忍びが転生したら〝異世界珍道中〟になった件   作:にゃんころ缶

145 / 239

 お待たせ致しました。145話です

 ツキハ

【挿絵表示】


 コハク

【挿絵表示】



 傭兵商会ルヴナン・真の紋章


【挿絵表示】



 ※〝打刀〟
【挿絵表示】







145話 リムル。コハクに次いで、ツキハにも……

 

 

 ツキハがイングラシア王国から帰って来てから、翌日。

 

 リムルとラミリスと、それにヴェルドラが創っている地下迷宮(ダンジョン)の進行状況を見に来てとラミリスから『思念伝達』が飛んできて、ツキハはプラプラと中央都市リムルの街中を歩きながら向かっていた。

 

 すると、前から二人の少女がツキハに向かって駆け寄って来た。

 

「にゃあ、ツキハ様お帰りなのニャー」

「まーた、人間の姿で遊んで来たのねえ~。何をしてきたのやらぁ」

 

 珍しく二人揃ってのお出迎えである。

 

「ん、ただいま。お? アンタ達、それって?」

 

 ニコとサンコの姿に変化があるのに気付くツキハ。

 

「にゃははは! 見て見てツキハさま~。これシオンに選んでもらったのニャー」

 

 サンコが嬉しそうに横を向いてツキハに見せたモノは――

 

【挿絵表示】

 

 

 今まで、頭の左横に下げていた小さな三つ編みのおさげの代わりに、小さな花一輪のリボンがついた髪飾りだった。

 

「へえぇ。似合ってて可愛いじゃん」

「にゃははは。アチシのお気になのニャ!」

 

 ツキハの誉め言葉に、満面の笑顔で答えるサンコ。

 

「ツキハさま~、わたしのも見てくれるかしらぁ~」

 

 そう言うと、ニコもツキハに対して顔を横に向ける。

 

【挿絵表示】

 

 

 ニコも頭の右横に下げた小さな三つ編みのおさげは無く、小さな花びらが二つ縦に並んだ形の髪飾りを付けていた。

 

 そして、髪の色も薄い茶髪からサンコと同じ黒い髪になっていた。

 

「ほお。ニコも可愛いじゃん。よく似あってるよ。それに髪の色、黒にしたんだね」

「うふふ~。これ、シュナが選んでくれたのよぉ~。髪はねぇ、ちょっとした気分転換なのぉ」

「ふーん。それにしても髪の色が同じだと、ほんと双子だね。フフッ」

 

 ニコの髪飾りを褒めながら二人を見て、クスリと笑うツキハ。

 

「まあぁ、同じ日に生まれたからぁ、仕方ないんだけどぉ。馬鹿と一緒はぁ心外なのよねぇ、お姉ちゃんとしてはぁ」

「ニコお姉。それはアチシの方ニャよ? ぶっ殺していいかニャ?」

「うふ~。サンコちゃ~ん、そこにお座りなさいぃ。ちょこっと首を()ねてあげるからぁ」

「相変わらずだねぇアンタらは。じゃれるなら、ルヴナン支店の敷地かルードネスの敷地でやりな」

「ニャ!? そうニャ、ニコお姉。イチオに見せびらかしに行くニャよ!」

「あらま!? (かあ)様にもみせないとぉ。いくわよぉ~、サンコちゃ~ん」

「はいニャ」

 

 険悪な表情で睨み合うサンコとニコにツキハが真顔で言うと、慌てて二人はそこから駈け出して行った。

 

 それを、「なんだかんだいって、仲良いよな」と、笑みを(こぼ)しながら呟き見送る。

 

 

 闘技場建設現場に着くと、地下迷宮の入口を通って中に入るツキハ。

 

 中では、迷宮の内部構造を考えているラミリス達がいた。

 

「ただいま~。みんな頑張ってるねえ」

「あら? 帰って来たのね。おかえり」

「クワハハハハ、帰って来たかツキハ」

「お、お帰りツキハ」

 

 軽く帰って来た挨拶を済ましたツキハは、ここですかさず『思考加速』付きの『思念伝達』をリムルに飛ばす。

 

『リムル。儲けたかい? フフッ』」

『やっぱり気付いていたのかよ? フフフ、勝ったぜ』

『そう、良かったねえ。シュナには内緒にしておいてあげる。貸し一つだよ? ウヒヒ』

『ふあ!? ぁああ、うん、それで頼むよ』

『あいよ~♪』

 

 ツキハはラミリス達に挨拶を済まし、『思念伝達』で地下闘技場の賭け試合の結果を聞く。

 その結果リムルは、コハクに次いでツキハにも貸しを一つ作るはめになったのである。

 

 とうとう二人に貸しを作ってしまったリムル。どんな取り立てが来るのやら?

