忍びが転生したら〝異世界珍道中〟になった件   作:にゃんころ缶

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 お待たせしました。十八話です








18話 森の猫さん

 

 リムルが前に進むと、決意した頃。

 

 ジュラの大森林の木の上でくつろぐ〝忍魔猫〟達がいた。

 

 あるものは爆睡、あるものは毛づくろい、あるものは狩って来た魔鼠を食べてたりと、暇を持て余していた。

 

 そこへ一匹の〝忍魔猫〟が、ロモコ(六百子)に質問をする。

 

『にゃあ、ロモコ』

『なんですか?』

『イチオのことなんだけどにゃあ。なんで、四番目の眷属なのに、イチオなのにゃあ?』

『あ、あぁー。それ、聞きますか?』

『しってるにゃあ?』

『え、ええ。知ってますよ、もちろん』

『おしえるにゃあ。はよ、はよ、はよにゃあ』

『あーうん。仕方ないですねぇ。あんまり他の眷属に言っちゃダメですよ?』

『んゃあ? ここにいる眷属達には、知れるにゃあよ?』

『はあぁー。皆さん、くれぐれもお願いしますよ?』

『『『『『あいよ~(後で皆におしえよう~)』』』』』

 

 一斉に返事をした〝忍魔猫〟達が悪い顔になったのに、気付かないロモコ。

 そんなロモコは、いやいやながらも、質問に答えていく。

 

『えーとですね。イチコさんの子供が三匹なのは、皆さん知ってますよね?』

『『『『『にゃーい(知ってるわ! ドつくぞワレ!)』』』』』

『それで、娘さんのニコ、サンコと来て、普通ならば、弟さんのイチオは、ヨツオと名付けられるはずなんですが。雄の一匹目だから、壱雄だねとツキハ様が名付けをされたのですよぉ。その時、ツキハ様の頭の中からは、四番目という事が、すっぽりと抜け落ちてたみたいなんですね、これが』

『にゃあー……ツキハ様は、お茶目さんなのかにゃあ?』

『さぁー、どうでしょうかねぇー。それで、名付けた後でコハク様に突っ込まれたら『うるさいわ! なら、イチオでも四番目だけど、イチオでいいじゃない! 四番目でもイチオ! 四は欠番だあー』と、逆切れしたそうなんですよー』

『『『『『え、ええーにゃんだそれ……』』』』』

 

 ジト目でロモコを見る眷属達に、ロモコは『え? なんで、そんな目で私を見るんですか? やめてください、そんな目で見ないでくださいー!』と、訴えていた。

 

 そんな馬鹿なやり取りをしてると、ロモコの尻尾がピンと真っすぐ立ち、フウゥッーと低く唸りながら勢いよく左右に振り始めた。

 それを見た他の〝忍魔猫〟は、皆警戒態勢を取る。

 

 ザッザッザッザシッ 大勢の草を踏みしめる音が近付いて来ていた。

 

「おい。本当に逃げ遅れた獣王国の住民が、こっちに来たのか?」

「ああ、間違いない。子供を連れた百数十人程の集団が、こっちの方角に来てるはずだ。足跡がまだ新しいし、この数だ。じきに追いつくさ」

「くっくっくっ。久しぶりの狩りだ。楽しまないとなあぁ!」

「だな。奴隷の人間共を狩るのは、もう飽き飽きだぜ」

 

 足音の正体。

 それはクレイマンが放った、狩魔部隊。

 

 一部隊百人で構成され、逃げ遅れた住民を狩る殺戮部隊だった。

 その部隊が、十個部隊ジュラの大森林に放たれていたのだ。

 

『えーと。先程の逃げ遅れた住民の誘導は、済んでますか?』

『おう。〝幻遁・蛍火〟で、避難民を護衛してる戦士団の一人を脱出経路に誘導して、皆それに着いて行ってるぜ。ロモコ』

『上出来です。ロモサオ(六百三雄)

 

