忍びが転生したら〝異世界珍道中〟になった件 作:にゃんころ缶
リムルは前日の飲み会で、飲み過ぎていた。
元々、『状態異常無効』を持っているのでどれだけ飲んでも酔わない。
(うぅー、飲み過ぎた。頭痛てぇぇぇ……)
だがしかし、一部『毒無効』効果を弱める事で酔えるようにしていたリムル。
これは、以前ルミナスから教えてもらった技法。
今回も、
で、その結果が、このような酷い二日酔い状態に
(うー、これ、何とかなりませんかね?)
《……。残念ながら『痛覚無効』も弱まっています。当分は、その痛みが持続するものと思われます》
(おいおい、それ、ワザとじゃないのか……。前回もお怒りだったようだけど――)
《解。そのような事実は確認出来ません》
(はあ? いやいや、事実って、さ。あのな、関係のない『痛覚無効』が効果を発揮しないって、そんなの絶対おかしいよな!)
《……》
(そもそも、ツキハにコハク、ルミナスはあんなに飲んでも、次の日はケロってしてるのは、どうしてなんだよ!?)
《解。年季の入り方が違います。以上》
(はああ!? 年季って何だよ! うっ、あたたたたた……。ほんと、これ、どうにかしてよ、先生)
《……》
というリムルの突っ込みは華麗に無視され、暫くは頭痛と戦う羽目になったリムル。
…………
……
(反省します。しますので、どうか痛みを和らげて下さい!)
《…………》
しかし、
それが少し続いた後、ようやく痛みが中和されて、ホッとするリムル。
(酔った気分だけを楽しむだけにしておけば良かったんだけど、ついつい周りに合わせちゃうんだよなぁ。今度、ツキハとコハクに、『毒無効』を弱めても大丈夫なコツでも教えてもらうかな)
反省するといって、全く反省していないリムル。
これは、前世の記憶を引き継いでいるのだから、酒に酔いたいというのは当然の事なのだろう。
やはり、酒は楽しく飲んで酔いたい、リムルではなく、三上悟の本能がそれを欲しているのかも知れない。
昨晩は、ミョルマイル達と夜店を巡った後、視察という名目で、九十五階に新しく造った特別会員専用の
魔国で一番高級なその店は、厳選された客しか利用出来ないとの触れ込みである。
今回は宣伝目的もあり、来賓客達にも特別に開放していたのだ
ちなみに、既にツキハはこの店の会員になっており、ヴェルドラもツキハが会員費を出していて会員である。
そして、この店の奥の目立たないボックス席は、ツキハが年単位で借り上げていて、ツキハとヴェルドラ専用ボックス席となっていたのだ。
店は、来賓達が押し掛けていて盛況であった。
ほとんどの席は埋まっていたが、リムルは事前にツキハに許可を受けていて、〝猫様専用席〟と書かれた札が置かれた席に向かい座る。
店内は、ガヤガヤと楽しい声が飛び交っていた。
昼間に体験した音楽の演奏が忘れられない者。
回復に関する新たな発見に、我を忘れて議論する者。
そんな者達が店の中で、熱く語り合っていたのだ。
当然そこには、ガゼルとベスタ―も来ていた。
そこでリムル達は見つかり、散々酒に付き合わされたのだ。
夜遅くまで飲み明かしたリムル達。
飲み過ぎたのはリムルだけではない。
来賓の者達も同じである。
そんな酒の席で、朗報が一つあった。
酒に酔ったガゼルに、足りない金貨について相談したところ、何とその相談に乗ってくれたのだ。
そこにエラルド公爵までやって来て――〝ふむ。その事ですか〟とポツリと呟き、少し考えてみましょうと言って約束してくれたのだ。