 それは、神のみぞ知るなのであった。

 

 

「それでさツキハ。今の迷宮創作はこんな感じだよ」 

 

 リムルが気を取り直して、とりあえずの進捗状況をツキハに伝える――

 

 因みにこの迷宮、第一層の広さは二百五十メートル四方の、東京ドームとほぼ同じ広さである。

 階を降りるごとに狭くなっていく逆ピラミッド型であるが、階層ごとに広さや高さを自由に変更出来るので、不都合があればいつでも変更が可能なのである。

 

 この迷宮、かなり何でもアリなので、常識外れの構造物に仕上がるだろう。

 

 考えたら負けなのだ、楽しめと。

 リムル達が繰り広げる暴走創作。

 

 なので、現在進行形でとんでもない迷宮が出来つつあったのだ。

 

「それじゃあ、設置可能な罠を確認しよう」

 

 

 リムルがそう言うと、順次罠の説明が行われていく。

 

 毒矢――壁などから飛来する毒の塗られた矢。。壁以外にもあらゆるところから飛んでくるぞ!

 

 毒沼――ボコボコと泡を立て、見るからに毒々しい沼。(はま)ると毒ダメージと状態異常を受ける。最悪、底なしの毒沼に当たると、浮力を奪われてどこまでも沈んでいく……。

 

 回転床――乗った瞬間気付かないよう回転する床。方向感覚を狂わせる。マッピングしても油断するな!

 

 移動床――乗ったら勝手に走り出す。かなり怖い。壁に向かってまっしぐら!

 

 切断鋼糸――微細に高速振動していて、目に見えぬほど細い鋼糸。気付かぬうちに首が落ちちゃうぞ!

 

 落とし穴――どこの迷宮にもある定番の罠! 落下ダメージよりも、落ちた先に何があるかわからないよ? そんな落とし穴です。

 

 疑似宝箱(ミミック)――これも迷宮定番だね! 暗いよぉ、怖いよぉ、どこかのエルフみたいに喰われるなよ?

 

 爆発宝箱――鍵開けのプロ、シーフはいるか? いなかったら開けるんじゃねえぞ? 絶対に開けるなよ? ツキハ特製の爆裂呪符が仕込んであるぞ!

 

 魔物部屋――こんにちはぁああああ! ようこそ、あたしのゴハン!

 

 密閉部屋――大量の粉が舞う、舞ってる? 中で火を付けると……。 

 

 暗闇部屋――松明(たいまつ)は持ってる? 持ってない? そう、なら売ってやっても良いよ? ツキハ姐さんどうぞ。うむ、一本金貨十枚で売ってやろう!

 

 落とし天井階層――徐々に天井が低くなるよ? 早くここから出よう。潰れちゃうぞ?

 

 地形効果階層――ここどこ? 何じゃあれは! 火山が迷宮に!? 何で?

 

 幻夜城階層――何でここに戦国時代のお城が? 壁がひっくり返り、床が抜ける? 掛け軸をめくるとそこには……。 

 

「とまあ、こんな感じかな」

 

 思い付くままに罠を列挙するリムル。

 

 その全てが実現可能との事だった。

 

「流石だな、ラミリス。この罠が、お前の力で具現化出来るのか?」

「うん、そうだよ! 迷宮内だったら、結構何でも揃うワケなのよさ!」

「ね、とんでも能力(スキル)でしょ? ラミリスってちっこいのに、迷宮内ではチート級だからねえ」

「な!? ちっこいは余計よツキハ! ていっ!」

「まあまあ、お前って本当に凄いよラミリス」

「でしょでしょ。フフーーン♪」

 

 ツキハが少しラミリスをからかい、ラミリスがツキハに飛び蹴りをお見舞いする。、

 それをヒョイヒョイとツキハが躱し、そんなラミリスをリムルが(なだ)める。

 

 機嫌の直ったラミリスが、罠の一つについてリムルに尋ねる。

 

「ところで、この密閉部屋って何なのよ? 粉って……こんなのが罠になるの?」

 

 その質問に、リムルはニヤリと笑い答える。

 

「その粉ってのは、小麦粉でもいいんだけど、密閉された部屋に充満させて火を付けると大爆発を起こすんだ。粉塵爆発と言うんだけどな。魔素を一切介さない、純粋な物理爆発なんだ」

