忍びが転生したら〝異世界珍道中〟になった件   作:にゃんころ缶

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 お待たせしました。146話です


 ツキハ

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 コハク

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 傭兵商会ルヴナン・真の紋章


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 ※〝打刀〟
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146話 ミリムも一緒に

 

 

 どうにかこうにかミリムの怒りの矛先を逸らしたツキハ。

 

 話題をすり替えながら、ミリムと談笑し始めていた。

 

(ほっ……どうやら機嫌が直ったみたいだな。確かに、仲間外れは可哀そうだし、一緒にやりたいというなら――)

 

 リムルがそんな事を考えて影ると。

 

「フッ、ミリムか。まだまだ子供の貴様には、大人である我々の崇高な仕事が理解出来ぬようだな? これは遊びではない。邪魔するでないわ!」

 

 ツキハと話しているミリムを一瞥して、堂々と言い放った。

 

「はあ!?」

 

 それを聞いたツキハが首を傾げつつ、せっかくミリムの機嫌が直ったのに、ヴェルドラなにしてくれてんの? という顔をする。

 

(いや、名目上は仕事だけど、とても仕事をしてるようには見えないんだけどね……)

 

 リムルが返事をする間もなくヴェルドラが一刀両断したのを、ツッコミともボヤキともいえない気持ちで、心の内で呟く。

 

 更にそこへ、追撃が放たれる。

 

「師匠の言う通り! アタシ達はここで働いているんだから、暇なアンタはさっさと帰るがいいのよさ!!」

「おい!」

 

 ラミリスがそう叫び、ツキハが、やめろ馬鹿とばかりに声を上げる。

 

 そんなラミリスは、憐れ、ミリムにムンズと掴まれてしまった。

 

(あらぁ。その勇気は認めるけど、実力が伴っていないよね、ラミリス。うーむ。ツキハの尻尾がえらい勢いで左右に振られている。今、必死にこの状況を回避する手段を考えているんだろうな。まあ、俺はそんな勇気はないので、普通に聞いてみるか)

 

 ラミリスとツキハを見ながら、そう思うリムル。

 

「大体な、面白そうな事って、何を言っているんだ。お前が俺に手紙を寄越したから、盛大な祭りを企画しているんじゃないか」

「何ッ!? ワタシの手紙を忘れていたとか、無視したとかじゃないのだな?」

「あのなぁ、そんな訳ねーだろ。お前ね、一応は魔王を招待するんだから、下手な真似は出来ないだろう?」

 

 あからさまに不満そうだったミリムは、自分が無視されたわけではないとわかり、途端にニコニコと笑みをこぼしていく。

 

 だがしかし、そこで逆に不満を募らせた者がいた。

 

「ちょっとちょっと、リムル! アタシも魔王なんですけど? ミリムやアンタと同じ、八星魔王(オクタグラム)なんですけどっ!? 一人番外いるけども!」

「ほっとけ!」

 

 ミリムと自分では扱いが違うと、ラミリスがプンスカと怒り始め、番外一人と言われたツキハが言うなとばかりに、ラミリスに返す。

 

「あのなあラミリス。お前は招待云々(うんぬん)以前に、勝手に引っ越しして来たんだろうが!」

「な、何いッ!? 引っ越しとはどういう意味なのだ? まさかラミリス、貴様、リムルと一緒に住んでおるのか?」

 

 リムルとミリムのツッコミに、今度はラミリスが慌て始める。

 

「えと、そうだった! アタシは招待されなくても、もう関係ないんだった! ボッチも卒業したし、今はリムルとツキハと一緒に暮らしているし!」

「ツキハだと?」

「ふあぁーーっ!」

 

 この誤解を招くような爆弾発言より、ミリムには、ツキハという爆弾言葉が炸裂した。

 

 ツキハが変な声を上げ、固まってしまう。

 

「おい貴様、どういう事なのだ?」

 

