忍びが転生したら〝異世界珍道中〟になった件   作:にゃんころ缶

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 お待たせしました。十四話です







14話 惨劇の凶奏曲

 

 

 ミュウランの広域魔法妨害領域が完成する、少し前。

 

 

 テンペストの街へ侵入した、商人偽装一行。

 

 賑わいを見せる街並みに、ショウゴ達は驚愕の声を上げる。

 

「おいおい、なんだこれは!? 何で魔物達が俺達よりいい暮らしをしてるんだよ!」

「ホント、マジおかしくね? 何でウチらより、ここヤツらの方が贅沢をしてるワケ? ちょームカつくんですけど?」

「まあまあ。ショウゴもキララさんも、そんなに怒らないで(しかし……なんだ、ここは……)」

 

 キョウヤは二人を宥めながらも、この町の発展が理不尽なものに映り、その目は暗く不穏な闇を放ち始めていた。

 

「ここってさ、スライムの魔物が親玉なんしょっ? ソイツぶっ殺せば、ウチらがここの主になれるっしょ?」

「いいなキララ。俺は、その案に賛成だぜ!」

「僕も賛成だけど、いいのかな勝手な行動を取っても?」

「問題無いって。騎士のオッサン達が乗り込む前に、俺達でひと騒動起こせって、話しだっただろ?」

「そうそう、ウチら善良な市民を、魔物が襲ったって事実が欲しいんじゃん? ウチが『狂言師』で、言い訳すれば、魔物以外はいいなりっしょ」

「う-ん……そうだね。ラーゼン様にそう命令されてるから、いいか」

「チッ、あのジジイに様なんて、つけんなよ!」

「ホント、マジあのクソジジイ、早く死んで欲しいワケ」

「アハッ 癖になっててね。つい本人の前で言ったら、マズいだろ?」

 

 苦笑い気味に言い訳をし、キョウヤは大人しい自分を演じつつ、本性を隠そうとする。

 内から沸き上がる、どす黒い感情を押さえつつ。

 

「じゃあ、とっとと始めようか!」

 

 ショウゴはそう二人に声を掛け、人と通りの多い街の中心地に足を進める。

 

 それをじっと観察する、ツキハとコハク。

 

「ねえ、あの小娘。精神系のユニークスキルを、持ってるみたいだねぇ」

「ですなぁ。『狂言師』とか、()うてましたなぁ。それに、あのショウゴと言う男は、サンコが身体能力強化系と()うてましたし。で、あのキョウヤと言う男は、切断系のユニークスキルや、()うてましたな」

「ふーん。そこそこには使えると、言った所か。あと、外でコソコソしている、神殿騎士団ども。あれが、そうなら(・ ・ ・ ・)――ここの、魔物は皆殺しに合うかもね」

「そうどすな。魔物は人間より劣る存在で、危険な生き物と言う考え……ほんま、いつの時代も人は度し難いおすな。まあ、人より強靭で力も強いからこそ、恐れるんでしょうけども。ほんま……人は、なんぎやで」

「あたしらが〝異形の(やから)〟と言われてた頃と、そんなに大差ないよ。その〝異形の(やから)〟が、こっちでの魔物だもの。あ? ほら 始まるよ」

 

 ツキハが始まるよとコハクに言うと、キララが手近な魔物を見つけ仕掛けていく。

 

 ターゲットにされた魔物は、ゴブゾウであった。

 

「キャアアアアアーー! あんた、今ウチの胸触ったっしょ? なに? 魔物のくせに、エロい事でも考えたワケ? ねえ、誰か! 警備兵を呼んでよぉーーーー! 誰かああああーーーー! 助けてよぉーーーー!」

「いや、違うダス! オラは何も、何もしてないダスよ!! オラは……オラも、衛兵なんダスよ……」

 

 キララは更にゴブゾウに近付き、ワザとぶつかり後ろに大袈裟に吹き飛んだ。

 

「痛あぁーーーーい! お尻触るだけじゃなくて、暴力も振るうワケーーーー!」

「やってないダス……違う……ダス……」

 

