忍びが転生したら〝異世界珍道中〟になった件   作:にゃんころ缶

179 / 239

お待たせしました。179話です

 ツキハ

【挿絵表示】


 コハク

【挿絵表示】



 傭兵商会ルヴナン・真の紋章


【挿絵表示】



 ※〝打刀〟
【挿絵表示】






179話 A surprising bad boy(意表つく悪童)

 

 

 最終戦。

 

 ゴブタと獅子覆面(ライオンマスク)の試合である。

 

 

 舞台中央に歩み寄った両者。

 

 獅子覆面(ライオンマスク)は、指をポキポキと鳴らし、その場で軽くトントンとジャンプを数回繰り返す。

 

 対してゴブタは、秘策でもあるかのように不敵に笑みを浮かべていた。

 

(本当、天邪鬼(あまのじゃく)なヤツだよ。

  期待している時は頑張らないクセに……。まあ、いいか。

 それがゴブタなんだし、それがあってのアイツだし。

 優勝したら釣竿をやると言ったが、アレは俺の力作なんだよなぁ。

 リール機能を強化して、更に教授に頼んで魔力電動巻取り式にしてもらったんだ。

  竿の強化も含めて、五百キロまでの大物なら、難なく釣り上げる事が出来る代物(しろもの)だ。

 そう簡単にやる訳にはいかない。

  何せ勝負がかかってるんだから。で、それを手にするべくゴブタはやる気になっている。

 俺は、お前がどんな勝負をしようと笑わない。

 この勝負、獅子覆面(ライオンマスク)であるカリオンが勝つのは目に見えているけども、それでも俺は、お前を応援するぞ。頑張れ、ゴブタ)

 

 色々思うところがあるリムルだが、やっぱりどこか憎めないゴブタが好きなのだ。

 だからこそ、一緒になって遊ぶことが多いし、気も合う。

 

 そんなゴブタに視線を向けるリムル。

 

 するとゴブタは、既にランガを召喚してその背に乗っていた。

 

(なるほど。やっぱりランガ頼りなんだな。

 反則ではないから、それは有効な手段となり得るし、ゴブタがカリオンに勝つつもりなら、それは正解だ。

 俺の見立てでは、ゲルドよりランガの方が強い。

 まあこれは、ツキハとコハクの意見も同じだったんだけど。

 カリオンが本気を出すならともかく、今の姿のままで戦うなら、勝機も十分に見えて来る……って、あれ?

 そうなると、どうなる? いや、どうもならないのかな? 

 もしも万が一、そう万が一ゴブタが勝ったとしても、マサユキの本性をゴブタが引き出せばいい訳だ。

 それなら、当初の計画通りだともいえる。それなら、どっちが勝っても問題はない、か。

 ゴブタに任せるのはちょっと不安なんだけども、まあ、なるようになるだろう)

 

 そう考えリムルは、ゴブタに声援を送る。

 

「ゴブタ、負けんなよ、頑張れッ!!」

 

 

 試合が始まった。

 

「今日のオイラは一味違うっすよ!」

 

(おい、じゃあさっきの試合は何だったんだよ――)

 と、声なき声で突っ込みを入れるリムル。

 

「はっ! 笑わせるなよ、小僧。悪い事は言わねーから、さっさと棄権するんだな――」

「ランガさんお願いするっす!」

「うむ、心得た!!」

 

 カリオンの言葉を無視して、攻撃を仕掛けるゴブタ。

 

(本気か? 本気で勝ちを狙っているのか、ゴブタ!?)

