忍びが転生したら〝異世界珍道中〟になった件   作:にゃんころ缶

140 / 240

 お待たせしました。140話です

 ツキハ

【挿絵表示】


 コハク

【挿絵表示】



 傭兵商会ルヴナン・真の紋章


【挿絵表示】



 ※〝打刀〟
【挿絵表示】







140話 隠し部屋?

 

 

 ロンバート男爵夫妻がブルムンド王国へと帰った後、リムルはヴェルドラとツキハと三人でラミリスのもとへ向かった。

 

 途中、闘技場建設現場にも顔を出したリムル。

 

 皆朝早くからゴブキュウの指示に従い、忙しそうに動いていた。

 

 ツキハの眷属達は重力操作を駆使し、壁伝いに鋼材を担ぎ運び、高所にも難無く駆け上がっていく。

 危険な高所の作業は眷属達が、率先して請け負っていたのだ。

 

 そう、重力操作のお陰で足場を組む必要が無く、その分別の作業に人員を割ける為、現場の効率が上がっていて、リムルもそれに満足した表情で頷いていた。

 

 現在、暇猫どもは三百五十名にまで増えていた。

 

 恐るべしは、魔国飯である。

 

 こうして建設現場の視察と激励を終えたリムルは、ラミリスのもとへと急ぐ。

 

 迷宮への扉を開き中へ入ると、ラミリスのいる部屋と出た。

 

 あれから不眠不休に近い形で迷宮創りに精を出すラミリスが、そこいにいた。

 

 そんなラミリスにヴェルドラが声をかける。

 

「おう、ラミリス。息災であったか?」

「あ、師匠! お久しぶりです。アタシは元気でしたよ!」

 

 どこかフラフラになりながら答えるラミリスであったが、表情はどこか満ち足りていた。

 

 ツキハが少し心配そうに「無理はダメだよ」と言い、リムルも同じように注意をするも、いたって本人はニコニコと大丈夫と返す。

 

「任せなさいって! アタシはやるよ。やり遂げて見せるさ!」

 

 ツキハの頭の上に立って小さい胸を張り、腰に手をやりウハハと笑うラミリス。

 

 それから四人は朝食を取る事にしたのだった。

 

 朝食を終え、ラミリスから迷宮創りの進捗状況の説明をリムル達は受けた。

 

 とりあえず二日目で、現在四十八階層まで増やしたとの事。

 後、約五十二時間で百階層まで出来る計算だ。

 

 内部構造の変更は並行して行えるから、無理をする必要はないと、ラミリスの談。

 

「とりあえず、続きの階層は勝手に増えるワケ。でさ、もうアタシも暇だし、出来上がっている階層の内部設定を弄らない?」

 

 ここからは、何もせずとも力を消費するだけで、階層は勝って増えるからとラミリスは言う。

 

 それならばと、リムルがある提案をする。

 

「じゃあさ、ヴェルドラの部屋を先に用意するか」

 

 リムルが言ったヴェルドラの部屋は最下層である。

 

 早速最下層に向かう四人。

 

 最下層、そこはまだにも無い空間が広がっていた。

 壁も無い、通路も無い、階段も無く、一部の空間に扉がポツンと見えるだけであった。

 

「本当に何もないんだな」

「最初は、こんな感じだよ。リムル」

 

 リムルが思わず声に出すと、ツキハがそれに答えた。

 

 そしてヴェルドラは――

 

「おいおいリムル、ツキハよ、ここが我の部屋なのか? これはアレだ、封印されていた場所を思い出させるぞ……」

 

 と、嫌そうに顔を出して言う。

 

 それを見たラミリスが、すかさず言葉を返す。

 

「大丈夫だよ、師匠! アタシが念じれば、壁とか階段とかは簡単に創れるから」

 

 ヴェルドラの肩に乗り、笑って言う。

 

「それじゃあ、どんな風に部屋の内装を決めるか『思念伝達』で相談して決めようか」

 

 リムルはそう言って四人を、『思念伝達』で繋ぐ。

 

 そして、リムルが最初に考えていた内装を思い描いてみた。

 

「お、おお! これだ、これだぞリムルよ! 流石だな。相変わらず貴様はセンスが良いな!」

 