 涙目で慌てふためき周りを見るも、ゴブゾウを見る周囲の目は、何故か厳しかった。

 

 『狂言師(マドワスモノ)』。

 

 ゴブゾウにワザと当たりながら、さり気無くユニークスキル『狂言師』を使い、周囲にいる人間達の意識に働き掛けていたのだ。

 

「おー。あのユニークスキルおもしろいな。そうだ――ちょっと魂喰って、あのスキルもらおうかな――くぇっ!」

 

 ツキハが魂を喰おうかなと言った瞬間、コハクが思い切りツキハの後ろ襟首を掴み引っ張り、言い放つ。

 

「――なに、()うてますのん。あんな、おぼこい小娘の魂を喰わはるやなんて、悪食はやめておきなはれ!」

「え? えぇー。何であんたが、怒るのよ? それに、悪食って……魂に悪食もくそも、無いよね?」

「黙りおす! うちの目が金色の内は、何人(なんびと)であろうとおなご(女の子)の魂は、喰わさへんで!」

「あーはいはい。こんな時に、変態全開はやめてよね。まったく、あんたときたら……」

 

 馬鹿なやり取りをしてる間に、下ではゴブタが駆け付け事を納めようとするが、徐々に本性を表すショウゴ達は、悪意と言う名の牙を剥き出しにする。

 

「どうもスンマセン。よく教育しておくっすよ」

「あ゛あ!? この街じゃ客人に暴行働いても、スンマセンの一言で終わらせるのかよ!」

 

 ショウゴがゴブタの前に立ち、見下ろすように吐き捨てる。

 

「ご、ゴブタさん……オラ……」

「何も、やってないんすよね? でも、ゴブゾウ、疑われた時点で負けなんす。リムル様も『痴漢冤罪は』恐ろしいって言ってたっすよ。だから、今は負けなんす」

「オラを、信じてくれるダスか?」

「そんなの、聞かれるまでもないっすよ。お前に、そんな根性はないっす」

 

 そう言い切ったゴブタに、ゴブゾウは抱き付き号泣する

 

 それを見ていたキララが、声を上げる。

 

「え? ちょっとなんなワケ? ウチが嘘吐いてるとでも、言いたいワケ!?」

「そう、聞こえなかったすか?」

 

 ゴブタの問い返しにキララの怒りが頂点に達し、爆発した。

 

「はあぁっ!? ふざけんじゃねえーぞ! この魔物風情が!! 舐めんじゃねーぞ! 〝お前ら、みんな死んじまえ〟」

 

 キララの絶叫が周囲に響き渡る。

 

「ほぉ。声を波長に変化して……脳に……」

 

 そのユニークスキルの発動を見たコハクが、目を鋭利に細め言葉を吐く。 

 

 血と死が辺りに満ち溢れるはず、だった。

 

「なんで?……」

 

 しかし、キララはいつまで経っても誰も死なない現状に驚き、周りを見渡していると。

 

「ん?……誰や。今、この波長に干渉したんは?」

 

 コハクの眼下に、いつの間にか音も無く、キララ達に近付いてきた鬼人の娘がいた。

 同じく、一人のスラリとした背の高い鬼人の女性を伴って。

 

「なるほど、これは……。声を波長に変換して、脳波に干渉する能力(スキル)なのですね。とても恐ろしい能力(スキル)なので、我が国での使用は禁止させて頂きます」

 

 優しく言うも、はっきりとした拒絶の言葉。

 

 シュナであった。

 そして、側に伴っているのはシオンである。

 

 ゴブタの部下が会議室に飛び込んできて、状況を伝えた時。

 シュナは嫌な予感に襲われシオンを護衛に伴い、この場に来たのであった。

 

 『解析者(サトルモノ)』。

 

 ユニークスキル『解析者』によって、キララの能力(スキル)を完全に解析したシュナは。

 妖気を操り、波長に変換し同調させて『狂言師』の効果を無効化したのだ。

 

「嘘……なんで……」

 

 能力(スキル)を完全に無効化され、キララはその場に力なくペタンと座り込む。

 

 その様をツキハが呆れたように、言葉を吐き捨てる。

 