それを聞いたガゼルはピクンと右眉を跳ね上げるも、既に話は別の方向へと移っていたので、酔いもありサラリと流したのだった。リムルもまた、かなり酔いが回っていたので気にも留めなかったのである。
そんな訳でリムルはちょっと疲れた顔で、開国祭二日目の朝を迎えたのだった。
今日は、武闘大会決勝戦の日。
六名の本戦出場者に加え、シード枠からゴブタとゲルドの二名が加わり、計八名で本戦が争わられる。
場所は、完成したての円形闘技場。
五万人はゆったり観戦できる出来る、巨大建造物である。
客席には張り出した屋根が
半球形の客席ごと覆うその屋根は、翼竜の翼のように、骨格に張られた薄い膜のような形状をしていた。
そう、言ってみれば、単なるリムルの趣味であり、不気味な雰囲気になるようにと趣向を凝らした結果なのだ。
これを見た教授が、「中二病全開って、良いわねえ。これが出来る異世界最高だわ! あははは」と笑ったのは言うまでもない。
実際は日除けが目的であるのだが、誰もが口々に驚きの声を上げ見上げていた。
客席は満員。
全ての席が埋まっており、不慮の事故を防ぐ為に係員のホブゴブリン達が
客席に囲まれた平地の部分には、戦いの舞台が設置してある。
この床部分には、巨大な石を加工して埋め込んであった。
二メートル四方の立方体に加工された
これは、限られた時間の中でリムルが『胃袋』内で造った部分である。
通常の硬岩でさえ、コンクリートの三百倍以上の硬度がある。
この床に敷き詰められた硬岩は大量の魔素を含んでいて、実にコンクリートの一万倍の強度に達していた。
そんなモノが厚み二メートルもあるのだ。核シェルターも驚きの代物である。
実際に実験をする為に、コハクに核撃魔法を撃ってもらい直撃させたが、それに耐えたのだ。
この時、コハクがリムルに「次の実験はいつやるんや?」と、ニコニコとした顔で尋ねて来た。
リムルは即座にこれを察し、(ヤバイ。次は、確実に破壊しにくる)と思い、「いや、満足した結果が得られたから、これでいいよ」と、にこやかに返したのだった。
これで物理的に頑丈にして、更に魔法でも保護がされていた。
二重の防御結界を設置していたのだ。
舞台の大きさは、二メートル四方の硬岩を縦横十五個を並べた三十メートル四方。
第一の結界は、床部分を全て網羅していて、客席まで続く大規模魔法陣。
今後の戦闘訓練にも耐えられるよう、最初から全面防護を施していた。
第二の結界は、客席からよく見える位置に、直径五十メートルの魔法陣が描いてある。
この魔法陣の上が、舞台となる戦闘区域だ。
二重結界にしたのは、会場保護の為である。
客席まで、攻撃の余波などが及ばないように配慮しているのだ。
一つ目は魔素の通過を防止する結界なので、能力の制限はない。
その為、高威力の魔法などが発動した場合、周囲に影響が出る恐れがあった。
それに対する備えが、二つ目の結界である。
万が一の場合は、リムル自身の
リムル自体こういう場で見せたくはなかったが、来賓に怪我人を出すよりマシであると。
実際、発動は一瞬なので気付く者はいないだろうとの考えである。
幹部達が戦うならいざ知らず、大会参加者程度の実力者なら破壊困難なハズ、と、考えていたリムル。
だがしかし、まさか〝勇者〟マサユキが参加するとは思ってはいなかった。
マサユキに関しては、まあ大丈夫だろうと考えてはいたのだが……。
それと、リムルには気がかりな事が、もう一つ――
エキシビジョンマッチに、誰が出るのか、である……。
会場は熱気に包まれていた。
