忍びが転生したら〝異世界珍道中〟になった件   作:にゃんころ缶

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 お待たせしました。169話です

 ツキハ

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 コハク

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 傭兵商会ルヴナン・真の紋章


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 ※〝打刀〟
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169話 みんな大好き深夜の会議? んなわけあるかぁ!(ツキハ、心の叫び

 

 

 前夜祭が終わった、深夜零時過ぎ。 

 

 

 リムルは予定になかった緊急会議を行う事にした。

 

 ツキハとコハクに関しては、ソウエイ達とルヴナンが協同で魔国の警備に当たっているが、それだけではないので、関係者として参加してもらう事にしたリムル。

 

 これにツキハは、「駄目! これからヴェルドラと一杯飲むから駄目よ!」と拒否るも、コハクが「少しは、ルヴナンの責任者としての自覚を持ちなはれ」と呆れ顔で言い捨て、首根っこを捕まえて無理やりツキハを連行し、会議に参加をする。

 

 長方形の会議テーブルの上座にはリムル、その両脇に配下である幹部達、下座にツキハとコハクが座る。

 

 当然だがツキハはやる気なし、椅子の背にもたれ掛かったまま盛大に不貞腐(ふてくさ)れていた。尻尾でパシーンパシーンと椅子の背もたれを叩き、机の上にパタリと突っ伏する。

 

 こんなツキハの態度は、もはや皆見慣れており、誰も気にしない。

 そして、リムル配下の幹部達の中に一人だけ、席に着くなり眠そうな顔全開の者がいた。

 

 皆が揃ったのを今一度確認して、リムルが口を開く。

 

「悪いな、こんな時間に集まってもらって。皆疲れているだろうけど、もう少しだけ頑張ってくれ。そして、ツキハにコハク、来てくれてありがとう。そんなに長くはしないから、我慢してくれツキハ」

 

 そう言ってリムルは、この場に集まった者達を見回した。

 

 ベニマル以下皆は静かに頷き、ツキハは右手を軽く上げ、コハクは「へぇ」と返事を返す。

 

 ()ずリムルは、本日の功労者であるシュナを(ねぎらう)う。

 

「シュナ、今日は本当に助かったよ。料理もとても美味しかったし、あのミリムさえも苦労していたミッドレイを説得してくれて、本当にありがとう」

 

 リムルが感謝の気持ちを伝えると、シュナは柔らかく微笑んだ。

 

「いいえ、料理に関しては吉田さんの協力があったからこその成功です。それに、リムル様やツキハ様、コハク様がハクロウの鮮魚料理を絶賛していたので、何だか負けたようで悔しかったです」

 

 ほんのりと負けた感を(にじ)ませながらも、笑顔で答えるシュナ。

 

 これに関しては、魚を(さば)くのもお造りにするのも、ましてや寿司を握るのも、シュナよりハクロウの方が各段に上手かっただけである。

 

 これはもう特技みたいなもので、シュナの努力が足りなかったとかそういう訳ではないのだ。

 

 それでもシュナは、かなり悔しい思いをしたようである。

 この、内に秘めた負けん気の強さがシュナの良いところであり、努力家足らんとしてる所以(ゆえん)であろう。

 

 

 続いてリムルは、裏方に徹しているミョルマイルに声をかける。

 

「ミョルマイル君、商人達の方はどうだ? 何か問題は起きなかったか?」

 

 祭りで出す催し物の為に、各国から様々な商品が流入している。

 それらを管理するのは、リグルドとリリナである。

 

 そしてミョルマイルには、魔国連邦(テンペスト)に訪れる商人達の対応を任せていたのだ。

 特に、傭兵公国シャルフューズからの上質なオリーブオイルに加え、各種スパイス、特上ワイン等の輸入は、今回の祭りに大いに貢献(こうけん)していた。

 

 ワイン。知る人こそ知る、この世界で十大ワインと称されるワインの中の一銘柄が、シャルフューズ産のワインだったのである。シャルフューズ産ワインは、ほんのりとする甘みの中に爽やかな酸味を有する絶品と評されていた。今回、百年物の赤、白ワインを優先的に卸してもらい、前夜祭ではかなりの好評を得ていたのだ

 

 シャルフューズには、このような年代物の赤と白ワインが大量に保管されている。

 特に、ワイン樽に使う木は、ブナの木によく似た魔木であり、これが他のワインと一線を画す味わいを引き出す要因になったと言えよう。

 それに加えて、迷宮内ならではの温度と湿度管理があるからこその、シャルフューズ産ワインである。

 

