忍びが転生したら〝異世界珍道中〟になった件   作:にゃんころ缶

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 お待たせしました。171話です

 ツキハ

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 コハク

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 傭兵商会ルヴナン・真の紋章


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 ※〝打刀〟
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171話 魔物が奏でる旋律

 

 

 ヒナタ達が去った後、リムルはその場にポツンと取り残された。

 

(誰もいない……)

 

 何とも奇妙な感覚に(おちい)ったリムルの肩を、誰かがポンッと叩く。

 

「いやあ驚きだったね、リムルさん。ヒナタのあんな笑顔、初めて見たよ」

 

 それは、ユウキだった。

 

 フォーマルなスーツではなく、カジュアルな黒スーツを着て笑顔を浮かべながらそこに立っていた。

 

「そうだな。まさかヒナタが、子供達の面倒を見ると言い出すとはね。ウルサイわね、とか言って嫌いそうなイメージだったんだけどなぁ」

「でも、そうでもないぜ? ああ見えてヒナタは、結構面倒見がいいところもあるんだよ。それでも、意外だったのは本当だけど。それにしても、ヒナタの私服姿、似合い過ぎてビックリだな。あれ、この街で買った服らしいね。綺麗でおしゃれな女子大生、って感じかな?」

 

(やっぱりそうかぁ。あれってシュナの工房で作ってたヤツに似てたから、そうじゃないかとは思っていたけど、そうだったか)

 

「ヒナタのヤツ、金持ちなんだな。俺が言うのもなんだけど、アレって、かなり高価なんだよ。ここいらじゃ、コハクとかツキハくらいなんだよ、金に糸目を付けないで買い漁るのはさ」

「へえー、意外だなあ。あの番外魔王コハクならわかるけど、番外魔王ツキハが服を買うなんて、意外過ぎない?」

「まあ、そうなんだけど。ツキハの場合は、動きやすい服ってか、カジュアル系が多いからな。この間も、Tシャツとかデニム生地のショーパンなど買っていたらしいからな」

 

 ヒナタが買った地獄蛾(ヘルモス)産の絹織物で作った、シルクの服。

 肌触りは良く、『熱変動無効』効果も付与されていて防御力もそれなりに高く、そこらの皮鎧よりもダメージを軽減してくれる一品だった。

 

 ただし、とんでもなく高価なのだ。

 

 地獄蛾(ヘルモス)の繭糸の産出量は安定して来てはいるが、まだまだ少ない。

 

 しかも手織り機を使った手織りなので、製品自体がそこまで多くはないのも実情。

 そうした理由から、とんでもなく高い値段でしか提供出来ないのだ。

 

 庶民には手が届かない、王侯貴族向けの商品だったのである。

 

 それをヒナタは、昨日見た時点で迷わず購入したらしい。

 しかも、寸法直しまで終わらせているとなると、かなりの大金を支払ったと、容易に想像できる。

 

「祭りだから、財布の紐が緩んだんじゃない? 二、三日前から下見をしてたみたいだし、あのウキウキ(よう)はなかったぜ?」

「ほんとかよ!」

 

(俺の見間違えかと思っていたけど、俺が思っていた以上にヒナタは開国祭を楽しみにしてくれてたみたいだな。ん、んん!? だからか! だからヒナタは、ルミナスの相手を俺に任せて、ってか押し付けとも言うが、まあそれはいい。自分は伸び伸びと羽を伸ばそうとしているんだな。ほんと、ちゃっかりしてるよな、ヒナタって) 

 

「しかし、下見って一体何を?」

「あれだよ、どんな屋台があるのかだろ? ほら、焼きそばや焼きもろこしがあるとか、弾んだ声で言ってたじゃん」

「ああ、えっと、それって……」

 