 ミリムがゆらりと、ツキハの前に立ちはだかる。

 

「え? ぁーそれはね。あれよ?」

「何だ」

「ヴェルドラとの決闘は覚えてるよね?」

「それが何だ?」

 

 完全に目が座ったミリムに、ツキハの目がグリグリと泳ぎ回る。

 

「ヴェルドラがね、この国に住めと言ったから住んでるの。負けたら、一つだけ言うことを聞くという約束だったのよ?」

「それで、何でワタシに黙っていたのだ?」

「えと、ね。ほんとごめん。マジ忘れてた、てへ♪」

 

 ツキハが自分の頭をコツンとしながら舌を出して首を(かし)げ、バツの悪そうに言うと――

 

「嘘つきは許さないのだ!」

 

 ズゴォーンッ!

 

「アギャッ!」

 

 ミリムの全力チョップが、ツキハの脳天を直撃する。

 

 絶妙な衝撃範囲制御で、チョップの衝撃波がツキハの周りだけを限定して真下に突き抜けていった。

 

 フニャ~と力が抜けような(うめ)き声を出しながら、ツキハはその場に崩れ落ちる。

 ツキハを中心に、床の石板に半径三メートル程のひび割れたクレータが出来ていた。

 

(うわ。ヤッベえー。本格的にこの二人が喧嘩したら、迷宮がぶっ壊れるんじゃね?)

 

 ミリムのチョップの威力を見たリムルが、心の内で迷宮(ダンジョン)の心配をする。

 

 ツキハは、両膝を折り曲げるように両手を広げたまま背中から仰向けに倒れ目を回していた。

 

 ミリムは、ぐるりとリムルの方を見る。

 

「ずるい、ずるいのだ! ツキハもラミリスもずるいのだ! ワタシもここで暮らしたいのだっ!!」

 

 ここまで来ると、もはや駄々っ子みたいに抗議するミリム。

 

 そこへ、ラミリスの余計な一言が炸裂する。

 

「へへーんだ! アタシはここで働いているからね。ツキハともいつでも遊べるし、リムルの役にも立ってるしっ! アンタみたいに迷惑をかけるだけの客人じゃないってワケ」

「何をぅ!? そんな事を言うとは、貴様など――」

 

 怒ったミリムが、ラミリスに喧嘩を売っていく。

 

 ツキハは目を回したまま。

 

 ラミリスは、勝てる訳もないのに空中を飛び回りながら、シュッシュッとシャドーボクシングをする。

 

 リムルは、もう、巻き込まれないように見守るのみ。

 

 この場合、ミリムが実力行使に出ると、ツキハとは違い喧嘩にはならないので、ラミリスとの喧嘩は、口喧嘩だけである。

 

「アタシの四十八の必殺技を喰らえ! てい、ていっ!」

「ワハハハハ。そんな、ヒョロヒョロ飛び蹴りなど当たらないのだ」

「ツキハ! 起きるのよ。起きて、アタシを手伝いなさい。気絶したふりはわかってるんだからね!」

 

 ラミリス、他力本願発動。

 

「ん? 気絶したふりをしておるのか? 起きたら駄目なのだぞ?」

 

 ミリムがニヤリと薄く笑みを浮かべ言うと、返事の代わりにツキハの尻尾の先がピクンピクンと波打つ。

 

「やっぱりか。ツキハがアレくらいで気絶する訳ないしな。それにしても、ほんと猫だな。尻尾だけを動かして返事とか。元いた世界の猫と変わらないな。ウククク」

 

 ツキハの倒れた姿を見てリムルは、小さく呟くながら思わず笑いを漏らす。 

 

 罵り合う二人ラミリスとミリム。

 

 その罵り合う言葉にも、悲しいかな、圧倒的に語学力が足りない始末。

 バーカ、アホ、という言葉が飛び交い、もう、子供の喧嘩と変わらないレベルであった。

 