 次にツキハが、骨董収集の趣味を持つ眷属達から没収、じゃなく、〝買い上げた(買い叩いた)〟調度品の数々を思い描く。

 

 豪華な長椅子に本棚やテーブル等、(いにしえ)の貴族や王族が使用していた物である。

 

「おおお! この長椅子は、豪華で気品に溢れておるな。それにこの本棚、我の漫画を並べるのに最適な作りであり、この装飾も素晴らしい! 家具はツキハに頼んで正解だな」

「ウフッ。マ・カ・セ・テ♪」

 

 リムルとツキハの提案に大満足したのか、うんうんと頷くヴェルドラであった。

 

「良し。ヴェルドラが満足したみたいだし、こういう感じに変更出来るか?」

「任せて! このくらいなら大丈夫」

 

 ラミリスがそう言って引き受けた同時に、一瞬にして空間が変更されていった。

 

 先ず、壁が重厚な感じの石壁になり、遅れて幾つかの小部屋と大広間が出現する。

 

 大広間の大きさは、百メートル四方の正方形で、正にファンタジー物でいう、〝ボスの間〟という荘厳(そうごん)な雰囲気を醸し出していた。

 

 イメージ通りの再現に、リムルは思わず感嘆の声を上げる。

 

「凄いなお前! 完璧じゃん……」

「だからあたしが言ってたじゃん。無駄に凄いんだよって」

「うむうむ。ラミリスよ、これならば我も満足だぞ!」

「まあね、まあね! アタシは凄いからね! ツキハ、無駄は余計だから! ア・タ・シ・は凄いのよ!」

 

 滅多に褒められる事がないからか、ラミリスの有頂天は天元突破して喜びに包まれていた。

 

 有頂天ラミリスをとりあえず置いておいて、リムルは本来の目的へと移行する。 

 

 一応この大広間は、冒険者を迎え撃つ為の部屋。

 

 だがしかし、本来の目的はヴェルドラに本来の姿を取り戻させる為の部屋なのだ。

 

 そこで問題になるのは、ヴェルドラが自分の部屋としても寛げなければ意味がない。

 最近のヴェルドラの行動を見ているリムルにとっては、人型の姿で自分の茶室などで漫画を読んだりツキハ達とトランプやサイコロで遊んでいるのを見ていて、人型の方が良いのではないかと考え、人用の部屋も用意しようとリムルは思ったのだ。

 

 そして、この大広間には、扉が二つあった。

 

 上層階へと繋がる階段へと続く大扉が一つ。

 更にもう一つが、普段の私室へと繋がる扉だった

 

 ラミリスの再現力は完璧で、リムルの考えた通りの部屋が出来ていたのだ。

 

「ほう? ここが我の部屋か?」

 

 興味津々に出来たばかりの部屋を眺めるヴェルドラ。

 

 リムルは、ツキハから預かっていた家財道具一式を『胃袋』から取り出した。

 

 ツキハが最近買った、ゴブリナ達が織った絨毯を敷き、アンティークの椅子と机を置く。

 寝そべっても大丈夫なクッション付きの長椅子を置き、必要かどうかもわからない天幕付きのベッドも置いた。

 

 壁には、やはりアンティークの本棚を設置して、ヴェルドラが気に入っている漫画を複製して並べていく。

 

 大広間の荘厳な雰囲気とは打って変わって家具などは豪華なのだが、庶民が愛する快適な空間の出来上がりである。 

 

(うーん。雰囲気重視の大広間と違い、この部屋と、今のヴェルドラを見たら台無しだな。万が一にも来ることはないだろうけども、冒険者達にこんな姿を見せないでもらいたいものだ。あ、そうだ。それにしても、この別に預かってるちゃぶ台と、(きり)のタンスとか、どこに置くんだ?)

