忍びが転生したら〝異世界珍道中〟になった件   作:にゃんころ缶

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 お待たせしました。128話です

 ツキハ

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 コハク

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 傭兵商会ルヴナン・真の紋章


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 ※〝打刀〟
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128話 魔国(テンペスト)への勧誘

 

 

 一つ問題が片付いたリムルは、至極ご機嫌な様子であった。

 

 片やミョルマイルの方はと言うと、とんでもない爆弾を抱え込まされた感じで、寛ぐどころではなかった。

 

(ヴェ、ヴェルドラ様だとぉッ!? 封印が解けたというのは聞いておったが、まさか、ワシが相手をする事になるとは……)

 

 流石に頭を抱える気持ちになろうというもの。

 

 だがしかし、リムルに救われた時から、リムルに付いていく覚悟は当に出来ていた。

 

 こう見えてもミョルマイルは、肝が据わっているのである。

 

「しかし、祭りですか……。それだけ大規模なものとなると、参加を希望する者も多いでしょうな。ワシも商人として稼ぎ時ではあるんでしょうが……」

 

 何気なく呟くミョルマイル。

 

 それを聞いたリムルは、すかさず言葉を重ねて来る。

 

「お? ミョルマイル君も興味があるかね? いやあ、実はね。俺もこう見えて色々と悩んでいたんだよ。出し物は君の協力で何とかなったけど。国としての目玉が欲しいなーって思っててさ」

 

 紅茶を飲んでいたリムルがミョルマイルの呟きを聞きつけ、相談に乗って欲しそうに見つめて来た。

 

 それに一瞬グッとなったミョルマイルだが、そこは気合いでねじ伏せる。

 

「め、目玉ですか?」

「そうそう。あれよ、俺達の街ってさ、最近町から街へと変わったばかりじゃん。でさ、本格的な保養地にする予定なんだよ。温泉宿とかも用意したし、貴族の接待も可能な旅館も迎賓館も出来た。だけどさ、娯楽施設が少ないと思うんだよね。とりあえずコハクがさ、賭博場(カジノ)を作る予定ではあるんだけど、それだけではねえ。推しが弱いというか、あれなんだよな」

「なるほど。確かに賭博場(カジノ)だけでは、物足りない感はありますな……」

 

 最初は少し警戒したミョルマイルだったが、リムルの言葉に金儲けの匂いを感じ、相談に乗る事にした。

 

 そんなミョルマイルにリムルは、意気揚々と説明を始めた。

 

 魔国連邦(テンペスト)には、高級宿や各種宿泊施設が用意されていて、様々な趣向を楽しむ事が出来る。

 

 景色の良い庭園を眺めながら食事を楽しめる宿に、屋外で温泉に入る事の出来る露天風呂という設備が整った宿もある。

 

 大体この世界では大国ならともかく、小国では貴族ですら個人用の風呂を維持するのは難しい。

 上下水道さえ整備されてはいない国や村などでは、風呂桶に沸かした湯を張るのも重労働になるからだ。

 

 そもそも浄化魔法というモノがあるので、風呂に入るという行為は、一国の王や上級貴族といった一部の者達が愉しむ贅沢品でもあったのだ。

 

 そんな常識の中で生きて来たミョルマイルには、日常的に風呂という温泉に入れるというのは驚き以外の何物でもなかったのだが……。

 

 リムルは現状に満足していなかっただけではなく、それ以上のモノをと、言うのであった。

 

「いや、しかしですな。美味い料理に寛げる空間、保養地としてこれ以上のものは望めますまい?」

 

 ミョルマイルは現状でも十分過ぎると思ったが、リムルは首を横に振り言う。

 

「甘いな、ミョルマイル君。それだけではちょっと弱いと思うんだ。もっとこう、皆が楽しめるような企画が欲しいんだよな。例えばさ――」

 

 そう言ってリムルは語り始める。

 

 先ず、ジュラの大森林の観光旅行というもの。

 道案内兼護衛者を付けて、森の奥地を一日かけて散策するという企画。

 この護衛には、番外魔王の眷属達にも協力してもらうとも付け加える。

 