 

 リムル、思わず驚いてしまう。

 

 カリオンはゴブタが戦闘する気満々なのを見て、ススッと間合いを詰め、トンとその場で軽くジャンプする―― 

 

鷲爪虎脚(しゅうそうこきゃく)ッ!」

 

 技名と共に、鋭い刀のような爪が、カリオンの足爪先に生えた。

 

 同時に、烈風のような飛び回し蹴りが放たれ、ゴブタとランガを襲う。

 鋭い爪は長く間合いを読ませない。

 たとえ回避しても、爪先からは不可視の真空波が発生して、射線上の対象を斬る。

 

 カリオンにとっては遊びのような技だろうが、ゴブタにとっては死が垣間見えたのかも知れない。

 

「ぴゃっ!?」

 

 声を上げてゴブタは、ランガからずり落ちた。

 

 かのように舞台床に転がり落ち、カリオンの真空波を回避したのだ。

 ランガを牽制するように連続でそれは放たれ、ゴブタをも襲う。

 

 ジャンプして手足を広げたり、うずくまったり、右に左に転げまわるゴブタ。

 ゴブタは無様に()いずり、カリオンの技から逃げているように見える。

 

 観客は大爆笑をしているが、カリオンの怖さを知らないから笑っているので、本来笑う資格などはない。

 

 この見っともなく見える回避行動は、本気の行動ではあるが、それには隠された意味があったのだ。

 

(チッ、見事に()けやがるじゃねーか。明らかに俺様の技を見切っている動きだ。くそッ、ルヴナンで何か教わったのか!?)

 

 確実に仕留める勢いで放たれた攻撃が(ことごと)(かわ)される事に、内心毒づくカリオン。

 

 そうゴブタは、ハクロウから定期的にルヴナンの〝仕込み(忍び訓練生)〟の訓練に参加するように言われていたのだ。

 

 そこでゴブタが、ルヴナンの子供達とやっていたのが。

 

 デス鬼ごっこである。

 

 手の延長線は刃、そのように見立て、手の人差し指を小さな刀として、鬼の急所を刺すのである。

 鬼はそれを防ぎながら逃げ、六歳から十歳までの十人の刺客(しかく)が鬼を狙う。

 五分逃げ切ったら、鬼の勝ち。

 そういうルールでやっていたのだが、開始一分も持たずにゴブタは子供達に刺されまくっていた。

 

 たかが人差し指、しかし、ルヴナンの子供達がやると、まるで人差し指が小さな刃のように見えていたのだ。

 無邪気に笑い、鬼であるゴブタを追い回す刺客の子供達。

 

『はーい、またゴブタお兄ちゃんの負けだね!』

『あー、もう、一体何なんっすか、この子供達は……』

 

 〝仕込み〟の訓練に参加するも、巧みな気配操作の子供達に困惑するゴブタ。

 

 ルヴナンの〝仕込み〟の子供達は、天牙影千流の隠形術を使う。

 

 そう、気配が無いのではなく、わからないのである。

 

 ゴブタがどんなに気配を察知しようとも、様々な気配に紛れ、気が付けば急所を指で刺されているのだ。

 視界に収めた時は、既に数人に囲まれているといった状況だった。

 

 しかし、そんな遊びを繰り返している内に、ゴブタはある事に気が付いた。

 

 まだ弱小ゴブリンだった頃の自分。

 その自分は、どのようにしてあの過酷な環境を生き延びていたのか。

 

 大森林の木々の(ざわ)めき、流れる風の動き、虫達の声、そして――

 人や魔物、魔獣が動く時は、大気が揺れるのを、何とはなく思い出した。

 

(そういや、強い魔物が獲物を狙う時に、こう、何というか、気配はしないのに、凄い怖い空気が漂っていた気がするっすねぇ……?)

 

 ゴブタは武人ではないので、こういう理論的な事はわからない。

 しかし、危険察知能力においては、天性の勘というより、天然の勘を持っていたのだ。

 

 ハクロウはそれを見抜き、もっとも厄介な所に放り込み、危険察知能力の底上げを狙っていたのである。

 戦場で生き延びる為に、もっとも必要なモノ、を。

 

 ルヴナンではどんなに無様に逃げようとも、誰も笑わない。

 (むし)ろ、簡単にもう駄目だ回避できないと諦めたら、笑われる。

 生きて、生きて、生き足掻(あが)いてでも、生き残る手段を探す、そうツキハとコハクはルヴナンの傭兵に教えている。

 

