忍びが転生したら〝異世界珍道中〟になった件 作:にゃんころ缶
政治的な話は終わり、ルミナスとの手打ちも無事済ませ。
リムル達は、神聖法皇国ルベリオスに認めてもらう算段もついた。
そして、聖騎士達とも定期的に交流を行う事になったのだ。
それで、最初に行ったのが技術交流である。
今回の戦闘で、聖騎士達の武器などが傷んでいたのを見て、リムルが修復を申し出たのだ。、
しかし、リムルの真の目的は、魔国の技術力を見せ付ける事にあった。
それともう一つ、彼等の武器の性能チェックである。
リムルが一番興味を引いた、見慣れぬ光の武装。
あれを一つ譲り受けたのだ。
着装者の魔力――霊気――それらを精霊に与える事で、物質として具現化させたものだといった。
その負荷がかかり過ぎて壊れた物を、ガルム作の防具一式と交換してもらったリムル。
これは、聖騎士達にも今回の負い目があるのか、謝罪の意味も込めて快く譲り渡したのだった。
ヒナタから文句が出ると思っていたリムルなのだが、意外にも文句は出なかった。
そうしてリムルは、自分が作った剣をヒナタにプレゼントする。
ヒナタの使っていた
ルミナスから授かったこの剣は、凄まじい力を秘めていた、いや秘め過ぎていたのだ。
カイジンやクロベエが言うには、〝魔鉱〟は長い年月をかけて進化するという。
それ故に、時を得た一流の武具もまた、進化するのだと。
そして、進化の際に凄まじく性能が上昇する事が
その証拠に古代遺跡の発掘品の中からは、現代の技術では再現不可能な超性能を持つ武具が発見される事があるのだ。
そうした品々は
そう、ツキハの持つ〝妖刀・時雨〟であり――
古の破滅の魔剣、〝レーヴァテイン〟である。
この妖刀、雑多な妖気を払う為にツキハが定期的に剣を
ツキハは鍛冶職人の
長年、魔物や人斬った時に生じる魂の残滓、
斬った者の血肉や魂、妖気に魔力といった物を取り込みながら切れ味を増す時雨なのだが、その時に発生する雑多な妖気だけは吸収出来ずにいて、それを取る為に定期的に手入れをしなければならなかった。
それを、刃を研ぐことでその曇りを取り除くのだが、これには鍛冶職人系の
そして、その話をツキハがリムルにした時に、リムルがクロベエに見てもらったらどうだと言い、ツキハがクロベエに時雨を見せたのだ。
力無き者が触れる事を許さない、〝妖刀・時雨〟。
幾つかの注意点をツキハがクロベエに言い、時雨をクロベエに渡した。
すると――
時雨が発する〝凶気の波動〟に吞み込まれる事もなく、あっさりと鞘から刃を抜いたのだった。
そう、ユニークスキル『神職人』を持つクロベエに、時雨が触れる事を許したのだ。
これにはツキハも驚き、時雨が自分とコハク以外に触れる事を許したのはここ三千年なかったと言い、眷属でさえ一部の者しか触れる事が出来ないとも付け加える。
そして、試しにカイジンにも触れてもらったが、触れた瞬間に〝凶気の波動〟に取り込まれそうになった。
すぐさまツキハがカイジンの身体に手を触れ、〝凶気の波動〟を中和し、事なきを得た。
こうして、クロベエが時雨の手入れを専門にする事が決まったのだ。
カイジンは触れずとも、クロベエが時雨の手入れをする時には傍で見る事になった。
また武具職人のガルムも、その時には見学に来るようになっていた。
クロベエやカイジンにガルムなどは、そうした武具の作成を目標としていたのだから、時雨は打って付けの研究武器ともいえる物だったのだ。
そして、ヒナタの
そんなクロベエ達を見ながら、その目標を是非達成してもらいたいものだと、リムルは思ったのだった。
(まあ、あれだよな。ヒナタの剣も大概に凄まじいものだものな。言ってみれば、ここぞという時に使うものだし。あんなもの街中で抜刀しようものなら、周囲に甚大な被害が絶対に出るだろうな。だって、護身用に拳銃ではなく、機関銃、もしくは対物ライフルを携行するようなものよ。そんな武器を、普段から振り回す訳にもいかんだろうしな。でも、ツキハの〝妖刀・時雨〟は例外中の例外だな、アレは。何しろ、ツキハの意志で、その威力から切れ味を調整出来るらしいから。例えれば、拳銃から大砲まで千差万別に変化出来るといった、冗談みたいな剣だよなぁ……)
