忍びが転生したら〝異世界珍道中〟になった件   作:にゃんころ缶

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 お待たせしました。136話です


 ツキハ

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 コハク

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 傭兵商会ルヴナン・真の紋章


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 ※〝打刀〟
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136話 迷宮創造(チイサナセカイ)

 

 

 コハク達一行は魔国へ帰還する為にシャルフューズと、ルヴナン本拠地の中間点にある、直系五メートルはある巨木の前に来ていた。

 

 その巨木の根元から一メートル五十センチ位のところに、太いロープで作った〝しめ縄〟が巻かれていた。

 

「リムル。ここが、正式の出入口やねん」

「へえー、巨木に〝しめ縄〟かぁ。また、懐かしいものを見たな」

「さよか、フフッ。ここはな、うちが登録したものしか通る事はできしまへんのや。ガットエランテの隊商もな、あちこちに隠して設置してある『転移門』からここへ来てるんやで」

「なるほど。それで、物資などをここに持ってきたり、農産物を運び出して売ってるのか」

「せやで。ほな、行きましょか」

 

 コハクはそう言うと、〝しめ縄〟に手で触れる。

 

 空間がポワンと波打ち、コハクの姿が消える。

 続いてツキハが触り、ラミリス、トレイニーと続き、最後にリムルがしめ縄に触れると、一瞬にして景色が変わった。

 

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「こ、ここは? それに、朽ちた遺跡?」

「ここは、ジュラの大森林の奥地やで。そしてこれは、朽ちた遺跡に偽装した迷宮傭兵公国シャルフューズへ入る、扉やねん」

 

 リムルの疑問に手早く答えるコハク。

 

「へえー。こんな偽装をして、入り口を偽装していたのか。中々に考えたな」

「せやろ? フフッ」

「よし、一旦帰るか」

 

 リムルは言いながら『空間移動』していき、ラミリスとトレイニーもベレッタに連れられ『空間移動』する。

 

 そして、コハクとツキハも『空間転移』で魔国へと戻って行った。

 

 魔国へと戻った一行は、再び西門のところに集まり、そこにはゴブキュウ達もいた。

 

 そこで、リムルがゴブキュウを見て口を開く。

 

「ゴブキュウ、闘技場の地下に、避難用の空間を作ろうと考えたんだけど。可能か?」

「幹部様方の力を基準に構造計算をしたとしても、舞台直下は安全ではありますまい。空洞があれば、衝撃で地下まで崩れかねませんからな。ですが、その位置を少しずらせば問題ないかと――」

「そうか。でだ、その地下に、一つ扉を作りたい」

「えっ――ッ!?」

「扉です、か?」

「ああ、そうだ。重厚な感じにして、壁には石板でも()め込めるような、分厚い感じのもので頼む」

「えと、その扉の先にも、避難用の空間を用意するのですか?」

「いや、その必要はない。重要なものは扉。もしくは、それに準ずるもの、そうだろラミリス?」

「リ、リムル!? それって、もしかしてもしかする、の……?」

 

 顔に疑問を浮かべるゴブキュウに、トレイニーの隣でラミリスが、喜色満面で羽をバタつかせていた。

 

 ニヤリと笑い、ラミリスに(うなづ)くリムル。

 これは、コハクやツキハから聞いた、ラミリスの創る迷宮の有用性について考えた結果の事である。

 

 リムルの、突貫迷宮構想。

 

 ここで地下迷宮(ダンジョン)を運営すれば、仕事帰りの冒険者が一杯ひっかける店や、食事処の店を出せば繁盛するだろうと考えた。

 

 自分達は冒険者の懐から利益を得る。

 

 そして、ラミリスは、住む場所と仕事、更には自分からお小遣いという収益が得られるという事。

 

 リムルは、お互いの協力が必要不可欠なアイデアだが、コハクとツキハの迷宮領地というお手本が既にあるので、面白い事になりそうだと思う。

 

 そして、この事をラミリスに説明する……。

 

 …………

 

 ……

 