 だがしかし、これはただ逃げるのではなく、あらゆる状況を利用し、あらゆる手段を用いるという事であり、諦める前に手段を尽くせという事である。

 

 ――〝忍び〟とは、(あるじ)の為に死ぬ事ではなく、主の為に情報を持って帰る事。

 敵地に潜入せしならば、どんな手を使ってでも生きて情報を持ち帰る事。

 刺客(しかく)として闇に(しのぶ)なれば、音も無く気取られる事なく始末せよ。

 しかし、一度(ひとたび)戦場(いくさば)に立てば、あらゆる手段を用いて、敵を殲滅せよ。

 

 ツキハとコハクは、人間の頃にそう教えられてきた。

 

 現代で言う〝スパイ〟、戦国時代では〝間者(かんじゃ)〟と呼ばれ、それ専門の者もいたが、この〝間者〟を行う役目を負うのが忍びでもあった。

 

 そして、戦国大名から雇われる〝傭兵〟でもあったのである。

 

 二人が〝忍び〟として生きた世界の戦国時代は、このような生き様の、〝異形の輩(いぎょう やから)〟と呼ばれ恐れられる〝忍び〟集団がいた世界だったのだ。

 

 故にゴブタは、このデス鬼ごっこで危険察知能力に磨きをかけ、大気の流れを読む事を無意識に覚えたのであった。

 

 カリオンの放つ真空波は大気を裂く。

 その裂かれた大気の流れを肌で感じ取り、(かわ)していたのである。

 

「ぴゃーっ! 死ぬ、死ぬっすよーッ! 一発でも当たったらおしまいっす――ッ!!」

 

 声を上げながら逃げ回るゴブタを見てハクロウは、静かに頷いていた。

 

(うむうむ。見えてはいるようだな。今は無様でもよい。例え邪道と呼ばれてもそれを貫け、ゴブタよ。何せ、あのルヴナンの訓練について行ってるのだからのう。ふぉっふぉっふぉっ)

 

 満足した笑みを口端に浮かべ、ゴブタを見るハクロウ。

 

 そして、そんなゴブタをいきなり放置したカリオン。

 

 いや、もう牽制し切れなくなっていたのだ、ランガを。

 

 ゴブタが降りて身軽になったランガが、確実にカリオンに向けて牙を剥き始めたのだから。

 

 優先すべきはランガ、召喚主であるゴブタは後回し、ランガを倒す事に切り替えたのである。

 

 カリオンの誤算。

 

 ゴブタがここまで自分の技を躱す事など、想定していなかったのである。

 

 今のランガは、大型犬サイズ。

 だがそれでも、その爪と牙は十分に鋭い。

 

「チッ」

 

 カリオンは、突進して来たランガの牙を、左腕を犠牲にして受け止め。

 そのまま力一杯にランガを地面である舞台床に叩きつけた。

 

 が、ランガも叩きつけられる寸前に身体をくるっと(ひね)ると、ダッと地面を蹴って離脱した。

 

「おお、おぉっ……凄いなあの狼」

「何だあの魔獣は、黒牙狼(ブラックファング)って確か、上位個体でもCランクじゃなかったか?」

「ガイ殿が口にしていた魔物か。しかしだなぁ、あれは本当に黒牙狼(ブラックファング)なのか?」

 

 ランガの動きに感嘆したのか、観客達が騒ぎ始め、中には物知りな者もいて、ランガに関する憶測が飛び始める――

 

(はい、その正体は黒嵐星狼(テンペストスターウルフ)です。特A級の、そこらでは目にしない希少な魔物ですよぉ)

 

 と、リムルが内心で答えた、その時――

 

「群像走乱ッ!!」

 

 カリオンが空中に飛び上がり、技を放った。

 練り込んだ闘気(オーラ)を、上空から乱れ撃つように叩きつけたのだった。

 

 ドンドンッと、地面で炸裂する闘気弾。

 

 自由な空間であれば逃げ場もあったのだが、そこは舞台の上。

 場外に出れば、負け確定である。

 