イングラシア王国で開催されていた武闘大会も、それはそれは凄い人気だった。
武闘大会は毎年開催されており、冒険者のランク別に優勝を争っていたのだ。
娯楽が少ないこの世界では、このような見世物は一種のお祭り騒ぎではあるが――
一般庶民にまでは、この武闘大会は解放されていなかった。
金持ちや貴族だけしか会場には入れず、庶民は大会の結果を待つのみ。
そこで、庶民に大人気の地下闘技場が生まれた経緯が、これである。
魔国の
南側には、他より少し突き出た空間があり、そこはリムルや貴賓達が座る、豪華な椅子が設けられた貴賓席。
東側と西側には、闘技に参加する選手の入場口が設けられている。
そして、南側から左右にぐるりと円形状に囲むように四段になった一般観客席があった。
今回は更に、東西南北に貼られた巨大スクリーンに、映像を映し出す水晶球からの戦闘映像を映し出すという魔法システムが設置されていた。
光学魔法を刻印に組み込んだ、ハードはリムル、ソフトは教授の合作である。
これで、遠い位置にある一般客席の者にも、戦闘状況がわかるといった配慮なのだ。
予定では、一人ずつ選手が紹介される事になっている。
スクリーンもそれに合わせて切り替わり、選手の顔を映し出すように係に指示が成されていた。
アナウンスを行うのは、ソウエイの配下である
着ている服は、背中が大きく
手には魔力式マイクを持ち、マイクの先端には小さい直径十センチほどの青い魔法陣が浮かんでいた。
最初に、昨日勝ち抜いた六名の紹介が始まる。
先ず一人目は、〝勇者〟マサユキ。
『さあ、最初に紹介するのは、この人でーす!! 昨日の第一試合の覇者、その名は、あの閃光と
ソーカのアナウンスが闘技場内に響き渡る。
貴賓席の真ん中に座るリムル。
その左側にはフレイとミッドレイ達が座り、右側にはベニマル、シオン、ハクロウに娘のモミジなどが座る。
ソウエイはリムルの席の右斜め後ろに控える。貴賓席も階段状に席を設けているので、ソウエイが立っていても邪魔にならない寸法だ。
リムルの魔後ろの席には、エルメシアが座りその右にエラルド。エルメシアの左側の席にはガゼル。
そして、エルメシアの左側には、ヒナタが座り、子供達五人が同じく並び座る。
ルミナスはメイド服の姿のままま、ヒナタの後ろに座るアルノーとバッカスの隣に座っていた。
(おいおい、ノリノリだなソーカのヤツ。顔出しで堂々と選手達の前に出ているが、〝隠密〟としての仕事に差し障らないのだろうか?)
そう思ったリムルは、傍に控えるソウエイに聞いてみた。
「問題ありません。任務中は変装しておりますし、〝隠形法〟は得意としていて〝朧流〟に加え、〝天牙影千流〟の〝隠形法〟もかなり出来るようにはなっています。それに、表に立つ役目の、顔が割れている者も必要なのですよ。ルヴナンの〝忍び〟のように」
「そうか。お前がそう言うのなら、問題はないだろう。よくそこまでアソコの実態を監察出来たな。まあ、お前達には合わない部分もあるから、そこは気を付けるように」
「御意」
と、ソウエイの言葉に問題はないと納得をするリムルであった。
ソーカの堂に入った紹介の言葉が続く中、リムルはふと思った疑問をソウエイにぶつけた。
「なあ、ところでアイツの昨日の試合は、どうだったの?」
「それがですね、実はまるで参考にはなりませんでした――」
と、ソウエイが昨日の試合の
マサユキは昨日の試合で全く剣を抜かなかった、と。
何故なら、参加者の中にマサユキの仲間の一人がいたらしく、五十名程の選手を全員倒してしまったのだと。