 〝幻遁・蛍火〟、それは対象にした一個体に幻術を掛け、意識操作による誘導を行う術。

 

 術に掛かった対象は、あたかも蛍が舞う様に見える小さな光りの球を、追いかける様に動くのである。

 

『それでは、抜刀!』

 

 ロモコの掛け声と共に、皆が首に巻いてる首輪代わりの赤い飾り紐の空間収納から、苦無(クナイ)を取り出し、柄の部分を口に咥える。

 

『さあさあ皆さん、お仕事の時間です! 一匹一殺、かかれ!』

 

 百匹の〝忍魔猫〟達が木の上から、一斉に襲い掛かる。

 

 いきなり数人の魔人が倒れる音がした。

 

「ん? なんだ……どうした? え!?」

 

 後ろからドサッと何かが倒れる音がして、一人の魔人が後ろを振り向こうとしたら――。

 いきなり視界がくるくると回りだし、今度は視界が下になりながら、そのまま首が落ちる。

 

「え? え? え?………………」

 

 トサッ その魔人はいつ首を落とされたかもわからず、絶命していた。

 

 悲鳴も上がらず、グッ、ウガッ、と小さな呻き声だけが聞こえ、次々と狩魔部隊の魔人達は、〝忍魔猫〟達に、首を刈られていった。 

 

 〝忍魔猫達〟は、苦無(クナイ)に〝魔闘気〟を(まと)わせ、まるで熱いナイフでバターを切るように、容易く首を刈っていく。

 

 一人の魔人が身軽さと足の速さを生かし、全速力で逃げていた。

 仲間が音も無く狩られていく様は、その魔人に凄まじい恐怖を与えていた。

 狩りに来て逆に狩られていく仲間達。

 

 気配も姿も無く、それは死を運んで来る。

 

 〝忍魔猫〟の暗殺集団。

 

「くそ!! なんだ、何が起こってるんだ! 気配もねえ、姿も見えねえ、音すらも聞こえなくて……仲間の首が落ちて行きやがる」

 

 地面を走るのをやめ、木から木へと飛び移りながら高速移動をする魔人。

 ヒュウ、ヒュウと風切り音を立てながら、木の枝を蹴り、必死に逃げる。

 

「いったいなんだってんだ! クレイマン様に報告をしないと……なに!? 通信水晶球が使えねえだとおぉ!!」

 

 懐から通信水晶球を取り出し、魔法通信を試みるも、ノイズが走るばかりで魔法通信は出来なかった。

 

「くそおーー! わけがわからねえー! ん? 何かおかしいぞ……さっきから景色が変わらねえ……ってかあの大木はさっき通らなかったか?……間違いねえ。あの太い枝には、見覚えがある……」

 

 逃げる魔人は、定期的に同じ大木を見るのに気付き、嫌な汗と共に強烈な殺気が背中に刺さる。

 

「ひいぃーーーーっ!! た、たっ、助けてくれえぇーーーー!!」

 

 完全にパニックを起こし、あらぬ叫び声を上げながら逃げ惑う。

 

 魔人は、ロモコに〝幻遁・迷い(カゴ)〟を掛けられ、幻想領域に囚われていた。

 

 幻想領域に囚われた魔人は、半径五十メートルをグルグルと回っていただけである。

 

 そして、その幻想領域内では魔法通信系は、一切遮断されるのであった。

 

「た、た、助けて、えっ!? はぎゃあぁーー」

 

 何も無い空間から、二つの金色に光る球が尾を引きながら、一つ、また一つと、増えて行き。

 

 やがてそれは――

 魔人を取り囲む様に追従して来る。

 

「ぎゃあああああああああーーあ、ぁぁぁーー………………」

 

 魔人の前から金色に光る二つの球が、首筋を通り過ぎた。

 

 ピッと赤い筋が魔人の首元から真横に走る。

 

 刹那――

 霧のように血を吹き上げ、体は前に走り落ち、首は後ろ向きに落ちて行った。

 

