忍びが転生したら〝異世界珍道中〟になった件 作:にゃんころ缶
長かった謁見式も今日で最後。
これで、三日後には念願の開国祭である。
街に滞在する魔物達の間でも、目立ったトラブルは起きてはいなかった。
それもそのハズ、シオンの一件に番外魔王の眷属達がこの街にいるのだから。
特にシオンとダグリュールの息子達との一件が知れ渡ったらしく、こういう時に必ず湧く、力を誇示する馬鹿が大人しくなったのだ。この一件を広めたのは、番外魔王の眷属達である。
時にはシオンの派手な実力行使の行動も役に立つなと、思ったリムルであった。
そして、建設現場に出ていたゲルドがようやく休暇を取って帰国して来た。
ディアブロとハクロウも、
『おお、リムル様。相変わらず威厳のあるお姿。久しぶりに
昨日の夜の、ディアブロの喜びようはなかった。
リムルが内心、(スライムの姿に威厳なんてないんだが? コイツの目は節穴か?)と、思わざる得ない程だった。
そして、今日で最後の謁見式も終わる。
と同時に、謁見最後の組であり、リムルにとって一番大事な客人の来訪。
(今日で最後の謁見かぁ、長かったな~。最後の客人……油断は出来ない。慎重に望まねばな)
リムルは、一番難しい謁見になると予想をしていた。
なので、今日は幹部全員で式に臨む事にしたのだ。
無論、番外魔王の二人も警備でこの場にいる。
ツキハとディアブロが険悪な雰囲気になり始めたが、リムルがディアブロに、シュナがツキハに言い含め、二人は大人しくなった。
謁見最後の相手は今、ベニマルが出迎えに行っている。
リムルの右腕たるベニマルが出迎えに行く、この事からも、その種族の重要性が伺い知る事だろう。
ツキハとコハクの尻尾が、ゆらりと動く。
すると、烈火の如く激しい気配が、扉の外から近づいて来る。
扉を開ける重々しい音が響くと、武装した一団が入って来た。
そう、彼等こそ――ベニマルが使者として、一度挨拶に出向いた事のある種族。
テングとは、ジュラの大森林の境界線上にあるクシャ山脈を棲家としており、リムルの支配領域の外にいる独立勢力。
そう、これは謁見というよりも、会談でもあったのだ。
謁見の間に入って来た武装集団の先頭に、一人の美しい少女が立っていた。
(へえー。テングと言うから、鼻が長いかと思ったけど、普通じゃないか。この世界で言うテングとは、
リムルが知り得る知識でそう思うと、
《告。正確に言えば、混血ではありません。
(そうそう、受肉した種族だったな。
《解。〝長鼻〟とは
(へえー、なるほどなるほど。その山の神と崇められる種族なんだけど――)
《告。正確に言えば、種族ではありません。個体名:ランガのように、〝個〟から生み出された個体群です》
(そうそう、って、個体群? はあ? うん、よくわからん……えーと、要するにめちゃくちゃ強力な大神の個体がぁ、
と、
そう、その強力な個体こそ、目の前の少女の親にして天狗の長老である。
その長老は子を成した事で、急激に体力を衰えさせていた。
子が生まれる事で、自分の持つ力、〝
この世界での魔物の子を得るという事は、ある意味死と隣り合わせの行為といっても過言ではなかった。
だから、実質リムルの目の前にいる少女こそがテングの
であるからして、今回は謁見と呼ぶよりも、会談という方が適切なのだ。
それに、それ以上に重要な事が――
★ここで時を少し、ベニマルが使者として挨拶に出向いた頃に戻そう★
テングは
だがしかし、その実プライドが高く、もしリムルが彼らへの支配権を主張したら、間違いなく反感を買い、戦争が起きていただろう。
しかし、リムルにそんなつもりは全くない。
山の神とも崇められるような強力な種族と、わざわざ争いを起こす必要はないからだ。