 

 もう一つ預かってる家具に対して、素朴な疑問を浮かべるリムル。

 

 しかし、その疑問は、ラミリスの言葉によって解消される。

 

「ねえ、ツキハ。アンタが昨日言っていた隠し部屋なんだけど。この隣でいいワケ?」

「うん。ねえ、ヴェルドラ~。この部屋の隣に隠し部屋作ってもいいよねー?」

「お? うむ、昨日頼んでいた事だな。構わぬぞ。好きにしろツキハよ」

「ほーい。じゃあラミリス、この隣によろしくね」

「はいはい。ちょっと待ってね……はい、出来たわよ」

 

 人型ヴェルドラの自室の壁に、扉が一つ現れた。

 

 その扉を開けると、八畳くらいの広さの部屋が出来ていた。

 

(なるほど。ヴェルドラの所に遊びに来るついでに、自分の部屋も確保したのかって……ん? それって、半同棲とかじゃないのか? これ、コハクが許可するはずないよなぁ。修羅場は御免なんだが……)

 

 ツキハが部屋に入り、リムルに預けていた自分用の家具を並べていくのを見ていて、一抹の不安を感じるリムルであった。

 

 とりあえず、『胃袋』の中で作った畳を八畳分床に敷き詰めて、和室の完成である。

 

 そして、家具を並べ終え、満足そうに頷くツキハ。

 しかしそこで、ツキハの頭の上に乗っているラミリスが、ある懸念を言う。

 

「ねえツキハ。一つ聞くけど、コハクは知ってるの?」

「うん。ヴェルドラの所にあたしの部屋を作るって、言った」

「そう。本当にちゃんと言ったのよね?」

「言ったよ。入れる気はないけど」

「そうくるワケね。あんたの認証とアタシの認証がないと入れないようには出来るけども、も! そうすると、コハクは無理やりこじ開けるワケ。間違いなく、ね」

「多分、やるだろうねぇ」

「多分とか、冗談じゃないわよ。ぜーったいに、やるわよ。アタシの迷宮を破壊してでも、ね」

「おいおい、流石にそこまでやるか!?」

 

 迷宮破壊と聞いてリムルが慌てて口を出す。

 

 そのリムルの言葉に二人は――

 

「やるだろうね、あのド変態なら」

「やるわね。ツキハの事となったら、見境なしなのよさ」

 

 真顔でリムルに返した。

 

「そうか、わかった。ツキハ、部屋に鍵を掛けるのは禁止だ」

「え? なんでよ!?」

「大惨事になるのは目に見えてる。それを許容出来るほど、俺は甘くない」

「そう……。なら、、今起こしてやろうか、大惨事を?」

「なっ!? ちょ、ちょっと待てツキハ」

 

 禁止と聞いた途端、空間収納に仕舞っていた時雨を取り出して腰に差し鯉口を切るツキハを見て、慌てたリムルが待ったをかける。

 

 ラミリスと言えば、さっさとヴェルドラの所へ避難していた。

 ツキハ達と付き合いの長いラミリスは、こういう時に傍にいると、とばっちりを喰らうのは間違いないので、逃げるが勝ちと熟知していたのだ。

 

「いいから落ち着けって。部屋を作るのは構わない。でも、鍵を掛けるのは駄目だ。この迷宮は俺の管理でもあるし、言う事を聞かないなら、出禁にするぞ?」

「うっ……」

 

 出禁、これをを聞いて言葉に詰まるツキハ。

 時雨の柄に右手を添えたまま、涙目でリムルを見ていた。

 

「はあっ……お前らって、何でこうも極端なんだよ。部屋を作るのは構わないよ。でもな、コハクを入れなくするのは駄目だ。どうしても鍵を掛けるというのならシュナに報告するけど、いいか?」

 

 どうにも言う事聞かなそうなので、ここでリムルは伝家の宝刀を抜く。

 ツキハに言い聞かせる事が出来る数少ない一人の、シュナという宝刀を。

 

 シュナにバレるという事は、ヒナタ達との宴会の時ヴェルドラとの混浴を阻止された様に、今回の隠し部屋も間違いなく阻止されるのは確実。

 

 ツキハがそのリスクについて考える……。

 更に考える……。

 答えは一つしか出ず。

 

 それでもやっぱり考える……。

 

 そして……諦める。

 

「わかったよリムル。でも、シュナに報告は無しにしてね」

「うん。それは大丈夫、言わないよ。でも、約束は守れよ?」

「守るよ、リムル」

 

 こうしてツキハの機嫌を(なだ)めたリムルは、残りの預かった家具などを全部出して、ヴェルドラの部屋を整えていった。

 

