忍びが転生したら〝異世界珍道中〟になった件   作:にゃんころ缶

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 お待たせしました。156話です


 ツキハ

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 コハク

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 傭兵商会ルヴナン・真の紋章


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 ※〝打刀〟
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156話 爆誕・自由戦闘恋愛主義(ラブアンドバトル)

 

 

 テングの長老カエデからの書状を、読み上げるシュナ。

 

 

 最初は難しい言葉と丁寧な挨拶が述べられ、色々と御機嫌伺いらしき内容が書かれていたのだが、読み進める内に段々と言葉が崩れていっていた。

 

 それに伴い、シュナの表情も困惑に彩られていく。

 

『――何か色々と(こじ)らせているし、誤解もあるようだけど、娘を宜しくお願いしますね。それとあの子、ベニマル殿を振り向かせると豪語していたので、本人も悪い気はしていないものと思われますので――』

 

(あぁーって、それ俺宛ての手紙なの? いやいや、どう見ても違うだろ)

 

 リムルは、こんな内容だとわかっていれば儀仗兵を下がらせていたのにと思うも、今からでは既に手遅れだった。

 

「ちょ、ちょっとぉ、お母様ぁ――ッ!?」

 

 崩れ落ちていたモミジが一瞬で飛び上がり、シュナの手から書状をひったくった。

 

(えーと、うん、本当は無礼なんだけど、これはしょーがないわ)

 

 リムルがそう思い、幹部達がどう反応していいか困惑していると――

 

「ブッ、ククッ、ウヒャヒャヒャッー」

 

 ツキハが堪え切れず大笑いをかます。

 そこで幹部達の困惑が解けたのか、皆が仕方ないなといった顔を浮かべる。

 

(こういう時のツキハって有り難いわぁ。まあ、場の雰囲気もツキハの大笑いで緩和されたから、良しとしよう、そうしよう。俺だってモミジと同じ立場なら、何を仕出かしたかわからんからね。これって、黒歴史どころか、羞恥プレイそのものだよな)

 

 

「や、やっぱり二通ある!? 大雑把過ぎよ、お母様……」

 

 リムルが、ん? と思う当時に、モミジが(うめ)いて、またも突っ伏してしまう。 

 

(ああ、やっぱり。ハクロウ宛ての文も、俺宛ての封書に入っていたみたいだね)

 

 完全にへこんだモミジを、お嬢様お気を確かにと、慰めていた。

 

 それを見ているリムルは、こういう時はそっとしておく方がいいんだよなぁと、しみじみ思う。

 

 が、その時。

 

「フフ、アヤツらしいのう」

 

 ハクロウが苦笑いしつつ、モミジへと歩み寄る。 

 

 そして、その手に握りしめる手紙をサッと抜き取り、軽く一瞥(いちべつ)する。 

 

「なるほど、のう。『――あの()は力だけは大きいのですが、技量はまだまだです。儂の兄弟子として、そしてあの子の父として――〝剣鬼〟ハクロウ殿の手で教え導き、鍛えてやって下さい。――愛する旦那様へ、カエデより。追伸。そうそう、番外魔王ツキハ様の剣技を見たいと言ったら、見せてやってもらえますでしょうか? 見るだけなら良い勉強になりましょう。それでは、良しなに――』か。アヤツめ、まだワシを好いてくれておったとは、な。フフッ、長生きは、してみるものよ」

 

 そう言うと、ハクロウは愉快そうに笑う。

 

 ハクロウの言葉を聞いたモミジは、クワッと大きく目を見開きハクロウを見る。

 

「お、お父様、なのですか?」

「そうじゃ。ワシが其方(そなた)の父、ハクロウじゃよ」

「お、お父様――ッ!!」

 

 ハクロウによく似た黒い瞳を潤ませて、モミジは躊躇(ちゅうちょ)もせずにハクロウに抱きついた。

 

 ハクロウとモミジ、父娘の感動の再会である

 

 それを見ていたツキハが、無意識に口を開く。

 

「父というより、あれお爺ちゃ――ウゴゴッ!」

 

 パココンと、軽快な音が響くと、何か言いかけたツキハがその場にクタリと崩れ落ち目を回す。

 

 コハクの裏拳とリムルの空気弾が同時に、ツキハの顔面にヒットしたのであった。

 

「モミジよ、ワシの修行は厳しいぞ」

「はい――」

「じゃが、それを見事に乗り越え、若の心を射止めて見せよ!」

「はい!!」

 

(お、は? ええーー!?)

