忍びが転生したら〝異世界珍道中〟になった件   作:にゃんころ缶

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 お待たせいたしました。116話です


 ツキハ

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 コハク

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116話 和 解

  

 

 風呂から上がって来た者達が、続々と宴会場に入って来る。

 

 入り口に控えていたゴブリナ(女性)達が入って来た者達を、次々に席へと案内していく。

 

 その動作は自然で緊張などはなく、驚く程に手馴れていた。

 

 これも、ベスタ―が教育をした賜物(たまもの)だろう。

 

 

 座席は、コの字になるように並べてある。

 

 上座には三つの座席。

 

 リムルを中心に、リムルから右側がルミナス、左側にヒナタが座る事になる。

 

 この席は皆を見渡せるようになっていた。

 

 向き合うようにリムル達の幹部達と聖騎士達が並ぶ形だ。

 

 幹部側には、ヴェルドラにツキハとコハク、サンコも座る事になる。

 

 これは互いの顔が見られるように配慮してあった。

 親睦会という意味合いもあり、リムルはこのような形の座席をしてしたのだ。

 

 そして、聖騎士達が案内されて座席に座っていく。

 

 風呂から上がった聖騎士達は、用意されていた浴衣や甚平(じんべい)を身に着けていた。

 

 それを眺めながらリムルは――

 

(着慣れぬ服だったろうに、一度着てその着心地が気にいったようだな。良かった良かった。特に甚平はジャージに匹敵する気楽さで生活出来るし、部屋着には最適だ。お、やっぱりツキハとサンコは甚平を着たかぁ。こりゃコハクが荒れそうだな。ククッ)

 

 宴会場に入って来たツキハとサンコを見て、リムルはクスリと笑う。

 

(ふーむ。聖騎士達は恐る恐るという様子で座席まで案内されたけど、いつものテーブルや椅子がないのに戸惑っているな。それ以前に、素足で畳を歩くという事に困惑してるっぽいね。こればかりは文化の違いだから、戸惑うのも無理はないか)

 

 笑みを絶やさないゴブリナ達に案内されて席に着く聖騎士達。

 

 こうした事実も、聖騎士達にとっては驚きであった。

 

 コハクがシオンと共にえ、宴会場に入って来る。

 

 それから少し遅れて、ヒナタを連れ立ってルミナスが入って来た。

 

 そこからルミナスが先頭に立ち、先に宴会場入り口で待機していたルイがそれに続き、三番目にヒナタが続く。

 

 優雅な仕草で上座で待つリムルの隣に座る。

 

 次に法皇ルイに、リムルが自分の左に座るよう促すと、ルイはそれを丁重に断り、自分の代わりにヒナタが座るようヒナタに言って、ヒナタがリムルの左側に座る事となった。

 

 リムルから右側がルイを先頭に聖騎士達が座り、左側はヴェルドラを先頭にツキハ、コハク、サンコ、ベニマル達幹部が座る。

 

(ん? コハクがツキハに文句? いや、浴衣を着ろと言ってるのか。まあ、ツキハの浴衣姿を見て楽しもうという魂胆だろうな。ハハッ)

 

 リムルがコハクを見て、そんな事を思っていると――

 

 ヒナタが席に座るなり、意を決したようにリムルを見て。

 

「貴方には多大な迷惑をかけたわね、心より謝罪します。この一連の件は、私の独断で行った事。ルミナス様の指示ではなく、まして部下達に責はないわ。私の身一つで許してもらえるとは思ってはいないけど――」

「ちょっと、ストップ!」

 

 リムルに向かって頭を下げようとしたヒナタを、リムルが慌てて止めさせる。

 

「今回の件はともかく、誤解から始まった事。黒幕は〝七曜〟だったし、その〝七曜〟もルミナスが断罪している。ファルムス王国の方もディアブロが始末しているから、俺としてはこれ以上問題にするつもりはないよ」

 

 そう言ってヒナタを止めたリムルだが、あるとんでもない事に気付く。

 

 何と、見えそうだったのだ。

 

(おぉー。浴衣がはだけて、なだらかな双丘が!! これぞ湯上り美人、とても(なま)めかしいじゃない。これ、狙った訳ではないが、恐るべきタイミングと言えないか? もしかして、智慧之王(ラファエル)先生の御力ですか?)