 他にも、近くの渓流での釣り大会や、河原でのバーベキュー大会、大自然の中での狩猟大会等々。

 道具は全て貸し出し制にして、利用客に楽しんでもらおうと考えてるとリムルは説明する。

 

「なるほど、面白そうですな。暇を持て余している貴族共の興味を引くでしょう。特に賭博場(カジノ)などは、富豪や貴族からかなりの金が落ちるでしょうな。そして、温泉に美味い料理は、仕事熱心な者にとっては良い息抜きになりそうです」

「そうか? それならいいんだけどさ、他にも皆が楽しめるような良い案がないかなと思ってねえ」

 

 リムルとしては、今回開国祭で招待した客人達を、リピーターとして何度も呼び寄せたいと考えていると言った。

 

(うーむ。旦那はどこまで先を見ているのやら……)

 

 と、心の内でそんな事を思うミョルマイル。

 

「そういう事でしたら、イングラシア王国を真似てみてはどうでしょう? ()の国では、劇場が人気だとか。歌劇や演劇、日毎に上演されておるそうですな。他には、闘技場で開催される武闘大会が大人気ですな。それと、ここだけの話ですが、イングラシア王国にはもう一つ、大衆や荒くれ共が集う、非合法の地下闘技場と言うモノがありましてな。闘技者の本気の戦いを見て楽しむもので、これも隠れた人気を得ています。何故なら、命を賭けた戦いですからな。その迫力は表の武闘大会とは一線を画します。まあそれ故、死人が出るのが難点ですが」

「ほー、地下闘技場か! でもなぁ、流石にそれはやり過ぎ感が(いな)めないな。でもさ、表の武闘大会はあれだろ、勇者マサユキとかいうのが大人気って聞いたぞ」

「そうですそうです。〝閃光〟の二つ名を持つマサユキ様が、武闘大会の覇者なんですよ。こう見えて、ワシも大ファンなんです。後ですな、地下闘技場にたまに出没するフリーの闘士で、ツキコと言う少女闘士が地下では大人気ですな。これがまた、怪しげな体術を使う少女でして、中々に強いんですよ。現地下闘技場チャンピオンとタメを張るとも、言われていますな。こちらもワシ、(ひそ)かにファンなんですわ」

「え!?」

 

(ツキコ!? あー、これ。絶対にツキハじゃないのか? アイツ、たまに人間社会にお忍びで遊びに行ってると言っていたよな。地下闘技場、何ししてるんだよって、アイツの事だ。絶対に戦いを楽しみにいってるな。それも、自分の能力を限界まで落として。戦闘民族の考えてる事は、わからんわ……)

 

 偽名と種族まで偽って何してんだよと、内心やや呆れるリムルであった。

 

 そんなリムルを他所に、ミョルマイルは武闘大会について熱く語り始めた。

 

「――と言う感じでして、その剣の閃きを誰も見た事がないのですよ。それ故に、〝閃光〟と呼ばれておるのです。捕らえた魔物との死合なんぞもあるのですが、勇者のお仲間も大層強くて、手に汗を握って観戦したものです。そして、地下闘技場で戦うツキコ。小さいながらも、自分より大きい男共をノックアウトする様は、見ていて爽快でありますな。こういう見世物があれば……おっと、いけませんな、熱く語り過ぎましたわい。そういえば、リムルの旦那の配下の皆様もお強そうですが、どなたが一番――」

「ストップ! それ以上はいけないよ、ミョルマイル君」

 

 ミョルマイルの興味がいきなりリムルの配下へと変わり、強そうな魔人が大勢いるのを見て、誰が一番強いか気になっていたらしいのだが、それはリムルによって止められた。

 

「いいか、ここだけの話だがな『モモコもいいな?』――」

『了解です』

 

 そう言って、リムルがコソッとミョルマイルに話す。

 