(うーん。それだけ慕われているという事は、それなりの実力とみるべきなのだが……どうもハッタリ小僧である疑いが拭い去れないんだよねぇ。でも、ツキハとコハクが警戒していたから、そうじゃないかも知れない……。まあいい。その実力が本物か否かは、今日の試合で判明するだろう)
どうにもハッタリ感が頭から離れないリムルであった。
『さあ、圧倒的強さで名を馳せて、若くして〝勇者〟を名乗るマサユキだが、今日は一体どんな試合を見せてくれるのか――ッ!! あの番外魔王の二人にすら一歩も退かないとの噂は、本当なのかあ――ッ!! その甘いマスクに
とソーカが叫ぶなり、『ウオォーーーーッ』という凄まじい歓声が闘技場内の空気を震わせる。
大人気のマサユキである。
(はあ? 本当にそんなにモテるのか? うらや、じゃない! それにしても、何だあの宣伝文は、ソーカが考えているのか? 大半が嘘で塗り固めた、褒め殺しじゃねーか。しかし、自分で考えてのアレなら、凄い才能だぞ。ま、でも、マサユキも大変だな。こんな宣伝されて、本戦一回戦で敗退とかだったら、恥ずかしいってもんじゃない。これはある意味、巧妙な嫌がらせだ。ソーカなりの、高等な嫌がらせに違いないと思う。
リムルは内心で、ルヴナンの影響が出ている事にちょっぴり複雑な気持ちになる。
そして続く選手は、〝狂狼〟のジンライ。
モヒカン頭で屈強な体で歴戦の勇士を思わせるその姿、マサユキの仲間の一人である。
三人目の選手は、〝流麗なる剣闘士〟ガイ。
このガイという男は、美しい剣技を売りにしている。
冒険者の中でもかなりの実力者であった。
次に四人目と五人目の選手。
この二人だが、リムルには見覚えがあった。
そう、何故か
リムルはソウエイに事情を聴いてみた。
「何でアイツ等が出場しているんだ?」
「それがですね、どうやら噂が広まったようでして……」
「噂、って?」
「はい、アレですよ。例の、優勝者を〝四天王〟に任ずるという――」
「――はあ!?」
ソウエイは、どうやらゴブタが口を滑らせて、あっという間に広まったのだと言った。
それで昨日は、多くの魔物が飛び入り参加をしたらしい、と。
最終的に、三百名を超える参加者が集い、大賑わいを見せたの事だった。
しかもその中に、ルヴナンの眷属が数名混じっていたらしく、それをコハクに即伝えて、コハクから盛大な説教を眷属に落としてもらった後連れ帰ってもらったとも、ソウエイは付け加えた。
「アイツ等、ツキハとコハクの眷属だろ。駄目だろうが参加とか。何考えてんだよ、全く」
「それは何とも。あの御二人の眷属ですから……」
リムルのボヤキにソウエイは、苦笑いを浮かべ返した。
(それにしても、二人揃って出場とはなぁ)
二人のグループにも、何体かはAランク相当の魔物がいたのだが、難なく蹴散らしていたのだ。
そこは上位種族というよりも、リムルは――
『――昨日の第四試合の覇者、ゴズ―ル――ッ!!』
ソーカの声が響く。
――そう、
その目的は――
言うまでもなく、迷宮内の階層ボス役を担ってもらう為である。
そして、平等性を保つ為に、
リムルは、この二人のどちらかに五十階層ボスを任せようと考えていた。
何なら、交代制でも良いと交渉したのである。
リムルに忠誠を誓っていた二人は、我を争ってこれを受けた。
その代わりに、名付けをあいたのである。
そして進化した二人は――
ゴズ―ルは
しかも――
《問。個体名:ゴズ―ルに対し『
(はい?