リムルからもらった剣を嬉しそうに見ているヒナタをぼんやり眺め、そんな事を考えているリムル。
(うんうん。剣のプレゼント、喜んでもらえて何よりだね。前にイングラシア王国を出た時に戦って、ヒナタの壊れた
イングラシア王国を出た時にヒナタに待ち伏せにあったリムルは、止む終えずヒナタと戦い、何とかその場を逃げおおせたのだった。
その時に壊した
(それにだ、〝七回目の攻撃で死に至らしめる〟という特殊能力まで再現したのだよ。ふっふっふっ。そうだ後、
思い出し笑いを堪えつつ、もう一つの武具の事をリムルは考える。
(後は、〝精霊武装〟なんだけど、これだけは見せられないと言われたな。ヒナタのみが持つ、精霊武装の
《告。戦闘中に解析を行い、既に『解析鑑定』済です》
『……え!? マジに? ぬ、抜かりなしですね、
《……》
(おっと、不機嫌になられた御様子ですね。ここは素直に――)
(しかし、〝精霊武装〟を『解析鑑定』済とはねえ。流石先生は凄いね。劣化品の精霊武装の『解析鑑定』結果と、ヒナタとの戦闘情報を組み合わせて、〝精霊武装〟を再現可能とか。反則級を通り越してないのかね? まあいいけど。しかも、聖属性の武具だけど、原理を流用して魔属性へと改造出来るとか、もうアレだわ。悪いなヒナタ。国家機密クラスの兵装だったものを、『解析鑑定』してコチラのモノにしちゃいましたよ。ほんとゴメン。ただまあ、扱いが難しいらしいので、誰に与えるか考える必要はあるんだけどね)
そうして、最初の技術交流も
用件もすべて終え、聖騎士達もさっさと本国に帰るだろうと思い、一応社交辞令としてリムルは食事に誘ってみた。
「なあヒナタ、それにルミナス。もう今日は遅いし、出発は明日にしたらどうだ?」
(なんてね。どうせルミナスは『空間転移』で帰るだろうし、ヒナタも元素魔法:
そう思ったリムルだが、実際は――
「悪いわね――」
やっぱりそう来たかとリムルが思ったのも束の間。
続く言葉が、リムルが思った言葉とは違っていた。
「――貴方がそこまで言うのなら、今晩もお世話になろうかしら」
「そうじゃな。あの温泉とやらは気に入った。料理も酒もなかなかに美味じゃし、今晩も楽しみじゃのう」
(あら? あらら? ヒナタだけでなくルミナスまで、帰る気なそうじゃん)
そして、そんな二人を見て聖騎士達も泊まる気満々である。
既にニッコリ笑顔で、今日の晩御飯について嬉しそうに、仲間達と語り始めていた。
(おい、それでいいのか
にこやかに談笑をする聖騎士達を見て、リムルは心の内で一人ツッコミを入れる。
(うーん、しゃーない。今更、この発言を無かった事には出来ない。これほど期待されているのなら、今日も精一杯持て成すとしましょう! よし、やるかーー!)
…………
……
「という訳で、今日の宴はすき焼きです!」
「「「「「うぉおおおおお!!」」」」」
「……」
(何だろう、この気持ち。昨日まで敵対していたのに、今は俺の配下と聖騎士達が仲良く喜んでいる。いや、喜ばしいのは間違いないのだけど……何だか少し、これでいいのだろうかと思ってしまう俺は、贅沢過ぎかねえ……?)
こうも早くに双方が打ち解けるとは思ってはいなかったリムル。
その戸惑いと嬉しさが混じり合い、何となく複雑な気持ちになっていたのだ。
しかし、直ぐにリムルは気持ちを切り替え、晩飯の前に風呂だと皆に言い、男湯と女湯へと別れていく。
当然リムルは、今回も自宅の風呂へと大人しく向かう。
そして……。
いつの間にか魔国へ帰って来ていたツキハが、『思念伝達』でヴェルドラを混浴に誘うも――
混浴場の入り口で待ち受けていたシュナに確保され、これもまた、女湯へと連行されていった。
「何であたしの行動を読んで先回りしてるのよ! おかしくない!?」
と、文句を言うツキハに。
「駄目ですよツキハ様。殿方と御一緒にお風呂はなりませんよ」
と、ニコニコと微笑み返し言うシュナ。
どうにも逆らえない、ツキハであったのだ。
渋々女湯にやって来たツキハは、浴場へと入っていくと。