 

 うんうんと感動しながら会話を聞いていたら、おかしな方向へと転がり始め、内心変な声を上げるリムル。

 

「なんや? 早速外堀を埋めに来たやないか。やりよりますなぁ、ハクロウは」

 

 どこか楽しそうに呟くコハク。

 

 普段は冷静沈着なハクロウも、突然出来た娘を前にして、単なる親バカになってしまっていたのだ。

 

「おい、ハクロウ――」

 

 と、思わずハクロウの名を呼ぶベニマルの言葉は届かず、既に二人だけの世界を構築しているハクロウとモミジ。

 

 

 と、その時。

 

 シュナが小さな声で「ああ、それで――」と呟き、皆の視線がシュナに集中する。

 

 それを意に介さずシュナはベニマルを見る。

 

「お兄様、アルビス様からの伝言です」

 

 そう言うなりシュナは、真正面からベニマルを見上げた。

 

「何だ?」

 

 如何(いか)にも嫌そうに問うベニマル。

 その顏は、ハッキリと後にしてくれといった表情だった。

 

 だが、シュナはそんな事では言葉を止めない。

 無情にも、半眼になってその言葉を口にした――

 

『ベニマル様、私は覚悟を決めました。モミジ様に勝利して正妻の座を射止めるつもりですが、最悪の場合でも、側室という手が御座いますわね。それに、サンコ殿がこれに参戦するのは、まず有り得ないのでモミジ様との一騎打ちになりましょう。諦めませんので、御覚悟して下さいませ』

 

 と、シュナはアルビスの口調を真似しつつ、ベニマルに淡々と告げた。

 

 ざわつく儀仗兵達に、興味津々といったリムルの幹部達。

 

 そして。

 

「あらら、サラッとサンコの名が出てるけど、あの子、ベニマルの事好きなの?」

「それは、あらへんな。多分な、遊び相手の延長線上と、いったところやろな」

「そっかぁ。ベニマルのこと好きなら面白い事になるんだけどねぇ。ククッ」

「まあ、後百年か、数百年後はわからしまへんけどな。フフッ」

「そうだよねぇ。サンコはそういうところ、全く気にしない子だものね」

「ほんまに、誰に似たのやらどすなぁ」

「あたしは、ヴェルドラのこと、好きだけど? 愛しているけど!」

「誰もあんさんの事やと、()うてまへんで? しょうもない事、強調せんでよろし」

「ほっとけ、ド変態猫」

「へえへえ」

「返事は一回よ、コハク」

「へえ」

 

 最初は普通に話していた二人。最後は険悪な感じになって来てのだが、コハクがあっさり引き下がったのでそこで言い合いは終わる。

 

 

「…………」

 

 そんな中、ベニマルは腕を組み、沈黙を貫く。

 

 と、思われたが、何と、絶句して固まっていただけであったのだ。

 額に(にじ)む、一筋の細い汗。

 

 そんなベニマルを見てリムルは。

 

「いやあ、しかし。モテル男は大変だねぇ。ほんと……」

 

 何とはなしに感想を漏らすと。

 

「リムル様、それ、本気で言ってるっすか? 他人事(ひとごと)じゃないと思うすっけど……」

 

 と、どこか、大丈夫っすか? と言いたげにゴブタが言う。

 

「クフフフフ。私はリムル様一筋ですので、恋愛など興味御座いません」

 

 ゴブタの言葉に反応したディアブロが、即座に口を挟んで来た。

 

(いや、聞いてねーし。興味もないので、好きにしてください)

 

 ディアブロの言葉に内心で突っ込むリムル。

 

 そこにツキハが「クロスケはアホだわ」と、言い放ち。ディアブロが「駄猫、殺しますよ?」と、殺気を放ちながら言い、またもや一触即発になりかけるが、そこは両方場を(わきま)えているのか睨み合いで終わる。

 

 そこからは、幹部達のヒソヒソ話が聞こえて来た。

 

 流石はベニマル殿だなとか、ガビルが我輩の妹の部下もベニマルを狙っていたとか――

 更に、そう言えば妹のソーカはソウエイを狙っているとか何とか。

 

 皆口々に、好き勝手放題言い始めていた。

 

 するとそこに、ゴブタの爆弾発言が投下される。

 

「つまり、ハーレムっすか? 羨ましいっすね?」と。

 

(何それ羨ましいじゃん!)