ベニマルもそこのところは理解しているので、魔導王朝サリオンと結ぶ街道の建設許可をもらう為と、もう一つの許可をもらう、その予定で挨拶に出向いたのであった。
「交渉は無事成功しましたよ。テングとしてもリムル様を無視出来ないので、一度挨拶に来るとの事です。それと、もう一つの件ですが、あれはリムル様の予想通りでした」
帰って来たベニマルは、そうリムルに報告をした。
しかし、その報告内容とは裏腹に、とても疲れた様子が見て取れた。
「そうか、やっぱりコハクが既に手を回していたかぁ。当たり前とはいえ、アイツら本当にどこまで暗躍してるんだよ、と、言いたい。で、ベニマル、他に何か問題があったのか?」
「いや、そいう訳ではないのですが……」
心配して問うたリムルに、ベニマルは言葉を濁して答えようとはしなかった。
一緒に使者として出たのは、アルビスとサンコ。
サンコに関しては、テングとルヴナンは面識があるという事で、リムルがコハクに、ルヴナンから誰か一人出してくれないかと頼んだところ、サンコを出して来たのだ。
リムルとしてはイチコ辺りが良かったのだが……。
何より、サンコのやんちゃぶりをルヴナンが移転して来てから嫌というほどリムルは見て来たので、「大丈夫か?」と、コハクに問うと、「あの子は馬鹿やけど、馬鹿じゃないから安心しなはれ」と、コロコロ笑いながら言って、それを見てリムルが「全然安心じゃねえよ!」と、突っ込み返す。
それからリムルは、色々コハクとルヴナンから出せるのは誰が良いかと話し合うも、結局は、サンコが一番ベニマルと仲が良いとの理由で、リムルは納得をしたのだった。
そして――
一緒に出向いたアルビスも、帰って来てから具合というか、機嫌が悪そうだったのだ。
サンコはというと、意外にもどこも変わらず、どこかベニマルとアルビスを
という事でリムルは仕方なく、もう一度強引にベニマルから話を聞き出す事にしたのだ。
他の幹部の前では話しにくそうだったので、リムルはベニマルと個別で飲みに行ったのだった。
そこで聞き出した内容とは――
ベニマルは、アルビスにサンコと〝
旅路は至って順調で、クシャ山脈の山頂にある洞窟の前で、テングの若武者に呼び止められる事になった。
若武者は白装束を纏い打刀を腰に差しており、その背には一対の白い羽。
耳は犬のように三角に尖っていて、尻尾も生えていた。
その洗練された身ごなしを見てベニマルは、武の心得がある者だと見抜く。
そして、若武者が一瞬サンコを見て、尻尾を微かにワサリと動かしたのにも気付いていた。
(ん? 今、サンコを見て反応したのか?)
ベニマルは若武者に対してそう思いつつ、『洞窟』に張られた結界を通る許可を求めると、若武者はそれを応諾し、ベニマルとアルビスにサンコのみを中へと案内した。
暑くも寒くもなく、常に快適な温度に保たれていた。
力ある種族が住まうには相応しい美しい里――
それが、テングの隠れ里。
案内された先で、美しい娘に出迎えられたベニマル達。
その娘は他のテングとは違い、人の姿をしたテングであった。
肩まで伸びた純白の髪は、耳横辺りから鮮やかな紅へと移ろう。
桜色の唇は小さく柔らかそうでいて、しかし、その切れ長の目から覗く狼のような瞳孔がどこか、獲物を見定めるようにベニマルを見据える。
(何ともまた、これは……油断出来ぬな)
ベニマルは、目の前の娘を見てそう思った。
その存在感は、以前にまみえた魔王カリオンに匹敵するか、それ以上にも見えたのだった。
「俺の名はベニマル。魔王リムル様の名代として来た」
「使者殿、よくぞ参った。私はテングの長老の娘、
ベニマルの挨拶に、モミジと名乗った娘は
(フッ、歓迎はされてはないみたいだな)
そう感じたベニマルだが、それを意に介する事はなかった。