 リムルの話を聞き終えるなり、ラミリスが興奮したように騒ぎ始めた。

 

「え、ええっ!? って事はですよ? ひょっとして、ここに迷宮を創って住めるだけじゃなく、立派なお仕事までさせてもらえるって話なの!?」

「俺の話をうけてくれるんだろ? だったら、そうなるな」

「えっ!? じゃあさ、じゃあさ、もしかしてもしかすると、〝無職の引き籠り〟という不名誉な現状を打破出来るって――ワケ!?」

 

 リムルの迷宮構想を聞いたラミリスは、目を大きく見開いて、電撃でも喰らったかのようにアワアワと言い出した。

 

「良かったですわ、ラミリス様」

 

 それを見て涙ぐみながら、小さく呟くトレイニー。

 

 ベレッタは、リムルが迷宮領地シャルフューズに出向いた時から、こうなる事を予見していたかのように仮面の奥で嬉しそうに、ニヤリと笑みを浮かべていた。

 

 そして、少し落ち着いたラミリスが、慎重にリムルに聞いて来た。

 

「あ、あのう……アタシにもお小遣いをくれるって、それ、本当に本当なの?」

 

 何か、やっぱそれは無し、とか言われるのを恐れているかのような問いだった。

 

 リムルはラミリスの問いに、安心させるように言い出す。

 

「うん、それはマジ。ただし、やってみないとどれくらい利益が出るかわからないけどな。でもまあ、宣伝費や場所代とか差し引いて、出た利益の二割がお前の取り分ってどうよ?」

「それって、妥当なの?」

 

 恐る恐る聞くラミリスにコハクが口を挟んで来る。

 

「妥当やないどすか? リムルの側は地下迷宮(ダンジョン)に設置する設備に、なんやかんやの経費が掛かりますからなぁ。ラミリスは地下迷宮の管理運営だけどすし、人件費などはおまへんやろ? まあ、仮に地下迷宮の売り上げが一日金貨十枚として、あんさんの取り分は二枚や。せやから、ひと月で金貨六十枚になるどすな」

「げぇえ!! そ、そんな大金が貰えるのでありますか!?」

「そう、コハクの言う通りだな。でも、あくまでも予想だし、上手くいくかわからないぞ。何と言っても人が来なきゃ始まらないしな」

「でも、リムルならその辺はもう考えが付いているんでっしゃろ? フフッ」

「ああ、その辺りは色々と考えてあるさ。だからラミリス、どうせ、住み着くつもりだったんだから、お前に損はないんじゃないの?」

 

 リムルの言葉にコクコクと頷くラミリス。

 

 住む許可も得て、更にお金も稼げるというオマケ付きにラミリスの反応は一つ。

 リムルの頭に抱きつき、大喜びでハシャギ回るのであった。

 

「うへへ……これでアタシも大金をゲット出来るってワケよ。もう無職だの貧乏魔王だのと、バカにされる事もなくなるのね!」

 

 と、妄想(銭勘定)まっしぐらのラミリス。

 

 とりあえず、ハシャギ喜ぶラミリスを置きつつ、リムルは『思考加速』を軽くかけて自分の案を煮詰める。

 

(よし、闘技場、地下迷宮(ダンジョン)を創る算段は付いた。将来的には街道場上にも線路を敷いて、列車を走らせるつもりでいたからな。安全な旅路を確保すれば、金持ちの観光客も誘致しやすくなるし、遠くの一般客も来やすくなる。後は料金だが、燃料費は大気中にある魔素を利用するから、実質ただだ。あと、魔導列車のメンテナンス作業とかの人件費だが。これは、教授が話してくれた、機械などに付与する自己修復術式の研究の進展によるな。当面は人員はいるだろうし、安全面で人員を割くわけにはいかない。これは、徹底しないといけないな……)

 

 ここでリムルは一度思案を止めて、闘技場建設予定地の全体像を頭に思い浮かべ、また思案に戻る。

 