 これに目を付けたリムルも、迷宮内でのワイン造り計画を立ち上げたのだった。

 

 このワインを飲んだ客人達から、この滅多に手に入らぬワインを、どうやって仕入れたのかと聞いて来る者が殺到したが、ガットエランテからの仕入れだと答えると、皆がそうであったかなどと言い、引き下がって行った。

 

 実際、ガットエランテだけがこのシャルフューズ産を取り扱っていて、各国の王侯貴族達に売っていたのである。ワインがどこで造られているかは、決して明かされない、秘密のワイン。

 

 だから、たとえ貴族であろうと、滅多に手に入らない極上ワインの一つだったのだ。

 

「商人達からの評判は上々ですぞ。この国の威容を見て、目を丸くする者ばかりです。今日の夕方も、街の皆さんが提供した料理に数々に舌鼓を打っておりました。近隣の国々や大きな村々などから農民達も多く集まり、大盛況といってよいでしょう。特にリムル提案のファーストフードの屋台や、ツキハ様が始めたカレーパン屋が(こと)(ほか)、農民達や冒険者達に好評で御座いますな。それに、シュナ殿と吉田氏監修のスイーツ店も、長者の列が出来るほどです。それで、商品に関しましても質の良いものが多く、今後とも良き関係が築けそうです――」

 

 そこで話を区切り、チラッとリグルドの方を見るミョルマイル。

 リグルドはそれに応じるように頷き、ミョルマイルの説明を引き継ぐ。

 

「はい。ミョルマイル殿の申す通り、新鮮な野菜や果物、燻製(くんせい)された肉や魚、珍しい工芸品の数々などが集まっております。後、近隣からは生きたままの家畜を運搬してくれる者もおり、祭りの準備は万全と言えましょう。それと、傭兵公国シャルフューズに関してですが、先だってより進めていた階層を増やす作業ですが、この度、滞りなく終了したと教授から報告がありました。これにより、二階層が穀物や果物に各種スパイス等の栽培階層となり、三階層が家畜の放牧階層となります。リムル様と教授の提案通り、これでジュラの大森林を無駄に切り開く事なく、農業を拡大する事が可能となりました。後、迷宮内のエルフ達が住む階層も、農業や家畜の放牧などを広める計画です。祭りと並行して、シャルフューズとの農業における協力体制も、着実に進んでおります」

 

 品不足は無用であると、リグルドが太鼓判を押す。

 迷宮内での農業、何と言っても天候による不作に害虫被害がが起きないといった、最大の利点がある。

 農業における最大の敵が、害虫や天候不良なのは、周知の事実なのだから。

 

「明日からの晩餐会に(きょう)す食材も、そうした輸入品を用いる予定となっておりますわ」

 

 そこにリリナが、リグルドの言葉に頷きつつ、付け加えるように言った。

 

「それでは問題はないようだな」

「はい、大丈夫かと。ただ――いや、やはり大丈夫です」

 

 ミョルマイルが何かを言いかけて、思い直したように口を閉ざした。

 

 それに気になったリムルが、ミョルマイルに問いただす。

 

「おいおい、ミョルマイル君。遠慮なく言っちゃってくれよ? 途中で止めれると、逆に気になるって」

 

 リムルはそう言って、ミョルマイルに発言を促す。

 

 ベニマルやソウエイ、そしてコハクもリムルに同意なのか無言で頷く。

 

 その圧力に押され、ミョルマイルは頭をかきつつ再び口を開いた。

 

「ワシの気のせいだと思うのですが、馴染(なじみ)大店(おおだな)に付いて来た小売商達に、見覚えのある者が少ないように感じたのです。これでもワシは人の顔を覚えるのが得意でして、少し気になったのですよ。それで色々調べてみたのですが――」

 

 気にはなったが、問題は何もなかったとミョルマイルは言った。

 

 馴染の店主達にも話を聞いたそうだが、確かにここ最近、新しく取引を始めた取引相手だと言ったと。

 悪い話も別段上がらず、良い商品を格安で提供してくれるとの事で、心配し過ぎだと笑われたそうだ。

 

 試しにミョルマイルが話しかけてみても、愛想よく応じたらしい。

 

 リムルがコハクに、その事を尋ねてみると。

 

「確かに、ミョルマイルが言った事は間違いあらへん。見慣れぬ小売商達も、本当に商人やさかいな。そこから更に裏を取るのなら、祭り期間中には無理おすな。人数が多過ぎるさかい、十日はいるで? まあ、今のところ(・・・・・)は問題はあらへんけどな」