「へえー。そんな物理的攻撃があるんだ」

「まあこれも、粉だけじゃなくて、無酸素状態とか毒ガスが充満しているとかの危険性も考量しないといけないから、かなり有効な罠になると思うよ。そもそも、そんな探索の基本が出ていないと、迷宮(ダンジョン)探索など無理だろう? 早死にするだけだしな」

「ん~、あ? そう言えば、教授から以前純粋な物理爆発について、少しだけ聞いたことがあったけど、あれの部類になるワケ?」

「そうだな。どこまで聞いてるかはわからないけど、それでいいと思うよ」

 

 魔法と能力(スキル)が主な攻撃手段なこの世界の住人の一人であるラミリスに、理解できやすいように話すと、今一理解できないけども、何となくは理解出来ているようだった。

 

「ふーん。まあ、凶悪な罠だというのはわかったわ。アタシ達には影響はないようだから、気にしなくてもいいわね。それと、幻夜城だけど、これ、ツキハの案でしょ?」

「うん。よくわかったな」

「ツキハに人間だった頃の話を、たまに聞かせてもらってたのよさ」

「へえー、そうなんだ」

「それにしても、アンタやツキハって……。前から思っていたけど、ほんとに恐ろしいわね。でも、頼もしいわ。こんな罠の数々、アタシじゃ思いつかなかったし……」

 

 ラミリスは、自分達が罠にかかる恐れが無いとわかり安心して、説明された罠の多彩さに感嘆し、リムルとツキハを褒める。

 

(何か少し、照れくさいな。大体この罠の数々は、元の世界のゲームで慣れしたんだモノなんだよなぁ。まあ、現実となると話は別なんだけども。何せこっちの迷宮(ダンジョン)は命懸けだし、この迷宮(ダンジョン)を攻略するなら、何日かかるか見当もつかない。二、三日程度では数階層攻略が限度だろうよ。更に地形も変化するから、十階層の記録地点(セーブポイント)まで一気に走破しないと駄目だろうな。俺達のように呼吸もいらず、毒も効かない、休息も必要としないならば、強行突破も可能だろう。しかし、人間はそうはいかない。英雄と呼ばれる者も人間だからな……)

 

 リムルは、ラミリスの誉め言葉を聞き、元の世界でプレイしていたファンタジーRPGの事を思い出しながら、この地下迷宮(ダンジョン)は、我ながら凶悪なモノになりそうだなと思った。

 

「ちょっとさ、難易度が高過ぎるかな?」

「そうか? 大丈夫であろう?」

「ええ? あたしが魔剣を取りに行った朽ちた古城の地下なんて、これの数倍は危険だったよ。これくらいなら、余裕じゃね?」

「そうだよ、リムル。このくらいなら、どうって事ないのよさ!」

 

 リムルの心配は、ヴェルドラ、ツキハとラミリスに笑い飛ばされる。

 

「そっか。なら、大丈夫か」

 

 リムルもそう納得し、四人はそのまま迷宮の迷路を考え始めたのであった。

 

 

 

 ◆◆◆◆◆

 

 

 一方その頃のコハクはというと……。

 

 

 ツキハとコハクの自宅の囲炉裏の横に、コタツが置かれていた。

 

 リムル考案の、試作型・〝刻印式魔力コタツ〟である。

 これの所有者はコハクであり、リムルから購入したものだったのだ。

 

 

 そのコタツにかけられているコタツ布団がモコモコと動き出すと――

 数匹の子猫に変幻した眷属が、コタツの中から打ち出され土間に転がり落ちた。

 

『何しやがるお前ら!』

『やめてよね、寒いし』

『まだ中には余裕があるだろうが!』

 

 などと、弾き出された眷属達がニァアニャアと文句を吐き捨てる。

 

 中には子猫形態の眷属達が所狭しと(こも)っていたのだ。 

 

 次第にコタツ争奪戦が激しくなり、シャア――ッ、フギャーーッと唸り声を上げ、総勢三十匹が囲炉裏端で、お互い向き合い、〝やんのかステップ〟を踏み出す。

 

 そこへ――

 

「やかましー!」

 

 あまりの(うるさ)さに業を煮やし、コハクが二階から降りてきた。

 

「何してるんや、みんなそこに並び!」

 

 ビシッと土間を指差すと、眷属達は飛び上がって驚き、一斉に土間に降りて座り並ぶ。

 