 金色の光る二つの球は、〝忍魔猫〟達の光る目だったのだ。

 目の部分だけ『空間迷彩』を解除して、追い込んだのである。

 

『終わったよね? 帰ろ? いいよね? お腹減った……』

『にゃあー、弱すぎるにゃあ~』

『だよねえー』

『昔の魔人の方が、手強かったな』

『そそ、今の魔人は腑抜けにゃあ』

『いやいや、この狩魔部隊の魔人も中々のものだと、思うが? 瞬殺だけども』

『じゃあ、うちらが強すぎるのかにゃ?』

『だねー。あたしらに、敵は無し! うにゃははははは』

『アホか! ツキハ様に怒られんぞ! 日々鍛錬を欠かさず、だぞ!』

『うるせえ。魔猫に日課などやらすな! めんどくさいわ!』

『そんなものぉ、適当でいいんだよぉ~』

『はいはい。それより、終わったから、解散だね! にゃふっ――』

『――こらあぁーー!! 貴方達、なに勝手に解散しようとしてるんですかぁー!!』

『『『『『『ええぇー……ロモコうるさい……』』』』』』

『もう、いいから、早く死体を一ヶ所に集めてくださいー!』

『『『『『『にゃ~い(めんどくさ!)』』』』』』

 

 統率が取れてるようで取れてない、この集団……眷属の中で特に問題猫の六百から七百までの眷属であったのだが、暗殺に関してだけは他の眷属達より秀でたというより、暗殺大好き〝忍魔猫〟達であったのだ。

 

 各々が首と首が無い身体を一ヶ所に集め、うず高く積み上げて行く。

 

 ロモコが後ろ足だけで立ち、前足をパンと眼前で叩き合わせる。

 

『火遁・黒獄炎(ブラックインフェルノ)

 

 すーっと息を大きく吸い込むと、勢いよく息を吐き出す。

 

 ゴオウゥーッ 吐き出された息は黒炎の火炎放射となり、一気に死体の山を灰に変えていく。 

 

 そして、魔人達の魂をロモコが丁寧に集め、魂の回廊を通じて、刈り取った魂を主に献上していった。

 

『それでは、休憩しましょう。いいですか、皆さん遠くに行っては駄目ですよ? いいですね? 絶対ですよ? 絶対ですからね?』

『『『『『『にゃ~い(知るかボケぇ)』』』』』』

 

 暗殺に要した時間は、数分にも満たなかった。 

 

 圧倒的な力で暗殺を終え、〝忍魔猫〟達は木の上に登って行き、欠伸をしながら寝るものや、腹減ったと言い魔鼠を狩りにいくもの、固まって談笑を始めるものなど、好き勝手に行動するのであった。

 

 そして、ロモコの命令と言うお願いで、渋々十匹ほどが文句を垂れながら、逃げ遅れた獣王国の住民達を探しに行く。

 

 

 闇に紛れて現れる、にゃんころ達。

 

 音も無く忍び寄り、首を落としてゆく。

 

 狩魔部隊も既に、六つの部隊が壊滅していた。

 残る四部隊も、時間の問題である。

 

 

 今宵のジュラの大森林は、怖ーーい。

 

 森の猫さんたちが、いるのであった。

 

 

 

 同時刻の魔国連邦(テンペスト)

 

 エレン達に話を聞いたリムルは、朝一番に会議を開くので、自分に話した事を会議の場でもう一度皆に話してくれと頼む。

 エレンはそれに快く了承し、リムルが用意してくれた宿屋でしばしの休息を取る。

 

 そうしてリムルは、ミュウラン達がいる宿屋に向かう。

 

 向かいながら『大賢者』からの報告が入る。

 

《告。先程の大魔法発動時に、怪しい波長を検知しました。しかもそれは、魔素を使わない電波信号と地磁気を利用した暗号化通信へと変換されています》

『波長?……どこから出ている? 大賢者』

《告。ミュウランの心臓から発信されています》

『なに!? ミュウランの心臓だと……』

《告。恐らくミュウランの心臓は疑似的な物に変えられた、疑似心臓だと断定します》

『そうか、わかった』

 