 まともに受けるしかないと、そう思った――

 

 が。

 

 ランガはヒョイと、躊躇(ちゅうちょ)する事なく場外に逃げた。

 

「はあ?」

 

 突然の行為に驚きの声を上げるカリオン。

 

 ランガがここで逃げるとは、思っていなかったのだ。

 

 カリオンが肩透かしを喰らったその瞬間を、その隙を、ゴブタは見逃さなかった。

 

「そこっすよ!!」

「なにっ!?」

 

 ゴブタのかけ声が響き、それと同時に走る黒い影。

 

 ランガである。

 

 今、場外に逃げたはずのランガが、さも当然といった顔で、ゴブタの影から飛び出して来たのだ。

 

「テメーは今、場外に――」

 

 という、カリオンの叫びは。

 

「クフフフフ、再召喚はルール違反ではありません」

 

 という審判であるディアブロの声に掻き消される。

 

 これは、カリオンのミスである。

 

 確かにゴブタよりも、ランガのほうが圧倒的に強いし厄介だ。

 警戒すべきは当然ランガではあるが――

 

 選手はゴブタであり、ランガは召喚獣扱いとなるのである。

 

 ゴブタは姑息にも、逃げ回りながら場外ギリギリの位置を確保していた。

 そう、最初からこれが狙いだったのだ。

 

 無様を晒したように見せつつ、貧欲なまでに勝利を目指して、ゴブタはランガと計画を練っていたのである。

 

 そして、これが試合の流れを変えた。

 

「ガウッ!」

 

 ランガの牙がカリオンの頭部を(かす)める。

 

 カリオンの隙を狙った攻撃だったが、紙一重で(かわ)された。

 

 ――だがしかし、それは違った。

 

 完璧に回避したハズのカリオンが、慌てて顔を押さえたのだ。

 

 そう、ランガの狙いはカリオンの覆面であり、一撃を入れる事に成功していたのである。

 

 ランガの攻撃は、カリオンにも通じる。当然だがカリオンもそれは警戒していた。

 

 しかしカリオンには、直撃さえ外せば耐え切れるという自信があった。態勢を崩すような無様な回避はしない。

 華麗に回避し、次の防衛行動に移る。

 

 常に余裕を持って、王者の如く戦うべし。

 

 それがカリオンの考え方であり、それを当然とするだけの実力もある。

 だから、不意打ちの攻撃も(かわ)して見せた。

 

 だがしかし、最初からランガの狙いはカリオン自身ではなく、その付けている覆面だったのだ。

 

 カリオンはその類稀(たぐいまれ)なる直感で、ダメージを受けないギリギリの線を選択したのだ。

 いや、してしまうように誘導されたのかも、知れない。

 

 そのせいで、ランガの爪が覆面を切り裂く事を許してしまう結果になってしまった訳である。

 

 ニヤリと笑うゴブタ。

 

「よしよし、狙い通りっすよ!!」

 

 興奮気味に、嬉しさを背一杯表しながらゴブタが叫ぶ。

 

 そしてそのまま、小太刀を構えて、水氷大魔槍(アイシクルランス)を放った。

 

「喰らうっす!」

「チッ、小賢しい!!」

 

 ゴブタの狙いはカリオンを倒す事ではなく、その覆面を剥ぎ取る事が目的である。

 

 それに気付いたカリオンは、両手で顔を守りながら戦う。

 

 そこにランガが、思いのままに攻撃を加える。

 

 両手を封じられた同然のカリオンからすれば、ランガの攻撃に対処するのは困難を極めていた。

 

 本気を出せば、このような事にはならないが、出すに出せない事情があるカリオン。

 

「き、汚ねえ……」

「何て卑怯な戦いぶりなんだ……」

「真面目に戦いやがれっ!!」

「何てヤツだ。意表つく悪童か……?」

 

 観戦していた観客達の間では、盛大なクレームが飛び交い始めていた。

 

 しかしゴブタは、そのような雑音は気にしない。

 