 ある意味、見ていて微笑ましい光景でもある。

 

 ラミリスが、バーカバーカと言いながら飛び蹴りをかまし、ミリムがラミリスを捕まえようと追いかける。

 

 それは、鬼ごっこみたいで、傍から見ると、仲良く遊んでいるようにしか見えなかった。

 

 リムルは、それを眺めながら――

 

(ラミリスとミリムってば、古くからの知り合いらしいなぁ。でもそれを言うと、ツキハも千年以上の付き合いになるから、ツキハも古い知り合いだよな。この三人の喧嘩って、一種の親愛表現なのだろうか?)

 

 と、ツキハから聞いた事を何となく思い出す。

 

 そんな二人の喧嘩も、あっけなく終わりを迎える。

 

 シュナがオヤツを用意して運んで来たのだ。

 

 そして、喧嘩をする二人を見て一喝する。

 

「喧嘩している人には、オヤツは無しです!」

「「なっ!?」」

 

 その一言で二人は、一瞬にして大人しくなった。

 

 で、ツキハはというと、いつの間にかちゃっかりと正座していたのだ。

 

「早や!」

 

 それを見たリムルが、思わず声にした。

 

 こうして仲直りした三人は、仲良くオヤツを食べ始める。

 

(うーむ……。いきなり馴染んでいるが、問い(ただ)さねば) 

 

 そう思うと、リムルは口を開く。

 

「それでさ、ミリム。お前何をしに来たの?」

「フフン、言ったであろう? 何やら面白そうな事をしておるような気がしたと、な」

「いやいや、ってかさ、本当にそれが理由なのか?」

「そうなのだ。だが、来てよかったぞ。このロールケーキとやらも最高だし、この迷宮とやらも面白そうなのだ。まさかラミリスが、このように役に立つとは思わなかったのだ。聞けば、ツキハ達の迷宮領地もラミリスが創っていたとは、二重に驚きなのだぞ」

「ふふーーん! アタシだって凄い実力を隠し持ってたってワケよ。ツキハとコハクはそれに気付いていたの。アンタがそれに気付かなかったワケという事なのよさ!」

 

(いやいや。そういうお前も気付いてなかったよね。ハッキリ言って気付いていたのは、あの二人だけだぞ)

 

 と、リムルは心の内でラミリスにツッコミを入れる。

 

(しかしあれだ、ミリムのヤツ、こういう悪巧みには本当に鼻が利く。そう言えば、ツキハが言ってたっけ。コハクと悪巧みして遊ぼうとしたら、どこからともなくミリムが来ていたと。どんなに気配を消して偽っても、自分達を見つけ出す困った魔王だ、と。唯一、隠れた自分とコハクを見つけられる者だと、笑いながら言ってたな。まさしくミリムには、隠し事が出来ないと言ったところか。これ、反則級だろ。しかしなぁ、元魔王のカリオンとフレイを従えるようになったというのに、フットワークが軽いのも、驚きだよ。まあ、ミリムに理屈は通じないし、ある意味ツキハとコハクもその辺は同類だよな。単身で出歩くなんて、ツキハもコハクもやってるし、ミリムがやってもそう驚くことはないか)

 

 残ったロールケーキをツキハと取り合いをするミリムを見ながら、そう思うリムルであった。

 

 そこへ。

 

「よし、オヤツも食べたし、そろそろ仕事に戻ろうではないか。ミリムも邪魔をしないというのなら、一緒に楽しめばよかろう」

 

 珍しく、大人の対応を見せるヴェルドラ。

 

(お、ヴェルドラやるじゃん。これで、ミリムも満足だろう)

 

 ヴェルドラが快く納得したのを見て、リムルは内心で安堵する。

 

 ツキハとミリムの喧嘩でさえ、手加減してるとはいえ、迷宮全体が微細な震動を放っていたので、ヴェルドラまで喧嘩に加わると、間違いなく迷宮がぶっ壊れるだろうから。

 

