忍びが転生したら〝異世界珍道中〟になった件   作:にゃんころ缶

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 お待たせしました。161話です


 ツキハ

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 コハク

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 傭兵商会ルヴナン・真の紋章


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 ※〝打刀〟
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161話 ヨウム・ファルメナス

 

 

 

 ディアブロとハクロウの帰還から遅れて、三日目。

 

 

 ヨウム一行が、魔国連邦(テンペスト)に到着する。

 

 

 今晩は前夜祭、明日から待ちに待った開国祭が始まるのだ。

 

 

 そしていつものように、会談の間で出迎えるリムル。

 

 リムルの前に、ヨウムとその従者数名が並んだ。

 

「旦那、久しぶり! 約束通り、俺も王になったぜ」

 

 服装だけは王なりに豪華になったヨウムだが、その内面は変わってはいなかった。

 リムルの護衛に付いてるツキハとコハクに目を向け、コクリと軽い挨拶をするヨウム。

 

 これは事前に、番外魔王の二人が護衛に付くと知らされていたのだ。

 ツキハとコハクも、コクリと挨拶を返した。

 

 そして、ふてぶてしい態度のまま、リムルにニヤリと笑いかけ、リムルも同じように笑みを返す。

 

「フフッ。馬子にも衣裳だね、ヨウム君。これからも宜しく頼むよ」

「ハンッ! それはこっちのセリフだぜ、まったく。俺みたいな男を王に担ぎ出したのは旦那だからな、最後まできちんと面倒見てくれよ? 俺達は、あんたの野望に乗ったんだ。中途半端は本当に、御免だぜ」

 

 そう言って笑うヨウム。

 

 ヨウムは、ディアブロの暗躍とルヴナンの情報操作により、王としての地位を確固たるものにしていた。

 

 長い歴史を持つ、ファルムス王国は滅んだ。

 そして、英雄ヨウムを王と(いただ)く王国が誕生したのである。

 

 その国は、〝脅威〟により生まれ変わった国という意味を込めて――

 

 国名を、〝ファルメナス〟王国と改められた。

 

 同時に、初代国王であるヨウムは、ヨウム・ファルメナスと名乗る事になったのだった。

 

 ヨウムの傍らには、二人の魔人――

 ミュウランとグルーシスもいる。

 

 この二人が常にヨウムを護衛していて、更には、王と王妃の自室や寝室には、ルヴナンの三百番台眷属達が交代制で忍魔猫の姿で影の護衛に当たっていた。

 

 そう、ヨウムの身の安全は厳重に守られていたのだ。

 

 とは言っても、ミュウランは護衛とは言えないかも知れない。

 

 何故なら――

 

「リムル陛下、御挨拶が遅れました。ファルメナス王ヨウムの妻、ミュウ・ファルメナスです。今後とも宜しくお願いしますわ」

 

 リムルに微笑みかけながらミュウランは、ドレスの裾を少し持ち上げ、丁寧な挨拶をする。

 

「ミュウランは、王妃として様になっているね。うん、そこらの貴族令嬢など、真っ青になるほどの綺麗な挨拶だよ」

「だろう? 俺と違ってミュウランは教養があるからな」

「こう見えて、多少の経験は御座います。クレイマンは礼儀作法にも(うるさ)い男でしたもので」

 

 リムルが誉めると、自慢そうに言い、ミュウランが少しはにかんだように答えると、そこにコハクがスルッと割り込んで来た。

 

「ほんまに、可愛(かわ)いらしゅうなって、ええ女になりはりましたなぁ。うふふふ」

 

 どこか可愛いもの見っけ、みたいな感じで笑みを浮かべるコハク。

 

 リムルはいつもの事だなとスルーしたが、ヨウムは、え!? という顔でコハクを見ていた。

 

「ミュウラン。今度時間を作りなはれ。一度ゆっくりと、〝余人を交えず〟に酒でも飲みまひょか。うふ」 

「ええ、わかりましたわ。番外魔王コハク様」

 