「いいないいな。ツキハ、アタシもこういう家具が欲しいんですけど?」

 

 ヴェルドラの部屋に置かれた家具を見て、ラミリスが羨ましそうにツキハに言った。

 

 リムルは、流石にこれは断られるんじゃないかとみていたが、意外にもツキハは快く了承したのだ。 

 

「ん? この家具みたいなの欲しいの?」

「そうそう、こんな家具をアタシも欲しいのよ!」

「ふーん。いいよぉ。でも、また何かあったら、あたしのお願い聞いてね?」

「任せて! お安い御用なのよさ!」

 

 これで商談成立である。

 

(へえー。やっぱりなんだかんだ言って、仲が良いよなアイツらって。ラミリスはヴェルドラとも仲良くなってるしなぁ。ああ見えてラミリスのヤツ、どこか憎めないところあるし、あの天真爛漫さがいいのかねぇ。クククッ)

 

 そんな二人を見ながらリムルは、クスリと笑いを漏らす。

 

 家具をもらえる事がわかったラミリスは、迷いなく長椅子の上で漫画を広げて読み始める。

 

 そしていつの間にか、ヴェルドラもベッドに寝そべって漫画を読み(ふけ)っていた。

 

 

 こうして、その日は一旦お開きとなったのだった。

 

 

 ――ここからはツキハ視点――

 

 

 それから四日後の事。

 

 迷宮も百層まで完成したんだ。

 

 内装はリムルの注文通りに、部分(ブロック)単位で変更出来るようになったのよ。

 

 リムルはこの機能を利用して、何日か一度に内部構造を変更するらしい。

 

 これってさ、鬼畜だよねぇ。

 せっかく道を覚えても、また最初からだもん。

 

 ほんと、漫画にあったランダム生成ダンジョンってヤツを創るんだから、ラミリスの力も凄いよねぇ。

 

 しかも、地図の売買はやらないという、二段構え。 

 

 リムル(いわ)く、地図の売買など邪道! 毎回は言って苦労すべし! とか、中々魔王らしくて良いよねぇ。

 

 まあでも、考えようによっては、これは冒険者を飽きさせないようにする為に有効な手段であるし、常に新しい迷宮が提供される訳だ。

 

 しかもだよ、そんな冒険者の救済措置として、十階層ごとに記録地点(セーブポイント)を設けたのよ。

 

 よく考えつくよなぁ、リムルってさ。

 

 ラミリスの迷宮内では、特定の条件を満たせば『空間移動』が可能になるの。

 これさ、何と魔素の影響を受けないんだ。

 だから、迷宮内でなら食料の運搬も可能になる。

 

 あたしの領地のシャルフューズでも、これを利用してるんだけどね。

 

 でさ、この地点に一度でも到達していれば、次回はそこから再開出来る事になるんだよぉ。

 

 ただねコレ、一つだけ問題があったんだ。

 

 この移動は仲間にも適用されるという事。

 

 これに関しては意見が分かれたんだけど、先ずは様子見という事でリムルの意見を優先した。

 

 まあでも、コレでズルしたとしても、苦労するのは自分達なんだけどね。

 だって、階層ごとにボスを配置するとリムルが言ってたから。

 

 特に十階層ごとの記録地点(セーブポイント)の前には、段違いに強い魔物を配置するってリムルが言ってた。

 

 ウヒヒヒ。何か阿鼻叫喚になる冒険者達の姿が目に浮かぶよ。

 

 でも、頑張って階層ボスを倒したら御褒美に宝箱を用意するとリムルが言ってたし、これが周知されたら(こぞ)って冒険者達は迷宮に挑むだろうね。

 

 そこで、ボスが倒されたらどうなるのか?