「そのようなつもりはない。俺達が望むのは、ジュラの大森林との境界線上にあるクシャ山脈の通行許可だ。そして可能ならば、この山脈にトンネルを掘る許可と、その時に見つけた鉱物資源の調査をする許可を頂きたい」
「ふん。領土的野心はない、というのね。通行許可は勝手にすればいいけど……トンネルとは何? 鉱物資源の調査?」
ベニマルの説明を興味なさそうに聞いていたモミジだったが、トンネルと鉱物資源という言葉に反応した。
ベニマルは、トンネルと鉱物資源に関しては、リムルから大雑把ではあるが説明を受けていた。
山に
鉱物資源に至っては、山の地中深くにある鉄鉱石だとういうことは知っていた。
しかし、このトンネル計画は立案しただけで、リムルは却下していた。
サリオンとの首都と結ぶだけならば、トンネルが最短のルートになる。
だが、現実にはサリオンとの国境付近の町まで道を繋ぐだけなので、トンネルは必要なかったのだ。
ならば、リムルの真の目的は――
クシャ山脈の地中深に眠る、豊富な鉱物資源である。
そう、出来れば鉱物資源の調査の許可をリムルはもらいたかったのだ。
ベニマルもその真意を知っていたので、ついでだからと質問したまでであった。
「トンネルとは、山に孔を掘って山向こうと道を繋ぐといったものだ。そして、その時に出た鉱物の調査をしたいといったところだ。無理には――」
「待って。山に孔を掘る? あの御方達ぐらいにしか許されていないのを、新参者の貴方達に許可をしろと? 本気で言ってるの?」
「あの御方?」
「貴方は知らなくてもいい事よ」
「そうか。だがしかし、今回必要とされるルートにはトンネルは必要ないので、将来的に必要となった場合に備えて質問したまでで、鉱物資源の調査もその一環なだけだ。そちらが嫌なら、無理にとは言わぬ(あの御方達ね……間違いなくあの御二人だろうな)」
淡々と気負いなく答えるベニマル。
そして、モミジの言ったあの御方に、確信が至った。
だが、テング達には動揺が広がっていた。
山を神聖視する彼等にとって、山に孔を掘るという事は禁句であり、また、それを唯一許されたあの御方以外に、ましてや、新参者の魔王が口にする事すら許されざる言葉だったのだ。
「不味いわね、貴方。スライムが魔王になろうと、我等に干渉せぬならば好きにすればいいと思っていた。そこの獣臭い蛇を連れているのも、目を
そう言ってモミジは席を立つが、サンコにだけ言い様のない何かを感じるも、それが何かわからなかった。
ベニマルとしてはそんなつもりなど全くないが、もはや話し合いをする雰囲気ではなくなっていた。
これは、失態だなとベニマルは思う。
ここでベニマルが動けば、相手ももう退けなくなる。
そう考えベニマルは席から立たなかった。
ちらりとサンコの方を見ると、そのサンコは小さな
しかし、サンコとは違って黙っていられない者が一人。
アルビスである。
「獣臭い蛇とは、私の事かしら?」
激怒しつつも、至って平静のアルビス。
スッと席を立つと、鋭利な目付きでモミジを睨んだ。
一触即発、危険な空気を漂わせ始めるアルビスとモミジ。
「ほどほどにニャ~」
サンコが焚きつけるように軽く言い放つ。
「おい、サンコ! アルビスも
ベニマルは、やめろとばかりにサンコの名を呼び、アルビスを制止しようとする声を合図に、アルビスの視線がモミジを射貫く。
エクストラスキル『
麻痺、毒、発狂、等々の効果が、直視されたモミジを蝕む。
しかしモミジは、その攻撃を歯牙にもかけない。
「何それ? つまらない技ね。テングの長老の娘である私に、状態異常なんて通用しないわ」
そう言いつつ、モミジは両手に扇子を取り出し、優雅にパシッと音を立て扇子を開く。
テングは、半精神生命体。
故に、状態異常に対する高い耐性を有している。