「師匠がそう言うなら、アタシも異論はないワケ」

「だね。ミリムも一緒に遊ぶ(迷宮創作)といいよ」

 

 そもそも、この三人と、ここにはいないコハクとは結構仲が良い。

 昔から、こんなじゃれ合いみたいな喧嘩を繰り広げていたのだ。

 

「任せるのだ! 邪魔などしないし、ワタシにも仕事を寄越すがいい!」

 

 御機嫌になったミリムの参加が、ここに決まった。

 

 リムルも異論はないのでそれはいいのだがと、思う。

 しかしだ、リムルの脳裏には、気になるある事が浮かび上がる。

 

 それを確かめようと、ミリムに問う。 

 

「それじゃあ、ミリムも参加って事でいいんだが――」

「うむ。こういう楽しそうな話は、計画から呼んで欲しいのだぞ! 後ツキハ、友達に隠し事は駄目なのだ!」

「ほーい(知らんわ! ってか、多分アレだろうな、ここに来た本当の理由は……巻き込まれないようにしよーっと)」

「わかった。だが、それはそれとして。ミリム、お前の部下達は大丈夫なの?」

「え?」

(ほらな、やっぱり。これ、アカンやつじゃん)ツキハ、心の声炸裂。

「ちゃんとさ、カリオンさんかフレイさんの許可を、もらって来ているよな?」

 

 自由奔放に見えるツキハとコハクでさえ、傭兵商会ルヴナンや迷宮領地の管理は基本人任せなところもあるが、大事なところはキチンとやっている。

 

 ミリムは番外魔王と違い、最古の魔王である。

 

 二人の元魔王を配下に加え、クレイマンの領土すらも併呑(へいどん)し、広大な領土を支配する絶対者。

 

 領土運営をカリオンやフレイに任せているとはいえ、今までの比ではなく忙しくなっているハズなのだ。

 

 そんなミリムが、果たして自由に遊び歩けるものなのだろうか?

 リムルはそんな疑問を抱き、ミリムに聞いたのだ。

 

 ツキハに至っては、ミリム張りの勘の良さで、ミリムがここに来た本当の理由を見抜いたのであった。

 

 リムルの質問にミリムは、ついっと視線を逸らしてしまう。

 

「まあ、な。ほら、ワタシは優秀だから……な? 決して勉強が嫌で、逃げて来た訳ではないのだ!」

 

(確定だわ)ツキハ心の声。

 

 しどろもどろになりながら、そんな事を言うミリム。

 

 何故か、ツキハの笑みが深まっていたのにリムルが気付き何でだろうと思うも、今はミリムだと考えた。

 

(ふむふむ。国家状況をフレイ辺りが調べ(まと)めて、それをミリムに渡して教えていたんだろうな。で、ミリムはそれが嫌になって逃げだしたと、いうところだろう)

 

 リムルがミリムに何かを言おうとした瞬間――

 

「嫌だ! ワタシも断固参加するのだ!」

 

 リムルが何かを言うより早く、ミリムが先に断りを入れてきた。

 

(あー、何て言うか流石ミリム、本当に勘が鋭い。これ、カリオンかフレイさんに連絡を取るべきなんだろうけど、まああいいや。どうもツキハが完全に見抜いてるみたいだし、あの笑みは巻き込まれない(すべ)を、思い付いているよね? ツキハ姐さん、その時は俺も乗っからせてね。まあでも、怒られるのはミリムなんだし、俺は知らなかった事にしてもいいな。そうだ、そうしよう)

 

 とりあえずは、そう結論付けたリムルなのであった。

 

 こうしてリムルは、さっきミリムが気になる事を言ったのを思い出し、それについて尋ねる。

 

「よし! 怒れるのはお前だから、その話は置いといて。竜だよ、竜! 今さっきお前が言ってた話なんだけど、竜を捕獲(ティム)して来る、だっけ? そんな事が本当に出来るの?」