「ウルサイっすよ!! 世の中、勝った者が正義っす。リムル様だって、そう言ってたっす。そして、傭兵商会ルヴナンでは、それが当たり前で、コハク様も『使える手は、何でも使いなはれ』と、ツキハ様も『格上相手に勝つ為には、手段は選ぶな』って言ってたっすから!!」

 

 ゴブタは堂々と、観客達に向かって叫び返していた。

 

(あーうん。そこで俺を巻き込むのは止めて欲しかった。

 でも、ツキハとコハクはいくらでも巻き込むといい。

 あの二人は、悪名(あくみょう)が広まるのを嬉々として喜ぶからな。

 それなのにだ、商売に悪影響があるハズなのに、何故か繁盛している不思議商会なんだよ、あそこは。マジにアレは、理解出来ないよ……)

 

 リムル、心の(つぶや)き。

 

 そこへ。

 

「チッ、流石は魔王の〝四天王〟を目指すだけはあるじゃねえか。あんな戦い方をして、まるで恥じちゃいねえ」

「ああ、全くだ。それどころか、それが当然って顔をしてやがらあ」

「抜けた顔をしてやがるが、なかなかの切れ者らしい。ありゃあよ、最初から狙ってんだろうぜ」

「それこそ、魔王からもだが、あの残虐非道の番外魔王からの入れ知恵もあるんだろうぜ。あの馬鹿そうな顔を見て見なよ。そんな知恵はないだろうさ」

「怖いもんだな。〝四天王〟を意のままに操る魔王に、魔国連邦(テンペスト)に住み着いた、天災級(カタストロフ)の魔物、卑怯? 何だそれ?の番外魔王、か――」

 

 と、こんな具合に、観客達の言いたい放題の言葉が飛び交う。

 

(はい? 俺まで好き勝手に言われているじゃねーか!? どうしてこうなった? 矛先が俺とアノ二人に向いている……)

 

 リムルはツキハとコハクに矛先が向くだろうと思っていたのだが、それは(かな)わず。

 それは仕方のないことでもある。あの悪名高き番外魔王を、魔国連邦(テンペスト)に住み着かせてしまったのだから。

 

 

 戦いは、ゴブタとランガが有利に運んでいた。

 

 そして最後は、カリオンが自ら場外へと出た事で決着となった。  

 

「クソが。今回は、お前等の作戦勝ちって事にしてやる」

 

 怒り心頭なご様子のカリオン。

 

 だがしかし、その判断力は冷静だった。

 こんなお遊びでこれ以上無様を晒すより、さっさと棄権する道を選んだカリオン。

 

 元魔王がこんな大会で、しかも格下に負けたと知れたら大問題になるだろうし、それが正解なのである。

 

 それに今回の敗北の原因は、とある匿名の人物が要らぬ伝言(メッセージ)を残したからだ。

 

 これがなければ、ゴブタもこんな作戦を思いつかなかっただろう。

 

『大番狂わせ、大番狂わせが起きましたぁ――ッ!!』

 

 ソーカの絶叫に、円形闘技場(コロッセオ)が大きな熱気に包まれる。

 

 怒号と歓声、そして沸き起こる笑い声と、拍手の大波。

 

 なんだかんだ言っても観客達は、この戦いを大いに楽しんでいたのだ。

 

「あの覆面の兄さんも、顔を見られるくらいで大袈裟だと思うけどねえ。そんなに見られたら不味かったのかな……」

 

 などと、ゴブタを擁護する声もチラホラと上がる。

 