 

《解。違います》

 

 心なしか冷たい返事を返す智慧之王(ラファエル)であった。

 

(やばい、冒険心がムクムクと湧き上がってってか、本当は息子がムクムクと起き出すところなのに、もう失われていて残念だわ……。だが、仕方ないのだ。男とは、常に冒険心を忘れない生き物なのだから! しかし、浴衣か。改めてみると、凄いなこれ。凄まじい破壊力だわ。コハクさんがツキハに説教と言う文句を言ってるのがわかる。湯上りの女性に浴衣、これ最強! うん、負けたよ……負けた、完敗だ。もう全てを許してもいい、そんな気分になるよね! いやもう、許してるんだけどね)

 

 そんな事を思っているリムルに――

 

「リムル様、どこを見ているのですか?」

 

 と、シュナが声をかけて来た。

 

 酒を運ぶ手を止めて、シュナがニッコリとした笑顔でリムルを見ていた。

 

(え、どうしてだろう? 優しい声なのに、氷のような冷たさを感じるのは)

 

 自分をニコニコと見るシュナにリムルは――

 

「いやいや、何も見てないとも。それよりもヒナタ……誤解が解けたのならそれでいいって。どうせなら、魔物だからって偏見を持つのを()めてくれればそれでいいよ」

 

 と、慌てて誤魔化すようにそう言った。

 

 ヒナタは一瞬迷うな表情を浮かべたが、黙ってそれに(うなづ)いた。

 

 だがしかし、これは実際難しい。

 

 何故なら、魔物という時点で、拳銃を構えた凶悪犯のようなものなのだ。

 

 簡単に言う事を信じて、一般人に被害が出れば、本末転倒もいいところなのだから。

 

(言葉は通じるけど、だからといって理解し合えるかというと……。でも、ツキハとコハクもルヴナンで人間の傭兵もいると言っていた。まあアイツらのやり方は、別の意味での人類との共存だから、俺の国との理念とは違う。けど俺達は、俺達のやり方でそれを成し得ている。俺の言葉を信じて、人間と仲良くしようとしていた……。それなのに、シオンや紫克衆(ヨミガエリ)の者達は、一度人間に殺された。言うは(やす)く行うは(かた)し、か。それでも、一歩ずつだ) 

 

 ヒナタの無言の頷きにリムルは、魔物と人間の関係を今一度考える。

 

「まあ、簡単には信じられないのもわかるよ。相手の本心なんてわからないんだし。狡猾(こうかつ)な魔物もいるからな。これは番外魔王の二人から聞いたんだ。だから、人類の守り手が簡単に騙されるわけにはいかないだろうさ」

「――そうね。会話は相互理解への第一歩だけど、危険な取引にもなるの。言質を取られ、魂を縛られる危険もあるのよ」

「だろうな。それも番外魔王の二人から聞いてる。この世界で何故魔物がこれ程危険視されているのか、俺なりに理解はしているよ。だから、そんな中でも魔物全てが悪だと決めつけないでくれれば、俺達はそれでいいさ。人間にも狡猾なヤツは沢山いるだろう? もし、疑わしいなら、俺達で預かるよ。人類社会では受け入れられなくても、この街なら大丈夫だからね。それに、番外魔王とルヴナンに関しては、この街に来る道すがら話した通りだよ。あくまでも俺達の国を守る為の傭兵契約だ。それ以外の何物でもない。だから、心配しなくてもいいさ」

 

 リムルは、ここら辺が妥協点だろうとヒナタに話す。

 

 疑わしい魔物は、この街で受け入れる。この街なら多少の荒くれ魔物が来ても多少の事ではビクともしないと、そう考えるリムルであった。

 

 何より、この世界で悪名高い番外魔王の二人と、傭兵商会ルヴナンがこの街にいるのだから。

 

 いい意味でも悪い意味でも、抑止力の効果がある番外魔王達。

 魔王クラスの者でも無い限り、どうにも出来ないのが現状なのだ。

 

「わかったわ。直ぐに考えを改める事は難しいけれど、魔物を悪として断罪するのを禁止します。ただし、人類に害を及ぼす魔物に関しては、今まで通りの対処とします。そして、番外魔王達に関しては、貴方に、貴方の国に一任します。番外魔王達が人類の敵に回らないよう、貴方がしっかりと抑えてくれればそれでいいわ。宜しいですか、ルミナス様?」