 

 コハクが、裏を取るか? とリムルに問うと、リムルは問題がないなら今はいいと、コハクに返した。

 

 一人ミョルマイルだけは、今のところと、コハクが言った言葉に妙な引っかかりをお覚えるも、それを頭の隅に留めて置くだけにした。

 

 そして。

 

「大きな仕事を任された興奮から、ワシも少しばかり神経質になっておるようですわい」

 

 と、ミョルマイルは苦笑いをしながらそう言った。

 

 それを聞いたリムルが、心配そうにミョルマイルに聞いた。

 

「おいおい、本当に大丈夫か? 無理をして、過労で倒れたりするとか……?」

 

 そんなリムルの心配を、ミョルマイルは笑い飛ばす。

 

「ははは、御安心下され。それよりも、もっと大事な話が御座いました! 何でも明日からの武闘大会に、あの勇者マサユキ様が参戦なさるそうですぞ!! 街はその噂で持ち切りになり、早速酒場では賭けが行われているようです」

 

 ミョルマイルは今の仕事に、情熱をこめて打ち込んでいるので、疲れている場合ではないと豪語した。

 

「そうそれ。その件について相談しようと思って、皆に集まってもらったんだよ」 

 

 ミリム達を迎えに行っていた者達は、当然その話は初耳だった。

 

 ベニマルなどはソウエイに視線を送り、「どういう状況だ?」と説明を求めている。

 

 それに答えたのはソウエイではなく、ツキハだった。

 

「あれなあ、マサユキ本人というより、取り巻きが厄介でねえ。人の話を全く聞かないのよ。リムルの事を討伐するのだとか、うるさくてさ。 だから、その取り巻きだけでも始末しようとしたんだけども――」

「それは俺が止めた。周囲の目が合ったし、いくらツキハが証拠を残さず始末出来るとしても、明日からの祭りに影響が出てはな」

 

 リムルがツキハの言葉に続き説明をした。

 

 それを聞いたシオンが、「何と舐めた事を! 今から私が、この手で始末してやりましょう!」とそう言って、飛び出そうとしたところを慌ててベニマルとソウエイが取り押さえる。

 

 リムルは、あの時シオンがその場にいなくて良かったと思った。

 下手すると、ツキハと一緒に始末しようと言い出すのは、間違いなかったから。

 

 取り敢えず大人しくなったシオンが席に着くのを見て、リムルがやれやれと口を開く。

 

「シオンを止めてくれて、助かったよ。でさ、あの時は俺の友達のユウキもいたし、街の入り口で勇者相手に喧嘩をしたなんて話が広まれば、それこそ要らぬ警戒心を持たれてしまうだろうからな」

 

 リムルはそう言って溜息を一つ吐く。

 

 しかしそこで、ツキハと同様な事を言い出す者がいた。

 

「クフフフフ、シオン殿の気持ちもわかりますよ。(あるじ)を馬鹿にされて黙ってはいられない、という事ですよね? もっともツキハの場合は、理由は別のところにあったのでしょう」

 

 不気味な笑みを見せ、そう言ったディアブロ。

 

「それで、リムル様。相談と言うのは、その勇者とやらの始末ですか? この私に任せて頂けるのならば、ルヴナンの暗殺部隊より完璧に、今晩中に痕跡を残さず片付けて参りますが?」

 

 サラリと、そんな恐ろしい事を言うディアブロ。 

 ディアブロの言葉に、ツキハとコハクが、フッと乾いた笑みを口端に浮かべる。

 

 ディアブロの場合、間違いなく本気である。

 ツキハと同じく、()ると公言したならば、必ず実行するのがディアブロなのだ。

 

「そんなつもりはない。いいか、間違っても早まった行動は取るなよ?」

 

 なのでリムルは、この場でもう一度念を押したのだった。

 

 それからリムルは気を取り直し、相談内容を皆に告げる。

 

「でだ、相談というのはだな、明日からの武闘大会に、誰か幹部からも参戦出来ないか、って話なんだ」

 

 このリムルの発言は、とんでもない爆弾となる――

 

「ほう」

 ベニマルの目が輝く。

 

「なるほど」

 シオンが不敵に(わら)う。

 

「クフフフ、面白い。実に興味深い話です」

 ディアブロも、シオン以上に不敵な笑みを浮かべる。

 

