忍びが転生したら〝異世界珍道中〟になった件   作:にゃんころ缶

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 お待たせしました。138話です

 ツキハ

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 コハク

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 傭兵商会ルヴナン・真の紋章


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 ※〝打刀〟
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138話 迷宮の守護者ヴェルドラ

 

 

 リムルは工業地区からルヴナン支店へと移動して、地下迷宮(ダンジョン)に設置する宝箱に入れる品々を、ツキハの工房に置いて自宅へと戻る。

 

 戻りながら地下迷宮(ダンジョン)の有用性を考えるも、完成した後でゆっくり考えればいいなと、結論付ける。

 

 だがしかし、早急に片付けないといけない案件があった。

 

 この地下迷宮(ダンジョン)計画に不可欠な人物――

 それは、ヴェルドラであった。

 

 ヴェルドラは、離れにある小屋で寛いでいた。

 ここは、()(さび)を極めた、リムルお気に入りの茶室のような一軒家である。

 

 その茶室の主であるかのように馴染んでいるヴェルドラであった。

 で、当然のようにツキハが入り浸っていたのだ。

 

 先ほどリムルが、『思念伝達』でツキハの工房に地下迷宮(ダンジョン)で使う武具を置いていいか? と尋ねたら、『いいよ~』と返って来て、即『思念伝達』を切ったツキハだったのだが……。 

 

 茶室で二人して、ツキハが持参したポテチを食べながら漫画を読んでいた。

 そして、ツーンとスパイスの香りが漂って来て、リムルはスンスンと鼻を鳴らし匂いを嗅いでみる。

 

(あ、やっぱりいたか。それに、あの大きな葉の包みは、カレーパンを貰ったなヴェルドラのヤツ。アレ、多分次からねだってくるぞ。まあ、いいけど……アレはツキハが喜んで持って来るだろう。しかしあれだ、カレーパンのレシピと権利を、先にコハクが主張してきたからなぁ。抜け目がないというか、ホントに、クククッ)

 

 予想通りにいたツキハと、思い切りツキハにカレーパンを貢がれてるヴェルドラ。

 

(こっちに気付いているハズなのに、一心不乱に漫画を読みなさっている二人。うぬー)

 

 とりあえずリムルは、ヴェルドラに用件を切り出す。

 

「おい、ヴェルドラ。ちょっと頼みがあるんだけど、いいか?」

「む? 何だ、我は忙しいのだが?」

「ヴェルドラ、漫画読んでるだけじゃん」

「黙るのだ、ツキハよ」

「あい」

 

(うん。ツキハのツッコミ通り、漫画読んでるだけだよね。ってか、どう見ても暇してるだろ? 二人とも)

 

「そうか……残念だ。せっかく面白い話だったんだけど……。忙しいのなら仕方ない、か。せっかくお前が妖気(オーラ)をって――忙しいんだったな。スマン、邪魔して」

 

 リムルはそう言って立ち去るフリをする。

 

 チラリと寝転がって漫画を見るツキハを見てみると、猫耳だけがリムルの方に向いていた。

 

(よし。ツキハは俺の意図を知っているから、察したな)

 

「おっと、待つが良い。我も忙しいのだが、貴様の頼みなら仕方ない。話を聞こうではないか! と、その前に。また、我を言いくるめようなどと、思ってはないだろうな?」 

「うん、それはない」

「よかろう!」

 

(釣れたか。チョロイな、チョロゴンさんと、言いたいが――ツキハが暇さえあればヴェルドラと一緒にいるから、何かこういう時に変な知恵を働かせるようになったよな、ヴェルドラのヤツ。ツキハさん、あまり変な事を教えないで頂きたい。ってか、貴女、漫画読むフリして笑ってるよな?)

