたシオンは、「ええ、ええ、そうですね。次を期待しましょうコハク様」とコハクを(なだ)めながら、二人で宴会場へと続く廊下を歩いていく。

 

 

 後に残ったヒナタとルミナス。

 

 ヒナタがルミナスに手際よく浴衣の着方を教えながら着付けして、自分も浴衣を着る。

 浴衣を着終えたルミナスは、ヒナタを連れて宴会場へと足を運んで行った。

 

 男湯の方も皆温泉から上がり、各々に浴衣や甚平を着て宴会場へと連なり歩く。

 

 もう一つの女湯に入っていた聖騎士の女性達も、脱衣場にいたゴブリナ達に浴衣の着方を教えてもらい、皆浴衣を着て宴会場を目指す。

 

 

 宴会場へと近づくにつれ、美味しそうな料理の匂いが近付く者達の鼻をくすぐる。

 

 続々と宴会場に集まってくる人と魔物。

 

 

 もうすぐ、人と魔物の宴会がここに、始まる……。

 

 

 

 

 

 一方その頃。

 

 

 ルヴナン敷地内の広場では、ニコやロモコ達が一足先にバーベキューと称した宴会を開いていた。

 

 リムルから差し入れられた、牛鹿(ウジカ)三頭分の肉に酒樽の山。

 

 それを奪い合うように食べ、飲む、眷属達。

 

 そして、どこからともなく、次々に集まって来る眷属達である。

 

 ニコが焼いていた肉を横取りしようとした眷属数人が、ニコにシバかれ、宙に舞う。

 

 いつもの優柔不断モードに戻ったロモコを狙い、焼き上がった肉を奪い、目の前に野菜をてんこ盛りにして置くロモコ班の班員達。

 

「えと、それ私が育てていたお肉ですけど? 野菜はいらないんですけど?」

「うん、よく焼けてるよロモコ」

「いや、そうじゃなくてですね。これは私が食べる分なので、皆さんは自分の分は自分で焼いて――」

「お、ロモコ焼けてるじゃないか、もらうぞ」

「だから、それ私が食べるぶんなのですけど? 私のお肉――」

「「「「「知ってる」」」」」

「はい!? お願いですから私が食べる分は残しておいてもらえると――」

「「「「「そこ焦げてるよ、裏返せ」」」」」

「あ、はい。いやそうじゃなくてですね――」

「「「「「焼けた、もらい!」」」」」

「あ、それ、私のお肉なのに……」

「「「「「ロモコは、お肉を焼く係なんだよ!」」」」」

「え、ええ!? そんなのいつ誰が決めたんです?」

「「「「「今決めた」」」」」

「そうなんですか……って、違うでしょうが! いい加減にしろやボケどもがぁ――ッ!!」

「「「「「フギャァーーーー!」」」」」

 

 おろおろしながら文句を言うロモコを(いじ)る、いつもの光景である。

 そして最後にはキレる、ロモコであった。

 

 ロロロオだけは巻き込まれるのを避けて、酒を飲みながらロモコと班員達のバトルを笑いながら観戦していた。

 

 別の所では、女達と男達の酒の奪い合い勃発。

 

 やがて、用意された肉や酒が足りなくなり、ルヴナン支店大倉庫からツキハ所有の酒樽を幾つも運び出して来る者。

 

 大森林奥地まで行って、野生の牛鹿(ウジカ)羊豚(ヨウトン)を狩って来る者。

 

 後日、大倉庫からツキハ所有の酒樽を運び出した眷属達は、ツキハからこっぴどく〝O・S・I・O・K・I〟される事になるのであった。

 

 狩って来た獲物を丸焼きにし始め、ルヴナン敷地内は(さなが)ら、ちょっとしたお祭り状態に突入していき……。

 

 一気にカオス状態へと変化する。

 

 あちこちで小爆発が起こり、巻き込まれた眷属達が放物線を描き吹き飛んでいく。

 

 そして、酒に酔ったニコが大規模殲滅忍魔術をケラケラと笑いながら行使しようとして、慌てて止める女達。

 

 いきなり格闘試合だーっと叫び、賭け試合を始める者達。

 

 今日こそツキハ様がヴェルドラ様とムフフな関係になるかの賭けをする者達。

 

 飲み比べで賭け勝負を始める眷属達に喧嘩を始める者達など、やりたい放題好き放題が天元突破した、忍魔猫達のどんちゃん騒ぎ。

 

 

 そんな忍魔猫達の宴は、明け方まで続くのであった。

 

 

 





 この作品を読んで頂きありがとうございます!

 次回の更新もよろしくお願いします!



  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。