(まあ、こちらは魔法や能力(スキル)がある。俺がいた世界より、列車事業に関わる人員は少なくて済むかも知れないな。となると、闘技場付近に駅を一つ作りたいかも。魔導列車に乗る運賃とかは、一般客が乗る自由席は安く、金持ちが乗る席は……そうだな、個室の席を設けて、それにサービス料金を付けてもいいな。後、自由席を三等席にして、少し上の良い席を二等席にするか。そして、それより良い席を一等席にして、個室付きの席は特等席だな。これにより、貴族などは進んで高い席に座ろうとするだろう。何しろ、アイツら、面子(めんつ)が服を着て歩いているみたいな者が大半だろうからな。クククッ)

 

 貴族にもまっとうな者がいるのはリムルも知っている。

 だがしかし、その地位に溺れ、権力を振り回す者も多いのも事実。

 そんな貴族からは、盛大にぼったくろうと目論む。

 

 そして、ツキハとコハクはそれを逆手に取って(あきな)いをし、利用している。

 

 リムルは、傭兵商会ルヴナン、ガットエランテの話を聞きながら、参考になる所は大いに真似すべきだとリグルド達に言っていた。

 

 ツキハやコハク達みたいに、したたかさを学べとは言わなくても、商人や貴族、富豪などを相手にする時は、より注意を払って挑まなければならない。

 

 そして、それを表に出す事はなく、交渉事を行わなければならないのは、まだ経験の浅いリグルド達にとって、(いささ)か荷が重いのも事実だった。

 

 しかし、リムルの誘いに応じて、ミョルマイルという大商人が魔国に来る事になった。

 これにより、より直接的に商人、貴族、富豪、そして各国の重鎮などとの交渉をするノウハウを、リグルド達に見せ、教える事が出来る。

 

 これは、リムルにとってこれは大きな収穫であり、国の発展には必要不可欠なモノであったのだ。

 

「まっ、今はこんなところだろうな」

 

 リムルは小さく呟くと、ゴブキュウに告げる。

 

「ゴブキュウ。この今、避難所で使用している敷地に闘技場を作る事にする。獣人の皆さんには、仮設住宅ごと、ラミリスの創った地下迷宮に移動してもらう」

「!? で、出来るんですかい、そんな事?」

「うむ。さっき、実証されているのを見て来たからな」

「了解でさあ、リムル様」

 

 リムルの言葉で察したゴブキュウは、部下達と何やら話始める。

 

 

 ここでリムルは、もう一度ラミリスの能力(スキル)を、『思考加速』をかけて思い返していく……。

 

 

 ラミリスの固有能力、『迷宮創造(チイサナセカイ)』。

 

 ツキハとコハクの迷宮領地を見てもそうだが、とんでもない能力(スキル)である。

 

 リムルが、シャルフューズでラミリスに聞いた『迷宮創造(チイサナセカイ)』の力。

 

 ラミリスが創り出した迷宮の中では、ラミリスは万能と言っていい力を発揮する。

 その力の影響範囲は大きく、迷宮に隣接する人や物も対象になると聞いた。

 

 例えば、迷宮外部にいる人間から武器防具を奪う事も可能だと、ラミリスは言った。

 かなり反則級の力だが、これには限界があると、付け加え言う。

 

 例えば、相手の武具が意志を持っている場合――

 

 これはつまり、所有者の魔力で染まっている事を言い。

 この場合には、ラミリスの力は及ばないのだと。

 そう、ツキハの持つ〝妖刀時雨〟などは奪えない、こういう事である。

 

 しかし、こんなモノを持つものは少数なので、ラミリスを相手にするならば丸腰で相手にする事になるのだ。

 丸腰でラミリスが創り出したゴーレムを相手にするなど、どうなるかお察しである。

 

 そして、リムルがラミリスに質問した五つの事。 

 

 一つ目は、地下迷宮は何階層まで作成可能なのか?

 

 //これは、階層には限界はないけども、現実的には百階層までとの事。

 何故なら、百から先は、凄まじくエネルギーを消耗するらしく、無理との事だった//

 

 二つ目は、その作成には何日必要か?