 

 漫画を見ながらクスクス笑うツキハは置いといて、リムルはヴェルドラに頼みごとの続きを、勿体ぶりつつ、思わせ混じりに話していく。

 

「実はな、お前の為の棲家(すみか)というか、さ……」

 

 ツキハの猫耳がピクピクと動き、尻尾がピンと真上に立つ。

 

「な、何だとっ!? 我の住処(すみか)というのは本当か!?」

 

 思い切り喰い付き、読んでいる漫画から目を離すヴェルドラ。

 

 漫画本で顔を隠し、ニヤリとするツキハ。

 

「そう、君の為に、ね。でも、忙しいんだろう?――」

「待て待て、そう慌てるでない。我とお前の仲ではないか。なあ、ツキハもそう思うであろう?」

「うん、友達は大事」

「うむうむ。リムルよ、お前の頼みならば優先するのは当然というものだぞ。クアーーハッハッハ!」

 

(これで良し。聞く態勢になったから、もう話しても大丈夫だろう。ヴェルドラって基本、人の話を聞かないからな。でも、ツキハとかコハクの言う事は、結構聞くんだよなぁ。あれかね、付き合いの長さってヤツか? まあ、五千年もヴェルドラと一緒に遊んでいれば、その辺りはわかって来るもんなのかねぇ? 良いにしろ悪いにしろ、二人の及ぼす影響は大きいかも知れない、な……)

 

 ヴェルドラが、魔国連邦(テンペスト)に住み続ける限り、いずれ、他者とのコミュニケーションが必要になる状況が来るかも知れないとリムルは思う。

 

 だから、ヴェルドラが他の者達とのコミュニケーションを覚えてくれれば、恐れられるだけではなく、もっと別の形で畏怖(いふ)される存在になるのではないか、と考えるリムル。

 

 ヴェルドラとの出会い、そして番外魔王二人との出会い。

 この事が、自分と、魔国連邦(テンペスト)の未来に何をもたらすのか?

 

 そんな事を思いながらリムルは話を続けていく。

 

「そうか、やっぱ持つべきものは友達だよな」 

「うむうむ。何でも頼るが良いぞ、リムル!」

「実はさ、ラミリスがこの街に引っ越しをしてきてね。それで闘技場の地下にアイツの迷宮を創る事になったんだ――」

「ふむ。それは先程ツキハから聞いたぞ。我も、ツキハとコハクの領地が迷宮にあると教えてもらったのだ。ツキハは今まで黙っていてゴメンと謝っていたが、我はそんな事くらい気にはせぬぞ、ツキハ」

「ほんと、ゴメンねヴェルドラ」

 

 いつの間にか胡坐(あぐら)座りしているヴェルドラの横に、女の子座りでチョコンと寄り添うツキハ。

 

(あぁ、多分あれだ。竜の姿のまま迷宮領地に遊びに来られては、間違いなく大混乱になるだろうからな、主に領地民が……)

 

 ツキハとコハクが今まで黙っていた訳を、察するリムルなのだった。

 

「でもな、リムル。アヤツの力は大体はわかったが、そんなに凄いのか?」

「うん。ツキハ達の所と違って、階層も増やせるんだよ。でさ――」

 

 リムルはヴェルドラに、ラミリスが引っ越して来た事を、もう一度話していった。

 

「それで、階層が増えた事を利用して、色々な仕掛けを地下迷宮(ダンジョン)に用意しようとおもっているのさ」

「ふーむ。あのちびっ子(ラミリス)も思ったより凄いではないか」

「だから、凄いんだよと言ったじゃん。ちゃんと聞いてた、ヴェルドラ?」

「ん? ふむ、そうだったな。クワーハハハハッ」

 

 ツキハがヴェルドラの顔を覗き込むように言い、それを誤魔化すかのように笑うヴェルドラであった。

 

(フフッ。何だかんだ言って、仲が良いよなこの二人。ツキハが一方的にあたしが〝ヴェルドラの彼女だ〟宣言してるけども、それを迷惑とは思っていないヴェルドラ。うーむ……。世界最強である〝竜種〟。この〝竜種〟に、恋愛感情など芽生える事などあるのだろうか……?)

 

 笑いながら言い合うツキハとヴェルドラを見てリムルは、ふとそんな疑問を頭の中に浮かべる。

 この細やかなる疑問も、後の大戦で〝ある者〟と相対した時に、リムルは知る事となる……。

 

 とりあえず、そんな疑問もサラッと置き去りにして、リムルは地下迷宮(ダンジョン)計画の全容に付いて語り聞かせていく。

 

「なあヴェルドラ。ただの地下迷宮(ダンジョン)じゃつまらないだろう? だからさ、この国の名物となるような凄いものにしたいと思っているんだよ。今日、ラミリスとツキハに相談したばかりなんだけども、今もラミリスが頑張って階層を増やしてくれているんだ」