リムルにそう質問して来たのだ。
どうやら
更に、適正とか色々条件が厳しいとも言うが、
それを受けてリムルは、わかったよと頷き、YESと念じた……。
《告。個体名:ゴズ―ルに対し、エクストラスキル『超速再生』を授与――成功しました》
元々ゴズ―ルは、進化の際にエクストラスキル『自己再生』を獲得していたのだが、それが
そしてメズールにも、『魔力妨害』が授与された。
これで、ゴズ―ルが物理攻撃特化、メズールが魔法攻撃特化となる。
しかし、これで
何と二人には、特殊能力が授与されていたのだ。
ーー『
これは、対象の力を制限する空間を創り出す
だがしかし、これはリムルが持つ
簡単に
強制力の小さい、使い勝手の悪い力ではあるが、実力差があれば、自分の得意とする空間へ強引に引きずり込む事も出来るので、ようは使い方次第である。
使い方の一つに、相手の攻撃力を低下させる『防御結界』としての利用もある。
そんな
これで、階層ボスに相応しくなったのは間違いないだろう。
実はこの二人、勝手に賭けをして、勝った方が〝四天王〟、負けた方が五十階層のボス、という事で話を付けたようだった。
リムルとしては頭の痛い話なのだが、これはこれでいいだろと、流れに任せる事にしたのである。
『続く選手は、ゴズ―ルの永遠のライバル、メズール――ッ!! 百年の争いは、未だ決着はつかずっ!! 果たして、この本戦にて勝敗は決するのだろかッ!? その力は、この大会で吹き荒れ、新たな旋風を巻き起こす――ッ!!』
ソーカがノリノリで言葉を紡ぐ。
(本当、あのノリ、向いてるな。見た目も可愛い、着ている服もセクシーで似合っているし、観客受けもいい。尻尾と羽と角があるけど、そんな事は、〝可愛い〟の前には、何の問題もないのだ。うはははは)
と、リムルの心の声である。
『そしてこのメズールか、あるいはさっきのゴズ―ルこそ、明日公開される
(おお、もう何も言う事ないわ。もうコレ、適職だろ! キッチリと地下迷宮の宣伝迄してるし。まあアレだ、今の段階では迷宮と言われてもピンとこないだろうけどな。それに、ゴズ―ルとメズールの強さを見て、迷宮に挑む者が現れるかだが……。さてさて、どちらが勝つのやらだ。クジ次第では、この二人が当たらない可能性もあるしな)
と考えつつもリムルは、結果を待つ事にする。
これで選手の紹介は、後三人。
『続いて、昨日は凄まじい強さを見せた、謎の覆面男の登場だぁ――ッ!! 正体不明の
「プッ――っ!!」
リムルは思わず
「そ、ソウエイ! あれって――」
「はい。間違いなく、あの方だと……」
「あぁー、なあ、眷属達から抗議が来たんじゃね?」
「はい。しかし、問題ありません。コハク様の一言で、黙らせてもらいました」
「そうなんだ(まあ、アイツ等が出ると、ガチの手加減無しで暴れそうだからなぁ。人的被害は勘弁って、ものよ)」
その名を口にはしなかったもの、その正体には完全に気付いていたソウエイ。
(そういや、あの時の会議でディアブロは、六名の本戦出場者が決まりましたとしか言わなかったよな。それに、「問題にならぬ者ばかり」とも。アイツの目は節穴か!? いや、違うな。底なしの自信家だよ、あの
と、そんな事を思うリムル。
そのリムルの視界に、
三人とも嫌そうに、涙目で応援していた。
どう見ても、ダグリュールの息子達である。
「なあソウエイ。何であの三人が
「それは、昨日の試合であの方に、三人がかりで負けたからでしょう」
「あらら、何とまあ、それは……」
旧魔王並みの
「不甲斐ない。あの馬鹿共は、あれ程サンコからも油断は決してするなと言われていたのに。もっと、鍛えてやらねばなりませんね」
シオンが怒り言い、それを聞いたリムルは、それはちょっと可哀そうじゃね? と、内心思う。