 コハクが右手をサッと横に振ると、蒼白い魔素粒子が渦巻き、魔猫に変幻する。

 

 全身短毛黒毛だが、鼻と口周り、胸に当たる部分が白毛であった。

 更に四本の足先が短い靴下を履いたように、白い毛で覆われていた。

 

 コハクは囲炉裏がある板の間の淵に座ると、土間を見下ろしながらしなやかな尻尾で一度パシーンと床を叩く。

 

 眷属達がそれで一斉に聞く姿勢になり、どこか怯えたような悲しそうな表情でコハクを見る。

 

 コハクの説教開始――

 

「ウォウォウォ、ウウワウ~」 唸るようで、何かを喋っているような低い声で鳴くコハク。

(喧嘩せずにコタツは使えと、うちは言いましたな?)

 

「「「「「ニャァ」」」」」 か細く、今にも泣きそうな声で鳴く眷属達。

(ごめんなさい)

 

「ウォウォウォ~、ダゥアウア゛ァー」

(アンタら別に寒うおまへんやろ。耐性あるんやさかい)

 

「「「「「ニャァ、ニャァ」」」」」

(はい……でも、魂がコタツを求めるんです)

 

「ウォウオォ」

(アホか!)

 

「「「「「ニャァ」」」」」

(ごめんなさい)

 

「アォウォウォ~」

(仲よう使わな、出禁にするで?)

 

「「「「「ニャァ」」」」」

(はい。ごめんなさい)

 

「ア゛ォア゛ォ~、オ゛ォー」

(次やってみなはれ。わかってるやろな?)

 

「「「「「ニャァ」」」」」

(もうしません)

 

 眷属達は皆尻尾の毛をポワリと膨らませながらも、コハクの説教が終わったのを確認すると、ゾロゾロとコタツの中に入っていく眷属達。

 

 しかし、説教されたばかりなのに、またも小競り合いを始めていく眷属達。

 

 懲りない猫さん達の、冬の日常であった。

 

 

 そして……。

 

 

「アンタらあ! ええ加減にせんと、叩き出すで――ッ!!」

 

 と、コハクの怒号が響くのであった。

 

 

 

 ◆◆◆◆◆◆

 

 

 それから数日。

 

 

 ラミリスは、嬉々として様々な罠を用意していた。

 それを、ベレッタとトレイニーが、あちこちの階層に設置してまわる。

 

 リムルとヴェルドラ、それにツキハは仲良く迷路を考案中。

 幾つものパターンを考え、すぐに変更出来るように登録をしておく。

 

 ここまでは順調だったのだが、いざ階層に〝地形効果〟を付与しようかという段階で、ラミリスが問題を提起した。

 

「むり、ムリムリムリ。アタシじゃ、そんな大量のエネルギーを維持出来ないよ! ツキハの所だって、ツキハとコハクのエネルギーで維持してると言ったじゃん!」

「あぁー、忘れてた。そうだったわ、ウハハハ(んん? これ誰って……ぁあ、何でバレてんの? ヤツは予言者か!?)」

 

 ラミリスが()を上げ、それにツキハが笑いながら肯定して、何かに気付く。

 

 リムルのイメージとしては、炎熱層や氷結層に暴風層といった、階層全域に自然災害が発生する地形効果を想定していたのだが……。

 

(そりゃ様々な自然災害を起こす階層とか、無理だわな。何だか最近、魔法で何でも出来る気になっていたわ。うん、無茶を言い過ぎたな)

 

 流石にやり過ぎだなと思ったリムルであった。

 

「そりゃそうだな。スマンなラミリス、無茶を言って――」

 

 リムルが諦めて、ラミリスに謝罪をしようとしたその時――

 

「どこかに棲息している、火竜(ファイヤドラゴン)氷竜(アイスドラゴン)を捕獲して連れて来ればいいのだ。何なら、ワタシが捕まえてこようか?」

 

 聞き覚えのある声。

 だがしかし、ここにいるハズのない人物の声が聞こえて来たのだ。

 

 リムル達が振り向くと、そこには桜金色(プラチナピンク)のツインテールを揺らしながら歩く、ミリムがいた。

 

「えぇっ……? 何でここにいるのミリム――」

 

 そう、ここは地下百階。

 

 まだお披露目もしていないのに、入れるハズは無いのに……。

 

 何事もないように入って来たミリム。

 

 魔王ミリムは、リムル達の前で立ち止まると、ニンマリと笑みを浮かべた。

 