「ほほう。それでリムルよ、我への頼みとどう繋がるのだ?」

「実はな、その地下迷宮(ダンジョン)を統べる王が要ると思うのだよ、ヴェルドラ君」

「――何、王、だと?」

「そう、王だ。地下迷宮(ダンジョン)の管理は俺やラミリスが行う。そしてその地下百層には、ラミリスの本邸とも言うべき精霊迷宮への扉がある訳だ。となると、その門の守護者が、いや――最強の守護者が必要だと、そうは思わないかねヴェルドラ君?」

「うむ。思うとも! なるほど、流石はリムルだ。それを我に任せたいと、そういう事だな?」

「その通りだよ、ヴェルドラ」

 

 リムルの思惑通りに乗ってきたヴェルドラ。

 

 そこでリムルは、更にヴェルドラの役目の利点を上げていく。

 

「でだ。お前さ、妖気(オーラ)を解放したがっていただろ? おまけに、そろそろ限界だとか言ってたよな?」

「なにっ!? まさか……」

「そう! 何と迷宮内では、妖気(オーラ)を抑えなくてもいいんだヴェルドラ君。本来の竜の姿になっても問題ないんだよ」

「お、おお……!!」

「ふにゃっ!?」

 

 ここでツキハが何故か喰い付いてきた。

 ヴェルドラが竜の姿に戻れる、そう、ツキハは竜の姿のヴェルドラが大好きなのだ。

 

 リムルは、間髪入れずに説明を続ける。

 

「想像してみろ。迷宮奥深くで待ち受ける、神々しいまでに格好いいドラゴン――」

「それは我の事だな?」

「ヴェルドラ~。是非やるのよぉ~」

「おお、ツキハも我の本当の姿が好きであったな。という事はだぞ、我も遠慮せずやって来た者共に『クアハハハハ、よくぞ来た! 歓迎するぞ、ムシケラ共!』とか言って、格好を付けても良いのだな?」

 

 リムルの言葉を途中で遮ったヴェルドラは、ツキハと二人でノリノリで言い出した。

 妖気(オーラ)を解放出来ると聞いて、興奮気味のヴェルドラである。

 

(フフフ。完全に乗る気になったな) 

 

 そう思いつつリムルは、地下迷宮(ダンジョン)の仕掛けに付いて説明する。

 

地下迷宮(ダンジョン)に、ユニットを配置して、冒険者を迎撃したりするんだ。アレだ、お前がやりたがっていたゲーム――それを現実で再現しようって話なのさ。どうだ、めっちゃ面白そうだろ?」

 

 リムルは地下迷宮(ダンジョン)を、リアルシミュレーションにする予定なのだ。

 

 ユニット――つまり魔物である。

 これを配置して冒険者を撃退させ、宝箱を守る階層ボスモンスターも配置したい。

 

 地下迷宮(ダンジョン)内はヴェルドラの魔素で満たされ、地下百階に近づく程に魔素濃度も高まっていく。

 

 上層部の魔素は薄くなるので、下位の魔物しか発生しない。

 だがしかし、下層部に行けば行くほど、上位魔物が徘徊するハズだと、リムルは考えていた。

 

 封印状態のヴェルドラから漏れ出た魔素でさえ、A⁻ランク嵐蛇(テンペストサーペント)を筆頭とする強力な魔物達を生み出したほどなのだから。 

 

 今のヴェルドラならば、どれほどの魔物を生み出すか想像も出来ないと、言ったところである。

 

 とにかく、重要なのはヴェルドラの妖気(オーラ)を解放させる事であったのだ。

 

 そろそろヴェルドラに妖気(オーラ)解放を我慢させるのも限界だと、リムルは考えていた。

 

 放っておくと、どこか人目のつかない所で勝手にスッキリしてしまいそうで、目が離せなかったのだ。

 

 事実ツキハも、いつまでもヴェルドラの本当の姿が見れずジレてしまい。西の果てのどこかで戦争やってる所に乱入して、ドカンする? と、ヴェルドラに提案して、二人で行こうとしたところを、慌ててコハクとリムルが止めたのは記憶に新しいところ。

 

 それに、間違ってこの周辺で暴発して解き放たれてしまうと、リムルや幹部達、番外魔王の眷属達はともかく、一般人は生き残れない。

 