「うっ!? やはり、怒られるのか? いや、しかし……仕方あるま、い。冒険をするには、危険がつきものと言うしな……」

 

 怒られる事を恐れつつ、宿題をサボって遊ぶ子供のようになるミリム。

 チラッとツキハを見るも、「こっち見んな」と、笑顔で返される。

 

 それでも、怒られるか否かの葛藤の中、ミリムは遊ぶことを選択する。

 

「竜だったな、捕獲するのは可能だぞ。何なら、ワタシとツキハで捕獲してこようか?」

「サラッとあたしを入れんな。めんどいから嫌だぞ」

 

 あっさりと気持ちを切り替えたミリムは、まるでカブトムシでも捕まえに行くようなノリで言い、極自然にツキハを捕獲仲間に入れようとする。

 

 それをツキハが即答で拒否った。

 

 まあ何にしろ、リムルに取っては願ったり叶ったりなのだ。

 

「お、頼めるか? それなら、どんな種類がいるんだ? ドラゴンって、〝竜種〟と関係あるのかな?」

 

 捕まえてくれるというなら、頼むよと、リムルは気軽にそう言ったのだが、リムルの言葉にヴェルドラとミリムにツキハが同時に反応した。

 

「リムルよ、ドラゴンと〝竜種〟は違うのだぞ」

「その通り。ルミナスではあるまいし、お前まで我をあのようなトカゲ共と一緒にするでないわ!」

「リムルく~ん。老獪(ろうかい)吸血姫と同じ事を言うと、あたし、怒っちゃうぞぉ」

 

 と、激しく抗議する三人であった。

 

 そして、その勢いで(ドラゴン)について詳しく説明を受ける事になったのだ。

 

「――そもそもこの世界の竜族(ドラゴン)はだな、我が兄にして最強の〝竜種〟たる〝星王竜〟ヴェルダナーヴァの、劣化した因子を持って生れ出た魔物に過ぎぬのだよ、リムル」

 

 そう言ってヴェルドラは、静かに語り始める。

 

 ()ず大前提として、物質生命体か精神生命体かという違いがある。

 

 魔物であるドラゴンは、肉体を持つ物質生命体。

 

 〝竜種〟と姿が似ているからドラゴンと呼称はされてはいるが、その本質は恐竜に近い。

 ようは、大きくて凶暴なトカゲと、言う事であると。

 

 この世には四体しか〝竜種〟は存在していない。

 しかし今は、三体しかいないのだとヴェルドラは言う。

 

 ヴェルドラの兄してミリムの父である〝星王竜〟ヴェルダナーヴァは、とある事情によって滅んで以降、復活の兆しすら見せていないのだと、ヴェルドラは言った

 

「我ら〝竜種〟は不老不滅の存在なのだが、うーむ、これには事情があると思えるのだがな……。うむぅ、それはまあ、置いとくとしてだ――」

 

 腕を組んで頭を(ひね)るヴェルドラ。

 とりあえずこの問題は先送りにして、話を進める。

 

 そして、ドラゴンの起源は、その〝星王竜〟ヴェルダナーヴァに辿り着くと言った。

 

 正確には、〝星王竜〟ヴェルダナーヴァがミリムに与えたペット、精霊竜(エレメンタルドラゴン)に。

 

 ここでリムルは、前にエレンから聞いた話と、ツキハとコハクから聞いた話を合わせて考える。

 

(なるほど。その精霊竜(エレメンタルドラゴン)が死んで混沌竜(カオスドラゴン)になったのか。だとすると、その際に竜の因子がばら撒かれたんだろう。今でも魔素溜まりから、下位龍族(レッサードラゴン)が生まれたりするようだし、精霊竜(エレメンタルドラゴン)の因子が色濃く出れば、上位龍族(アークドラゴン)になる訳だ)

 

