忍びが転生したら〝異世界珍道中〟になった件   作:にゃんころ缶

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 お待たせしました。183話です

 ツキハ

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 コハク

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 傭兵商会ルヴナン・真の紋章


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 ※〝打刀〟
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183話 マサユキと『英雄覇道(エラバレシモノ)

 

 

 さて、決勝戦の結果だが、突然マサユキが自分の負けだと宣言してしまう。

 

 

「何を考えているんだ、アイツは?」

「うーん、全くわかりませんね」

「ゴブタに恐れをなした訳ではないでしょうし、本当に、何が狙いなのでしょう?」

 

 リムルの言葉に反応したベニマルやシオンにしてもわからず、マサユキの立ち去る姿を見送っていた。

 

 会場は騒然としたが、さもそれが当然の事のように観客達は誰もが納得をし、それを口にしていた。

 

 最初は皆が戸惑いを言い募る中、一人が「魔王に猶予をお与えになったのじゃないか?」と口にした事でまたもや流れが変わったのだ。

 

 そこからは、観客達の様々な憶測が飛び交い、やがて――

 

「「「「「マ~サッユキ、マ~~サッユキ――ッ!!」」」」」

 

 と、マサユキを称賛する声の大合唱が巻き起こる。

 

 (ええ、何だこれ? 宗教、いや推しの集会か!?)

 

 リムルは、何だか恐ろしいモノの片鱗(へんりん)を味わった気分に(おちい)る。

 

 その声援に、去り行くマサユキが片手を上げて答えていた。

 

(それにしても、マサユキって、本当に不思議なヤツだよな。何であんなに評価されているんだろ?)

 

《解。個体名:本城正幸(マサユキ・ホンジョウ)が所有する、ユニークスキルの影響だと推測します》

 

 リムルが理解に困るといった内心を吐露(とろ)すると、すかさず智慧之王(ラファエル)が説明をする。

 

 しっかりとマサユキを分析していた智慧之王(ラファエル)が言うには。

 マサユキの能力(スキル)は特殊な効果を発揮していると。

 そして、これの影響下に入った者達の思考や感情に刺激を与えるのだと。

 

 簡単に言えば、自分の意図していな事や、失敗でも、その影響下にある者達は、マサユキに有利な解釈を勝手にしてくれるのだと説明する。

 

 その結果が今の観客達の反応になるのだと。

 

 そして、リムルが至った結論は。

 

(なるほどなるほど。それならマサユキ自身の戦闘能力は高くない、という事になるな)

 

 ヒナタにマサユキの強さが読めなかったのも、単純に強くはなかったから、という事になる。

 

 その一方、ツキハとコハクが今のところ放置しているのは、強くないと見抜いていたからになるが、しかし、その厄介さも見抜いていたのだ。

 

 だから、リムルもそれに気付く。

 

(でもなぁ、あれでマサユキを軽んじるかと言えば、それはない。あの影響力は無視できないし、ある意味あの力は絶大だろう、な。敵に回られたら、至極厄介な存在になるのは間違いない。ツキハが言っていたな、確か覚醒したら相当厄介な存在になると。うーん、それはそうなんだけど、(むし)ろ、仲良くなっておかねばならないと思う、俺は……。うん、絶対にそうだ)

 

 リムルは下手に刺激して敵に回られるより、味方につけた方が良いと考えた。

 

 とりあえず真摯(しんし)に向き合い話をしてみよう、と。

 

「ソウエイ! マサユキに接触して、俺が会いたがっていたと伝言を頼む」

「承知!」

「くれぐれも丁重に、この後の昼食に誘い出してくれ」

 

 リムルの(めい)によりソウエイは、音も無くその場から姿を消した。

 

 

 それから、こうしてる間にゴブタが意識を取り戻していた。

 

 ソーカとディアブロは審議のし直しを行い、マサユキの申し出を受理する。

 

『思わぬハプニングの連続でしたが、マサユキ選手の事態により、ゴブタ選手が優勝となります!!』

 

 会場の各所ではブーイングが起こるも、マサユキ本人が納得しての行動故、それもやがて落ち着く。

 これは、ゴブタの実力が一応は認められていたのもあるだろう。

 

 もっとも、ゴブタの悪役(ヒール)としての悪名は消えず、ゴブタ自身不本意なモノなってしまったのは、(いな)めない。

 

 完全に意識を取り戻し、頭を軽く振りながら舞台中央に戻って来たゴブタ。

 

 そこへソーカが、すかさずマイクを向ける。

 