 

 その言葉に、リムルの心の本音が炸裂する。

 

 出るわ出るわ、男達の本音に様々な恋愛論。

 

 人型の方が有利だとか、ガビルが自分の職場にいる女性のドワーフの薬師が、『トカゲって、生理的に無理!』ってな事で、かなり落ち込んでいた。この、トカゲという言葉に、幹部達の背筋に緊張が一瞬走る。あのディアブロでさえも、皆にわからないように警戒態勢を取った程であった。

 

 ガビル、言った後に気が付き顔面蒼白。

 

 そう、ツキハの前で〝トカゲ〟という言葉は禁句であり、それがもしヴェルドラの事を指していたら、この場は凄惨な修羅場へと変貌するだろう。

 

 コハクも、その言葉が出た時に(ひそ)かに逃げの態勢を取っていたのだから。

 

 しかし、トカゲという言葉を聞いたツキハが、「見た目で判断して、どうすんのよ」と、普通に返す。

 〝竜〟形態のヴェルドラに惚れたツキハの言葉には説得力はあるものの、〝トカゲ〟という言葉には、再度注意しようと皆が思ったのは確かである。

 

 その言葉を言った張本人のガビルは、額に脂汗を浮かべながらも、ツキハの言った言葉にホッと胸をなでおろす。

 

 そんな危うい雰囲気の中、話題はまた別な方句へと移り、何故かソウエイの方へと向いていく。 

 

 そして、まだ記憶に新しい聖騎士との戦いの話になる。

 

「そう言えば、この前の女騎士など、俺に関心があるようだからな」

 

 ソウエイがウンザリした顔で愚痴るように言うと、またもゴブタが喰い付く。

 

「マジっすか!? 一体何をしたっすか?」

 

 それに便乗してリムルまでもが――

 

「ほほう? それ詳しく!」

 

 喰い付いた。

 

 リムルはあの時、ソウエイと戦いを終えた女聖騎士リティスが、ソウエイを見て頬を赤らめていたのが凄く気になっていたのだ。

 

「リムル様も興味が?」

「あるに決まってるだろ。それに、あの時の状況の報告も、だな……」

「ああ、あの件ですか。あれはですね、軽く『粘糸鋼』でですね――」

 

 リムルが、ソウエイは軽く『粘糸鋼』で一体何を、と、思ったところで、背後からただならぬ気配を感じた。 

 

 そして、響く咳払いの音。

 

「コホン!」

 

 コソコソと話していたリムル達は、一瞬で身体を硬直させて真面目な表情を取る。

 

 リムルはスライム形態のままなので、コッソリその場から離脱しようとするも、白いほっそりとした手で抱き上げられてしまう。

 

「リムル様、お(たわむ)れを。それよりも今は、我が兄の話です」

 

(そうだったね、はい、そうでした。ついつい話がそれてしまいました。うー、シュナの怒りをこれ以上買うのは不味い)

 

 リムルはシュナに抱かれながらそう思い、チラリとコハクとツキハを見る。

 

 二人はリムル達のコソコソ話が始まってからは、一切会話に参加していなかったのだ。

 こうなる事を予見していたかのように。

 

(チッ。コハクとツキハの二人、ミリム張りに感が良いと思っていたけど、こうまでとは……グヌヌ)

 

 澄まし顔の二人に、リムルは悔しそうに唸る。

 

 とまあ、こんな具合にリムルは真面目に考える事にしたのだった。

 

 

 そこでリムルは、ベニマルに真意を問うてみた。

 

「なあベニマル、お前としてはどう思っているんだ?」

「そうですね……。まだ早いというのが本音です、が。これだけは言えます、伴侶は一人で十分ですよ」

 

 これを聞いたコハクの目が、スーッと静かに細くなる。

 

(だよねえ。突然嫁を取れと言われても、そりゃあ困るものなぁ。俺だっていきなり見合いしろと言われたら断るし。今や自由恋愛の時代だしね)

 

 と、そんな事を思うリムル。

 

 そこへ、ベニマルの言葉が続いた。

 

「それにですね、俺達のように上位魔人となった者は、子を成すのも簡単ではありませんし、多数の伴侶に子種をばら撒き争わせる者もいるようですが、そういうのは俺の趣味じゃない。なので、側室は不要です」