 

 //一階層を作るのに一時間程度、なので、百時間あれば百層が出来ると言う//

 

 三つ目は、内部の魔物はどうなっているのか?

 

 //魔物に限らず、虫などの生物も勝手に生息しないとの事。

 シャルフューズに生息する虫なども、外部から捕獲して迷宮領地に放してある。

 特に、植物などの花粉の受粉に必要な蜂や蝶など各種が多く捕獲されて来た。

 そして、魔物と動物達も同様である。

 シャルフューズでも、牛鹿(ウジカ)羊豚(ヨウトン)鶏鴨(ケガモ)が家畜として飼育されていた。

 

 そして、以前のラミリスの迷宮に精霊が住んでいた。

 この精霊達は、ラミリスがこっそりとシャルフューズに避難させていたのだ。

 しかし、コハク達が帰還した時にバレて、ラミリスはコハクからこっぴどく説教される事になる。   

 リムルの所に移住が済んだら呼び寄せるつもりだったと、ラミリスの言い訳だった。

 

 普通ならば、階層の一つとして現世と隔離したままにして、行き来が出来るようにする事も出来るのだが、今回は完全に切り離してしまったので無理だったのだ。

 

 これを聞いたリムルは思った。

 

 魔素で満たせば、魔物は勝手に生まれて来る。

 魔素の濃度を調節すれば、魔物の強弱も予想しやすい、と。

 

 実際、シャルフューズではツキハとコハクの魔素が、結構な割合で()かれていた。

 領民の済む領域は弱めに、ルヴナン本拠地から演習地などは比較的濃い濃度の魔素が感じられた。

 そう、シャルフューズに住む人間の領民達は、地上の人間達より遥かに魔素に強い耐性があり、そこに住む魔物には心地良い魔素濃度であった。だが、魔物が生まれる程の濃度ではなかったのだ。

 

 何故なら、魔物が生まれる程の魔素濃度で満たした時に、人間の領地民達にどんな影響があるかわからなかったので、やらなかったというのが正解である。

 

 とりあえず魔物に関しては、肝心の地下迷宮を魔素で満たす方法は、リムルに心当たりがあった。

 後は、その入れ物(ダンジョン)を作るだけだと。

 生まれた魔物は、階層ごとに行き来が出来なくする事も出来るとラミリスが言ったので、それで難易度の調整が出来るだろうと考える//

 

 そして、四つ目、内部構造は任意に変更は可能なのか?

 

 //内部構造の入れ替えは、一時間程度で変更出来るとの事

 但し、一度変更したら二十四時間は変更出来ないと、ラミリスが説明した。

 

 それと、当然であるが、無から有は生み出せない。

 

 これはシャルフューズみたいに区画転移で対応できるが、これには色々と弊害も起きかねないので、乱用は禁物だなとリムルは判断した。

 

 しかし、構造そのものではなくこちらが用意した内装を入れ替えるだけなら、それ程手間はかからないと、ラミリスは言う。

 

 だがこれも、一度変更したら二十四時間必要だとの事//

 

 最後、五つ目、内部で死んだらどうなるのか?

 

 //これには流石のリムルも驚いた。

 

 何と、迷宮内ならばラミリスの意のままとの事。

 ラミリスが認識している状況下ならば、死者の蘇生も可能なのだと、ラミリスが鼻高々に言う//

 

 リムルは、魔物などの死体の扱いや、万が一に冒険者が死んでしまった時の対応を考えていたのだが、これはとんでもない朗報だった。

 

 迷宮内で生まれた魔物に関しては、今までの判例がないので判断できないとラミリスが言う。

 

 冒険者に関してはラミリスが、今まで何度か生き返らせていると言った。

 

 それで、この迷宮内蘇生の秘密とは言うと。

 

 これこそが、ラミリスが言っていた〝本人の許可〟が関係していたのだ。

 

 この許可とは、そんな大袈裟なものではなく、〝本人の入るという意志〟が大事だとラミリスは言う。

 この、入る意思確認が出来なければ迷宮には入れないのだ。

 