『さあ、ゴブタ選手! 今のお気持ちは?』

『え、えっ!? なんっすか? えーと……!? マジっすか? もしかして、自分が優勝っすか?』

『そうです。ゴブタ選手の活躍は、それはそれは素晴らしいものでした!』

 

(うーむ。よくそこまで持ち上げられるよなぁ。ほんと、ソーカのヤツ、楽しんでるというか、何というか、アレだな……ハハッハ)

 

 どこか苦笑いを浮かべるリムルであった。

 

 お約束通りゴブタがやらかし、決勝戦の幕は()りた。

 

 その後、リムルも舞台に上がり各選手の表彰を行う。

 

 八名の選手に声をかけ、その戦いぶりを褒め称える。

 

 そしてリムルは、マサユキから「招待に応じます」と、了承を得た。

 

(なに? その悲壮感漂う雰囲気は。何か勘違いしてないか?)

 

 完全に覚悟を決めた表情のマサユキにリムルは、(まあ、後でゆっくりと話を聞いて誤解を解くとしよう)と、思うのだった。

 

 最後はゴブタ。

 

『よくやったぞ、ゴブタ。これで今日から、お前を正式に〝四天王〟の一人に任命する!』

 

 これで約束通り、〝高性能釣竿〟をゲットしたゴブタの〝四天王〟入りが決定した。 

 

(ゴブタなら、色物枠としても申し分ないか。誰かに負けても、『ククク、ヤツは四天王最弱。四天王の名折れよ!』とか言っておけばいいしな。まさに、適任だ。うーむ、(なん)(はま)り過ぎて、怖い、かも? ククッ)

 

『ありがとうっす! これからも頑張るっすよ!』

 

 ソーカがアナウンスで、昼食を挟んだ後に、待望の第一回テンペスト武闘大会記念のエキシビジョンマッチが行われると、声高らかに宣言する。

 

 それを聞いた観客達は、武闘大会を締めくくるエキシビジョンマッチに期待を寄せつつ、席に座ったまま売り子のファーストフードを買う者、外の屋台や会場内の各売店に長者の列を成す者達でごった返す。

 

 こうしてここに、第一回テンペスト武闘大会決勝戦は無事に終了した。

 

 残すは、エキシビジョンマッチだけである。

 

 ――と、なれば良かったのだが。

 

 ゴブタにとっての、不運? 地獄? が、幕を開ける事になるのだった。 

 

 そう……うむ……アレを使わせて……

 うむ……ありがとうなのだ……

 

「そろそろいいな? それではあの者は、ワタシが鍛えてやるとしよう!」

 

 貴賓室に戻ったリムル達に、ミリムがそう言ってニンマリと笑った。

 

 先ほどから何かブツブツと呟いていたミリムだったが、どうやらツキハ、コハクと、『思念伝達』で何かを話していたようだ。

 

「あ、ああ。くれぐれも、ほどほどに、ね?」

「安心するのだ。ツキハが最近迷宮内に作ってもらった秘密の地下闘技場、〝竜の穴〟を使わせてもらう事にしたから、死んでも復活出来るのだぞ!!」

 

(おい、死ぬ事前提かよ! ってか、ツキハはいつの間にそんなモノ作ってもらったんだ? しかし、闘技場の名前に〝竜〟がついている時点で、ガッツリとヴェルドラも(から)んでるよな!?)

 

 と、内心で突っ込みを入れるリムル。

 

 そして、笑顔のミリム。

 

(ああ、そういう使い方もあるんだね……。しかし、死んでも終わらない特訓とか、考えてもゾッとするんだけど……。スマンな、ゴブタ。これも、次のステップに上がる為の試練だと、諦めてくれ……。慰めにはならないけど、多分コハクなら割と手加減してくれると思うよ。うん、ツキハとミリムは、ああー、うん、大丈夫、かな?)

 

 リムルは一抹(いちまつ)の不安を覚えながらも、()えてミリムに託す事にしたのであった。 

 

「ゴブタよ、ちょっと向こうで話そうか?」

 

 ニンマリと笑みを浮かべたミリムが、ツカツカとゴブタに歩み寄り、首後ろを服ごと掴むと片手で持ち上げる。

 

「ぴゃっ!?」

 

 ミリムは笑ってはいるが、完全に目が笑ってはいなかった。 

 

「優勝おめでとう。だが、こんな無様な試合を、ワタシはとても許せそうにないのだ。よって、お前を鍛え直してやるのだぞ! ついでに、ツキハとコハクにも声をかけておいたのだ!」

 