(うん、相手が悪すぎた。バリバリの武闘派の元魔王が相手では、大人と子供しかないしな。勝てという方が無茶だろう。まあ、シオンが鍛え直すと言ってるし、後はどこまでサンコが関わるかだけど、シオンのあの口ぶりだと、二人して鍛えているみたいだな)
『――あーーっと、ここでとある匿名の人物二人より伝言です。「ワタシの代わりに頑張るのだぞ! わかっているだろうが、正体がバレるのだけは阻止するのだ。それでは、健闘を祈る!!」との事でーす! そして二人目の伝言は、「なあ、大きなネコさんに告げる。うちの子達の文句が激しいのよ。勝たないと、承知しないよ?」との事でしたーっ! これは、どういう意味でしょうか? わからないけど、これは
(わかっている。ソーカのヤツ、わかっていて楽しんでいる。という事は、どこかでミリムとツキハに接触したんだろうな? ミリムは今、迷宮の最終調整に追われているハズ、本人がそう言ってたし。邪魔されるよりはマシなので、好きにさせていたけど、まさかこんな手で、こちらに干渉してくるとは思わなかったわ。ツキハのは多分、コハクに説教された眷属が申し上げに行ったんだろう。ちなみにヴェルドラも呼んではいない。屋台は初日限定だったから、今はミリムやラミリスにツキハと一緒になって、楽しそうに地下迷宮作製に夢中になっているハズだ。戦いを見て、興奮して暴れられても困るし、この為に、面倒な三人を纏めて地下迷宮作製に放り込んだんだから。ミリムが代理を送り込んで来たのは想定外だったけど、ヴェルドラには部下いない。ツキハは、既に眷属がコハクから参加禁止を申し渡されている。となると、問題は優勝の行方だが……。ぶっちぎりで
更にノリノリのソーカを見てリムルは、内心でブツブツと独り
これで六名の選手の紹介が終わった。
残るは、特別出場枠の紹介である。
『さて、ここからが真の強者の登場です!
(うっ……。改めて四天王とか叫ばれると恥ずかしいな。もう広まってるからいいけど、どうにもなぁ、ちょっと後悔か、も……?)
恥ずかしさのあまり、一人自問自答するリムル。
しかし、シオンは何故か誇らしげで、観戦している他の魔物達も、憧れの目でゴブタとゲルドを見ていたのだ。
そんな中、歓声に交じって、「クソがあ――ッ! 俺達も出しやがれ!」「おのれ変態
観戦に来ていた眷属達が、言いたい放題に文句を並べていたのだ。
全くもって懲りない、猫達なのであった。
『
(はい? ニヒルって何だ? 意味を間違えているんじゃないの?)
リムルが頭の中に疑問を浮かべている
やめるっすよーーーーっ!! という心の声が聞こえて来そうである。
(うん、どう見ても隣に立つ
《……》
(頑張れゴブタ。君の事は、俺は絶対に忘れないよ)
一抹の不安を放り投げたリムルである。
そして、残る選手のゲルドの紹介が始まった。
『前座は終わり、最後に紹介するのは真打です!
(なにいぃ――ッ。ソーカのヤツめ。さりげなくゴブタを含めて、今までの選手達を前座と言い切りやがった。口調も変えて、真面目モードとか、芸が細か過ぎねえか? 確かにゲルドは古くからの大幹部なんだが……ゴブタだって古株なんだぞ? やはり〝格〟の違いってヤツなんだろうか。ゴブタが優勝でもしたら、その時はソーカの対応も変わるかもしれないね。しかしなぁ、何かさ、言いたい放題のところとか、絶対に
《……》
『さーて、それではこれで、八名の選手が出揃いました! 一体誰が優勝するのか、運命の時はもう間もなくでーす!! おっと、もう一つ重大なお知らせを忘れるところでした。何と、決勝戦の後に、武闘大会第一回目を記念して、エキシビジョンマッチが行われます! 誰が出るのか、乞うご期待をーーーーッ!!』
観客達は、決勝戦の後にもエキシビジョンマッチがあると聞き、「ウオオォオー――ッ」と、一際高い歓声が闘技場内に響き渡る。
そして、選手紹介が終わったら、八名の選手の前でリムルの挨拶である。
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