「アホか? あの小僧ども。仲間の能力(スキル)が封じられたなら――すぐさま一人が護衛の鬼人を相手に、もう一人があの鬼人の娘を始末だろ! それから再度、あの小娘に能力(スキル)を使わせる、だろうが。はあー、やっぱ〝召喚者〟と言っても。(いくさ)も知らない、ガキかぁ。状況判断が、遅すぎるわね。はあっ」

 

 ツキハは頭の中で鬼人二人を斬る様を描きながら、軽い溜息を付く。

 

 忍びの頃、こう言う似たような場面がよくあった。

 咄嗟の判断。

 今、一番生かしていては危険な者。

 その判断を誤れば、自分達が死ぬ。

 危険な者を嗅ぎ分ける嗅覚、ツキハは特にこれに優れた忍びであり、戦場(いくさば)に置いて幾度となくこれで窮地を脱して来た。

 

 それは魔物になっても健在であり、その嗅覚は――

 シュナがあの場にて、一番危険な魔物だと判断していた。

 

「やっぱりあんさんも、あの巫女装束の鬼人が一番厄介だと判断したんどすな。あの鬼人の娘、このまま進化したら末恐ろしい魔物になるで。ほんまに、スライムの魔物リムルは、只のスライムやあらへんな」

 

 コハクもツキハの言葉に頷きながら、冷ややかに言葉を並べていく。

 

 

「申し訳ありません。貴方達はこの国に、相応しくはないようです。お引き取りください」 

 

 優しく微笑みながら告げるシュナだが、その瞳は冷たかった。

 キララに殺意があったことは完全に見抜いており、ショウゴ、キョウヤ達にも悪意が満ちているのは見抜いていたシュナ。

 

「へえ、そうかい! そっちがそう言う態度なら、こっちも本気で相手してやらあ!」

 

 シュナを舐める様に見、この鬼人をどういたぶり料理しようかと、下卑た視線を向ける。

 

「下種め! 下卑た考えが、顔に出ているぞ? 大人しくこの国を去るなら、生かそう。だが、従わないと言うならば、命は無い物と思え!」

 

 シオンがシュナの前に立ち、怒りを目に称え一歩前に出る。

 

 それを見たキョウヤは。

 

「ふーん。こうなったら、僕も好きにさせてもらおうかな。実は、まだこの力を、実戦で試した事無かったんだよ」

 

 ニヤリと歪んだ笑みで剣を抜き、シュナとゴブタの前に立つ。

 

「これは、ヤバいっすね。ゴブゾウ、お前はシュナ様をお守りするっすよ!」

「わ、わかったダス!」

 

 ゴブタは右逆手で小刀を抜き、それを眼前に構え、キョウヤと対峙する。

 

 そこへ。

 

「どれ、ゴブタよ。お前では、あの者の相手はちと荷が重かろう。ワシが手を貸そう」

「え!? し、師匠!?」

 

 完全な〝隠形法〟でゴブタの後ろから現れたハクロウ。

 後ろ手に組んだ両手には、仕込み杖が握られていた。

 

「へえー、ジイサン。あんたとなら、楽しめそうだね」

 

 現れたハクロウに、嬉しそうな嗤いを浮かべ剣をハクロウに向ける。

 

 

 その時!

 

 それを合図とするかのように、ミュウランの大魔法が完成した。

 更にそれに重ね合わせる様に、ある秘術が発動、する。

 

 〝四方印封魔結界(プリズンフィールド)〟。

 

 〝聖浄化結界(ホーリーフィールド)〟と同じ原理の、対魔物用結界。

 結界内の魔素を浄化、能力(スキル)使用を封印し、A級魔物ですら弱体化させる結界。

 

 その劣化版であり、熟練度の低い神殿騎士団員でも、複数で協力すれば発動できるようにしたものである。

 

 それでも、魔国内の魔物を弱体化させるには充分な結界だった。

 

 結界内の魔素が薄くなり、苦悶の表情を浮かべ地面に伏す魔物達。

 

 魔国に大混乱が巻き起こる。

 