 『大賢者』の報告にリムルはある〝考え〟を、思いつく。

 

(疑似心臓か……あいつらは、どこまで知ってるんだ? 何が、きっちり殺せだ、まったく)

 

 宿屋に付いたリムルは、ヨウムにミュウランの部屋を尋ねる。 

 

「リムルの旦那!?」

「ミュウランはどこだ?」

「二階の部屋で休んでますが……」

「そうか、ミュウランの処罰を決めた」

 

 リムルの言葉にヨウムは、不安そうな顔でリムルに付いて来る。

 グルーシスも付いて来て、リムルはミュウランがいる部屋に入るなり告げた。

 

「ミュウラン、お前には死んでもらう(・ ・ ・ ・ ・)

 

「旦那! 待ってくれ!」

 

 リムルはヨウムの慌てる声を無視し、前に進む。

 

「リムル様! それは――」

 

 グルーシスがリムルを遮ろうとするが、リムルの『粘鋼糸』で、あっさり縛られた。

 

「悪いが旦那、俺はミュウランを守る!」

 

 リムルの前に立ち塞がるヨウム。

 実力差は明白なのに、抗おうとするヨウムにリムルは。

 

(ほんと、いいヤツだな、お前は)

 

 と、心の内で呟く。

 

 しかし、グルーシスと同様ヨウムも、『粘鋼糸』で縛り上げられた。

 

 

「頼む、旦那! 旦那ーーーー!!」

 

 絶叫するヨウム。

 

 そんなヨウムをミュウランは、柔らかな微笑みで近づき、その唇を塞いだ。

 

「好きだったわ、ヨウム。私が生きて来た中で、初めて好きになった男。もしも……また生まれ変われたら、今度こそ貴方と共に、生きて行きたいわ、ね……。さようなら、もう悪い女に騙されては、駄目よ――」

 

 そう言い、もう一度ヨウムに微笑み、リムルの前に行くと。

 静かに、目を閉じた。

 

 己の責を全て背負う覚悟を決めた女が、そこにいた。

 

 リムルはそんなミュウランを見て、稀に見るいい女だと、素直に思う。

 

 正直言ってリムルは、今から行う事に罪悪感を感じつつも――

 

 躊躇なく、ミュウランの胸を手刀で貫いた。

 

 ヨウムとグルーシスの絶叫が部屋に、響き渡る。

 

 

 しかし――

 

 えっ? とした顔で、驚き戸惑うように目を開いたミュウラン。

 

「――あの、私……痛くも無いし、死ぬ気配も無いんですけど……」

「あ、うん。三秒ほど死んでたかもね?」

「……え?」

「――はあ?」

「それって、どういう意味なの?」

 

 リムルの言葉に、ヨウム、グルーシス、ミュウランは戸惑いの言葉を返す。

 

《告。個体名:ミュウランの〝疑似心臓〟は正常に作動を開始しました》

 

(よし、問題ないようだな)

 

「ああ、すまない。手術も成功したし、説明するよ。ヨウム達も険しい顔をしないで、椅子にでも座ってくつろいでくれたまえ」

「ちょっと待ってくれ! 旦那、今のはなんなんだ?」

「おいおい、納得のいく説明を求めても、いいんですよね?」

 

 さっきまで泣いて絶叫していたのに、喧しく騒ぐヨウムとグルーシス。

 それに比べて、ミュウランは落ち着いたものだった。

 

 リムルの「やかましいわ! あんまうろたえてると、ミュウランに笑われるぞ?」という言葉に、ようやく大人しくなる二人。

 

 そこでリムルは、事の説明を始めていく。

 

「実はな、ミュウランの仮初(かりそめ)の心臓なんだが――クレイマンの盗聴に使われていたんだ。魔素を使用しない、電気信号と地磁気を利用してな。心臓の鼓動と生体波長に混じり、暗号化した信号を発生させる。それが地面を伝わって、クレイマンのもとまで、逐一届けられてたんだよ。ようするにだ、ミュウランの言動や感情など、全てが筒抜けと、言う事さ」