 ヴェルドラの説明を聞きながらリムルは、うんうんと静かに(うなづ)く。

 

 そして、ヴェルドラの説明も上位龍族(アークドラゴン)についてのところだった。

 

 そんな上位龍族(アークドラゴン)の中でも更に別格なのが、四系統の属性を象徴する竜王(ドラゴンロード)達なのだと言う。

 

 上位龍族(アークドラゴン)まで進化してから数百年生き延び、更に知恵までも身に着けた存在――

 それが、竜王(ドラゴンロード)なのだと。

 

「ここまで進化すると精霊竜(エレメンタルドラゴン)の力の一部を行使出来るようになるのだ。そして、寿命も無くなり半ば精神生命体に近い存在となる。もっとも、我ら〝竜種〟と違って、滅んだら終わりなのだがな」 

 

 と、ヴェルドラはここで一旦説明を区切り、リムルにここまでで何か質問はあるかと聞く。

 それにリムルは、無いというように首を横に振り、何事かを呟き始める。

 

「そうすると、俺が以前倒した天空竜(スカイドラゴン)上位龍族(アークドラゴン)で、その脅威度は確か、災厄級(カラミティ)だったか。竜王(ドラゴンロード)はそれ以上に強いのだから、魔王に匹敵する感じかな? 確かにそれだけの魔素量(エネルギー)があれば、階層に地形効果を与えるのも造作ないだろう……」

 

 そんなリムルを見て、ミリムが声を上げる。

 

「まてまて、流石のワタシとツキハでも、誇り高き竜王(ドラゴンロード)捕獲(ティム)するのは無理なのだ!」

「だから、何であたしが入るのよ!」

 

 リムルが何か勘違いをしていると察し、ミリムが慌ててそう言った。

 またも自分が一緒に行く前提で言われ、ツキハが抗議の声を上げるがそれはスルーされてしまう。

 

(言われてみれば、確かに。知恵ある竜王(ドラゴンロード)を従えるなど、無理だよな。相対すれば捕獲(ティム)ではなく、倒すしかなくなるのは必然かぁ)

 

 流石に、これは無理があると考えたリムルである。

 

「それもそうだよな。じゃあお前が捕まえると言っていたのは?」

「うむ! 竜王(ドラゴンロード)にならずとも、属性がある上位龍族(アークドラゴン)はいる。ソヤツ等を捕まえて放し飼いにしておけば、魔素を喰って地形を変化させてくれるのだぞ」

「なるほど。ドラゴンは巣作りをするから、縄張りとする地形を、自分好みに作り変えてくれるという訳か。魔素はふんだんに満ち溢れているから材料には申し分ない。ミリム、その案を採用だ。頼めるか?」

「任せるのだ! 竜王(ドラゴンロード)になる一歩手前の属性竜を、それぞれ一匹ずつ捕まえて来よう」

 

 ミリムが言うには、精霊竜(エレメンタルドラゴン)から派生するのは四系統だけとの事。

 

 各々の属性――地、水、火、風の竜王(ドラゴンロード)を頂点とし、属性竜へと進化していく。

 

 その属性竜も四体、四属性。

 

 火炎竜(ファイアドラゴン)氷雪竜(アイスドラゴン)烈風竜(ウインドドラゴン)地砕竜(アースドラゴン)、がそれであった。

 

 リムルがイングラシア王国で倒した天空竜(スカイドラゴン)は、烈風竜(ウインドドラゴン)への進化に失敗した亜種とも付け加えた。

 

 精霊とは違い、〝空〟属性はいない、だから亜種なのだと。

 

 

 因みに属性竜は、亜種竜よりも強い。

 軽く見積もっても、特A級でも上位に位置する。

 亜竜種一匹に対して、聖騎士(ホーリーナイト)六名が互角となる計算だ。

 

 それが属性竜ともなれば、聖騎士団(クルセイダーズ)の一個小隊で倒せるかどうかというレベルになる。 

 