そこには既に、コハクにヒナタ、ルミナス、シオンが湯に浸かって寛いでいた。
ルミナスを見たツキハが、いかにも嫌そうな顔をして言い放つ。
「あ、まだいたのかアンタ、早よ帰れよ」
「フンッ。まだ生きておったのか、バカネコめ」
「あ゛あ゛っ!?」
「なんじゃ!?」
ツキハが温泉に入り、ザブザブとルミナスの前まで行き仁王立ちでルミナスを見下ろすと、ルミナスも湯から立ち上がり、お互いに睨み合う。
一触即発状態の女湯。
だがしかし、そこへ――
「ツキハ様。リムル様が仰いましたよね? この国での力の行使は、緊急時以外は駄目だと。いけませんよ、ツキハ様」
「え、あ、はい」
ツキハに遅れて浴場に入ってきたシュナが爽やかに告げ、ツキハが大人しくルミナスから離れて行く。
それを見たルミナスは。
「ほう。あの傍若無人なバカネコに言い聞かせるなど、そうそう出来る事ではないぞ。なかなかに見所があるな、お主は」
「いえ、私など、まだまだです」
「そう謙遜するでない。アヤツを大人しくさせるなど、コハクでも難しいのじゃからな」
「フフッ、そうなのですか。ありがとうございます、ルミナス様」
ルミナスは感心しながらそう言い、シュナはそれに素直に礼を述べる。
「くそー、何なんだよぉブクブクブク。とっとと帰ればいいじゃん、うぬれ~ブクブクブク」
当のツキハは口元まで湯に浸かりながら、温泉の湯をブクブクさせ何事か呟いていた。
コハクはいつもの如く、「しょうもな」と言い。
そうは言っても、ちゃっかりツキハの隣に行き、湯の中で自分の尻尾を使い、ツキハの脇腹をツツーッと撫で上げツキハに張り飛ばされる。
相も変わらず懲りないコハクであった。
そんな光景も、二日目にして慣れたヒナタは、穏やかにシュナやシオンと談笑をしていた。
ゆっくりと温泉で温まり、浴衣や甚平に着替えた皆が宴会場へと集まってくる。
最近では、
すき焼きの肉に使うのは
そして、すき焼きの
先ずは、鍋を温めながら
肉がふっくらと焼きあがったら、一度鍋から取りだし、ハクサイモドキに豆腐にネギモドキ、こちら側のコンニャクイモで作った白滝を入れ、そして肉と炊き上げていく。
鍋がぐつぐつと音を立てて、香ばしく甘い香りが宴会場内に漂って来る。
ヒナタはその懐かしい鍋の香りに頬を
ルミナスもまた、鍋の中で踊るように煮える具材と、鍋から漂う香ばしくも甘い匂いに魅入られる。
それから、毒抜きした
(温泉上がりの
自慢の料理の一つ、すき焼きを前にして――
「それでは、今後の友好を祈願して、乾杯!」
「「「「「乾杯――ッ!!」」」」」
今日も今日とて、リムルの挨拶で宴会が始まった。
宴会場の席順は前回と同じ。
早速ヴェルドラ達がいる席では、ツキハとヴェルドラにサンコで、肉の取り合いが勃発していた。
大皿に盛られた肉の山がもの凄い勢いで無くなっていき、忙しく給仕のゴブリナ達が大皿に載せた霜降り肉をヴェルドラ達の席に運んでくる。
聖騎士達も、最初は恐る恐る口に運ぶも、一口食べてからは、一心不乱に鍋をつつき始める。
そして、昨日も好評だった炊き立てのご飯、魔黒米。
茶碗に盛られた魔黒米が、聖騎士達に配られていった。
リムルはというと、今日は白米を食べていた。
(うーん。やっぱり、すき焼きには白米だよなあ。ツキハとコハクにも分けてやってるけど、まだまだ量が取れない貴重品だから、コイツ等には勿体ないな。まあ、魔黒米が好評だから、今日のところはいいだろう。量産の暁には、俺の国の特産品の一つにでもしよう。しかし、すき焼きのタレがしみ込んだ白米、うめえー)
茶碗に盛られ湯気を立てる白米、それをリムルが食べていると、ヒナタが羨ましそうに見ていた。
それを察したリムルが、同郷のよしみでヒナタにも白米を用意してあげる。
茶碗に盛られた白米を懐かしそうに見て、箸で一口、二口と、ゆっくりと味を嚙み締めるヒナタ。
「それにしても、白米って……。貴方、好き放題し過ぎなんじゃないの?」
若干声が震え気味ながらヒナタは、リムルに不満気みた事を言う。
(おや? 何で文句みたいな事を……悔しいのかな?)