 そう、リムルは以前にラミリスの迷宮に入っている。

 

 イングラシア王国で教師をしていた時、受け持っていた〝召喚者〟の子供達五人と共に。

 

 リムルは、自由組合総帥ユウキ・カグラザカと知り合った際に、この子供達がいる学園の先生をやってくれないかと、いや、子供達の命を救ってくれないかと頼まれて、それを快諾してこの子供達と出会ったのだ。

 

 子供達とは――

 

 三崎剣也(ケンヤ・ミサキ)――男、十歳。

 関口良太(リョウタ・セキグチ)――男、十歳。

 ゲイル・ギブスン――男、十一歳。

 アリス・ロンド――女、九歳。

 クロエ・オベール――女、十歳。

 

 の五人である。

 

 この子供達は、各国が秘密裏に召喚した〝召喚者〟であった。

 自国の、兵器とする為に。

 

 しかし、この子供達は、〝不完全召喚者〟と呼ばれ、余命幾ばくも無い、死を待つだけの子供達だったのだ。

 

 この世界に来る時に〝異世界人〟ならば、何らかの特殊な能力を得る場合も多い。

 しかし、それが絶対という法則ではない。

 

 現に、喫茶店のマスターであった吉田氏は無能力者である。

 

 ここでリムルは、自然にこの世界に渡って来た場合と、召喚された場合の違いを今一度考えてみた。 

 

 偶発的にやって来た〝異世界人〟と違い、意図的に呼ばれる〝召喚者〟には必ず何らかのユニークスキルが獲得される。

 

 だがしかし、成功率はかなり低いと、以前リムルはヴェルドラから聞いていた。

 そう、召喚に耐えられるほどに強い〝魂〟を持つ者でなければ、召喚は失敗すると。

 

 世界を渡る際に一度肉体が滅び、反物質化する。

 つまり、肉体がこの世界に適合するように作り変えられ、その際に大量のエネルギーが取り込み、能力の獲得が行われる。

 

 なので、ここで強い意志を持っていなければ、膨大なエネルギーに飲み込まれて滅んでしまうのだ。

 

 偶発的にやって来たヒナタでさえ、驚異的な強さを得た。

 戦う力こそないけれど、教授の力も常識外の恐ろしさを持つ。

 

 そしてユウキから聞いた、召喚の儀式の実態。

 

 様々な条件を提示した完全なる召喚ならば、三十人以上の召喚術師(サモナー)が協力をし、七日も費やして儀式を行わなければならない。

 

 しかし、これだけの労力を払っても、成功率は一%未満なのである。

 そして、一度召喚儀式を行うと、同じ術者が儀式を行うまでインターバルが必要になるのだ。

 その期間は、三十三年とも六十六年とも言われている。

 

 ならばと、各国は考えた。

 条件を示さずに行えばいいのではないかと?

 

 そう、諸々の条件が簡略化され、かなり短いインターバルで同じ術者が何度でも儀式を行えるようになったのだ。

 

 ただし、召喚の成功率は低いまま。しかも、成功しても子供が呼ばれる確率が高かったのだ。

 

 それでもその方法を選択する理由とは――

 〝勇者〟を生み出す事に他ならなかった。

 

 この世界は、魔物の勢力が圧倒的であり、常に魔物の脅威に人類は晒されて来た。

 だからこそ、傭兵商会ルヴナンというものが成り立っていたのだ。

 戦争などの傭兵派遣と同様に、魔物から村や町を守る為の傭兵契約などを古くから行って来ていたのである。

 

 人類の力は微々たるもの、だから魔物に対抗できる絶対的な力〝勇者〟を求め、救いを願う。

 

 しかし、未だ成長途上の肉体に、身の丈に合わない大量の魔素(エネルギー)。やがて行き場のない魔素(エネルギー)は、その身を焼き尽くす……。

 