そしてそれだけではなく、モミジはエクストラスキル『
これは五感以上に情報を読み取る力。
エクストラスキル『魔力感知』の上位交換ともいえる力を発揮するのだ、
更にもう一つ、『天狼覚』は幻覚や幻術を無効化する。
故に、モミジには不意打ちは通用しないのである。
ただし、『
そこでモミジは、今度は自分の番とばかりに扇子をパチリと閉じると、ふわりと舞うようにアルビスの前に
パパンッ! 小気味良い音が二回響いた。
一撃目を金色の
続くニ撃目が本命で、アルビスは脇腹を打たれ、広間の端まで吹き飛ばされてしまう。
「クフウッ!?」
無造作故の読めない攻撃。
そこには、洗練された動きが垣間見えた。
攻撃の為に閉じた扇子を再び開き、優雅な仕草で口元を隠し、モミジは言う。
「もうお仕舞? 三獣士と言っても、大した事はないわね」
流石に誇りを傷付けられたアルビスの心は、激昂して燃え上がる。
「舐めないで欲しいわね。田舎者の分際で。交渉相手だと思い手加減してあげたけど、その必要はないようね?」
既に傷の修復を終えたアルビスが、平然と立ち上がって来た。
そして、左斜め前の構えを取りながら首を
アルビスは、獣王国ユーラザニアに君臨する上位魔人としての貫禄を
「手加減? それはこちらのセリフだわ。使者を殺さぬように、これでも精一杯気を付けているのよ? それとも貴女、私を本気で怒らせたいの?」
睨み合う二人の周囲では、漏れ出たお互いの
広間の端に控えていたテングの若武者も、この空間に満ちる濃密な
そんな中、ベニマルとサンコの二人が椅子に座ってお茶を飲んでいた。
サンコは「困ったやんちゃな娘達ニャ」と、自分の事を棚に上げて言う。
ベニマルはというと、失態を通り越して面倒になったなと考えていた。
「そうね、確かに貴女は強いわね。でも、戦闘経験に乏しい小娘が勝てるほど、この世は甘いものではなくてよ?」
「試してみる? 貴女の言うように、私も戦闘経験を積みたいと思っていたの。貴女は丁度いい訓練相手になりそうね」
お互いに気付かれぬように
緊迫した空気が大気を裂くように広がる。
目に見えぬ間合いの境界線がぶつかった瞬間――
二人は同時に動いた。
刹那――
剣閃が走り、モミジの手から扇子が弾かれ、アルビスの錫杖が振り下ろされる前に止められた。
大広間に静寂が広がり包み込む。
誰もが反応出来ぬ速度で、ベニマルとサンコが二人の戦いに割って入ったのだった。
「そこまでだ。俺の言葉で不快にさせた事は
「頭冷やすニャ。なーに殺し合いをしようとしてるんニャ。馬鹿娘どもが」
淡々と告げるベニマルとサンコ。
ベニマルはアルビスの錫杖を片手だけで受け止め、サンコはモミジの前で両手を交差させ、扇子を弾き飛ばしていたのだ。
「べ、ベニマル様!? それにサンコ殿!? 私が負けるとでも?」
「ああ、俺とサンコが止めなければ、お前は真っ二つになっていた」
「う、嘘よ! ちゃんと手加減して――」
「にゃ~、お前の
「そ、そんな――」
「わ、私が負けていた……?」
「でも、でも、私は力の加減は出来ていたハズ、何かの間違いよ!」
「そう、今一度仕切り直しを!」
モミジとアルビス、一度火が付いた心は収まりきらず、再戦を口にしだす。
ベニマルが「困ったな」と苦笑いを浮かべると、そこへサンコが口を挟んで来る。
「ベニマル。女の戦いに一度火が付いたら、そうそう収まるものじゃないニャ。でもニャ、お互いがお互いの力量が図れないのも問題ニャ。アルビス、ツキハ様が教えた事忘れたのかニャ?」
「え? はい、確か相手の力量を知り、己の力量を知れ、でした」
「そうニャ。心は激情に燃え盛っても、頭は冷静に、こうも言ったよニャ?」
「はい、その通りでした……私もまだまだ修行が、足りませんね」