(つまりヒナタは、昨日まで下調べを行っていたと。ガチじゃん。全力投球で祭りを楽しむ気だな。あれだ、円形闘技場(コロッセオ)の周りには、各人が出す様々な屋台が立ち並んでいる。俺が企画した、前世で言うファストフード店もその一つ。ハンバーガー、ホットドッグ、ポテトフライ等に、各種ジュース、他にもてんこ盛りだ。季節的にはまだ早いが、かき氷まであった。夏には主力商品になるだろう。ヒナタは、そうした店をチェックして、どう屋台を巡回するか決めているんだろうな)

 

「ヒナタってさ、見た目によらずジャンクフードが好きじゃね?」

「まあ、美味しいからね。僕も好きだし、元の世界ではよく食べていたね……でも、意外と言えば、意外かな」

 

 リムルの呟きに、ユウキも同意した。

 

 それからリムルは、ベニマルとユウキを伴い、迎賓館に向かう。

 

 そこでは既にリグルドが、大勢の貴族を前に本日の予定を説明していた。

 

 リグルドがリムルの姿を見つけ、駆け寄って来る。

 

「おお、リムル様! 先程の演説は見事でした!」

「え、そうかな?」

「そうですとも、リムル様!」

 

 リグルドの嬉しそうな顔を見て、リムルも笑顔で答える。

 

「それでは皆様、本日の最初の催しにご案内致しましょう!!」

 

 そう言ってリグルドは、歩き出す。

 

 向かう先は、迎賓館から出て直ぐの建物、歌劇場である。

 

 突貫工事で内装を造り変えたそれは、ゴシック様式を思わせる造りであった。

 中央が一般席になっていて、左右の二階と三階が貴賓席となっている。

 

 この世界の文化レベルは、リムルがいた日本と比べると偏って見える。

 これは、この世界の者からかしても、同じ事が言えるだろう。

 

 芸術関連のレベルもそれなりに高く、音楽や絵画といった分野では、リムルがいた世界に比べても遜色がないものだった。

 

 だがしかし、これはあくまでも王侯貴族の間でのみ、広まっているモノ。

 どれだけ金と暇を持て余しているかという、上層階級の遊戯。

 

 何故なら――

 

 ある一定以上に都市が発展したら、それを狙って天使族(エンジェル)が襲撃を開始する。

 そうした理由から、ある程度の研究物は王侯貴族が隔離して隠す傾向にあるのだ。

 芸術関連も同じで、貴族が出資して自分達だけで楽しむもの、という認識が一般的なのである。

 

 リムルの観点は、文化は皆で育むものという認識であり、天使族(エンジェル)? 知らん、それ美味しいのか!? 来たら返り討ちにするよ? というのがリムルの考えである。

 

 だからこその、本日の鑑賞会なのだ。

 

 楽器類は元いた世界と似た者が多く、驚く事にクレイマンの居城にはピアノまであったのだ。

 豪華絢爛に飾られた一室には、大量の楽器類が保管されていた。クレイマンもまた。王侯貴族顔負けの生活を送っていたのだろう。

 

 そうした楽器類をリムルは、自分の国へと運ばせていた。

 

 元々、魔物達には音楽に通じる者がいた。

 笛や太鼓でリズムを取り、年に一度の祭りを楽しむ文化が存在した。

 

 そしてリムルは、そうした者達に楽器を貸し与えてみたところ、小さな才能が開花し始めていたのだ。

 

 だがしかし、ここである事にリムルは気付く。

 自分だけの知識では限界があったのだ。

 

 簡単な楽譜を読めるよう指導は出来るが、そこから先はどうにもならなかったのが現状。

 

 そこで登場したのが、智慧の王(ラファエル)である。

 

 リムルが日本で学んだ音楽の教科書と、この世界の図書館にあった楽器の知識等を纏めて、紙資料として一冊の本として仕上げたのであった。

 

 リムルが完全に忘れているような古い知識までも、完全再現して見せた智慧の王(ラファエル)

 この幅広い能力の活用を、いち能力(スキル)がここまで出来るものなのだろうか?