「見世物になろうとも、我が武を役立てましょう」

 ゲルドもやる気になる。

 

 ソウエイも、「フッ」という小さな笑みを見せ、出場する気満々であった。

 

 同じくハクロウも、どこかソワソワし始め、出る気である。

 

 一人ガビルだけは、自分の催し物があるので、とても残念そうな表情を浮かべていた。

 

 

 ――とこんな具合に、リムルの予想通りの反応であった。

 

 ランガはリムルの影の中で眠っていたので、無反応である。

 

 とりあえずリムルは、誰が出るかで揉めそうになった幹部達を、、咳払い一つで止める。

 

「オホン、待てって。他国の諜報機関の者共が多く集まる場で、君達が本気を見せる必要はないだろ?」

「クフフフフ。本気など出さずとも、私が蹂躙(じゅうりん)して御覧に――」

「ストップ! いいか、先に言っておくぞ。ベニマル、シオン、ディアブロ、ソウエイ。君達が出場するのは禁止します」

「「「「なっ!?」」」」

「「「「それはどういう――」」」」

 

 驚くベニマル達をリムルは手で制し、理由を説明する。

 

 

「まずソウエイだけど、君は〝隠密〟だからね? 衆人環視の中で戦うなんて、もっての外だからね。ルヴナンの眷属達と違って、存在を偽装する事は、君は出来ないんだから」

 

 リムルの言葉にハッとなったソウエイは、納得したのかそれ以上は何も言わずに引き下がった。

 

 だがリムルは、ここで念の為一つ、ダメ押しをする。

 

「そこで、君には新たな職を与えたいと思う」

「職、ですか?」

「そう。お前には、この国の諜報活動全般を任せている訳だけど、正式に御庭番の頭領(とうりょう)を任命する。これは、コハクからの推薦もあった訳だけども。ルヴナンとの合同任務などで、ソウエイは目を見張る成長を遂げたと、ツキハも太鼓判を押していてね。だから、君の部隊にも〝藍闇衆(クラヤミ)〟という名称を授けよう。君の下にいるソーカ達は部隊員として認めるけど、半人前には名乗らせるなよ? これからも、ルヴナンとより一層協力して、敵の闇の目からこの国を守って欲しい」

「承知!! ありがとう御座います、リムル様!!」

 

 ソウエイは席から立ち上がると、リムルに向かって深く礼をして、感激の声で答えた。

 

 今やソウエイの配下も、数百人規模になっているので、リムルとしては、その中から厳選して部隊を編成してくれればいいと考えていた。

 

 

 そして、次は問題の三人である。

 

 リムルの配下の中でも、特に強いこの三人。

 

 ディアブロに至っては、大昔からツキハとコハクとガチで戦って一度も負けておらず、今のところ、全戦引き分けになっていたのだ。ツキハとコハクが〝真なる魔王〟に進化してからは、まだ一度も戦ってはおらず、現在その実力差は不明である。

 

 この三人を出場させるとなると、どう考えても問題ばかりであるとリムルは思う。

 そんなリムルは、既に対策を考案済みであった。

 

「いいか? 俺は今、西側諸国の要人達に対応する役職として、〝四天王〟という地位を新設しようと考えている。間違っても、ルヴナン最凶最悪の〝やさぐれ三獣士〟とは違うから、そこは間違えないように」

 

 リムルがそう言うと、ツキハがサンコとニコを呼んでもいいの? と、ニコニコしながら言うと、真顔で「それはマジで止めてくれ」とリムルが言う。

 

 そんな中でも――

 

「四天王……」

「何と――」

「なるほど」

 

 三人の目の色が変わった。

 

「君達三人は、俺の配下の中でも飛び抜けて強い。そこで〝四天王〟筆頭にベニマルを。残り三名の内二人に、シオンとディアブロを任命したい」

 

(この三人の中では、ベニマルが一番リーダーに向いている。何っていってもベニマルは、俺の代理として、総大将を任せられる男だ)

 

 この、何をするのか謎の役職である〝四天王〟。

 本当は、完全に名誉職である。

 

 リムルが、この三人を大会に出場させない為の言い訳であったのだ。

 

「俺が筆頭……謹んで、拝命致します!!」

 

 ベニマル、引き受ける。

 

「ベニマルが筆頭というのは少し納得がいきませんが、それは今後の私の働きぶりを見て頂き、再考してもらえばと思います。私も喜んで〝四天王〟を名乗らせてもらいますね、リムル様!!」

 

 シオンも、引き受けた。

 