 慌てふためき逃げまどう商人達や、弱体化し碌に動けない魔物達を助けようとする、冒険者達。

 

 そこへ、ショウゴ達と一緒に来てた騎士団の集団約百名が、街へ雪崩れ込んでくる。

 

「我が国の民が魔物により、被害を受けたと報告が来た! 敬虔なる神の御子なる、我が国民を守る為。西方聖教会の名の元に、武力をも持って救援に当たるものとする!!」

 

 馬に乗った騎士団の先頭にいる、隊長と思わしき者が声高らかに剣を頭上に掲げ、宣言する。

 

 その第一刀が、子を庇うホブゴブリンの親子を斬り捨てた。

 

 それを皮切りに、血の惨劇がテンペストを襲う。

 

 逃げ惑う魔物の悲鳴、上がる血飛沫(ちしぶき)

 

 惨劇の凶奏曲が――

 

 奏でられていく。

 

 

「救援と称した、虐殺か。茶番にもならないね。しょせん魔物と人の共存なんて、夢物語でしかないよ。弱いものが殺され、強いものがそこに君臨する……それだけだよ。どうでる? テンペストの魔物達」

「どうでるも、なにも。その魔物を束ねる盟主が、絶賛ヒナタと戦闘中どすからなぁ。!?――」

 

 繰り広げられる惨劇を見ながら、ツキハとコハクは淡々と言葉を重ねて言ってるとそこへ。

 イチオから『念話』が入る。

 

『ツキハ様、コハク様。スライムの魔物リムルがヒナタを欺き、逃げ果せました』

『『!?』』

『欺くって、どうやったんだ?』

『詳細はわかりませんが……恐らく、凄まじく高度な『分身体』ではないかと』

『『分身体』どすか……なんや、スライムの魔物が出来る能力を、遥かに超えてますなぁ。イチオ、今からスライムの魔物リムルを、A級以上の魔物と断定。要警戒や』

『畏まりました。コハク様』

『ヒナタと戦って生き延びたか……もう、スライムの魔物とか言ってられないね。でも、ミュウランの魔法妨害領域があるから、すぐここには来れない、か。さて、この惨劇を見て……どんな、判断を下すんだろうな、リムル・テンペスト』

『魔物たるや判断をするのか? それでも尚、人間と共存なんて甘い事を言わはるのか、見物ですなぁ』

『あのヒナタとの戦いは……既に、スライムなどと言う枠を超えている、何かです。ツキハ様、コハク様』

 

 二人がイチオとの『念話』をしてる間に、シオンが騎士団員に斬られそうになったゴブリナの子供を庇い、背中を一刀両断され絶命した。

 

 『念話』を終え、二人が視線を戻すと。

 

 ハクロウも弱体化の中、キョウヤの空間斬撃により深手を負い、ゴブタも地に倒れ伏していた。

 ゴブゾウはシュナを庇い、槍の一突きを脊髄に喰らい即死していた。

 

 目に付く魔物を粗方殺し終えた騎士団の一行は、意気揚々にテンペストを後にした。

 

 ショウゴとキョウヤは満足気な表情を浮かべ嗤いながら、魔物の屍の中歩いていく。

 その後ろを「魔物風情がウチらを舐めるから、こうなるんっしょ」と同じく満足気に言葉を吐き捨てていく。

 

 

「終ったね。いや、始まりか……戦争の。どう介入する? いきなり、横っ面を張り倒しにいく?」

「いきなり()るんも、あれおすなぁ。クレイマンのお遊びも、少し度が過ぎてますさかい。手っ取り早く、魔王への進化を邪魔しましょかぁ。まあ、依頼は依頼っちゅう事で、テンペストも攻めなあかんけども……そうですなぁ。とりあえず、クレイマンの奴から連絡が来たら、ここを攻めるとしますえ」

「だね、依頼はここを攻めろだし、技術者の確保はぁ……めんどくさいし、知らんわ。そこまでは、遊びに付き合おうか。そこからは――」

「うちらの好きにさせて、もらいまひょ」

 

 そう言い放ったツキハとコハク。

 依頼とは別に動き出す、傭兵商会・ルヴナン。

 

