忍びが転生したら〝異世界珍道中〟になった件   作:にゃんころ缶

153 / 239

 お待たせしました。153話です

 ツキハ

【挿絵表示】


 コハク

【挿絵表示】



 傭兵商会ルヴナン・真の紋章


【挿絵表示】



 ※〝打刀〟
【挿絵表示】







153話 夢の〝エルフのお店〟

 

 

 謁見の間に帰って来たリムル達。

 

 

 リムルはサッとスライム形態に戻ると、ポヨンと跳ね上がり玉座に座る。

 

 そして、玉座の後ろにベニマル達が並び立つと、今度は姿を見せたままツキハとコハクは、壇上の下でそれを挟むように左右に立つ。

 

 コハクの頷きにより、その場にいたイチコがリムルに向かって深く一礼をして、謁見会場周辺の警備に戻って行った。

 

 して、牛頭族(ごず)馬頭族(めず)の族長はというと――

 

 プルプルと青褪(あおざ)め震えながら(ひざまず)いていた。

 引き連れている若者達も皆同様に震えながら、長に(なら)って平伏している。

 

 先程までの偉そうな態度とは打って変わって、どこの弱小部族だと思うほどに弱々しく見えていた。

 

「お、お戻りをお待ちしていました」

「我等の忠誠を、魔王リムル様に捧げたく存じます!!」

 

(え? 一体、お前達にどういう心境の変化があったんだ?)

 

 さっきまでの態度とは大違いに、逆に心配になるリムルであった。

 

「本気なのか?」

「と、当然で御座います!」

「我等の力、是非とも好きにお使い下さい!」

 

(ふーん、なるほどね。イチコが持っていた水晶球でアレをアイツ等に見せていたのか。そういう事なら遠慮はいらないな。俺としては、気兼ねなくコイツ等を利用出来るというもの。大体、百年以上戦争してるんだから、戦う事が好きなんだろう。なら、迷宮を戦う場にしても文句はないだろうよ。弱小種族からの略奪もしていたみたいだし、迷宮に隔離した方が喜ばれるだろうな) 

 

 と、そんな事を考えるリムルであった。

 

「お前達は力が余っているようだから、俺が暴れられる舞台を用意してやろう」

 

 そう言ったリムルの後に、シオンの言葉が続く。

 

「今のお前達が存在していられるのは、幸運だと思え。先の騒動がなければ、警備に当たっていたツキハ様とコハク様が動くところだったんだぞ。(もっと)も、私が先に動いて、聞くに堪えない言葉を吐き連ねるその舌を引き千切り、喋れなくしようと思っていたのだがな。リムル様の御慈悲に感謝し、今後とも励むように」

 

 シオンの言葉を、ガクガクと震えながら激しく頷く牛頭族(ごず)馬頭族(めず)

 

「「必ず、必ずやご期待に応えて見せます! ですから、何卒先程の無礼をお許し下さい!!」」

 

 声を揃えてそう宣言する牛頭族(ごず)馬頭族(めず)(おさ)

 二度と逆らう意志はないと、全身で言い表していた。

 

「うむ。俺に忠誠を誓うならば、取り立てる事も考えよう。とにかく、先ずは争うのを()めて、俺が伝達を出すまで大人しくしているように」

「「(おお)せのままに!」」

 

 こうして、迷宮に配置するボス役が手に入ったリムル。

 

 リムルはホクホク顔のまま(といっても、スライムでは表情などは表れないが)牛頭族(ごず)馬頭族(めず)の謁見は終わったのだ

 

 これ以降、謁見はスムーズに進む事になった。

 シオンがダグリュールの息子達を従えたと噂が瞬く間に広がり、更に番外魔王の二人が自ら警備に出ているという事も知れ渡ったのである。

 

 そういう事で、余りにもスムーズなので、暇を持て余したツキハが抜け出して遊びに行こうとしていたところをシュナに見つかり、シュナに「こちらへ」と、有無を言わさずシュナの隣へ連れてこられ、そこで警備をする羽目になったツキハであった。

 

「えと、シュナ? あたしは部外者だから、あっちで警備を……ね? あ、はい、ここにいます」 

 

 ツキハがどうにか逃げようとするも、それを無言の笑顔で却下するシュナ。

 

 それを見ていたコハクが、ジト目で「アホの子どすな」と小さく呟く。

 

 

 穏やかな時間の流れの中、様々な種族がリムルの謁見に訪れた。

 

 

 そして今、耳長族(エルフ)の長老がリムルの前に(ひざまず)いていた。

 

 とは言っても、長老にしては若い青年であり、御付の者の男が数名。

  

(美人のお姉さんはいないのかぁ、残念。この世界のエルフ……)