(うーむ。どこからその自信が湧いて来るのか疑問だわ……。まあ、今は納得をしてくれたのだから放っておこう)

 

「〝四天王〟ですか。リムル様の一番を目指しておりますが、今の私は、まだまだ新参の身。誰かさんと違って欲張り過ぎは駄目ですね。私も今は、少しでもリムル様に近付けるように目指しましょう!」

 

 誰かさんと言われたツキハが、「ディアブロ。アンタ、喧嘩売ってる?」と、席から立ち上がろうとした時、横からシュナが、いつの間に用意したのかケガモ(鶏鴨)の〝鳥皮のピリ辛焼き〟が載った皿を「どうぞ、ツキハ様」と言い、机にコトリと置いた。

 

 それを見たツキハは、「お! 小腹がすいていたんだよねえ」と、ひょうたん型〝酒樽君〟を飾り紐の『空間収納』から取り出すと、 ディアブロから言われた事などアッサリ吹き飛んで、〝酒樽君〟に入った酒を飲みながら〝鳥皮のピリ辛焼き〟をパクつき始めた。

 

 ツキハの行動パターンを熟知したシュナの手際に、ベニマル達が流石だと頷く。 

 

 とりあえずの乱闘が防がれたのを確認したリムルは、話の続きを始める。

 

「快く引き受けてくれてありがとう。さて、さっき言った君達に大会出場を禁止した理由だが、それこそがこの〝四天王〟と関係しているんだ」

「と、言いますと?」

 

 リムルの発言にベニマルが尋ねてきた。

 

「うむ。実はな、〝四天王〟の一人を決めかねていてね。ソウエイがいいかなと思ったのだけど、ソウエイは〝隠密〟。公の場で姿を見せるのは不味いから、この役には適任ではないと思う」

 

 リムルはそう言いながら皆の反応を窺うと、皆は納得をするかのように頷いている。

 

 ツキハとコハクはこの件に関しては部外者なので、二人して〝鳥皮のピリ辛焼き〟を食べながら酒盛りを始めていた。

 

 会議中に飲み食いするのはいつもの事なので、誰も気にはしていない。

 

「てな訳で、残った者に参加してもらって、優勝したら名実ともに〝四天王〟を名乗ってもらおうと思うんだけど、どうだろう?」

 

 リムルの言葉に会議室内は、互いの出方を窺う雰囲気に変わる。

 

 その中で、何やら楽し気に酒を飲み〝鳥皮のピリ辛焼き〟を食べるツキハとコハク。

 完全に、我関せずモード突入である。

 

 リムルの発言に、先ずハクロウが難色を示した。

 どうやら娘のモミジを連れて、街を案内する約束をしていたらしい。

 

 これには流石のリムルも、娘優先大事と言い、これによりハクロウの出場は見送られる事になった。

 

 ガビルは技術発表会がある為に、最初から出場を断念している。

 

 ここはやはり、ゲルドが出場するのは確定であった。

 

「承知した。このオレの全力を尽くし、マサユキとやらの優勝を阻止して見せよう!」

 

 ゲルドはそれに応えるように、力強く頷いて見せた。

 

 さて、ここで残り一人を誰にするか? そう考えていたリムル。

 

 するとそこへ。

 

「四天王、それに相応しい男を紹介したいと思います」

 

 突然リグルが立ち上がり、リムルに向かって発言した。

 

(おお! Aランクに達したリグルが推薦するほどの人材ならば、俺としても安心出来るというものだ)

 

「でだ。ゲルドが出場するから大丈夫だと思うが、それは誰だ?」

 

 リムルは、リグルに説明を促す。

 

「残念ながら俺も警備の仕事で出場出来ませんが、俺に次ぐ実力者がいます。それは――」

 

(え? リグルに次ぐ実力者って――まさか!?)

 

「ゴブタです!!」

 

(おう……そのまさかだったわ)

 

 だがしかし、リムルの考えとは裏腹に、リグルドも力強く頷いている。

 

「ゴブタなら、我等の代表として申し分なかろう」

 

(そうなの? 大丈夫か?)