  

 一方、ヒナタから無事逃げ果せたリムルは、魔国連邦(テンペスト)へ帰還するべく転移を試みたが……。

 

 何度試みても転移できず、異変に気付く。

 

 元素魔法:拠点移動の魔法が発動しなかったのだ。

 

《告。転移先の座標特定が不明です。考えられる原因として、何らかの結界により、妨害もしくは外界と隔絶されてると推測します》

 

 大賢者からの報告にリムルは、ヒナタが言った言葉を思い出していた。

 

『君と、君の街が邪魔なの。だから、潰す事にしたのよ』ヒナタから告げられた言葉を思い出したリムルは、急いで戻らないと〝俺の国が無くなる〟そう思い。

 戻る手段を考えていると、『大賢者』が転移可能な移動先を検索で探り当て。

 

 リムルは大急ぎで、その場所へと、転移した。

 

 転移先は、封印の洞窟に敷設してあった魔法陣であった。

 

 転移陣の前ではガビル達が、集合していた。

 

 帰還したリムルの姿を見て、ガビル達は安堵の表情を浮かべ、リムルの側へと駆け寄った。

 

 ガビル達から状況説明を受けている最中、大怪我を負ったソウエイとソーカ達が、リムルの影から飛び出して来た。

 

「リムル様、ご無事でしたか。何よりです――」

「おいおい、お前どうしたんだその大怪我は!?」

 

 ボロボロのソウエイにリムルは、ベスターにすぐ完全回復薬(フルポーション)を持って来させ飲ませた。

 

 傷が回復し、ソウエイは現在の状況を話し始める。

 街に入ろうとして、テンペスト全体に張られた結界に阻まれ、『分身体』は全て消滅、本体は大怪我を負ってしまったと説明した。

 

 そして、一番重要な事をリムルに告げた。

 

「リムル様。ファルムス王国が軍事行動を起こし、魔国連邦(テンペスト)へ向かっております」

「そうか……ファルムス王国が動いているのなら。その結界も、ファルムス王国の関係者か?」

「恐らくは……」

「だとすると――街のみんなが危ない……!?」

 

 リムルはヒナタに足止めされた事に焦りを感じ、街へ急ぐことにする。

 

 

「ん?……なんや、これ、は……」

 

 死屍累々の中、コハクが空を見上げながら、何かを呟いた。

 

「どしたの?」 

「この複合結界の中や」

「中?」

「せや。わからんか? ツキハ」

 

 コハクが結界の中と言い、ツキハは重なり合った結界が揺れる空を見上げ、鼻をスンスンと鳴らし、それに気付く。

 

「あ? これ、魂の残滓が漂ってない?」

「せや、まだあの子らの魂は、拡散してまへんな。普通なら、とっくに拡散して消滅してるのに。この複合結界のお陰で、中に留まってるみたいおすな。現時点で、魔物の出入りすら許しまへんからなぁ」

 

 魂を喰らう事が出来る二人は、結界内に漂う魂の残滓を、『万能感知』で嗅ぎ取っていたのだ。

 

「魂の復活の秘技。これがあれば、あの子らの蘇生は出来るかも知れまへんな。まあ……その方法を知ってれば、どすが」

「でも、それって――あれ(・ ・)だよね?」

あれ(・ ・)、おすな」

「あ!? 今こっち向かってるあの三人って……あちゃーあの様子じゃ、あれしそうだよね?」

「あぁー。そう言えば、ニコから報告が来てましたなぁ」

「どうする?」

「はあっ……仕方ありまへんな。そこは、流れにまかせまひょ」

 

 コハクはそう言いながら、印を四つ結び、眼前でパンと両手を合わせた。

 すると、一瞬結界内の空が不自然に揺らぎ、直ぐに収まった。

 

「なにしたの?」

 

 ツキハの問いにコハクは、フッと軽く笑いを浮かべ。

 

「ちょっとした、うちからのサービスや。あれな、少し不安定になってるさかい。うちがちょちょいと、この複合結界を補強しましたんや。これで、結界を解除とか馬鹿なことをしいひんかったら、あの子らも蘇生出来るかもしれんと、言う事や」