(あーなんだ、ゴブタのイメージは完全に悪役(ヒール)で定着しちゃったみたいだね。

 まあそれでも、あの愛嬌のある顔と愉快な行動、そうした要素が組み合わさって、そこまで憎まれてはいなようだし。

 何であれ、ルヴナンに勉強しに行かせて正解だったかもな。ハクロウの判断は間違ってなかった。

 ゴブタの戦法は、ある意味俺の国では邪道に見えるだろうから。

 でも、ツキハとコハクが率いるルヴナンでは、戦いに勝ち生き残る、それがどんな手段であろうと、誰もそれを責めない。

 何故なら、死んだらそこで終わりなんだからな。

 そもそも、(いくさ)に卑怯も正々堂々も存在はしないんだから、ある意味当然だ。だから、戦術に戦略がある。

 ハクロウが教える兵法と、ルヴナンで学ぶ兵法を上手くミックス出来たら、まだまだ伸びるな、ゴブタは。

 表と裏、陰と陽、決して交わる事はないが、どちらも欠けては成立はしない。

 しかし、俺の国にはどちらも揃っている……。

 よくよく考えたら都合が良すぎじゃねーか……? 何てな、ククッ)

 

 着実に強大国へと前進する自分の国の事を思い、どこか調子よすぎじゃないかと、内心自嘲(じちょう)気味に笑ってしまうリムルであった。

 

 魔国連邦(テンペスト)と傭兵商会ルヴナン。

 

 決して交わる事のない双方が、表と裏、陰と陽のように寄り添い、存在する世界。

 

 これが必然なのか、運命なのか、または強大な何かに仕組まれたモノなのか……。

 

 ひたすらに、〝革新〟という名の歯車は回り続け、否応(いやおう)が無しにこの世界全体を巻き込んでいく……。

 

 

 大盛況のうちに終わった、ゴブタ、ランガとカリオンの戦い。

 

 娯楽の少ないこの世界。

 

 イングラシア王国のルールに縛られた大会よりも、何でもアリの魔国の大会の方が、観客の心に訴えかけるモノが大きかったようだ。

 

 試合内容は、決して褒められる内容ではなかったが、これはこれでアリなのだと思える結果となったのだった。

 

 

 その後――

 

「勝手に試合に出た罰として、暫くの間、俺の影に潜るのを禁止します!」

 

 尻尾を嬉しそうに振りながら戻って来たランガに、リムルはそう宣言した。

 

「――ウガッ!?」

 

 それを聞いたランガ、口を大きく開け、ガーンといった表情で固まった。

 

(ランガは褒められると思っていたんだろうけど、何であれで褒められると思っていたんだ? それが疑問だ。)

 

 ランガは悲しそうに尻尾をタラリと下げて、涙目でリムルを見ていた。

 

(うっ……)

 

 そんな姿に、思わずリムルの心が揺さぶられた。 

 

「あー、ランガ。罰とは言ったが、明日の決勝次第だ」

「――ッ!?」

「お前は召喚されたという建前なんだから、ゴブタの言う事をよく聞いて、無茶しないように頑張るんだぞ」

(あるじ)よ、承知しました!」

 

 ランガはシオンやサンコとも仲良くしているからか、多少やり過ぎる場合が度々(たびたび)見受けられていた。

 

 だから、明日の試合で大変な事を仕出かす恐れがあったので、きちんと釘を刺すリムルであった。

 

「ゴブタ、ランガと協力して、明日の決勝戦を頑張れよ!」

「はいっす!」

 

 こうして思わぬハプニングがあったものの、順調に二日目の試合も終えた。

 

 残すは、明日の決勝戦と、その後に行われるエキシビジョンマッチのみ。

 

 何故にエキシビジョンマッチが、最後に行われるのかわからないが、リムルは、予想もつかない者が舞台に上がるんだろうと考えていた。

 

(明日の決勝戦もそうだけど、最後に行われるエキシビジョンマッチは、本当に誰が出るんだ? 

 ツキハとルミナスとか、かな。

 いや、それはない。アイツ等が本気で戦ったら、円形闘技場(コロッセオ)が半壊しかねないわ。

 まあ、何を言っても明日が楽しみだね)

 

 貴賓席から立ち去る時に、そんな事を考えるリムル。

 

 

 だがしかし、この後の夜に、片付けなければならない案件が――

 

 リムルを待ち受けていた。

 

 

 





 この作品を読んで頂き、ありがとうございます!

 次回の更新も、宜しくお願いします!


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。