 ミリムはゴブタの変身に、とても大喜びしていた、どんな凄い攻撃を見せてくれるのかと。

 それだけに、その後の無様にご立腹だったのだ。

 

 その笑顔からは想像も出来ない――さっきの興奮と期待を返せと言わんばかりの怒りの声が聞こえて来そうであった。

 

「え、え、えとっ――」

「なーに。ワタシ自らが相手をしてやるし、ついでにツキハとコハクにも相手をしてもらえるから、直ぐに強くなれるぞ!!」

「ち、ちょ、ミリム様!? そんなの、オイラは頼んでないっすよ!! ミリム様にツキハ様、更にコハク様とか、死ぬ、間違いなくオイラ死ぬっす!!!」

 

 完全に逃げ道を塞がれ、大慌てのゴブタ。

 

(ゴブタ。君の意見は聞いてないと思うぞ)

 

 リムル、もはや頑張れと言う顔でゴブタを見る。

 

「ゴブタよ、いい機会じゃから、ミリム様の下での修行、気合を入れて頑張るのじゃぞ。そして、ツキハ様とコハク様にも相手してもらえるなど、滅多にない事じゃからのう。存分に基本を叩き込んでもらうがよかろう」

 

 そこへ、ハクロウが迫力のある笑顔でゴブタに言い放つ。

 

「ジ、師匠、オイラを――ッ」

「うるさいのだ!」

 

 ゴブタが何かを言いかけた時、ズゴンと重い音と共に、ミリムのゲンコツがゴブタの頭に落とされ黙らせられた。

 

(う、むごい)

 

 流石にゴブタに同情するリムル。

 

「ホッホッホ。人聞きの悪い事を申すでないぞ。ゴブタ。全てはお前の為なのだ」

 

 ハクロウがゴブタに語り掛けるが、白目を剥き、完全に気を失っているゴブタ。

 

(あれ、相当怒っているよなハクロウ。モミジからも盛大に突っ込まれていたからなぁ。まあ、仕方ないとしか言いようがないわ……)

 

 こうして、ゴブタはミリムに捕獲された。

 

 そして、もう一人の捕獲対象が――

 

「我が(あるじ)よ、ゴブタ殿に協力をし、見事優勝を勝ち取りました!」

 

 サラッとゴブタを見捨てて、リムルに駆け寄るランガ。

 

(まあ、そうだろう。ランガとしてはとばっちりを受けたくはないだろうしな)

 

 だが、そうミリムは甘くない。

 

 逃げられないのだ。

 

「ん? 待て、ランガと言ったな? お前がいなければ、ゴブタの修行が完成しないのだ!」

 

「ワウッ!?」

 

 悲しそうにリムルを見るランガ。

 

(ランガ……ミリムは言い出したら人の話は聞かないんだ)

 

 そんなリムルは心の中で、スマンと言いながら視線をランガから()らす。

 

「わはははは! 悪いようにはしないから、安心するのだぞ!! それとリムル、エキシビジョンマッチはワタシも見たいから、お昼休みが終わるまでには、一度戻って来るのだ!」

 

 ミリムはそう言うと、ランガの首根っこを左手でガシッと(つか)む。

 

 ランガはまるで散歩から帰るのが嫌な犬のように四つ足を大きく開いて踏ん張るが、その抵抗は(かな)わず、ゴブタと一緒に引きずられるように、ミリムに連行されていった

 

 

(まあ、あれだ、実際ゴブタは運に頼り過ぎるところがあるし。ランガも本能のままに戦う癖がある。ミリムもそれに気付いたから、二人を鍛えようと考えたのだろう、多分、な。ツキハとコハクも、基本を叩き込むのが上手いのは、スフィアやアルビスが言っていたから、基本をみっちり教えてもらうといい)

 

 と、リムルは心の中で合掌すると。

 

(サヨナラ、ゴブタ。サヨナラ、ランガ。君達の勇姿は忘れない!!)

 

 そう思いつつ、リムルは三人を見送ったのだった。

 

 

 

 そして、昼食時。

 

 リムルとマサユキとの会談。

 

 とりあえず二人きりで話したいとリムルが言うと、仲間が猛烈に反発したが、マサユキが取り成したお陰で一応の納得が得られ、今はリムルとマサユキだけである。

 

 他の者は、リムルの幹部と同様、別室で控えていた。

 

 

「は、初めましてで、いいのかな? 閃光とか〝勇者〟とか呼ばれている本城正幸(マサユキ・ホンジョウ)です……」

 

 恥ずかし()に赤面しつつ、自分を〝勇者〟と名乗るマサユキ。

 