 

 などと、ぼんやり思い考えるリムル――

 

 リムルの想いを感知したかのようにシオンの右眉が、ピクンと微かに跳ねた

 

 

 エルフ――とても長命な種族である。

 

 精霊が実体化して――あるいは堕落して――妖精となり、肉体を持った。

 それこそが、エルフやドワーフの祖と言われている。

 

 小鬼族(ゴブリン)なども血を辿れば、妖精に行き着くらしい。

 

 〝地〟属性が地人族(ドワーフ)に。

 〝水〟属性が魚人族(マーマン)に。

 〝火〟属性が小鬼族(ゴブリン)に。

 〝風〟属性が耳長族(エルフ)に。

 

 大昔に妖精が多種族と交わった結果生まれたのが、彼等の祖となるのだろう。

 

 寿命に関しては、小鬼族(ゴブリン)だけは血が薄すぎて、元々短命である。

 進化先の大鬼族(オーガ)でも、百年そこそこしか寿命はない。

 しかし、大鬼族(オーガ)の中には(まれ)に、限界を超えて長生きする個体もいた。

 

 リムルに会う前のハクロウが、その稀有(けう)な個体であったのだ。

 

 そこで、エルフの寿命はというと、大体五百年から八百年と言われていた。

 人間との混血、ハーフエルフでも三百年くらいは生きる。

 

 もっとも、寿命の個体差は大きい。

 

 妖精の血が濃いほどに、長命となっていくのだ。

 

 だから、純血種と言われるエルメシアなどは、気の遠くなる寿命を持つ。

 

 そう、エルフの上位種〝風精人(ハイエルフ)〟――

 エラルドや娘のエレンもこれに当たり、リアナも十三王家に連なる一族の娘だが、その家を出てからはアルクセールを名乗り、現在に至る。

 

 ちなみに、魔導王朝サリオンの人口は一億人プラス、自由民二千人である。

 

 そして――

 リムルに名付けられた眷属とも言える配下達、特に幹部達に至っては、この枠組みから緩やかに外れていき始めている。ディアブロに至っては、悪魔族(デーモン)であり原初なので寿命という概念はない。

 

 

 エルフは二十年程度で成人し、そこからは年を取らない。

 そして、寿命が終わりに近付くと急激な老化が始まり、二十年ほど経過したのちに老衰による最後を迎えるのだ。

 

 数百年は若さを享受出来るという、人間種からすれば夢のような種族であった。 

 だから、強大な力や権力を持つ人間種は、不老不死の奇跡を求めて()まないのだ。

 

 

 ちなみに、妖精と呼ばれるモノは、今でも存在する。

 

 ラミリスと同じようなサイズで悪戯(いたずら)好き、小精霊が魔素の影響を受けて魔物化した者がそれである。

 

 一応知恵はあるが、一代限りで寿命も短い。

 同じ妖精でも、大精霊が実体化した存在と比べるまでもなく、全く別の魔物と区分されているのだ。

 

 ラミリスもそんな妖精と混同されがちだが、全く別の存在である。

 

 精霊女王とも呼ばれる存在が、堕落した結果のラミリス。

 なので、エルフやドワーフの祖先より、上位であった可能性が高いのだ。 

 

 と、何とはなくボンヤリしていたリムルは、サッと『思考加速』を解除し我に返る。

 

(おっと、いけないいけない。謁見中だった)

 

 ちょうど長老の挨拶の始まりだった。

 

 

「魔王リムル様。お目にかかれました事、光栄に存じます。本日は、お祝いと、そして、御礼を述べさせて頂きたく存じます」

 

 長老は一礼して、リムルにそう述べた。

 

(御礼? 初対面だよな、この長老とは。何で?)

 

 心当たりのないリムルは、内心首を(かし)げる。

 

 そこへリグルドが、長老に問いただしてみると。

 

「恐れながら、それは――」 

 

 長老が語ったのは、牛頭族(ごず)馬頭族(めず)の一件が関わった事だった。

 

 あの両種族の百年における戦いの一番の被害者は、大森林に住まう耳長族(エルフ)だったのだ。

 

 森の恵みで生きる生きるエルフにとって、戦域の拡大は死活問題だった。

 

 ヴェルドラが封印されている間、ツキハとコハクが大森林を陰から見守っていたが、それはあくまでも外敵からの侵略に目を光らせていただけで、内部の争い事には一切関与はしていなかった。

 

 傭兵としての依頼があればその限りではないが、そういう事である。

 だがしかし、エルフが奴隷にされる事だけは、エルメシアの依頼もあり、エルフを奴隷にして来た(やから)は、人知れずルヴナンによって闇に葬られて来たのであった。

 