「そのような些末(さまつ)な事など、どうでも構わぬ。あヤツらに関してもな。だが、(わらわ)への信仰に疑いを持たれるのは許さぬぞ」

「承知しました。その点は、全てに優先させて遵守させます」

 

 

 ルミナスも納得をしてこの件は一応の収まりを見せる。

 

 

 神聖法皇国ルベリオス。

 

 神ルミナスへの信仰の上に成り立つ国である以上、そこに疑いを持たれるのは根源が揺らぐ事態になる。それはなんとしても避けなければいけない事なのだ。

 

 西側諸国にも多大な影響を持つ宗教であり、ヒナタが慎重になるのも当然であった。

 

 そうしてヒナタは、リムルの配下達に視線を向けた。

 

「あなた方にも謝罪を。今後は、魔物だからと敵対視しないと約束するわ」

 

 そう言うとヒナタは、深々と頭を下げた。

 

 そのヒナタの行動に、慌てたように他の聖騎士達も追随(ついずい)する。

 聖騎士達が一斉に『済まなかった!』と、謝罪した。

 

「気にする事はありませんぞ。我等も、リムル様より命じられてなければ、人類は敵だと思っていましたからな」

 

 聖騎士達の謝罪の言葉にリグルドが言った。

 

 リムルに命じられて、人類は全て敵だという思い込みが解けたのだと。

 

 生きるだけで精一杯だった子鬼族(ゴブリン)としては、自分達以外の全ての種族が敵だったのだ。

 

「俺としては、貴女が敵に回らぬだけで十分だ。リムル様とツキハ様との戦いを見ていたが、今の俺では勝てそうになかったからな」

 

 と、ベニマルは不敵に笑う。

 

 ソウエイはベニマルに同意なのか、軽く(うなづ)いたのみ。

 

 元来魔物は弱肉強食の面が強い。

 敵と断じられて殺されても、弱い方が悪いと思う傾向がある。

 ソウエイもそんな感じで、別に聖騎士達に思うところもなかったのだ。

 

 そしてシオンはと、いうと。

 ヒナタと聖騎士達の謝罪でどこか挙動不審になっていた。

 

「なあシオン。お前もさ、許してやってくれよ。お前の痛み、お前の怒りはわかる。だけど、人間の全てが邪悪って訳じゃないんだよ。中には悪いヤツもいれば、いいヤツもいる。それは人間だけでなく、魔物にも同じ事が言えるんだ。それだけの話なんだよ。人間も魔物も、よく見極めないと駄目なんだ。それに、人間は間違いを克服出来る生き物でもあるし、俺達魔物もそうだろう? そう、大事なのは魂の有り様なんじゃないかな? 俺達魔物にも人と同じ感情があるからな。そうだろう、シオン?」

 

 そんなシオンにリムルが声をかける。

 

 人と魔物――

 

 そうした区分で分けるのではなく、その者の生き様。

 魂の有り様こそが重要だとリムルはシオンに()く。

 

 シオンにとって人間は邪悪なものなのだろう。

 だからリムルは、全ての人間がそうであると思っては欲しくなかった。

 

 だがシオンは、そんなリムルの言葉に更に迷う素振りを見せた――

 

「リムル。横から口を挟むんやけど、よろしおすか?」

 

 そこにコハクが割り込んで来て、リムルはそれに静かに頷き許可を出す。

 

「人間と魔物。(いにしえ)から対立して来たんやから、それをはいそうですかと、納得出来んのも当たり前やで。でもな、今ここにいる人間達には知ってもらいたいんや。シオンの怒りの半分は、この国で虐殺を行ったファルムス王国の兵士に向けられとるんも事実や。でもな、後半分は自分の腕の中で消えていく小さな命を守れなかった自分に向けとるんよ」

 

 コハクはそこで一度言葉を区切り、ヒナタや聖騎士達を見る。

 

「シオン、あんさんの怒りは当たり前なんやから、なんも恥じる事も迷う事もない。でもな、怒りや憎しみに飲まれたらアカンねん。特にな、人も魔物も憎しみに飲まれ喰われた末路は、悲惨なもんやで」