 

 これこそが、番外魔王の二人が最大限の警戒を抱く所以(ゆえん)なのだろう。 

 

 (ちな)みに、リムルが元いた日本の音楽をも、楽譜として再現した智慧の王(ラファエル)であった。

 

 この世界には紙はあるが、リムルのいた世界の紙と比べると質があまり良くない。

 魔術書などには、羊豚(ヨウトン)から取れる羊皮紙か主に使われていて、羊皮紙、紙媒体の魔術書などは経年劣化による劣化を防ぐ為に、劣化防止の魔法がかけられているのが通常である。

 

 現状、質の良い紙は東の帝国製か、ここ魔国で作られる紙が品質が良いとされている。

 

 ルヴナンでも、契約書の(たぐい)は、木の板や羊皮紙から、魔国製の紙に切り替わっていた。

 

 大量の楽譜の束、リムルは自分の記憶にある音楽を、ほぼ全部楽譜に起こしてもらったいた。

 

 舞台では、演奏する者達が楽器の音合わせをする光景が見られた。 

 

(うーん、俺も本格的に耳にするのは初めてだから、本当に楽しみだな。記憶の中から再現した音楽だから、って主に、全部先生(ラファエル)にしてもらったわけだけど……。著作権はなぁ、まあ、この世界には著作者はいないんだし、そこは文化の発展の為に、ごめん! という事で)

 

 リムルは、この時をとても楽しみにしていた。 

 自分の元いた世界の音楽を再現した鑑賞会のお披露目が、ようやく来たのだ。

 

 来賓が全て席に座ったのを確認したのか、ゆっくりと魔力式照明が暗くなっていく。

 

 そして、舞台の幕が上がった。

 

 黒で統一された礼装を着た楽団員が、その姿を現す。

 

 各々の得意な楽器を構える、多種多様な種族達。

 人に近い姿の者、獣に近い顔立ちをした者まで様々。

 

 ここに至るまで厳しい練習を重ねて来たであろう事は、楽団員の自信に満ちた表情を見れば、容易に窺い知れる。

 

 指揮者なのだろうか、小人族(ハーフリング)が前に進み出て、来賓達に向かって深々と一礼をする。

 

 指揮者の彼の名はタクト、リムルが名を与えた一人。

 テンペストにやって来た彼は、非力で何をやっても上手くはいかなかった。

 

 しかし、それを嘆いてはいたけども卑屈にはならず、何か自分に出来る事はないか? と、模索していた。

 その彼にも一つだけ、優れている事があったのだ。

 

 人をやる気にさせる事が上手く、得意の歌を披露しては皆を楽しませていた。

 そう、歌が上手く音感に優れていたのである。

 

 そして彼の存在がリムルの耳に入り、この軍楽隊の指揮者に抜擢され名も与えられたという経緯に到ったのだ。

 

 タクトは頭を上げ、楽団員に向き直り、右手に持った指揮棒(タクト)を振り上げ――

 

 一気に下へと振り下ろす。

 

 一斉に鳴り響く管楽器と弦楽器に、打楽器――魔物が奏でる旋律。

 

 盛大なハーモニーが、会場を一気に包み込んでいった。

 

 リムルのいた世界の代表するクラシックの名曲の一つ、ベートーヴェンの交響曲第五番・運命が、ダダダーーーンッ! と鳴り響く。

 

 それは聞く者を圧倒し、曲の奏でるテーマに、否応なく引きずり込む。 

 曲名も知らず、初めて聞く異世界の音楽に、来賓達は言葉を一言も発せず、ただただその流れる旋律に、逃げようがないほどに耳が(とりこ)になる。

 

 やがて一曲目が終わると、流れるように次の曲が始まっていった。

 これもベートーヴェンである。先程とは違って、情緒あふれる曲の交響曲第六番・田園。

 

 その柔らかくもどこか安心感を漂わせる旋律は、魔国連邦(テンペスト)がある広大なジュラの大森林を思わせ、そして、ドワルゴン方面に広がる麦畑を、豊かに表現しているかのようだった。

 

 来賓達は目を閉じ、自分の中に浮かぶ情景と流れる曲とをシンクロさせていった。

 

 ユウキも目を閉じ、懐かしそうに聴き惚れていた。

 

 そこから更に三曲の異世界クラシックを演奏し演奏が終わると、楽団員が譜面立てにある楽譜を次の曲へと変えていく。

 

 今度はクラシックとは違って、軽快な曲が流れ始めた。

 アニメの曲である。

 

(ふあ? 嘘だろ、おい……。当たり前のような流れで、クラシックからアニメソングへと変わったぞ?)