 魔素が濃いと、Bランク未満の者は簡単に死んでしまうのだ。

 ヴェルドラの自尊心と、ツキハの自重心に期待するのは危険なので、ラミリスの迷宮は渡りに船といったところであろう。

 

 それで、ラミリスの迷宮なのだ。

 何しろ、迷宮内部は隔離された空間である。

 

 シャルフューズで確かめた事なので、魔素が漏れ出る心配はない。

 

 だからこそ、迷宮は都合が良かったのだ。

 

 リムルの真の目的。

 

 それは――高濃度の魔素溜まりを用いて魔物を発生させる事であった。

 

 これが、今回の計画の肝だったのだ。

 

(フッフッフッ。ヴェルドラの妖気(オーラ)を解放させつつ、それを有効利用する。これぞ、一石二鳥。いや、三鳥かも。俺の部屋で半ニート化したヴェルドラに仕事を与えられ、迷宮内部にて魔物を生み出す魔素発生機関としての役割も担わせられるのだから。まあ、迷宮の王(ラスボス)としての出番はないと思うけど……)

 

 しかし、そんなリムルの思惑に反して、ヴェルドラが思わぬ事を言ってきた。

 

「我が最終ボスであり、王か。フハハハッ。良い、良いぞリムル。ならば、地下迷宮(ダンジョン)ならばこそ、置かねばならぬものがもう一つ、あるだろう?」

 

 何やら自信あり気にニヤリと言うヴェルドラ。

 

「それは何だ?」

「裏ボス、または隠しボスだ」

「ほう。それは表の王を倒すと、よくある、〝騙して悪いが〟と言う、アレか?」

「うむ。我を倒すなど有り得ぬのだがな。しかし、仮にだ、そんな者が現れて我を倒しても、もう一人隠れた王がいたのだ! とか、面白くなりそうではないか?」

「ふむ……」

 

(うーん。これってアレだな。ファンタジー物の漫画から仕入れた知識だな。ほんと二人して、格闘ものから、こういった系を読み漁っているからなぁ。あ、そうだ、最近はSFものもよく読んでいたよな。そうだな……それもありだな)

 

 ヴェルドラが言った案をリムルは、それも良いかもなと、受け入れる事にしたのだった。

 

「でさ、その隠しボスは誰にするんだ?」

「ん? 決まっておる、ツキハだ」

「ほほう。それも面白いかもな」

「え? あたし?」

「そうだ。嫌か、ツキハ?」

 

 いきなり隠しボスの役をふられたツキハは、キョトンとした顔で言葉を返して来た。

 

「別にいいけども。一つ、聞いてもいいかなリムル」

「いいぞ、何だ?」

「もしもだよ。あたしの大好きで大事なヴェルドラを、倒した者がいたら――」

「いたら?」

「あたしさ、ソイツを全力で殺しに行くけど、いいの?」

「ふあっ!? まあ、地下迷宮(ダンジョン)では死なないから、ありっちゃありなんだけど……」

 

 スーッとツキハの表情から感情が抜けて瞳が縦長に細くなり、忍びの者の顔を覗かせていく。

 

 一瞬にして茶室の雰囲気が、張り詰めたように鋭敏な空気で満たされていった。

 

 それを見たリムルの背筋にゾワリとしたものが走り、ごくりと唾を呑み込む。

 

(うあぁ……。いつもは、ポヤポヤした顏でめんどくさそうに話すツキハさんなのに、ヴェルドラの事となると、これだよ。そう言えばコハクが言ってたっけ、戦いになると豹変すると。うむー、元戦国時代の忍び、ツキハさん。恐るべし……)

 

 これはどうしたものか? と、思うリムルであったが、ヴェルドラだけはそんなツキハの頭をポンポンと軽く叩き、笑い飛ばす。

 

「クワーハッハッハッハ。相変わらず戦いの事となると、どんな相手でも手を抜かぬなお前は。それでこそツキハだ。我とお前で地下迷宮(ダンジョン)百層をまで辿り着いた者を、盛大に出迎えてやろうではないか!」

 

 ヴェルドラの言葉を聞いたツキハの表情が、一瞬にしてホヤッと崩れる。

 