 

 ヨウムとグルーシスは、今一わからない顔をしながら納得をするも。

 

「と、言う訳で――ドッキリでした!」

「ドッキリでした、じゃねーよ!!」

「こ、これ、簡単にいうような内容じゃないですよね? これって、誰も知らないクレイマンの、秘密じゃないんですか!?」

 

 ドッキリでしたと聞いて、事情を説明されていてもまだ騒ぎ足りないのか、また騒ぎ始めるヨウムとグルーシス。

 

 それをスイッと(かわ)し、リムルがミュウランに言葉を掛ける。

 

「まあ、それより。ミュウラン、生まれ変わった気分はどうだ?」

「――え!?」

 

 その時、ミュウランはようやく、クレイマンの呪縛から解き放たれたことを、悟った。

 

「これでもう、お前は本当に、自由だ。一体誰に魂を、売ったんだ? くくっ」

「え? あの、その、えと……です」

 

 ポソポソと小さく言った言葉に、リムルは笑いながら「そうか」とだけ答え。

 

『まあ、この方法を思いついたのは、髪の長い方の〝番外魔王〟の言葉なんだけどな』

 

 と、『思念伝達』で伝えた。

 

 それを聞いたミュウランの頬に、一筋の涙がポツリと流れ落ちた。

 

 ミュウランの涙を見たヨウムとグルーシスが、どうした? 何かいわれたのか? とまた騒ぎ始め。

 

 「なんでもないの」とミュウランから一喝され、しゅんと押し黙るヨウムとグルーシス。

 

「それでだ、ミュウラン。お前に、一つ頼みがある」

 

 ミュウランは涙を拭くと、リムルに向き直り姿勢を正した。

 

「何でも言ってください。忠誠を誓えと言うなら、それに従います」

「いや、それはいい。実はな、シオン達が生き返る可能性が、ある。そこでお前にも、それを手伝って欲しいんだ」

「な!?」

「リムル様。本当に、生き返るのですか?」

「どうやってですか? 死者の蘇生なんて、私達上位魔人ですら、不可能なんですよ?」

 

 三人が驚き、聞き返してくる。

 

「あくまでも、可能性なんだ。けどな、必ず成功させてみせるさ」

 

 リムルは確信を持つような顔で答えた、が。

 あくまでも可能性であり、失敗は許されないのだ。

 

 少しでも成功率を上げる為、出来る手は全て打つ。

 だから、ミュウランの協力が必要なのである。 

 

 

 ミュウランの協力も取り付けたので、リムルはミュウランに今後どうするのかと尋ねる。

 

「そうね……。私、せっかく自由になれたのだけど。人間の短い一生分くらいなら、束縛されてもいいと思ってるわ」

 

 くすりと軽く笑いながら、ミュウランはヨウムに告げた。

 

「え!? え?……」 

 

 ヨウムは顔を真っ赤にしながら言葉に詰まり、つられてミュウランの頬もほんのり赤く染まる。

 

 振られた形のグルーシスにリムルが「元気出せよ」と、ポンと肩を叩く。

 それにグルーシスが。

 

「いいんですよ。どうせヨウムは、人間ですから百年かそこらの寿命です。その後は、俺の番ってことで!」

「はあ!? 何言ってやがる! そんな汚いこと考えてやがったのか!? クソ狼が!」

「黙りやがれ! 悔しかったら長生きしやがれってんだ!」

 

 ヨウムとグルーシスの激しい言い争いの中、ミュウランが溜息を付き。

 

「ちょっと私も、冷静ではなかったみたいね。さっきの言葉、取り消すわ……」

「ちょっ、そりゃないぜ、ミュウラン!?」

 

 中々にカオスな状況になる中、リムルは余裕を取り戻しつつあった。

 

 しかしそこは気を引き締めながら、もう一つの本題を切り出す。

 