 

「ふふっ。アヤツはワシの弟子として優秀な部類。なかなか機転も利くし、技の冴えもある。根本的に肉体の成長が伴っておらぬが、この大会を成長の場として利用させるのも面白いかと思いますぞ」

 

 ハクロウまで、そんな事を言い出す始末。

 ベニマル達からの反対もなかった。 

 

(うーん。一応本人からの意思確認を……)

 

「スピ―、スピー」

 

 ゴブタ、爆睡中。

 

(うん。本人もやる気十分だし、問題あるまい)

 

 こうしてリムルは、ゴブタを参戦させる事に決めたのだった。

 

 これにて会議を解散しようとしたリムルだったが、閉会の合図を出す前に、もう一つの声が上がった。

 

「我が主よ、我もその大会に参戦したく思います!」

 

 何時(いつ)の間にか目覚めていたランガが、リムルの影から頭だけをニュッと出し、そう言ってきたのだ。

 

「いやいや、ランガは無理だろ? 一応、武闘がメインなんだし……」

「そ、そうですな。召喚師も参加しておるので、召喚獣ならおるのでしょうが……流石に、ランガ殿の参加は厳しいかと……」

 

 強さと技術を競うこの大会、ランガは間違いなく強者(つわもの)だが、大会の趣旨からは外れている。

 

 リムルがそう考えて否定すると、それに頷いたのがミョルマイルだった。

 

 どこか悲しそうであり、恨めしそうにゴブタを見るランガ。

 

 ションボリするランガだが、こればかりは仕方がないのだ。

 リムルは心を鬼にして、ランガの出場を却下したのだった。

 

「それではゲルド殿とゴブタ殿の為に、シード枠を用意しようと思います。参加人数は二百名を超えておりますので、六組に分けてのバトルロイヤルで本戦出場者を決めるとしましょう」

 

 二百超えとは、かなりの人数である。

 そこから明日の大会予選では、八名の本戦出場者を決定するのだ。

 

 かなりの乱戦を生むだろうが、これはこれで面白いだろうとリムルは思った。

 

 

「俺は明日、各国からの来賓の皆さんの案内がある。采配はミョルマイル君に頼むから、宜しく頼むぞ!」

「お任せ下さい!」

 

 ミョルマイルの頼もしい返事に、リムルは安心した顔で頷き返した。

 

 

 後は――

 

「ディアブロ、お前は既に各国の記者に顔が割れていたよな?」

「はい。この度の開国祭にも招待して、いいように宣伝させようと準備しております」

 

 抜かりのないディアブロの返答だった。

 

 リムルは、どうせ顔が割れているのだから隠す必要もないと考えた。

 もし、この恐れられている悪魔が審判をしたら――このギャップは、少しでも印象を変える手段になるかもと、ほくそ笑む。

 

「悪いけど、ディアブロ、審判を任せたい。勇者マサユキや、ゲルドにゴブタまで参加するとなると、人鬼族(ホブゴブリン)達に審判を任せるのは不安だしさ、いいかな?」

「クフフフフ、お任せを!」

 

(これで良し、と。もし何かあれば、ディアブロが何とかしてくれるだろうよ)

 

 リムルは、今度こそ会議を閉会と言おうとすると、またそこへ――

 

「あ、そう言えば。サンコが言っていたのですが、エキシビジョンマッチって、誰が出るんですか?」

 

 と、唐突にシオンがリムルに聞いてきた。

 

 問われたリムルは、この件はミョルマイルに任せているので何も知らず、ミョルマイルに視線を移す。

 同時に幹部の皆が一人を除いて、ミョルマイルの方に注目をする。

 

「ふふふふ。それは、本戦までのお楽しみという事で」

 

 皆の視線にも動じずに、にこやかに返答するミョルマイル。

 

 すると今度は、ベニマル達が誰がエキシビジョンマッチに出るのかと、予想し始める。

 しかし、どう考えても幹部の中にはいないだろうと結論付け、今度は部外者かと考え始めた。

 

 そして、下座に座るツキハとコハクを見る。

 

 コハクが「もう、いけず言わんとき」とツキハにしなだれかかり、ツキハが「近い! 近づきすぎよコハク!」と、怒っているのを見て、アレはないなと皆が首を横に振る。 

 

 結局、どう考えてみても心当たりが思いつかなくて、皆が本戦を待つ事にしようと頷き合った。

 

 そして今度こそ。

 

「それじゃあ、時間を取らせて悪かった。少し遅くなったけど、今日のところはゆっくり休んでくれ!」

「「「ハハッ!!」」」

 

 これにて会議は終了。

 

 

 こうして、明日からの本番を前に、リムル達は眠りについたのである。

 

 

 本戦で行われる、エキシビジョンマッチ。

 

 誰が戦うのか? 

 

 

 それは、二日目の本戦でわかる。

 

 

 

 





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