「――アイツ等の前でそんな事を言うと、ガチで抗争が勃発するんだ。この前もさ、聖騎士のアルノーって野郎がね、君と同じ質問をしちゃったんだよ。そしたら序列がどうのとか下らない事で揉め始めて、挙句には、強さなら番外魔王の眷属達とも勝負をとか言い始めてさぁ、ちょっと大事になりかけたんだよね。あの時は全員いなかったからのと、ツキハが、『そんなに言うのなら、あたしが相手になるよ?』と言って、場を収めたんだよ。だから、火種になるような発言は控えないとね」

 

 一番問題(ディアブロ)になりそうな者がいなかったので、その場は何んとか誤魔化せたのだとリムルが言った。

 

 恐らく、ディアブロがいたら、間違いなくツキハと〝戦い(ケンカ)〟が勃発していただろうから。

 

 だからそれ以降は、そんな繊細な話題は避けているのだと。

 

 幹部同士、又は番外魔王の眷属を巻き込んだ大喧嘩に発展すれば、せっかく発展した街にも影響が出るのは必至。

 

 そんな事は論外なので、リムルはミョルマイルに重々注意するように念押しをした。

 

「な、なるほど。それは失礼しました」

「うん、今後気を付けてくれたら、それでいいって。でもまあ、着眼点は面白いかもな」

 

 恐縮するミョルマイルとは違い、それほど気にはしていないリムルだった。

 

 そんなリムルを見ながらミョルマイルは、やはりこの人も、普通とは感覚が違うのだろうと思いつつ、次のリムルの言葉を待つ。

 

「そうだなぁ……そうだ! 街の区画には空きがあるから、歌劇場を作るのもいいかもな。劇作家になりたい者が生まれるかも知れないし、そうすれば新しい娯楽にも繋がるか。でだ、闘技場はと――」

 

 そこで口を止めて、ミョルマイルを見るリムル。

 

 ミョルマイルに目には、リムルがニヤリと笑ったように映った。

 

(ああこれは、またあくどい事を考えているのだろうな) 

 

 と、口に出さずに考える。

 

(リムルの旦那って、黙っていれば凄い美人なのに、何でこうも残念な表情を……)

 

 などと、思っていると。

 

「ミョルマイル君!」

 

 そら来た! と、身構えるミョルマイルにリムルは――

 

「君ィ、武闘大会に詳しそうだね、裏も表も」

 

 リムルは席を立ち、ミョルマイルの隣に座る。

 ギィばりの猫撫で声で、ミョルマイルの耳元で囁き問うてくるリムル。

 

 そして、自分も表の武闘大会を開催するから、その準備から一切合切を任したいと、言い出したのだ。

 

「ちょ、待ってくださいよ、旦那! そんな重要な話を突然言われましても……」

「なあに、闘技場はこちらで用意しょうじゃないか。君は先ず、興行に必要な諸々を調べてはくれないか?」

 

 ミョルマイルの抗議には耳を貸さず、ゴリ押しで話を進めて来るリムル。

 こうなってはもう、何を言っても無駄なのである。

 

「フゥッ……毎回毎回リムルの旦那には敵いませんな。わかりました。不肖このミョルマイル、誠心誠意、頑張らせてもらいましょう!」

 

 毒を食らわば皿までとばかりに、ミョルマイルはこの案件を引き受けた。

 

 だが、その口元には僅かに笑みが浮かび上がる。

 

 そう、実はミョルマイルとしてはいやいやではなく、いつも思いも付かない事を言って来るリムルに、ミョルマイルの心は踊っていたのだ。

 

 そして今回は、こんな重要な仕事を任されて、天にも上るような気持ちになっていたのである。

 

 ミョルマイルの頭の中は既に――

 興行を行うには何が必要か? 

 人員の数は? 経費は? どのような武闘大会にするか?

 

 エキシビジョンマッチも組み込むか?

 

 等々と、凄まじく思考が回転を始めていく。

 

(これは、やるしかないわい! こんな、こんなチャンスは二度とないぞ!)