 因みに智慧之王(ラファエル)とツキハは気付いていた。

 しかし、智慧之王(ラファエル)はミリムが悪意を抱いていないので、敢えて報告をしなかったのだ。

 

 ツキハは、気付いた時点で即諦めていた。

 

(ううん、まあ、俺がそうしろと言ったんだけど、これはちょっと考え直す余地があるな。融通が利かないというのは、ちょっと困りものだ。それと、ツキハも気付いていたのかよ。なら、すぐ教えてくれてもいいのになぁ)

 

《……》

 

(まあ、これは今後の課題という事で。今はミリムの相手だな) 

 

 そう考えてリムルは、ミリムに視線を向ける。

 

 すると、ミリムが勝ち誇ったように話し始めた。

 

「フフン。何やら面白そうな事をしておるような気がしてな、来てみたのだ。ワタシを()け者にするとは、いい度胸だなリムル」

「え? 俺?(何で俺だけだよ!?)」

「それとツキハ。ちょっとこっちに来るのだ」

(お! 矛先がツキハに変わった?)

 

 リムルを名指しした後、ツキハに近くに来るように手でコイコイとするミリム。

 

 あからさまにめんどくさそうな顔して、ミリムの前に来たツキハ。

 

 そして。

 

 ズビシッ!

 

「プギャァ!」

 

 いきなり涙目でツキハの頭に、全力チョップを入れるミリム。

 

 頭を抱えてうずくまるツキハが、上を見上げながら文句を吐く。

 

「いてえじゃねえかミリム。何すんだよ!」

「何で、何で、教えてくれなかったのだ」

「ええ? 何をよ」

「何で今まで、領地を持っていたのを隠していたのだ!」

「ほあ!? 何でバレたの?」

「上で聞いたのだ。友達に隠し事など酷いのだ!」

 

 ズゴン!

 

「ギャブッ!」

 

 今度は、全力ゲンコツを落とすミリム。

 しゃがみ込んだまま頭を抱え、変な声を上げるツキハ。

 

「あんたに教えたら、予告なしで遊びに来るじゃん!」

「友達のところに遊びに行くのだから、当たり前なのだ」

「いやいや。アンタみたいな、最古の魔王が気軽に遊びに来たら、住人がパニックを起こすって! いずれ教えるつもりだったから、そんなに怒らないでいいじゃんよ! 教えるの忘れただけだし!」

「本当か? 本当に教えるつもりだったのだな? 嘘を付いたら――」

 

 ミリムが拳にハアーッと息を吹きかけながら、ツキハを涙目で睨む。

 

(ヤバイ。あたしの命が非常にヤバイ。誰だよ、ミリムに領地の事を教えたヤツはあ!)

 

 こうなったミリムを(なだ)めるのは難しい事を、嫌というほど知っているツキハは、何とかこの場を逃れる手立てを必死で考える。

 

「うんうん、ほんと。近いうちに教えようと考えていたんだよ? 友達だもん、ほんとだよ? 友達には嘘つかないもん。ほんとよ?」

 

 いつもの如く、コテリと首を(かし)げ言う。

 

「ほんとだな?」

「うんうん、ほんとほんと。それと、いつものエロコスじゃなくて、今日の服は可愛いじゃん」

「ん!? これか? フフフ。でも、エロコスは余計なことなのだぞ?」

「ごめんごめん。それにそのベルト代わりの飾り紐、あたしが前にプレゼントしたモノだよね? 良く似合ってるよ。そのナックルもかっこいいじゃん」

「フフフ、いいだろうこのドラゴンナックル。リムルにもらったのだぞ♪」

 

 ミリムがいつもの布面積が少ない衣装じゃなくて、相変わらず露出度は高いが、上は肩(ひも)タイプのブルーにホワイトの横縞が入ったノースリーブへそ丈のシャツに、少しゆったりとした草色のショートパンツに飾り紐をベルト代わりに巻いていて、両手には、衣装に合わぬドラゴンナックルが鈍い光を放っていた。

 

 それを見たツキハは、とりあえず矛先を()らす為に、ミリムの衣装を褒めたのだ。 

 

 着ている服と、リムルからもらったドラゴンナックルを、ツキハから褒められて上機嫌になるミリムだった。

 

 

 こうして、何とかミリムの追及を(かわ)したツキハだが、次なる追及が待ち構えていようとは、思いもしなかったのである……。

 

 

 





 この作品を読んで頂きありがとうございます!

 次回の更新もよろしくお願いします!






  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。