 

 いきなり曲調が変わったのに驚くリムル。

 

 すると、ユウキが目を開けて、リムルをジッと見る。

 

(違う、俺じゃない! えと、あれだ、俺の記憶を元に楽譜を描いたのは――)

 

 思わず内心で言い訳をするリムル。

 

 と、そこへ。

 

《解。主様(マスター)の記憶情報の中で、心理的満足度の高いものを優先的に選曲しました》

 

 リムルの言い訳に、自信満々で答える智慧の王(ラファエル)であった。

 

 そんなリムルの思いも呑み込むかのように、演奏は続いていく。

 

 会場は熱気に包まれ――そして、最後の音が、波が引くように静かに()む。

 

「終わり、か……」

 

 名残惜しそうに、リムルがポツリと呟く。

 濃密な時間、永遠とも思われる一時間だった。

 

 これでこの公演は終わりである。

 予定では、六十分の公演を、午前と午後に一回ずつ行う事になっていたのだ。

 

 魔物達の楽団員による公演は、大成功とも思えた。

 

 来賓客達の中にはまだ目を(つむ)り、聞いた曲の余韻に浸っている者もいた。

 

 リムルはそれらを見て、演奏を(おこな)った者達を誇らしく思い、楽団員を祝福しようと立ち上がり、拍手をしようとした時――

 

 タクトが一礼し、指揮棒を一閃させた。

 

 その瞬間、魔力式照明が落ち、闇が会場内を包む。

 漆黒の闇に包まれた会場に、動揺の小波(さざなみ)が走る。

 

 しかし、それは一瞬の出来事だった。

 

 天井からスーッと下りて来た一筋の細い光が、一人の人物を照らし出す。

 

 淡い桃色の髪の、可憐な少女――シュナだった。

 純白のアメリカンスリープドレスに身を包み、どことなく大人の魅力を(かも)し出していた。

 

 そして、もう一本の細い光が天井から下りて来て、もう一人の人物を照らし出す。

 

(え、シオンか?)

 

 シュナだけではなく、シオンまでもが舞台に現れた事に驚くリムル。

 

 いつものスーツ姿ではなく、薄紫色のスリップドレスを着ていた。

 幻想的な光の加減によってドレスが薄く透けて見える感じになっており、普段は感じさせぬ色気を振りまいていた。

 

(黙っていれば、ほんと凛々しい美人なんだよなぁ、シオン……)

 

 リムルは、舞台に立つシオンを見て、心の内で感想を言う。

 

 光に照らし出された二人は、舞台の正面に立ち深々とお辞儀をした。

 

(二人で何をするんだろう? まさかとは思うけど、あの誰も弾こうとはしなかったピアノ……)

 

 そう、舞台には一台のピアノが置かれていたが、楽団員は誰もそのピアノを弾かなかったのだ。

 

 光が動き、シュナがピアノのへと向かい椅子に座る。

 

 そして、シオンの後ろの暗がりからフルートを持った手が現れ、シオンはそれを受け取った。

 

(シュナがピアノはわかるけど、シオンがフルートだと? これだけの来賓を前に、大丈夫なのだろうか?)