 

 これこそが一番重要な、ラミリスの『迷宮創造(チイサナセカイ)』のもう一つの機能――

 蘇生の出番だ。

 

 この機能があるお陰で、万が一冒険者が死んでも蘇生出来る。

 

 本人の意思確認が必要なのは前に話した通りなんだけど、ボスに関してはラミリスとの主従関係があればその必要がないの。

 

 何て立って、ラミリスの迷宮内では、配下は不滅の存在になるんだから。

 全くコレ、反則級とういうか、チート満載だよね。

 

 ただね、ラミリス自身は死んだら消滅するだけなんだけど、配下は記録地点(セーブポイント)から復活可能なの。

 

 この場合の配下とは、ラミリスが認めた相手や契約を結んだ相手に限られるのだけどね。

 

 で、どうもラミリスがベレッタを欲しがった理由はこれなんだ。

 

 ラミリスは全然戦闘能力なんかないんだけど、迷宮内においてはラミリスの軍勢は無敵なんだ。

 

 ただし、意志のない魔人形(ゴーレム)などは無理。

 

 その点、ベレッタにトレイニ―達は、迷宮内では不滅の存在になるんだよ。

 

 うちの(眷属)達も、殺されても復活出来るけど、殺された時のダメージ具合によって復活時間が変わるからねぇ、それはあたしもなんだけど。

 

 しかも、心核に致命的なダメージを負ったら、復活しても以前の記憶が無い別の存在になるから、実質死んだも同然よ。

 

 ほんと、中途半端な復活機能だよねぇ、あたしらのコレって……。

 

 だから、強くならないといけないんだ、あたしとコハクの自由な生活の為に。

 

 って、話が()れちゃったね。

 

 あれだ、ラミリスの配下と迷宮内で戦うのは、戦う側には余りにも不利なんだよねぇ。

 

 そうは言っても、迷宮をぶっ壊せばその限りではないんだけども、出来るヤツがいたらね……ウククク。

 

 

 でもさ、そんなラミリスにも配下ができて、ほんと、良かったと思うわ。

 妖精しかいなかった時は、どこかつまらなそうにしてる時もあったし、今のラミリスを見ていると心底楽しそうで何よりだよ。

 

 迷宮も順調に完成に近づいていて、リムルも満足しているみたい。

 

 そんなリムルも、ラミリスに頼んだモノを確認している。

 

「ラミリス、頼んでいたアイテムはどうなっている?」

「ああ、これね。一応、作ってみたよ」

 

 リムルが頼んだ品、そう、蘇生用のアイテムなんだ。

 

 ラミリスの『迷宮創造(チイサナセカイ)』で『不滅』属性を与えるには、意思確認が必要なのは魔に話した通り。

 

 だけど、今回の迷宮においては、利用者が多くなるとリムルの予想なんだ。

 

 そうなると、やって来る冒険者の一人一人の意志を確認して、契約を結ぶなど困難だと思う。

 実際、ラミリスがそれに近い事を言ってたしね。

 

 そこで一度、シャルフューズを創った時に、検討したアイテムを作成出来るとラミリスが言い出したんだ。

 

 なんであたしの領地で、そのアイテムを作らなかったか?

 

 それはね、あたしとコハクがラミリスに言った、そのアイテムの欠点なんだよ。

 

 まあ、欠点というより、望まない効果に苦しむ者が出る事なのよ。

 

 不慮の事故や、戦いで死んで復活するのはいいんだけども、人間とか魔物でも寿命が来て、老衰で死んだ者まで蘇生させるのが問題なんだわ、コレが。

 

 蘇生しても、尽きた寿命は伸びないから、ね。

 

 寿命が尽きる、復活、またすぐ寿命が尽きる、復活、この無限ループともいえる、〝死、蘇生〟の繰り返しになるから、検討段階であたしとコハクで迷宮復活は無しにしたんだ。

 

 まあ、死にたくなければ強くなれというのが、あたしとコハクの心情だから。

 

 ラミリスは、それを覚えていたんだね。

 

 冒険者に適用するなら、何も問題ないもの。

 

 しかもそのアイテム、一度だけ効果を発揮する使い捨てらしい。

 

 こういうところはほんと天才だわ、ラミリスって。

 

 ラミリスがリムルに差し出した、紐を編んだ平たい紐状の腕輪みたいなもの?