 

 失敗したって構わない、そうミョルマイルは奮い立つ。 

 今までの付き合いから、多少の事では怒らないとわかっていたし、有言実行であるリムルは信頼出来る人物であり、商人にとって一番信用の置ける相手なのだ。

 

(リムルの旦那は魔王。念密に練った企画を立てさえすれば、それを実現出来るだろう。そして、その企画を、このワシが――)

 

 ()し掛かる重圧を物とせず、感無量になるミョルマイル。

 

 そこへ、気楽なリムルの声がミョルマイルの耳に届く。

 

「そうそう。今回は各国の招待が目的なんだけど、一般人にも利用出来るようにしよう。貴族も富豪もそうだけど、何より大衆が利用出来ないと収益は見込めないだろう?」 

「大衆ですか?」

「うむ。五万人くらい収容出来る円形闘技場(コロッセオ)を作るつもりだ。区画にはまだ余裕があるし、大丈夫だろう。そして、その周辺でさっき言ってたファーストフード店を出せば、かなりの売り上げが見込めるんじゃないか? 観客には、売り子を使って席ごとに売って回ってもいいしな。人が多く集まればそれだけで利益も見込めるってものだろ? それに、この武闘大会でのチャンピオンには、賞金、もしくはそれに相当する武具を出そうと思うんだ。どう思う、ミョルマイル君?」

「そうですな……(ふーむ、なるほど。つまり、普段は大衆向けの娯楽を提供するという事ですかな? となると……)」

 

 リムルの説明にミョルマイルは、暫し思案に没頭する。

 

 五万人規模の円形闘技場(コロッセオ)ともなれば、イングラシア王国のそれと比べても遜色はない。

 

 それどころか、倍くらいの人数を収容出来るのであるまいか? などと考えるミョルマイル。

 

(しかし、五万人などと、本当に集まるのだろうか……?) 

 

 だがしかし、リムルは本気である。

 

「で、あれだ。立見席も用意してだな、入場料も無料にしよう。でも、金持ちからは、指定席に案内して入場料を取る。更にだ、金目に糸目をつけない貴族なんかは、貴賓席を用意する。後は来賓席も用意して、これは招待用に確保するという考えなんだ。それでさ、こんな感じで、席の割合と収益率なんかも検討してみて欲しいんだよ」

 

 と、リムルの笑顔で丸投げが炸裂した。

 

 近隣諸国の農民や町人も観戦出来るように、無料席を用意する。

 流石のイングラシア王国でも、そんな真似はしてはいない。

 

 それでか、とミョルマイルは()に落ちた。

 

「そうでしたか、五万人は多過ぎると思っておりましたが、そういう目論見だったのですな……」

「ああ。こういうのはさ、皆に興味を持ってもらってナンボだからな。大勢が立ち見してる中で、優雅に席を確保出来るとなれば、指定席にも価値が出るんじゃないか?」

「間違いなく、出るでしょうな。中に入れるかどうかわからぬよりも、その席に値が付く理由も納得ですわい」

 

 金持ちの道楽であるイングラシア王国の闘技場とは、根本からして違うのだこれは。

 

 先ず、話題作りがメインでありながら、この人を呼び寄せる事がキモであり、そこから魔国連邦(テンペスト)の良さを知ってもらい、リピーターになってもらうのが目的である。

 

 入場料無料ならば、農作業が休みの農民や、休日をある程度自由に決めれる職業に就く者などが遊び来られるだろう。 

 

 そうすれば、そうした者達からも噂が流れ、近隣諸国の大衆などが興味を持つハズと、リムルは考えていたのだ。

 

 何より、数万人規模の移動となると、街道上の宿屋や飯屋などが潤うだろう。

 それに、途中途中の休憩場に、ファーストフード店を展開しても面白そうだ、というより、リムルはミョルマイルより先んじて、既に街道の各休憩場にファーストフード店を出せる敷地を確保していたのだ。

 

 そう、この祭りによる相乗効果が、後の利益に繋がるのである。

 

 この集客した人々が落とすお金だけでも、かなりの収益になるだろうと容易に予想出来る。

 