「へえー。信玄みたいな事、するんだ。くくっ」

「塩どすか? また、えらい懐かしい名前を出しはったな。ふふ」

 

 二人して結界に包まれた空を見上げ、ほんの少しだけ昔を思い、顔を軽く(ほころ)ばせる。

 

 

 リムルはソウエイ達を伴い、街の外周近くに『空間移動』して来た。

 『影移動』が『空間移動』に進化していたのを思い出し、それを使用して移動して来たリムル達。

 

 リムルは街に張られている結界の前に来て立ち、右手を(かざ)す。

 結界の一部を吸収して、『解析鑑定』を掛ける。

 

 それに『大賢者』が答える。

 

《解。広域大魔法:魔法不能領域(アンチマジックフィールド)の影響化にあります。それに加え、魔素濃度の減少を確認、聖浄化結界(ホーリーフィールド)と同じ原理ですが。効果が均一ではなく、濃度に偏差が見られ――これは、劣化版だと推測します。この複合結界内部にて受ける影響は、『多重結界』で抵抗(レジスト)可能です》

 

『そうか。なら、問題ないな』

 

 リムルは『大賢者』の言葉を聞くと、さっさと結界内に入った。

 その時に、『大賢者』から、大魔法の術者は中にいて、結界を発動を発動しているのは外部で、四ヶ所に分かれ複数人で術を維持していると、聞いた。

 

「ソウエイ、お前達はすぐに、この結界を張っている者を探し出せ。いいか、一切の戦闘行為は、禁じる。全員で行き、相手の強さと規模を確認してこい」

「御意。して、連絡手段はどのように?」

 

 ソウエイの問いにリムルは、『粘鋼糸』を出し、ソウエイの左手首に巻き付け、「どうだ? これで意思疎通が出来ないか? 」と言い。

 試してみると、外と内でも『粘鋼糸』を伝って『思念伝達』が可能であった。

 

「よし、行け! 俺は、結界内の術者を押さえる」

「ハッ!!」

 

 ソウエイがリムルの命令を聞くと同時に、消え、ソーカ達五名も消える様に続いた。

 

 それを確認したリムルは、中央広場へと急ぐ様に歩を進めながら『大賢者』に引き続き、魔法不能領域と結界の『解析鑑定』を続けさせる。 

 

 『大賢者』は張られている複合結界に僅かだが、手が加えられている痕跡を見つけた。

 

《告。一部解析不能な術式を確認。複合結界を安定させるために、手を加えていると推測》

 

『なんだって? それは、この結界を完全なものにする為なのか?』

 

《否。むしろ、この複合結界を安定させ、崩壊しないようにする為だと推測します》

 

『崩壊?……確実に俺達を――潰す為なの、か?』

 

《否。この一部解析不能の術式の目的は、不明です》

 

『不明だと……『大賢者』、この術式は外部からか、それとも――』

 

《――告。内部からと推測します》

 

『内部だと……』 

 

 内部と聞き、リムルは大魔法は発動させた術者とは別に、第三者が複合結界内部にいると判断する。

 

(そうか、まだ伏兵が潜んでいるのか……『大賢者』ですら一部解析不能な術式を操る、者か)

 

 コハクの放った術式を見つけだした『大賢者』、その『大賢者』にすら完全な解析をさせない、コハクの忍魔術。

 

 ツキハとコハク、リムル・テンペストが相まみえる時、魔国連邦(テンペスト)を巻き込み交差する様々な思惑はどこへ向かうのか?

 

 

 中央広場に近付くにつれ、夥しい血痕や血溜まりが目に飛び込んでくる。

 傷付き倒れ、冒険者達に解放される魔物達。

 

 リムルの中の怒りと焦燥が渦を巻き、憤怒化し吹き上がって来る。

 

(くそっ……俺が……)

 

 

 この惨劇にリムルが出す、答えは…………。

 

 




 十四話を読んで頂き、ありがとうございますー!

 次回の更新も読んで頂けたら、幸いです!



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