 いきなりのお誘いに、グルーシス以下従者は目が点になり、ヨウムは慌ててツキハの所まで行き、「〝余人を交えず〟に!? ちょっと、アレ、止めてもらえませんか?」と頼むも。

 

「ああ、アレね。いいかいヨウム、良く聞きな」

「は? はい」

「ああなったコハクはねぇ、もう、止まらないわ。あたしでも、ムリ。ウヒッ」

「はあ!?」

 

 口元に手を当てながら含み笑いを漏らし言うツキハ。

 

「ちょーーっと、待って下さいよ、番外魔王コハク様」

 

 ダダッとミュウランの(そば)に駆け寄るヨウムは完全に素に戻っていた。

 

 従者者達はどう反応していいやら困る始末。 

 いくらリムルの警護でこの場にいるといっても、相手は魔王ではなくても、魔王と同等の力を持つ番外魔王である。

 

 もし、何か気に障る事を一言でも行ったら、消し飛ぶのは自分の命なのだ。

 それがこの世界での、魔王が恐れられる要因の一つでもあったのだから。

 

 それを苦笑いしながら見ていたグルーシスが、ツカツカとコハクの前まで来ると、小さな声で言った。 

 

「コハク様、今はお控えください。そちらも今は、警護の役目を受けられているのでしょう?」

「せやったな。つい、可愛(かわ)ええ()を見ると、な。ふふ」

「とにかく。個人的な酒の席は、また、後ほどって事でお願いします」

「へぇ、そうしましょうかぁ」

 

 あっさりと引き下がったコハクに、従者とヨウムはホッと胸を撫で下ろす。

 すると、一人の従者が「流石はグルーシス団長」と、感嘆の声を上げていた。

 

 こうしてリムルとヨウムの会談が再開される――

 

 リムルが、魔王になってからは色々と大変だったと言い、ジュラの大森林からの各種族の挨拶では置物と化したよと、話す。

 

「ああ、わかるぜ。俺も貴族連中から面会依頼がひっきりなしでさ、既に派閥争いを始めそうな馬鹿共に頭を悩まされているんだよ。ま、そこらへんはあのジジイ、じゃなく――魔術師長ラーゼンが上手くやってくれてるんだけどな。ただな旦那――」

 

 そう言うとヨウムはリムルに顔を近づけ、囁くように言う。

 

「どうも、俺に反発する貴族の中で、特に要注意人物に当たる貴族が、なんの痕跡も残さずに消えてるみたいなんだ。それも、それに関する証拠や痕跡が一切見つからねえ」

「ほう」

 

 リムルはそう言うも、心当たりがあった。

 ファルムス王国に関しては、ほぼディアブロに丸投げしていたので、逐次上がってくる報告でしか知らないが、一度ディアブロから機密予算というモノを申請された事があったのを思い出した。

 

(ああ。イチコさんが暫く帰ってこなかったのは、あれか! そういや、あの時期、ロモコ達も頻繁に魔国からどこかに出て行くを繰り返してたような……。ルヴナン暗殺部隊を使ったのか、ディアブロのヤツ。まあ、こうなるよなと言う、政治的裏案件だわな) 

 

「でさ、魔術師長ラーゼンにそれとなくこの件を聞いたら、一気に顔を青褪(あおざめ)めさせて、口を閉ざしたんだが、これって――」  

 

 ヨウムがそこまで言うと、リムルがヨウムの肩にポンと手を置き、無言のまま笑顔でツキハとコハクの方を見た。

 

「あっ……」

 

 それでヨウムは小さく声を出すと全てを察し、「ま、まあ、これは、うん、仕方がないな」とリムルの肩をパンパンと叩き返し笑う。

 

 それからヨウムの話では、魔人ラーゼンは上手くやっているようである。

 もっとも、ディアブロの『誘惑者(オトスモノ)』の影響下にあるので、裏切るとか到底無理であり、完全にディアブロの下僕と化していたのだ。

 

 後、引退したエドマリス王は、正体を隠して顧問になってくれたと、ヨウムが言う。

 この身分偽装に用いる書類などに関しても、ルヴナンが裏で動いていたらしい。

 