「流石は旦那、最初から計算ずくでしたか……」

「え!? あぁ、ま、まあね。当然だとも!」

「宿泊施設は十分に足りておりましたな。ならば問題は、客を飽きさせず定期的に呼び込む事ですか。企画する催し物も魅力あるものを考えなければなりませんし、採算率も高める必要があるでしょう。先ずは宣伝、ですな。その最初の一手として、今回ワシに企画を任せてくれているのですな?」

「お、おう。そうだね」

「ふむ。なるほど、なるほど。何度でも来たいと思わせる興行を考える、それがワシの仕事ですな……。仮に今回の武闘大会で利益が出せなくても、また来たいと思わせる事が出来れば――良し。そして、一番大事なのは、出す企画の中身がハリボテではなく、嘘偽りのないモノであるのが大事、という事ですかな?」

「――流石だ、な。そこまで俺の考えを理解するとは。ミョルマイル君に相談したのは間違いではなかった。やはり、この仕事を任せられるのは君しかいない!」

 

 ミョルマイルはリムルの言葉を聞きながら、身震いを一つした。

 

 この任されたこの武闘大会は、餌である。

 これを餌に人を呼び込むという案に、心が躍り跳ねる。

 

 ここまで準備されお膳立てされた状態でリムルは、後を任せると言ったのだ。

 

「本当に旦那は……フ、フフフ、無茶を仰る――」

「なあに、こういう事はその筋のプロがやった方がいいだろう? ミョルマイル君、まさか、自信がないのかい?」

「はッ、ははははは! これはまた手厳しい。リムルの旦那もお人が悪い」

「はっはっはっはっは。だよね、だよね。ミョルマイル君なら余裕だよね?」

 

 そう言って二人して顔を見合わせると、甲高く笑い合っていく。

 その時二人の顔は、とても悪い顔になっていた。

 

 この開国祭で、巨額の金が動く事になるのは間違いない。

 

 そして、その巨額な利益を如何(いか)に次に生かすか?

 

 経済の中心地を創る、このリムルの野望の第一歩である、大事業。

 

 リムルとミョルマイルは笑い合ったままゆっくりと立ち上がると、ガッチリと握手を交わしたのであった。

 

 そうした中、ミョルマイルが何かに気付いたような顔をして、リムルに告げた。

 

「となるとですな、そこで一つ思ったのですが、回復薬にも新たな道が見えそうですわい。どれだけ傷ついても、即死しない限り回復が可能なのでしょう? だとすれば、選手がかなり本気で戦っても大丈夫でしょう。それに、怪我をした者が次の試合で無傷で現れたら、これは凄い宣伝になるでしょうな。回復薬の新たなる販路が開けるやも知れませんぞ?」

「何だって!?」

「おや? そこまでお考えではなかったので?」

「え? いや、うん、考えていましたよ?(実は、そこまで考えてなかったんだよなぁ) ただちょっと、俺の考えと違うところがないか、確認したいな、と思ちゃってさ」

「そうでしたか! フッフッフッ。リムルの旦那ならば、この程度の事は当然考えておられたでしょうな。ワシも負けてはおられませんわい――」

 

 そう言ってミョルマイルは次々と、自分の考えを披露していった。

 二人して、『いいね、いいね』と言い合いながら、次から次へとアイデアを語っていく。

 

 武闘大会で回復薬の宣伝をして、冒険者に売るというのが一つ。 

 

 そして、武器や防具のレンタル、及び販売もその一つだ。

 

「クロベエの武器は、失敗作でもかなりぶっ飛んだ性能をしてるんだよ。なので危なくてさ、表には出せないんだけど、今は弟子も多くてね――」

「それが先ほど言っていた、武闘大会のチャンピオンの報酬という事なのですな」

「そう、その通りだ。まあ、他にも色々と考えてはいるんだけどね」

「ならば、武闘大会での優勝者を予想するという賭け事を催すのも有りですな。これだけでも莫大な収益が見込めるはず。賭博場(カジノ)と併用するのも良い手でありましよう」

 