 

 コハクはシオンを優しい瞳で見ながら、言葉を止める。

 

 その瞳に魅入られるようにコハクを見詰めるシオン。

 

「見なはれシオン。今ここにいる人間は、邪悪なもんに見えはるか?」

「……」

 

 シオンは促されるままに視線を聖騎士達に向け、ゆっくりと首を横に振る。

 

「せや。今ここにいる人間に邪悪なもんはいてへん。そしてこの聖騎士達の中にも、魔物に家族や友人などを殺された者がいるかも知れん。あんさんと同じ怒りと哀しみに襲われた者も、いてるかも知れへん。 でもな、あんさんも辛かったやろなぁ。守れる命が、自分の手から零れ落ちる哀しみと怒り、憎しみ、あれは味おうたもんにしかわからん感情や。よう頑張りはったな、シオン」

 

 そう言いながらコハクはシオンのところまで行き、膝立ちでシオンの横に腰を落とし、優しくシオンの頭を自分の胸に抱き込む。

 

 あの時のシオンの怒りは凄まじかった。

 

 死にゆく命に何も出来ない哀しみと、不甲斐なく死んだ自分への怒りと、ファルムス王国騎士への怒りにも似た憎しみ。

 

 そして、リムルにより復活したシオンは、あの時感じた痛烈な哀しみと憎しみを怒りのみで捻じ伏せていたのだ。

 

 だからシオンは、今まで泣いてはいなかった。

 

 人を見る(たび)に、あの抱きしめた小さい体から命の火が消える感覚は、今もシオンの心をチクリチクリと刺していた。

 

 それでも、大好きなリムルに泣き顔を見られたくなかった。

 

 何よりも、怒りと哀しみで自分を抑えらなくなるのが、怖かったから……。

 

 そんなシオンを穏やかな顔で見るシュナ。

 

 シュナは知っていた……シオンの心に闇が芽生えかけていた事を。

 

 もし、シオンが闇に飲まれ憎しみで暴走する事があれば、自分が命を掛けて止める覚悟でいた……。

 

 そうすると、コハクを見るシオンの頬に一筋の涙が線を引き、畳に落ちる。

 

 コハクの胸に顔を(うず)めると、シオンはワアーッと(せき)を切ったように声を上げて泣いた。

 

 それを見ていた聖騎士達は驚いた。

 

 魔物が声を上げて哀しみ泣くなど、見た事もなかったからだ。

 

 その泣き声は聖騎士達の心を揺さぶり突き抜ける。

 

 誰もが皆、泣き叫ぶシオンを黙って静かに見守っていた。

 

 リムルが言った、魔物にも人と同じ感情がある、この言葉通りのものを今見ている聖騎士達。

 

 時間はかかるかも知れないが、ゆっくりと彼等の魔物に対する考えを変えていくだろう……。

 

 泣くシオンを柔らかく抱きしめるコハク。

 

 それは見る者にまるで、泣きじゃくる子供を優しく抱きしめる母親のような印象を与えていた。

 

 同じ女性のコハクから頑張ったなと言われ、あの時から心の隅に(よど)み溜まった黒い感情が払われた感覚に(おちい)り、リムルが言った言葉と相まって溜まっていたものが、一気に噴出したシオンだった。

 

 やがて、泣き声が小さくなっていき、鼻をススル音がしてシオンが静かに顔を上げて、コハクに恥ずかし気に笑顔を見せる。

 

「まあそういう事や、シオン。大好きな魔王リムルの(もと)で、あんさんはどんな生き様を見せはるんや? 女シオンの魂の有り様を、しっかりと見せなあきまへんで? 気張りなはれ、シオン」

「はい」

 

 コハクは立ち上がると、そう言い。

 シオンはそれに力強く答える。

 

「御見苦しいところを見せました、リムル様。それと、今日お越しの皆様方」

 

 シオンは立ち上がると、深く腰を折り頭を下げた。

 

 そしてリムルを見ると――

 

「リムル様、わかりました! 良き者や悪しき者、私もリムル様と同様に、〝魂〟を見て判断する事にします!」

 

 と、これでもかという(くらい)のいい笑顔で返した。

 

 その顏は、()き物が落ちたように晴れ晴れとしていた。

 