 今では、知識や教養に欠けるヨウムを支えて、政治面などでも色々と助けているとの事だった。

 

 そして、もう一人の魔人グルーシスはというと。

 

「へえ。それでお前は、騎士団長になったんだって?」

 

 リムルがグルーシスに、そう問いかけると。

 

「そうなんですよ、リムル様。俺は断ったんだけどさ、コイツが言い出したら聞かなくて……」

 

 どうやらヨウムが、グルーシスに強引に役職を与えようとしたそうだ。

 

 実力的には申し分ないし、残っていた騎士からも文句は出なかった。

 それもそのハズ、イチコ相手に何度か騎士達の前で手合わせをしていたのだから。

 

 イチコは手合わせの時、ディアブロから要請され、ツキハとコハクに承諾を取った上で、騎士達に自分の正体を明かしている。

 

 イチコの正体を伝承でしか知らない騎士達にとっては、初めて目にする〝笑う猫(ラフィングキャット)〟イチコを相手に、手合わせが出来るといった事実が一番効いたのだ。

 

 本気でやれば結果は言わずもがなだが、イチコはグルーシスの実力に合わせた手合わせをして、緊張感を持たせた戦いを演じてみせた。

 

 それは、見る者の目を奪うほどに、凄まじい手合わせという戦いだった。

 これで、残った騎士達の信頼を得たのだ。

 

 グルーシスは外様である。騎士達に認められても、それを快く思わない貴族や重鎮はいる。

 

 しかし、優秀な人材を遊ばせておくのは勿体(もったい)ないという事で、新国家ファルメナスとして正式に、騎士団長就任を要請したのだという。

 

 この時にグルーシスは渋った。「俺は自由気ままがいい」いいと言い、頑としてこの要請を断ったのだ。

 

 そんなグルーシスだったが、最後にはミュウランからお願いされて折れたのだった。

 

 順風満帆(じゅんぷうまんぱん)とは言えなくとも、こうして騎士団長としての道を歩み始めたグルーシス。

 

 だが、貴族や重鎮達の印象を変えるのは難しく、表立っての誹謗中傷はなかったが、裏では言いたい放題の者がいたのも事実。

 

 だがしかし、先ほどのコハクを止めたグルーシスの行動を見てた従者の一人が、漏らした言葉。

 恐らく、本国に帰ってからこの事は貴族達や重鎮の耳に入る事は確実であり、グルーシスに対する印象も変わる事だろう。

 

 グルーシスの立場を知らない訳がないルヴナン。

 その親玉であるコハクが、狙ってやったのか、ただ単に往来の性格が招いた事なのかはわからない。

 

 しかしこの事が、グルーシスに取って有利に働く事は間違いないだろう。

 

「俺は今でも、カリオン様の獣王戦士団の一員であるつもりなんですがね。ま、当分の間は、この馬鹿の面倒を見るつもりですがね」

「うるせー、馬鹿はお前だ!」

 

 とまあ、相変わらずの二人だった。

 そして、ここから口喧嘩に発展するパターンなのだが、今回は違った。

 

 いきなり横槍が入ったのだ。

 

「もう! ヨウム陛下もグルーシス団長も、魔王リムル様に失礼ですよ! 後、番外魔王様の御二人にもです。魔王リムル様の警護といっても、あの、番外魔王様なのです!」

 

 そう叫んだのは、まだ小学生くらいの利発そうに見える少年だった。

 

「エドガー、お前はホントに真面目だよな」

「はっはっは、いいじゃないか。お前よりシッカリしてる分、次期国王候補として申し分ないだろ?」

「グルーシス団長! 冗談を言っては困ります。僕はヨウム陛下の従者として、陛下に立派な国王となってもらうべく努力しているのですから!」

 

 そう言って顔を真っ赤にして怒る、エドガー少年。

 

 この少年は元国王である、エドマリスの息子である。

 

 ヨウムやグルーシスも、どうやらこのエドガー少年を可愛がってるようだった。

 

 エドガー少年が「陛下、常日頃から言ってあるではないですか」とか言い、ヨウムが「まあまあ、落ち着け」とか言って(なだ)めていた。

 