 国家事業の賭博の運営。

 

(こうなったら、ラスベガスの再現も面白いかもな……)

 

 リムルはこの時、元いた世界のアメリカ合衆国のネバダ州にあるラスベガスを思い浮かべる。

 

 そしてミョルマイルは、人間同士の戦いだけではなく、捕らえた魔獣と戦わせるのもいいんじゃないかと言う。

 勿論、安全面には十分に注意を払わなければならないが、リムルの部下には強者が大勢いるし、何なら、番外魔王の眷属達にも協力してもらえば問題ないだろうと。

 

 これを利用すれば、初心者冒険者の訓練場として貸し出すのもいいかも知れないとミョルマイルが言い、二人はそうだそうだという風に(うなづ)き合う。

 

 更に、教導官を付けて、指導料を取るとかなど、ミョルマイルの頭が恐ろしいほどに冴え渡る。

 

 次から次へ、今までにない発想が湧き出て来るような感じを受けるミョルマイル。

 

 そして、ミョルマイルは決意する。

 

「やってやる。やって見せますわい! ワシの商人魂が、ヒシヒシと大儲けの予感を抱いておりますぞ!!」

「素晴らしい、素晴らしい自信だ、ミョルマイル君! うんうん、君ならきっと俺を満足させるだけの収益を出してくれるだろうね!」

 

 リムルからの称賛の声に、思わず照れるミョルマイル。

 

 そんなミョルマイルを嬉しそうに見ながらリムルは、次なる言葉をミョルマイルに、かけた。

 

「後さ、もし良かったらだけど、この武闘大会が成功した暁には、ウチに来ない? 商業担当部門か広報担当部門、財務統括部門でもいいかも。まあ、名目は何でもいいんだけどさ、そこの責任者を君に任せたいんだよ。ウチも所帯がドンドン大きくなって来ているし、この祭りが終わったら体制をキッチリと編成しようと思ってるんだ。実績さえ残せば誰も文句は言わないだろうし、どうかな?」

「こ、こ、このワシが、ですか?」

「うん、そう。それにさ、ルヴナンとの契約以外での金銭交渉がね、コハクに太刀打ち出来る者がいないんだよなぁ。で、ミョルマイル君ならば、あのコハクとも対等に金銭交渉で渡り合えると俺は、思うんだ。どうかな?」

「コハク? 〝番外魔王〟のコハク様、ですよね?」

「うん、そのコハクだ」

「そうですか……」

 

 どうかな? と言うその言葉が、ミョルマイルの心の琴線を何度も何度も触り刺激し、心の内側で反響して巡る。

 

 やがて、ミョルマイルは大きく頷くと――

 

「――いやはや、全く、敵いませんな。旦那、いや、リムル様。このミョルマイル、何が何でもこの度の企画を成功させ、リムル様の臣下に加わりたいと存じますぞ!!」

 

 迷いは一切なく、了承するミョルマイル。

 

(この方は、ワシをここまで買ってくれているのだ。あの伝説の〝番外魔王〟コハク様と、契約交渉が出来るなどと、これ以上のない(ほまれ)。失敗は、許されんわい!)

 

 この年になって、感動と喜びに打ち震え、身を焼き焦がすような高揚感と夢と希望に、興奮冷めやらずのミョルマイルであった。

 

「大袈裟だな、ミョルマイル君は。ククッ」

 

 興奮気味なミョルマイルを見て、嬉しそうに笑うリムル。

 

 そこから更に詳細な打ち合わせを重ね行いながらも、ミョルマイルの興奮は収まる気配を見せなかった。

 

 リムルの腹心に加えてもらう、その野望を胸に――

 ミョルマイルは粉骨砕身リムルに仕える事を、誓った……。

 

 

 魔物ばかりの配下の中で、唯一人間であるミョルマイル。

 

 財政政策の要となるのは、そう時を置かずして()されるだろう。

 

 

 〝魔国連邦(テンペスト)の金庫番〟

 

 それが、後のミョルマイル、その人である。

 

 

 

 





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