 これがもし、召喚成功者であれば、〝魂〝に呪いをかけられ召喚主には逆らえないようにされる。旧ファルムス王国の〝召喚者〟、ショウゴ達のように。

 

 それでも、各国は禁忌を犯し、禁断の召喚魔法を求めやまない。

 

 これを聞いた時リムルは、凄まじい嫌悪感と怒りに襲われた。

 しかしその反面、この世界の人類を心底責める事も出来なかった……。

 

 この世界の魔物の脅威は自分も知る事であり、自分も人類が恐怖する魔物なのだから。

 

 ならばと、今目の前にいる五人の命だけは救って見せる。

 そう決意したリムルであった。

 

 そして、当時の『大賢者』が導き出した答えが――

 上位精霊を宿らせて、魔素(エネルギー)の制御を行わせる、だった。

 

 リムルはすぐにトレイニーに〝精霊の棲家〟について尋ねたが、〝精霊の棲家〟に到る入り口は複数あり、自分が知るものは既に消えていると返って来たのだった。

 

 それから〝精霊の棲家〟を探す事になる。

 そして、ミョルマイルと初めて会った一件で、ミョルマイルにイングラシア王国の高級酒場に招待されて、不謹慎ながら五人の子供達を連れて来ていた。

 

 本当ならば置いていくつもりが、泣くわ喚くわの大騒ぎで、やむなく連れて来ていたのだ。

 リムルの献身的な接し方と、生来の陽気な性格が子供達の信頼を得ていたと、伺えるところでもあった。

 

 そこで帰り際に、店にいる一人の女性が子供達に掛けた言葉が――

 

『この子達に、〝精霊女王〟の加護がありますように』と、言ったのだった。

 

 リムルがそれを聞き、その女性にその〝精霊女王〟のいる場所を知っているのかと尋ねると。

 その女性は、自分の生まれた村の付近にあると教え、その村の場所もリムルに教えた。

 

 こうしてリムルと五人の子供達は、〝精霊女王〟がいる、〝精霊の棲家〟へと辿り着き、ラミリスとリムルは出会い。

 

 子供達は無事ラミリスの下で精霊を宿し、〝精霊の加護〟を受け、救われたのだった……。

 

 

(そういや、アノ時に初めて迷宮に入ったんだよな、子供達と。ほんと、ヤンチャな子供達だったわ。みんな俺に懐いてくれたんだけど、クロエとか特に、『リムル先生、だーい好き』とか言っちゃってさ、可愛いよな。せめて、後十年後に言ってくれたら、先生はもっと嬉しいぞ! なんてな。ククッ)

 

 そんな馬鹿な事を考えつつ、迷宮に付いて思い返していたら、本件からズレ始めている事に気付くリムル。

 

(あ、余計な事思い出し過ぎた。さて、戻るか)

 

 そう言いながらリムルは『思考加速』を解除する。

 体感時間、0.23秒の記憶の思い返しであった。

 

 結論的に言えば、迷宮に入った者はラミリスの支配下に置く事が可能になる。

 

 そして、迷宮内でラミリスの管理を受け入れるならば、常に状態を記録しておけるようになるのだ。

 

「ほら、基本アタシ達って悪戯(いたずら)好きじゃん? 人が驚く様を見て楽しみたいだけで、本当に死なれたら寝覚めが悪いワケ。だから、ほどほどで生かして帰すようにしてるのよ」

 

 ラミリスは胸を張って、自慢気に言った。

 

「という事は、冒険者が魔物退治に迷宮に入って死んだとしても、復活出来るって事か?」

「うん、そうだよ。迷宮の外に放り出したら、何事もなかったように生き返れるさ。でも、数が多くなると厳しいから、アタシが用意する蘇生用のアイテムを身に着けてもらう必要があるかも。シャルフューズでもそうしてるしね」

「え? あそこの領民達全部か?」

「そうよ。アソコの運営はツキハとコハクだけど、管理はアタシだからね」

「あ、そうだ。メンテナンスとか言ってたよな。具体的にどうするんだ?」

「ああ、アレ? 簡単よ、(かなめ)になる巨木の補修点検と、魔素(エネルギー)の補充よ。あの入り口は、ちょっと特殊なのよさ。コハクの術式も重ねて付与してるワケだから」