 

 ベニマルはきっぱりと、リムル達の前で言い切った。

 そのベニマルを、キラキラした目で見るモミジ。

 

「じゃあ、ハーレムは――」

 

 リムルが無しと言おうとした時、横槍が突然入った。

 

「ちょお、待ちや」

 

 それは、コハクである。

 

 両腕を組んだままベニマルの前に来るとコハクは、立ち止まる。

 リムルがコハクを止めようとすると、『リムル。ああなったコハクは触らない方が良い。別に怒ったとかそんなんじゃないから、少し好きにさせて上げて』と、ツキハから『思念伝達』が送られて来た。

 

 それにリムルは『わかったよ』と、一言だけツキハに返した。

 

 そしてコハクはにこりともせずに、ベニマル問う。

 

「なあ、ベニマル。その考えは立派や。でもな、その影で泣く女にはどういった言葉を送るんや? まさか、放置やおまへんのやろ?」

 

「…………」

 

 威圧も何もない、コハクの言葉。

 ただ表情は、目が細められたままだった。

 

「俺は――」

「いや、これは早計な質問やったな。すんまへんなベニマル」

 

 ベニマルが答えようとした時、コハクが不意に謝罪を入れ、拍子を抜かれるベニマル。

 

「あ、えと――」

「まあ、ちょっとだけうちの話を聞きなはれ」

「はい」

 

 いきなりホワリとした表情を浮かべ言うコハクに、素直に従うベニマル。

 

「うっとこの国な、嫁は、何人持とうと自由やねん」

「「「「「は?」」」」」

 

 これにはディアブロを除く、リムルと残る幹部全員が声を上げる。 

 

「お前の傭兵国は、それで上手くいってるの?」

 

 疑問の声をコハクにぶつけるリムル。

 

「いってるで。自由()うても、自由の名の下に(みずか)らの責任を放棄するヤツは許しまへんけどな」

 

 そう言いながらベニマルの周りを、ゆっくりと回りながら話を続けるコハク。

 

「要はやな、女が二人だろうと三人だろうと、同じように愛せばいいだけやねん。本当に自分を好きになってくれるなら、それに答えればええねん。でや、それができひんなら、ちゃんと断ればええんや。人間の王国にも、そういう制度がありますやろ? 第一夫人とか第二夫人とかな。 まあ、それが上手くいかへんところが多いのも事実やねんけども」

 

 コハクはベニマルの後ろで歩を止め、背中合わせのまま続ける。

 

「この国はいずれ、いや、そう遠くない内に大国になるやろな。魔王リムルの力は、それほど強大なんやで。その右腕たるあんさんが、そんなんでどないしますんや? 嫁の一人や二人、面倒見たる。そんくらい言いなはれ。じゃないと、正妻の座争奪戦に負けた方をうちの(めかけ)にするでぇ?」

 

 いつの間にかベニマルの正面に来たコハクが、ニヤリと悪い顔を覗かせる。

 

「え? いや、ちょっとコハク様!?」

 

 妾の言葉が飛び出した事で思わず動揺するベニマル。

 

 他の幹部達は、コハク様なら有り得ると言った顔をしていた。

 

 だがしかし、ツキハ一筋のコハクにはこれは有り得ず、ただの冗談なのだが……。

 本人の性格を知ってるベニマルには、冗談に聞こえなかったのである。

 

「冗談や」

「あ、えと、コハク様が言うと冗談には聞こえませんので……本当、勘弁して下さいよ」

 

 コハクから冗談と言われて、最後は愚痴ぽっくなるベニマル。

 

「なあ、ベニマル。未来はな、何が起こるかわからんから面白いんやで?」

「面白い?」

「せや。うちはな、ツキハの伴侶になるのが夢やねん。いや、絶対にそうするねん!――」

「知ってます」

 

 コハクの力説に即答するベニマル。

 

「さよか。だからな、今はアカンでも、未来はわからしまへんやろ?」

「未来でもならねえよ――プギャッ!」

 

 コハクの言葉に否定の言葉を飛ばしたツキハの額に、コハクの裏拳真空波がヒットする。

 

「うちが言いたいのは、未来を今決めんでもええんやないかと、言いたいねん。今答えを出したら、もうベニマルの行く道は一本だけや。あ、()うとくけど嫁取りの道の方な。他の道はまだわからへんで? ベニマル。うちらは魔物や、人間みたいな事を()うてどうしますねん。ほんま、リムルの影響は大きいどすなぁ。フフフ」

 

 そう言うとコハクは、コロコロと笑う。

 

(ええ? 俺の影響……?)