 それでも、ルヴナンの目を掻い潜ってエルフを奴隷にする貴族達は少なからずいたのも事実。 

 

 

 大森林に住まうエルフは、外敵から身を守る為に、隠れ里の周囲に方向感覚を狂わす『結界』を張っていた。

 

 ところが、牛頭族(ごず)馬頭族(めず)の戦争により樹木が()ぎ倒されてしまう。 

 これにより、木々がなくなってしまい、いくら『結界』を張っても隠れ里が丸見えになる事態が起きたのだ。

 

 その為に、里の場所を移したりしたが、戦争は拡大の一途を辿った。

 牛頭族(ごず)馬頭族(めず)の戦争のせいで、狩れる森の動物や魔物などが逃げ出してしまい、食べられる果物や野菜なんかも失われ、ドワーフ王国などに出稼ぎに行く者や、里を離れる者なども出る始末。

 

 リムルは長老の話を聞きながら。 

 

(そっかぁ。ドワーフ王国の酒場街にある『夜の蝶』にいたエルフのお姉さん達も、そうした理由で出稼ぎに来ていたんだろうな)

 

 時折、「なるほど」と相槌を打ち、長老の話を聞く。

 

 話の最後に、人口の流失が激化した為、再度隠れ里の移転を検討していると言った。

 

「なので、あの乱暴者共をどうにかしてもらえないか陳情しようと考えていたのです。しかし、我々が申し出る前に陛下の裁断が下されました。これで後は、引っ越し先を確保出来ればと――」

 

(――んん!?)

 

 その話を聞いたリムルは、閃いた!

 

 『思考加速』をかけつつ、ある想いが膨らむリムル――

 

(引っ越し先……引っ越し先、は、あるじゃないかこの街、いや、迷宮に!)

 

 長老から聞いた里の人数は三百名程だとの事。

 

 遥か昔にはもっと大勢いて、古代王国を築いて繁栄していたそうだが、その栄華は今はもう失われてしまっている。

 

 こうして、エルフは流浪の民となり、世界各地に散ったと長老は語った。

 

(三百名くらいなら、丁度いい受け入れ先がある。あそこなら、地下迷宮(ダンジョン)の九十五階層に出来たばかりの小さな森林に引っ越してもらえばいいんじゃないかな。そうだなぁ、仕事としては、アピトの養蜂を手伝ってもらったり、魔素濃度の高い森でしか採取出来ない、希少な植物の育成を育成を行ってもらったり、九十五階に出す予定の宿屋を手伝ってもらったりとか……ふっふっふっ)

 

 次々と浮かぶ案にリムルは(スライムだから表情は読めないが)悪い顔を浮かべていく。

 

(後は、武具屋の店番を任せても良いな。無いと思うが、九十五階に魔物が発生した時には、エルフの皆さんで森林の町を守ってもらえば心強い。それにエルフは、樹人族(トレント)とも相性が良いと聞いたから、トレイニーさん達も反対はしないハズだ。何より、仕事は沢山あるので、散って行った仲間も呼び寄せる事が出来るだろうな。そうなると、出稼ぎに行っている女の子達も戻って来るかも知れないし、そうなれば、九十五階層に特別会員専用のエルフのお店を出す事も夢ではなくなる――!? フフフ、ハハハハハ、アッハッハッハ。いい、実に素晴らしいではないか!)

 

 リムル念願の、エルフのお姉さん達がいる夜のお店。

 それは、ドワルゴンの酒場街にある、エルフのお姉さんが経営する『夜の蝶』を、ここ魔国(テンペスト)に再現する事。

 

(たまにはさ、こう、何て言うか、誰にも気を遣わずに静かに飲みたい場所が欲しいんだよなぁ……)

 

 この街にも飲み屋はある。

 今は屋台も含めて、飲み屋街が出来つつあった。

 しかし、飯屋も兼用の冒険者や旅人御用達といった風情の店であった

 

 静かに飲みたい時などは、幹部用の食堂を利用する事が多かったリムル。

 

(まあ、アレだ。シュナに頼めば自室に酒を用意してくれるんだけども、そうじゃないんだ。シュナがいたら寛げないとか、そんな理由でもない、断じてないよ? ゴブタと馬鹿が出来ないとか、ミョルマイル君と、あんな事やこんな事の密談が出来ないとか、そんな理由でもない。うん、ない) 

 

 何故か、いきなり自問自答を始めるリムルであった。

 

 ――暫くそれを続け納得をしたのか、『思考加速』を解除したリムル。

 

 困った表情を浮かべている長老に、リムルはこの閃きを提案してみた。

 