「そんな事出来るのか?」

「アタシの権限を脅かさないのと、アタシの許可があればね、出来るよ」

「ふーん。それを詳しく――」

「ダメ! 流石に、コハクに怒られるのは勘弁して欲しいワケ。アレの考案者はコハクだから」

「そうか。わかった」

 

 シャルフューズの入り口の仕組みに付いて尋ねるも、ラミリスに直接コハクに聞いてと言われ、あっさり引き下がるリムル。

 

「まあ、それはさておいて。素晴らしい! 素晴らしいよ、ラミリス君!」

「ホント、本当にそう思うワケ? やっぱ、アタシって、凄いヤツ?」

「うむ。これで我々の野望は、達成されたも同然だぞ。あの、隠し迷宮領地シャルフューズも凄い!」

「だから、あたしが言ったじゃん。ちっこいけど、凄いよ、と」

「せやねぇ。ラミリスは、迷宮創造にかけては右に出る者がいませんどすものな」

「やっぱり? そうよね、アタシもそうじゃないかと思っていたのよ!」

 

 リムルとラミリス、それにツキハとコハクの四人は見詰め合い、頷き合った。

 

「宜しく頼むぞ、ラミリス!」

「ええ、任せておいて頂戴。大船に乗った気でいたらいいよ!」

「泥船じゃなければいいけどね。ククッ」

「ツキハ、アンタねえ――ッ! 四十八の必殺技をお見舞いするわよ!」

「ほんま、しょうもないアホ二人やな」

「コハク、アンタにもお見舞いするわよ!」

「やってみなはれ。あんさん、()巻きにして、魔獣の口ん中へ放り込むでぇ」

「ほんと飽きずによくやるな、三人とも」

「「「あ゛!」」」

「あ、はい。何でもないです」

 

 褒めて落とすの、ツキハとコハク。

 それに乗せられるラミリス。

 

 それを見て呟くリムルに、もの凄い形相で凄むラミリスにツキハとコハク。

 

 暫くはギャアギャアと騒ぐ三人の声が、辺りに響くのであった。 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 ※134話終わりに〝教授〟のスペックを追記したので、こちらにももう一回書いておきます。 

 

 

 

リュウコ・アヤセ(綾瀬 流子)

 

 

 

※ユニークスキルを獲得しているが、戦闘能力はない。 

 

 魔法は知識として習得してるので一応使えるが、戦闘センスが皆無なので主に研究の時にしか使わない。

 

 基本、身の危険が迫りヤバイ時は逃げの一手である。

 この、逃げに徹した時は、ツキハやコハクが捜すのも苦労するくらいなので、ある意味、逃げの天才かも知れない。

 

 

 

身長・スリーサイズ:159.2・B80/W59/H79.5 

 

 

種族:人間

 

 

加護:悪戯(いたずら)猫の守り

 

 

称号:教授

 

 

魔法:元素魔法 精霊魔法

 

技術:天牙影千流・隠形術

 

 

エクストラスキル:魔力感知 思念伝達 思考加速 多重結界 量子演算 時空間操作 解析鑑定 空間転移 

 

ユニークスキル:教導者(オシエミチビクモノ)

 

 講義(自身が知る知識を、他者に完全に理解させることができ、それが一人でも百人でも効果は変わらない)

 

 自己学習(他者から教えられた技術や書物などを、一度でも読み聞きすれば、完璧に理解できる)

 

 瞬間記憶(一瞬で見たものを記憶でき、1度見ただけで細かい形状や文字、色や配置を理解する事ができる)

 

 

 

耐性: 物理攻撃無効 状態異常無効 精神攻撃無効 自然影響無効 聖魔攻撃耐性 痛覚無効 耐熱耐冷耐性

 

 

 





 この作品を読んで頂きありがとうございます!

 次回の更新もよろしくお願いします!


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