 それを理解しているリムルだが、ラミリスの迷宮内なのでそこは問題ないだろうと、配置場所を決めていった。

 

 精霊の五大元素の相克(そうこく)関係。

 

 地は空に強く、空は風に強く、風は水に強く、水は火に強く、火は地に強い。

 ところが、属性竜の強さには、この相克は関係ないのだ。

 

 ミリムとツキハ(いわ)く、戦闘経験が重要だと言う。

 ようするに、若い竜より、老竜が強いという事になるのだ。

 

 そこでリムルは、こう決めた。

 

 九十九階を炎獄階――

 高熱の炎に包まれた、最後の難関であり地獄への入口。

 耐熱装備はOK? いざゆかん地獄の一丁目。

 

 九十八階を氷獄階――

 寝たら死ぬぞ? 耐寒装備は準備したか? 喉が渇いても雪は喰うなよ。溶かして飲め!

 

 九十七階を天雷層――

 天空より降り注ぐ雷の脅威。君の運は最高か? 運が悪いと最初の落雷が直撃するよ?

 運は天任せで、さあ行けよ!

 

 九十六階を地滅層――

 大地が割れ君を飲み込む! 割れた裂け目の底が見えない? 凶悪な竜の怒りを知るがいい!

 

「とまあ、こんな感じかな。最終ボスであるヴェルドラと、隠しボスのツキハを前に、超高難度の地形効果層を用意する。これで完璧だろ。普通に考えて攻略は、不可能じゃね?」

「やるわね、リムル!」

「クックックッ、我とツキハの前に雑種共を並べるか。偽物を見て安心したところで、我の出番という訳だな! クワーハッハハハハ、ツキハよ許せ、お前の出番はないぞ」

「別にいいよ~。ヴェルドラを倒す者などいるハズないもん」

「むう、ヴェルドラの役は美味しすぎるのだ。それとツキハ――」

「嫌だ。変わらないよ」

「なっ!? ワタシもたまにはラスボスとやらをやってみたいぞ!」

 

(うんうん。三者三様に満足そうで、俺としても嬉しい限り。しかし、肝心の属性竜がまだなので、ここで一つ、ミリムを持ち上げるとするか)

 

 ワイワイと騒ぐミリム達を見て、リムルは真剣な表情でミリムに言った。

 

「何を言っているんだ、ミリム。お前の協力があってこそ、この最後の罠が完成するんだぞ。当てにしてるからなミリム」

「そうだよミリム! 今回はアタシからもお願いするよ。うんと強くてカッコいい竜を捕まえて来てよね!」

「そだよーミリム。頑張って捕獲して来てね!」

「うむ、任せるのだ! 行くぞツキハ!」

「ふあ!? 聞けよ人の話は! めんどいから嫌だと言ったんだよ?」

「良いから行くのだ。サッと行って帰ってくればいいのだ!」

「ちょ!? 襟首掴むなって、放せよミリム!」

 

 リムルの意図に気付いたラミリスとツキハが調子を合わせるも、肝心のツキハだけはもうミリムの同伴に決定されていた。

 

 文句を言うツキハの襟首を掴み、竜の捕獲(ティム)にツキハを連行していくミリム。

 

「嫌なら全力で抵抗すればいいのに。ククッ」

 

 と、それを見たリムルがクスリと笑い言う。

 

「まあいいんじゃない。昔からああなのよさ、ミリムとツキハはね」 

 

 と、ラミリスもクスクスと笑い言った。

 

「さて、我等は迷路の創作を続けるか」

 

 と、ヴェルドラは、引き()られていくツキハを見送りながら、リムルとラミリスに告げる。

 

 

 こうして、ミリムとツキハは竜を捕獲しに旅立った。

 

 

 そして――

 

 

 捕獲されて来た四匹の竜は、ラミリスの配下に加えられる事になるのであった。

 

 

 





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