「長老、お前達の引受先に心当たりがあるんだが――」

 

 リムルが口を出した瞬間、長老の表情がパッと明るくなる。

 

「――お、おお! 本当ですかリムル陛下?」

「うむ。三百名程度なら、()ぐにでも全員受け入れ可能だよ」

「何と、有難う御座います! それでは戻り次第、一族を引き連れて参上したく存じます」

「わかった。お前達が来るまでには、住めるよう住居を準備しておこう。ただし、頼みたい仕事があるのだが、それは構わないな?」

「勿論で御座います、陛下。我等エルフの力をリムル陛下の役に立てられるとあらば、これ以上の幸福は御座いません!」

 

 いきなりの朗報に喜びを表す長老。

 

 これで、エルフ達を迷宮内に受け入れる事が決まった。

 

 だがしかし、ここで長老から気になる発言が飛び出した。

 

 ここ最近、出稼ぎに出た者が帰らないと言った。

 

 以前は、消息を絶っても、ふらっと帰って来ていたけども、最近は帰らない者がいると説明する長老。

 

 これを聞いたリムルは、ガットエランテのリアナが保護した五人のエルフ娘を思い出す。

 現在は魔国で保護しており、心身ともに健康で、精神も落ち着きを取り戻していた。

 

 近々、森の里に帰そうかと思っていたのだが、ここ最近の忙しさでコロッと忘れていたのだ。

 

 奴隷エルフを所有していたカザック子爵は、モモコの調査報告のもと、ソウエイの『分身体』がブルムンド王国へ(おもむ)き、モモコと合同で身辺調査を行い、様々な悪事を暴いた。

 

 この情報はソウエイが魔国に持ち帰り、リムルに報告済みである。

 

 報告を受けたリムルは、カザック子爵がブルムンド王国の貴族であり、こちらが手を出せば外交問題に発展しかねないと、現在この一件はリムルの方で止めてあったのだ。

 

 もっとも、モモコ、もしくはロモコ班が動けば証拠も残さずに始末出来るのだが、今回はそれを良しとはしなかった。

 

(カザック子爵の件、忘れていたわ。いや、ここんところ忙しかったから仕方ない。うん、仕方ない、な。現在、奴隷商会については調査中だから、ルヴナンとソウエイの報告を待つだけだ)

 

 とりあえずリムルは、保護した五人のエルフ娘の事を長老に告げた。

 

「え!? それは本当で御座いますか?」

「うむ。行商隊のガットエランテがたまたま保護したんだ。今は俺の街で元気にしているよ。そろそろ森に帰そうかと思っていたんだが、最近の忙しさでつい忘れていた。済まないな、長老」

「いえ、とんでも御座いません。牛頭族(ごず)馬頭族(めず)の一件にしても、何と御礼を申し上げて良いのやら、本当に感謝の念に堪えません!」

 

 長老は(ひざまず)いたまま、深々と頭を下げた。

 

「リムル陛下。誠に申し訳ないのですが、我等がここへ引っ越しをして来るまで、五人の娘達を今暫くここへ置いて頂けますでしょうか?」 

「うむ、わかった。早くの移住を待っている」

「はっ!」

 

 長老は返事を返すと、謁見会場を後にした。

 

 

 今日の謁見式も無事に終わりを迎えた。

 

 思わぬ住人を手に入れたリムルは、ご満悦なリムルは夢の〝エルフのお店〟事で、頭が一杯だった。

 

 

(フッフッフッ。〝エルフのお店〟のオーナーになるという夢が実現した、今ここに! フハハハハハ。これで、密かに遊べるってもんだわ。ウハハハハ、やったね、俺!)

 

 内心で、精一杯の喜びを口にするリムル。

 

 

 だがしかし、ここでリムルは一人の人物の事を忘れていた。

 

 こんな店が出来ると、我一番に駆け付ける者がいる事を。

 

 特別会員専用のお店。

 

 会員になるには厳正な審査も必要であろう、それよりもその会員費を楽々と維持出来る人物が、リムルの身近にいる事を忘れているリムル。

 

 会員費? 何それ 美味しいの? と、それを鼻で笑う財力を持つ人物、ツキハがいる事を。

 

 酒を出す店は全て網羅する酒豪猫娘、ツキハ。

 

 エルフのお姉さん達がいる店だろうと、酒が飲めて、楽しく過ごせればオッケーなツキハ。

 

 

 後に、この店の会員となったツキハが、ヴェルドラを連れて〝夜のお店〟に入り浸る事になるのだが、リムルが気付いた時には、時すでに遅しだったのであった……。

 

 

 

 





 この作品を読んで頂きありがとうございます!

 次回の更新もよろしくお願いします!

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。