 このまま微笑ましい光景を眺めていたかったリムルだが、今晩の前夜祭に向けて他にも続々とお偉方がやって来るので、リムルはとりあえず話を切り上げる事にした。

 

 先ほど『思念伝達』でディアブロを呼んでいたリムル。

 今回は、王として招かれたヨウムがいるので、いつもの口喧嘩はせずツキハもディアブロも大人しくしていた。

 

「さて、約束を守ってくれたヨウム君に、俺からプレゼントだ――」

「はい、リムル様。これですね?」

 

 リムルの意図を察したディアブロが、事前に用意していた証書を手に取り、恭しくリムルへと差し出す。

 

 そして、それを受け取ったリムルは、ヨウムにその証書を手渡した。

 

「旦那、これは……?」

 

 ヨウムはさっさとその証書を、エドガー少年に預けてしまう。

 勉強はしてるとはいえ、まだまだ読み書きが苦手らしい。

 

 エドガー少年は証書を一瞥(いちべつ)し、途端に目の色を変えた。

 

「ば、賠償金の残りを帳消しにする、、ですってッ!?」

「ああ、ヨウムが王になった今、それはもう不要だよ」

 

 リムルとしては、既に賠償金として受け取って星金貨千五百枚で充分であった。

 星金貨一万枚はあくまでも脅しも含めての要求だったので、目的が達成された今、これ以上は必要ないと判断したのである。

 

「ヘヘッ、俺にはよくわからねーが、まあ、そういうこった、エドガー」

 

 ヨウムはよく理解していなかったが、エドガー少年はそれを正しく理解した。

 

 これで、国内でのヨウムの名声が更に高まるのだ、と。

 

 これによってヨウムは、リムル――つまり、魔王から――賠償金を値切った男としてファルメナス王国内で周知される事になるのである。

 

 

 ヨウム一行との挨拶は終わり、驚き固まったエドガー少年を引き連れて、ヨウム達はこの場を後にしたのだった。

 

 

 

 

 ★鉄板焼き★

 

 これは、開国祭三日前の事であった。

 

 

 ヴェルドラとツキハは、開国祭の時に出す屋台で使用する鉄板焼き用の鉄板をミョルマイルから渡され、それを確認していた。

 

 ツキハの鉄板焼き用の鉄板は、幅百センチ、奥行六十センチ、周囲は縁取(ふちど)られ、深さ十六ミリ、厚さ二十二ミリの重量は二十五キロの魔鋼製であった。

 

「うんうん、注文通りだね。これで、教授が大好きなお好み焼きが作れるよぉ」

「それはそれは、満足して頂けて、何よりですぞ」

「じゃあこれ、鉄板の代金と、お手伝い人の手配や屋台の設備諸々の代金ね」

 

 そう言ってツキハは、金貨三十枚が入った皮の小袋をミョルマイルに手渡した。

 

「ちょ、ちょっとツキハ様。これは、流石に金額が多すぎますですぞ」 

 

 予算的には、せいぜい、金貨二、三枚くらいのモノだったのだ。

 かかった予算の内、六割がツキハとヴェルドラの鉄板代である。 

 

「いいっていいって。アンタも忙しいだろうに、ヴェルドラの我侭(わがまま)を聞いてくれたお礼だよ。特にヴェルドラの鉄板は、作るのに手間がかかっただろうしさ。遠慮なく取っておいてよ」

 

 にこやかにミョルマイルに言うツキハ。

 

「左様ですか。では、有難く頂戴致します。それでは、これで失礼しますぞ、ツキハ様、ヴェルドラ様」

 

 ミョルマイルはそう言って一礼をすると、次の仕事の打ち合わせがある為、急ぎ足でその場を去っていった。

 

 

 そして、先程から一言も発しないヴェルドラにツキハが、不思議そうに声をかける。

 

「ねえ、ヴェルドラ。アンタさぁ、さっきから、なに鉄板見詰めて固まってんの?」

「ツ、ツキハよ。これな、我の思っていた鉄板とは違うと思うのだが?」

 