「ヨウム、お前にも、頼みがあるんだが」

「何でも言ってくれ! 旦那の頼みなら、何でも引き受けるぞ!」

「よかった。そう言ってくれると、思ってた。お前――王になってくれ」

 

 はあ?と固まったヨウムを見ながら、リムルは自分の考えを説明していく。

 

「今回攻めて来る奴らは、皆殺しにする。これは必要事項なので、譲れないんだ。じゃあ次に問題になるのが、ファルムス王国なんだが。国民をも滅ぼすか? と聞かれれば、理由が無いと言うのが答えだな。魔王になるのに必要な生贄が足りないなら、躊躇わず殺すしかないだろうが……。しかし、ソウエイの報告では、こちらに迫る軍隊は一万以上らしい。おそらくだけど、この軍隊で足りると思う。民間人には手を出したくないし、職業軍人なら手加減はいらないしな。何にしろ、この業は俺が背負う」

 

 ここで一旦話を切り、ヨウムを見る。

 ヨウムは真剣な顔付で、リムルの考えを聞いていた。

 

「でだ、軍隊を滅ぼして魔王に生った後、どうするか? これが、本題なんだ。攻めて来るなら殺すしかないが、できるならどこかで、停戦に持ち込みたい。だがな、ファルムス王国の執行部は、全員殺す――責任を取らせる為にな。しかし、そうすると国家の中枢が消滅して、国民が困ることになる。で、お前の出番と言う訳だよ。そして、俺達と国交を結んでもらう」

「簡単に言ってくれるな……俺が、王だと?」

「簡単だろ? 俺も王になるんだ。王は王でも、魔王だけどな。ヨウム、お前も付き合えよ」

 

 難しい顔付で悩むヨウム。

 

 そこへ。

 

「ヨウム。リムル様は、貴方なら出来ると信じているのよ。私も貴方を応援するから、波乱万丈に生きてみたら?」

 

 ミュウランの、退屈な男は嫌いよ、と言いたげな言葉がヨウムを後押しする。

 

「俺も付き合うぜ、ヨウム」

「お前、俺が死ぬのを待ってるとか、ねーだろうな?」

「ははっ、何を言ってやがるんだ。そう思うなら、長生きすればいいだけだろ?」

「はあー……。チッ、わかったぜ。引き受けるぜ、その話!」

 

 グルーシスも〝覚悟〟を決め、ヨウムも〝覚悟〟を決め、リムルに頷く。

 

 そしてリムルとヨウムは、がっちりと握手を交わす。

 

 打ち合わせは全てが終わってからとリムルは言い、ヨウム達は朝一番の会議に出る為に、仮眠を取りに行く。

 

 

 ヨウム達が去った後、リムルはもう一つの懸念の事が、頭の中を過る。

 

 〝番外魔王〟

 

 あの二人がどこで、再び現れるかだ。

 もし、魔王に成る前に来たならば、死力を尽くしても勝てないかもと、本能的に思う。

 

 『大賢者』の計算でも、勝率五割を切っていた。

 

 だが、何故かリムルは、二人が魔王になってから来るのではと、感じていた。

 リムルが感じたもの、殺意はあれど悪意が感じられないという、その一点だけで。

 

 

 

 一人思案に(ふけ)ていく。

 

 〝番外魔王〟か……只の魔物ではないな。

 あの恰好、どうみても江戸時代か、戦国時代だろう……。

 

 でも、『大賢者』の検索でわかったが、五千年は生きてるみたいだな。

 すると、時代が合わないな……召喚者の恰好を真似たとか?

 

《告。四千年前の文献に、似たような格好で描かれています》

 

 なに?……ますますわからないな。

 

 まあいいか、次相まみえたら、聞いてみるさ――

 

 転生者か、とな。

 

 

 宿から出たリムルは、雲に半分隠れた月が差す月光に照らされ、淡い影が揺れていた。

 

 

 




 十八話を読んで頂き、ありがとうございます!

 次回の更新もよろしくお願いします!






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