 

 リムルはコハクにはそう言われて、色々と考える……

 心当たりはある、そう名付けた配下達は大なり小なり、リムルの思いの影響を受けているのだ。

 

 もっともなところは、やはり、他の魔物とは明らかに違う人間への理解度だろう。

 

「ベニマル。もう少し、ゆっくり考えてもいいんやおまへんか? 二人の勝負が付いたところであんさんの考えを、あらためて()うてもええんやないかと、うちは思うで」

「そ、そうですね。俺も答えを急がず、もう一度考えてみる事にします」

「さよか。ほな、邪魔したな」

 

 そう言ってコハクはツキハのところへと戻って行った。

 

「まーた、気まぐれを起こしてぇ」

「うちは恋する乙女を応援したいねん。それだけやで?」

「応援ってか、全方位に()きつけただけじゃないの?」

「あれでええんや。魔物の恋は、勝ち取れやねん。ねだったったらアカン。取りに行かなアカンのや。後は、(ベニマル)が甲斐性見せればええだけや。フフッ」

「何それ、極端じゃね? ってか、魔物だものね、それもありか。ククッ」

 

 二人して小声で話しながら、笑いを漏らす。

 

 そしてリムルはというと、色々考えた結果。

 

「とりあえず、一夫多妻にするかしないかは、十分検討する為保留とする」

 

 リムルは、魔物としての自分と、元人間としての理性を上手く擦り合わせるべく、ある程度成り行きに任せて見よう、そのように決めたのだった。

 

 これで終わろうと思ったリムルだったが、問題はここから火が付いた。

 

 

「わかりました。アルビスさんの挑戦を受けて、ベニマル様の正妻の座を勝ち取って見せます!!」

 

 と、いきなりモミジが気合を入れて宣言したのだ。 

 

 ベニマルも腹を(くく)ったのか、何も言わなかった。

 

「リムル様、どうなさいますか?」

 

 シュナがリムルに、そう問うて来た。

 

「いいんじゃないの? 直接決闘とかは駄目だけど、好きな人に振り向いてもらえるように努力するとかなら。でも、相手が嫌がってるとかなら却下だけど。後、ストーカーは駄目な」

 

 一斉に皆の視線がコハクに集中する。

 

「何や? あんさんら」

 

 明らかに低い声で言葉を吐き出すコハク。

 その声で皆の視線が波を引くように外れていく。

 

(おっとっと。失言失言) 

 

 リムルはコハクの突き刺さるような視線を避け、シュナに視線を移すと。

 

「わかりました。それでは、そのように――」

 

 そう言うと、シュナはホワッと微笑んだ。

 

(あれ? 突然、何か嫌な予感が……)

 

「負けませんよ、シュナ様」

「望むところですわ、シオン」

 

 そう言って、ニッコリと微笑み合うシオンとシュナ。

 

 リムルがそっとシュナの手から逃げ出したのは、言うまでもない。

 

 

 ここで余談だが――

 

 今までは様子見を決め込んでいたアルビスも、この日から本気で動き始めた。

 形振(なりふ)り構わず、ベニマルへ攻勢を仕掛けるようになった。

 また、サンコに体術の修行を付けてもらっていた。

 

 そんなモミジも負けておらず、ハクロウとの修行に励みアルビスに対抗する。

 

 それを見ていたベニマルを慕う女性達も黙っておらず、我も我もと〝正妻の座獲得戦〟に参加していく。

 

 ベニマルを巡る女性達の攻防が激化したのは、言うまでもないだろう。

 

 その〝導火線(正妻の座獲得戦)〟に火を付けたのは、間違いなくコハクである。

 

 

 ――この日以降、魔物の国では()れた相手を実力で認めさせるという、意味のわからぬ風習が生まれた瞬間でもある。

 

 

 コハク(いわ)く。

 

 

 『さあさあ、女も男もきばりなはれ。

 

 楽しい楽しい、自由戦闘恋愛主義(ラブアンドバトル)の幕開けどすえ~』

 

 

 と、なったのだった。

 

 

 

 





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