 とヴェルドラは、目の前の鉄板を指差した――

 目の前には幅三百四十五ミリ、奥行百九十ミリの鉄板が五枚置いてあったのだが、ツキハの鉄板とは明らかに見た目が違っていたのだ。

 

 ヴェルドラの鉄板には、一枚ごとに直径三十八ミリ、深さ二十三ミリの丸い穴が二十八個作られていた。

 

 そう、ヴェルドラが頼んだ鉄板は、タコ焼き用の鉄板だったのだ。

 

 

「ツキハ。我の鉄板とお前の――」

「ヴェルドラ。それは、駄目だよ」

「な、何故なのだ?」

 

 いつもなら、二言返事でヴェルドラのお願いを聞くツキハに駄目と言われ、キョトンとした顔をするヴェルドラ。

 

 ヴェルドラとしては、ツキハが頼んだ鉄板と同じものが来るものと思っていた。

 しかし、出来上がって来たのは、タコ焼き用の鉄板である。

 

 だから、ツキハの鉄板と交換してもらおうと言ってみたのだ。

 

 そんなヴェルドラにツキハは、優しく語りかける。

 

「ねえ、ヴェルドラ。この鉄板は、開国祭の準備で鬼忙しいミョルマイルがさ、手配してくれたモノじゃん。それはわかるよね」

「う、うむ」

「アンタさ、漫画にあった屋台の鉄板焼きを見せた時のページにね、このタコ焼き用の鉄板が描かかれてたの覚えている?」

「ん? うーむ……覚えておらぬ」

「あたしもあのページの鉄板焼きの鉄板を頼んだんだけど、あたしはその下のコマの屋台の鉄板を頼んだんだよ。でさ、多分ミョルマイルは、その二種類の鉄板がいるんだろうと勘違いしたんだろうね。でもこれは、キチンと説明しなかった、あたしとヴェルドラの責任なんだよ」

 

 そこまで言うとツキハは、ヴェルドラの隣までいき、背中をポンポンと叩く。

 

「うむ。最初に説明が足りなかったと、いう訳だな」

「うん、その通りだよヴェルドラ。だから、そのタコ焼き用の鉄板は、職人が一生懸命に作った鉄板なんだから、使ってあげなくちゃ駄目だよ。そう思わない?」

「うむ。確かにお前の言う通りだな、ツキハよ!」

 

 残念そうな顔から、パッと表情を明るくして言うヴェルドラ。

 

 しかしその後、少し浮かなそうにツキハに言った。

 

「だがのう、我はタコ焼きの作り方を知らぬのだが?」

「大丈夫だよ、ヴェルドラ。あたしが教えてあげる」

「おお! そうかそうか、頼むぞツキハ!」

 

 ツキハから教えてあげると言われ、喜ぶヴェルドラ。

 

「しかしだなぁ、コハクとお前が料理が出来るとと知った時には驚いたものだ」

「前の世界で忍びだった時は、いつ親がお役目で死ぬかわからなかったし。だから、物心ついた時には、一人で生きて行けるようにありとあらゆる訓練を受けて来たもの、里の子供達はね」

「そうだったな。その話を聞いたのは、もう千年以上も前になるか……」

「そうだねぇ……」

 

 二人は出会った頃をしみじみ思い出し、少しの間もの思いに(ふけ)る。

 

 そして、ヴェルドラの前に立ち、ツキハは言う。

 

「ヴェルドラ。昼間は色々忙しいから無理だけど、深夜は開いてるから、特訓しよ。ヴェルドラなら二日で出来るようになるよ。あたしと、頑張ろう。ね、ヴェルドラ!」

「おう! 二日と言わず、一日でモノにして見せようぞ!」

 

 二人してガッと拳を突き合わせると、ニヤリと笑みを浮かべ合う。

 

 

 こうしてヴェルドラはツキハとタコ焼き作りの特訓をして、宣言通りに一日でタコ焼きを作れるようになった。

 

 準備も整い、後は本番の開国祭を待つだけ。

 

 

 さて、ヴェルドラのタコ焼きのお味は――

 

 

 開国祭の時に、わかる。

 

 

 

 





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