 

 一抹の不安を思いながらも、演奏の始まりを待つリムル。

 

 シュナが両手を鍵盤にそえると、タタタンタ、タタ、タタタンと滑らかに両手の指が鍵盤を踊るように弾き始める。

 

 このイントロを聞いただけで、リムルとユウキはある曲を思い出した。

 

(ああ、この曲……懐かしいな。これあれだ)

 

 ユウキは再び目を閉じ、この曲よく耳にした頃を思い出す。

 

 そして、一小節を引終えると同時に、シオンのフルートが同じ旋律を奏でていく。

 

(これを二重奏(デュオ)でやるとはなぁ……。ふふ、も○○○姫のア○○カのテーマか。まさに、魔物の二人による演奏に、ピッタリじゃないか)

 

 シュナのピアノは、静かでゆるやかに奏でる旋律一つ一つに、ジュラの大森林にあった、今は亡き大鬼族(オーガ)の里を思い浮かべるような調べ。

 

 追従するシオンのフルートは、燃えるような激しい情熱を込めた旋律。

 

 異世界のアニメの曲が会場内の空気を、せつなくも優しく震わせていく。

 

 シュナのピアノが、亡きオーガの里を唄い弔うように、旋律を奏でていき――

 シオンのフルートは、里を滅ぼされた怒りと鎮魂を表す調べとなる。 

 

 その旋律が合わさり、妖艶(ようえん)なる調べとなって来賓客達の心を揺さぶり動かす。

 

 幻想的な音色が会場内を緩やかに反響し、聴く者全てをあたかもどこか知らない空間にいると、錯覚をさせるかのように音が広がる。

 

 隣に座っているベニマルをリムルがチラリと見ると、ベニマルの目が少し潤んでいた。

 異世界のアニメの曲を知らぬベニマルでさえ、この曲の物悲しくも優しい旋律に、今は亡きオーガの里を思い出したのかも知れない。

 

(ほおぉ……何かこの曲の破壊力凄くね? 俺でさえ聴き惚れてしまうじゃないか……)

 

 リムルが元いた日本での好きだったアニメの一つ。

 そして、この曲に惹かれた思い出が、そっと胸の内に蘇る。

 

 ピアノとフルートの、見事な調和。

 

(あのアニメにも深い森が出て来ていたけど、どこかジュラの大森林もそれっぽいよなぁ……。ああ、凄くいい、魂が揺さぶられるよう、だ……)

 

 リムルはうっとりした表情で目を閉じ、流れる曲だけに集中する。

 

 シュナは巫女姫である――

 そしてシオンは、それを守護する役目を負っていた。

 

 神事には、音楽が不可欠なもの。

 

 だからこそ、シュナとシオンが奏でる音色は、聴く者の心に響くのかも知れない。

 

 せつなくて、幻想的な音色が終わりを告げる音を、静かに落とす。

 

 

 静寂。

 

 

 誰もが我を忘れたかのように、呆然(ぼうぜん)と舞台を見つめていた。

 

 リムルが我に返って、大慌てで拍手しようとした時。

 

 それよりも早く、パチパチと、静寂を切り裂くように小さく響く音。

 

(出遅れた。最初の拍手を送りたかったのに、誰かに先を越されたようだな) 

 

 リムルは追従するように拍手をしつつ、誰だろうと確かめてみると。

 

 何とそれは、ルミナスだった。

 

 聖騎士(ホーリーナイト)二人のメイドに扮したルミナスが、とても満足そうに拍手をしていたのだ。 

 

 そして、リムル達に続くように拍手が重なり響き合う。

 

 万雷の拍手。

 

 魔導王朝サリオンの皇帝エルメシアや、ドワーフ王ガゼル、西側諸国の王侯貴族達。

 

 更に、フレイやカリオン、ヘルメス、文化に縁のなさそうなミッドレイまでも。

 

 皆が立ち上がり、拍手喝采の嵐。

 

 そう、スタンディングオベーション。拍手を送るという風習はこの世界にもあった。

 昔の〝異世界人〟が広めたのかこの世界にも元からあったのかは定かではない。

 

 しかし、この世界にはアンコールという風習がない事は、リムルも知っていた。

 

 そもそも、文化活動が活発ではないのだから、考えるまでもなく理由は明白である。

 

 リムルはこれで終わりかと思ったのだが、どうやらそうではなかった。

 

 

 再び会場内が闇に包まれ、静けさが会場を支配する。

 

 

 





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