「文句があるなら、白米は返してもらっても――」
「そいう話をしてるんじゃないのよ」
リムルの言葉を遮り、ヒナタは白米が盛られた茶碗を死守する構えを見せる。
そして一つ軽く息を吐き、言葉を続けた。
「本当に、ここまで完璧にあっちの世界の食べ物を再現するなんて、驚く以前に呆れるわ。まさかね、たった二年で、ここまで暮らしやすい環境を作るなんてね……。私達がどんなに望んでも成し得なかった事を、貴方は平然とやってのけたのよ……」
「まあねえ。もっと褒めてくれてもいいよ?」
「ふざけないで。ユウキから噂は聞いていたけど、話半分だったもの。まあユウキ自身、諜報員からの報告と、どこからか情報を買っていたみたいだったけど。ほんとこれは、実際に目にしてみなければ信じられるものではないわね……」
ヒナタは諦めたようにそう言った。
そのヒナタの言葉にリムルは、そんな事を俺に言われてもなあと、思いながらも、これで終わりじゃないんだよというように、口を開く。
「いや、まだまだだよ。物流は致命的に遅いし。情報伝達も話にならない。魔法があるから、住み心地と食糧事情はそれなりに改善出来たんだけどな」
「それなりって……貴方ね、私達が今までしてきた努力を嘲笑うような、こんな美味しいものを再現してて、それを言う!?」
リムルの言葉に憤慨するヒナタ。
(そう言われてもなぁ……。満足したら、それ以上の発展はなくなるんだよ? 俺はこの国の王様をやっているんで、欲深いくらいで丁度いいんだよ。まあ、王様といっても、魔王なんだけど……)
ヒナタの憤慨にリムルは反論するような言葉を重ねて来る。
「だからさ、食糧事情はかなり満足してるんだって。最悪なのは文化なんだよ。この世界はな、娯楽があまりにも少な過ぎる。ヴェルドラとツキハが読んでいるような漫画とか、そういう娯楽を生み出せるような下地を作りたいのさ」
「この世界に娯楽って、貴方……。こんな過酷な世界で、日々生きるのに必死な人々が大半なのに?」
「ああ、そうだよ。だからさ、魔物達の脅威は俺達が取り除く。完全平和な世界を目指すのは無理だから、あくまでも俺の国と、俺の手が届く範囲での事だがな。隠しても意味がないから言っちゃうんだけど、ヨウムを王に樹立して新王国を興し、そこを巻き込んで西側諸国でも影響力を持てるようにするつもりなんだよ。そしてこれに、傭兵商会ルヴナンも一枚嚙んでいるんだ」
「傭兵商会ルヴナンが貴方の計画に一枚噛んでるですって!? あの番外魔王達をも巻き込むなんて……正気とは思えないわね。貴方は一体何を考えているの? いいわ、その話、詳しく聞かせてくれるかしら?」
ヒナタは一度箸を止め、真剣な顔付でリムルに問う。
するとリムルは、聞きたいというなら語って聞かせようと。
「色々と考えてはいるんだけど、先ずはね――」
そう言ってリムルはすき焼きをつつきつつ、今後の構想を話始める。
現在進行中の計画、その一。
リムル達を人間社会で認知させる事。
これは半ば成功しており、各国の首脳部はリムル達を知るに到った。
そして、魔国に諜報員らしき存在が増え、出入りしている諜報員達の特定が既に済んでいる事。
諜報員に関しては、リムルの配下の暗部とルヴナンの合同で監視を行い泳がせていると、説明する。
その為、それと無く無害だとアピールもさせていると。
商人や冒険者などからも噂は流れるだろうし、時間はかかるかも知れないが、各国の庶民にもリムル達が共存出来る存在だと認識されるようになるハズだと。
これは慌てる事はせず、じっくりと浸透させていくとリムルは言った。
次に、その二の街道整備。
これも現在進行形で、安心安全な交易路が整備されていっている。
ドワーフ王国とブルムンド王国への新街道は既に開通し、魔導王朝サリオンに向けて新たな街道工事が始まっている。
獣王国ユーラザニアとは、舗装されていない道しかないので、これもまた新街道の整備を計画中であると。
そして、それと並行して進めているのが、情報伝達に関してだとヒナタに説明するリムル。
これには、無線という概念を皆に認知させるのは、それに関する知識がないので、無線に関する事は諦めたと言うリムル。
だがしかし、今後の課題として、今の子供達、もしくは未来の子供達に託そうと考えているとの事。
だから、学校を作って、そこで教育を受けさせるのだと。
今はまだ寺子屋レベルだが、そこで読み書きと計算を教えてると、リムルは話す。
「まあ、こんな風に徐々に子供達の教育を充実させていこうと、考えているんだ。人間や魔物とか区別なく一緒に、同じ学校でね」
そう言いリムルは、グッとウッドジョッキに入ったビールを飲み干す。
ヒナタはすき焼きを食べつつ、黙って聞き入り、時折頷き、考え込む素振りを見せていた。
「で、話を戻して、情報伝達なんだけど――」
リムルは、ウッドジョッキに新しく注がれた冷えたビールを一口飲み、一息つくと。
話を続けていくのであった。
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