 もしかすると、シオンもまたリムル同様、何か大きな(カルマ)を克服したのかも知れない。

 

 コハクが席に戻ってくると、ツキハが『思考加速』をかけた『思念伝達』で話しかけてきた。

 

『コハク。アンタさ、シオンの心に育ち始めていた闇を喰っただろう?』

『あら、人聞きの悪い事を言いはりますな。何も陰の感情全てを喰った訳とは違うで?』

『わかってるよ。陰の感情もその個人の一部だ。陽の感情も陰の感情も自分の一部、否定はするな、どちらも制御してこその闇夜流だったね。シオンに闇夜流でも教えるの? くくっ』

『まさか、そのつもりはないで。だから、今育ち始めている闇の部分だけちょこっと喰ろうてやったんや。まあ、後はきちんと自分で制御出来るやろ、シオンなら』

『そうだね。サンコが心配してたけど、ちゃんとアンタに相談してたんだね』

『せやで。泣きそうな顔で一度、シオンの心に育っている闇をどうにかしてくれと、頼んで来たんや。ほんまに優しい子やで、サンコは』

『そっか。あたしらは魂を見る事が出来て、喰えもする。更に悪魔族(デーモン)と同様、他者の感情も喰えるもんね。ただ眷属達には、絶妙なバランスで感情を喰らう事は、無理だからなぁ』

『確かにな。あの子達は、そこまで感情を食べる事には()けてまへんからな。それに、シオンもあんな事を体験したんや。ドス黒い闇が心に宿っても、なんも不思議やあらへん。あの闇は進む方向を間違うと、なんもかんも巻き込んで、最後には自滅するどすな。間違いなく』

『だね。だから、進むべき道を与えて、シオンに選ばせたんだね。あのままじゃ、そう遅くない内に行き場を失った闇が暴走するのは確実だったもの』

『そんな大層なもんやあらへん。うちはな、恋する女の子は応援するんやで?』

『知ってる。でもそれ、甘いとも言うよね? くくっ』

『リムルの言葉に迷いを見せたから、ほんの少し背中を押して上げただけやで? ふふっ』

『シオンが闇の正しい使い方を覚えると、今より確実に一段階上に行けるだろうよ。サンコと遊んでいれば、自然と覚えるかもね』

『そうやねぇ。あの子は、眷属の中で一番濃い闇を持ってた子どしたからなぁ』

『だから、シオンの感情のブレに気付いたんだと思うよ。でも今は、アホの子一番だけどね。うくくっ』

『あんさんにそっくりやおまへんか? うふふ』

『ほっとけ!』

 

 暫く『思考加速』付きの『思念伝達』で話していたツキハとコハクは、ここで話を止めて現実世界に復帰する。 

 

 今のシオンの表情見て、サンコが嬉しそうにコハクとツキハを見る。

 

 それに答えるように二人は、サンコの頭を優しく撫でてあげていた。

 

 

 こうしてここに、一つの〝和解〟が成立したのであった。

 

 

(さて、湿っぽいままではつまらない。せっかくの料理が冷めてしまうし、ここは) 

 

 リムルはしんみりした雰囲気を変えるべく、そう考える。

 

 何よりさっきから、目の前の酒と料理に手が出せないヴェルドラとツキハが、我慢の限界を突破しそうなのもあったからだ。

 

 と、いうところでリムルは宴会突入の挨拶を告げた。

 

「それでは、互いの健闘を称えあって、乾杯!」

 

 リムルがウッドジョッキを持ち上げて前に出し、音頭を取る。

 

 後に皆が続き、『乾杯!』の声が会場内に響き渡っていく。

 

 待ってましたとばかりにヴェルドラとツキハがウッドジョッキをコンと音立て合わせると、一気に冷えた麦酒(ビール)を喉に流し込んでいった。

 

「うにっやぁーーーーっ! 冷えた麦酒(ビール)はサイコーだね!」

「喉に染み渡る美味しさだな! ワハハハハ」

 

 二人は天麩羅をツマミに、麦酒(ビール)を堪能していた。

 サンコは一心不乱に天麩羅を食べ、コハクは麦酒(ビール)を飲みながら同じように天麩羅を食べていた。

 

 

 飲めや騒げやの、宴会の始まりである!

 

 

 





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