そう答えたアルビスが、その場にストンと崩れ落ちた。
「嘘、嘘よ。私はちゃんと、手加減出来ていた、ハズよ。次は、ちゃんとやれるわ」
一度火が付いた戦闘心は消せれるはずもなく、モミジの中で
「大体ね、貴女は何者なの? そこの使者とは明らかに何かが違うわ。正体を現しなさい!」
扇子を持った手でサンコを指すモミジ。
「ニャ? にゃう~、その違和感で気付くべきなのニャよ? まあいいニャ」
そう言うとサンコの足元から紫色の魔素粒子が立ち昇り、亜人形態から三毛忍魔猫の姿に戻るサンコ。
「魔猫……? まさか!?――」
モミジの予感は当たった。
ただならぬ者、そう、番外魔王の眷属である事を今、確信した。
「良く聞くニャ、テングの長老の娘。アチシは、番外魔王の眷属であり、三番をもらいし、
最初にサンコを見た洞窟入り口の若武者も、どこか使者として来たベニマルとアルビスとは違う何かをサンコから感じ取ってはいたのだ。
だから、一瞬身体が反応したのである。
「番外魔王の眷属が、どうして使者の連れな、の……?」
そこでモミジは言葉を失ってしまう。
広間の端に待機している若武者達も、思わず固まってしまう。
愛くるしい三毛魔猫のサンコはそこにいない。
「相手の力量を見誤ると、こうなるニャよ?」
告げると同時にサンコは、『猫騙し』を解除する。
ドンッという大気が破裂する音と、サンコから凄まじい
サンコの凄まじい圧に、大広間がビリビリと震えた。
「テングの長老の娘、モミジ。そんなに戦闘経験が欲しいのなら、アチシとやってみるかニャ?」
淡々と言い放ち凶暴な顔を露わにした、〝凶暴猫サンコ〟が、そこにいた。
「お母様から聞かされた、一桁番号眷属の一人、三を与えられた〝凶暴猫サンコ〟……」
言い聞かされて来た番外魔王の二人の事と、それに連なる眷属の話をモミジは思い出し、そこで言葉が止まる。
ずっと静観して来たベニマルがサンコに、「やるんじゃねえぞ、サンコ」と、釘を刺す。
ベニマル言われたサンコは返事はせずに、真上に立てた尻尾をゆっくりと左右に揺らしそれに答える。
(あれが本気を出したサンコ殿……。何とも凄まじい
カリオンがアルビスに言った言葉、それは、『いいか、アルビス。間違っても一番から四番までの眷属と、ガチで手合わせとか考えるなよ? アイツ等は別格だからな』と、笑いながらアルビスに言った言葉、それが本当だった事を今思い知る。
サンコがゆっくりと一歩前に踏み出したその瞬間、モミジの本能が最大限の警鐘を鳴らす。
(ありえない、一眷属にしてこの
目の前の小さな忍魔猫であるサンコからは、膨大な余剰エネルギーと化した魔素粒子が激しく揺らめきながら渦を巻いていた。
モミジが反射的に扇子を身構えた、その時――
広間の奥の扉が開き、大きな犬耳の美女が姿を現した。
「お、お母様!?」
いきなり現れた母親に動揺するモミジ。
モミジの母であるテングの長老はモミジにニッコリと微笑みかけ、ゆっくりと歩き出しモミジの隣まで来ると――
「この馬鹿娘が!!」
と、大広間に響き渡る声で雷を落としたのだった。
そして。
「お久しぶりですね。番外魔王の眷属が一人、サンコ殿」
そう言って軽くお辞儀をするテングの長老。
「久しぶりニャ、テングの長老」
パッと魔素粒子を散らし亜人形態に戻ったサンコも、ぺこりと頭を下げる。
ここで緊迫した空気が消え去り、平穏な空気が大広間を満たしていった。
それから場所を移し、一同は再び向かい合って座る。
畳と座布団という日本風を思わせる部屋だった。
その先の部屋は床の間となっており、病に
ここからは、交渉の仕切り直しである。
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