「うん、やろう。ヴェルドラ! アンタとあたしで、百層に辿り着いた者をぶっ倒そう! ウハッ、ウハハハ、ウワッハハハ――ッ!」

「我が表の王、お前が裏の王。この二大王を倒せるものなど、誰一人おらぬぞ! クックックッ、フハハハハ、ウワッハッハッハ――ッ!」

 

 二人してバンバンと背中を叩き合い、声を上げて笑う。

 

(そうだな、ツキハの事はヴェルドラに任せてみるか)

 

「良し、表の王はヴェルドラ、裏の王はツキハ。頼むぞ二人とも」

 

 リムルが立ち上がり、そう言うと――

 ヴェルドラとツキハも漫画を懐に入れて立ち上がり、リムルが差し出した手にヴェルドラも自分の手を重ね、ツキハもヴェルドラの手に自分の手を重ね、三人共にニカッと笑みを浮かべる。

 

「任せよ、リムル。地下迷宮(ダンジョン)の試練を乗り越え、我の前に立つ冒険者達。そんな強者(つわもの)共を、我が蹴散らす訳だ。すまぬな、ツキハの出番はないぞ?」

「別にいいよ~。ヴェルドラを倒せるヤツなんかいないしね」

「そして当然、我を見た冒険者達は逃げようとする。だが、それを許す我ではない。そうよな、その時のセリフは『フハハハハハ、我からは逃げられぬ。知らなかったのか? 〝暴風竜〟からは逃げられない――』とかどうだ? 漫画にあっ、じゃなく。一度言ってみたいと思っておったのだ。ようやく念願のセリフを、口に出来る訳か。楽しみだ、実に楽しみだぞ!」

「だねだね。で、仮にヴェルドラが倒されたら、いや、そんな事は絶対ないんだけどね。でもでも、あたしも言うセリフがあるんだ。『騙して悪いが、もう一人王がいたのだ。裏の王こと、ヴェルドラの嫁が相手になってあげるわよ!』とね。これ、一度いいから言ってみたかったんだよねぇ。ヴェルドラの嫁! ウフッ」

「ツキハよ」

「なに?」

「お前はツキハであって、嫁? ではないぞ? 嫁って漫画のアレなのか?」

「これはね、役割、役割なんだよぉ。気にすんなぁ~、ヴェルドラ」

「お、ん? そうか、そういうモノなのか? しかしあれだ、ツガイとは――」

「違う! 同じようなものだけど、違う。だから、気にしないでいいの。わかった?」

「うむ、わかったぞ。そういうモノなのだな。ウワッハハハハ」

 

 ヴェルドラが勝手な妄想を垂れ流し始め、ツキハも便乗して妄想を垂れ流す。

 途中ヴェルドラが、嫁? 何だそれ? みたいな反応してツキハに返すも、ツキハが役割だとゴリ押しで誤魔化し、ヴェルドラを納得させてしまう。

 

(大丈夫か、コイツら?) 

 

 そんな一抹の不安を抱えるも、リムルは――

 

(まあ、良いだろうさ。そもそも、普通に考えて百層にまで辿り着くヤツなんているのか? それに、あの二人を倒せる冒険者なんているハズもないしな。少し不安が残るが……。うん、計画の為だ、ここは割り切ろう)

 

 こうしてリムルは、難なくヴェルドラの協力を取り付けたのであった。

 

 迷宮最下層ボスの役割も決まり、後は地下迷宮(ダンジョン)の完成を待つばかり。

 

 

 リムルがこの世界に転生して来て三年余り。 

 

 アーリウス(十二月)の月も、あと半月足らずで終わりを迎えようとしていた。

 

 

 魔国連邦(テンペスト)に落ちた夜のとばりの中、夜空に舞い散る雪が色をつけていく。

 

 

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 転スラには明確な月単位の表現が無かったので、古代ローマのヌマ歴を参考にラテン語を模した造語の月を作りました。

 

 度々この造語を使う事になるかもなので、ここに表記しておきます。

 

 

1月マルティース

 

2月アプリス

 

3月マーウス

 

4月ユーニース

 

5月クィンティ

 

6月セクティス

 

7月セプテン

 

8月オクトー

 

9月ウェンベル

 

10月デンベル

 

11月ヤーヌリウス

 

12月アーリウス

 

 

 

 





 この作品を読んで頂きありがとうございます!

 次回の更新もよろしくお願いします!


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