 

 リムルが言うには、ミサンガみたいに腕に巻き付けて使うんだなと言ってた。

 ミサンガってなんだ? 後で聞いてみよう。

 

 そしてリムルは、コレの効果をラミリスに聞いている。

 

「コレ、効果の確認は?」

「バッチリ! 昨日の夜にベレッタちゃんで試したから!」

「おいおい、何て事をベレッタに……」

 

 ククッ。まあ、普通はそんな反応になるよね。

 

 ラミリスってば、こんなところは魔王なんだから。

 

「リムル様。我は悪魔なので、最悪の場合でも滅びはしません」

 

 あらまあ、健気(けなげ)な事だねぇ。

 滅ばないっていっても、復活には結構な時間がかかるのにねぇ、悪魔族(デーモン)は。

 

 リムルも心配して、ベレッタに何か言ってるわ。

 ほんと、変わってるよねリムルってさ。

 

 戦いのない平和な国で殺されて転生して来た、人間。

 

 ここまで乱世に染まった世界で適応するなんて、一体どういう精神構造してるんだろう?

 

 あたしとコハクみたいに、人間の頃に精神鍛錬してるみたいじゃないし、なんなんだろうね、リムルって、さ……。

 

 あ、何かベレッタが死んで復活した時の状況をリムルに説明してるな。

 

 ほお、ふーん。

 

 トレイニーがベレッタの核を撃ち抜いて十秒ほど経つと、死体が迷宮の外に転送されて完全復活したと。

 

 なるほど、そりゃ凄い。

 

 リムルも、腕輪の性能に満足のご様子。

 

「完璧じゃないか。ベレッタの勇気に感謝だ」

「うんうん、アタシも使い捨てのアイテムを作成したのは初めてだったからね。出来るとは思っていたけど、成功して良かったよ!」

 

 笑顔で頷くラミリス。

 

 おいアンタ、自信が無かったのかい! とツッコんでおこう。

 

 成功したから良かったものを、失敗していたらどうするの!

 アンタの泣く姿何て見たくないわよ、全くラミリスったら……

 

 これで、蘇生用のアイテムも出来たし、後、緊急脱出用のアイテムも用意しようとリムルが提案して来たから、あたしもラミリスもそれに賛成した。

 

「このアイテムは、〝復活の腕輪〟と、〝帰還の呼子笛(よびこぶえ)〟と呼称しよう。これらは保険として、迷宮の入り口で販売する事にしよう。どうだ?」

「賛成よ!」

「いいんじゃない。買うも自由、買わぬも自由ってね。買わずに入って死んでも自己責任だし。あたしなら、買う。死んだらそれで終わり、生きていたら次があるしね。それがわからない者は、死んでもしょうがないよ」

「良し。値段設定はおいおい考えるとして。この〝復活の腕輪〟は、ラミリスの力を仮初(かりそめ)に具現化してるだけだろ?」

「そうよ。だから、迷宮内で死んだ場合だけ、初期設定されている地下迷宮(ダンジョン)の入り口にて復活可能なワケ」 

「これは、どこでも復活出来ると勘違いされないように、徹底して説明をしなければいけないな」

「そうだね。迷宮外に持ち出して使う馬鹿が出そうだものねぇ」

「確かにそうね。リムルの言う通りよ」

 

 〝復活の腕輪〟の機能についてリムルが懸念を示し、あたしもラミリスもそれについて賛同した。

 

 世の中には人の話を聞かないヤツが大勢いるもの。

 

 え? あたし? あたしはちゃんと聞くよ。ほんとよ?

 

 

 でだ、こうして地下迷宮(ダンジョン)の大枠が完成したんだ。

 

 さあて、次はと、ん?

 

 またリムルが考え込んでるような仕草を一瞬見せたな……。

 

 

『なあ、智慧之王(ラファエル)先生。ラミリスの力って再現出来たりする?』

《告。個体名:ラミリスの固有能力『迷宮創造(チイサナセカイ)』を再現する事は不可能です》

『ふむ。やっぱり無理かぁ。まあ、アイツだけの能力だから、それもそうだな』

 

 アッサリと不可能と告げられたリムルであった。

 

 

 お、何か表情がかわったな。

 

 あれか? リムルの中にいる物騒なモノと、話をしていたのかねぇ……?

 

 ま、どうでもいいか。

 

 さーて、ヴェルドラの部屋も出来たし、後は――

 

 あたしの待ち望んだ事の……。

 

 

 クックックッ。

 

 

 

 





 この作品を読んで頂きありがとうございます!

 次回の更新もよろしくお願いします!




  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。