(うん、元の世界の感覚ならば、自分から〝勇者〟とか、痛いを通り越して、完全中二病だものね。そりゃあ、恥ずかしいだろう。まあ、その〝中二病〟たる権化(ごんげ)の〝魔王〟とか〝勇者〟が実在する世界でも、あるんだけどねえ)

 

 どうやらマサユキは、それだけではないようで、初めて出会った時に仲間達が魔王討伐とか言っていた事を気にしてるようだった。

 

 それに関しては、リムルは全く気にしておらず、その件は完全に水に流していたのだ。

 

 だから、用意された食事を一緒に食べれば、そのわだかまりも()けるだろうと考えていた。

 

「まあ、会ったのは最初じゃないけど、初めましてかな? 俺が魔王リムル。本名は、三上悟(ミカミ・サトル)です。元はさ、大手ゼネコンのサラリーマンなんだよ、俺」

 

 先ずは、さっきから緊張の為か、食事に手を付けようとしないマサユキの気分をほぐすように、リムルは自分の正体をぶっちゃける。

 

「――え? もしかして……日本人、ですか?」

 

 いきなりの告白に、半信半疑の目をリムルに向けるマサユキ。

 

(あ、まあ、そうなるよな。今の見た目は美少女の姿だものな。信じられないのも無理はない)

 

「そう、元日本人なんだ。まあ、その辺も食べながら話そうか」

 

 そう言ってリムルは、マサユキに食事を促し、ようやくマサユキは(はし)を手に持つ。

 

「って、これ、本当に食べていいんですか?」

「勿論だ。お前の為に、日本料理にしてもらったんだよ」

 

 今回の昼食は、寿司と天麩羅(てんぷら)である。

 

 マサユキにとっては、どれも懐かしい日本の料理であった。

 

「これ、最後の晩餐ですか? もしかしてこの後に、傭兵商会ルヴナンに暗殺されるとか――?」

「いや、違うから。話の通じる同郷の君とは、仲良くなりたいと思っているんだよ」

 

 マサユキは、目の前に並べられた料理を見て、完全に勘違いしていたのだ、これが最後の晩餐だ、と。

 

 だから、これを食べたらおしまいだと思っていたのだ。

 

「そ、それじゃあ遠慮なく、イタダキマス――」

「はい、いただきます」

 

 そして、一口天麩羅(てんぷら)を食べた途端マサユキは目を大きく見開(みひら)くと、後は黙々と箸を動かし、目の前の料理を食べていく。

 

 マサユキが食事に夢中になり、話どころではなくなったので、とりあえずリムルは仕方なく、食事が終わるまで待つ事にしたのだった。

 

 

 …………

 

 ……

 

 

 やがて、食事を終えた途端にマサユキは――

 

「わかりました。僕は、三上――いや、リムルさんの手下でいいです!」

 

 と、唐突にそう宣言した。

 

(はい!? 飯を食い終わった途端に何を言い出すんだ、コイツは?)

 

 いきなりの宣言にリムルは、意味がさっぱりわからないという顔になる。

 

「手下、ってお前ね……」

「いえ、大丈夫、問題ありません。僕は勇者になんて、まったく未練がありませんから。ぶっちゃけ、『マッサユキ』とか言われるのがもの凄く恥ずかしかったですし。いや、本当、どうやってこの環境から逃げ出そうか悩んでいたくらいなんですよ。マジに、いっそ傭兵商会ルヴナンにでも喧嘩を売って、華々しく散ろうかなと思った事もあったくらいで……」

 

 と、心中を吐露(とろ)するマサユキであった。

 

 それからリムルは、お茶を飲みながらマサユキから事情を聞いたのである。

 

 マサユキは、元の世界では進学校に通っていた高校生。  

 自分で言うのは恥ずかしいけど、それなりの成績だったと言う。

 (ひそ)かな趣味として、漫画やファンタジー系ラノベを読むのが好きだったらしく、そのせいでこんな事になったのではないかと、ぼやく。

 

「僕の力、ユニークスキル『英雄覇道(エラバレシモノ)』とか言うんですよ? ふざけてますよ、まったく……」

 

 漫画やラノベの影響で英雄願望などを持ったばかりに、この世界に飛ばされたと思っていたのだ。

 

 実際、思い込みなどで異世界へ転移など起きるハズもないのだが。

 

 話を聞いたリムルは、無防備なマサユキのユニークスキル『英雄覇道(エラバレシモノ)』を『解析鑑定』してみた。

 

(ふーん……なるほどね。予想通りと言えば予想通りの力だな。洗脳に近い思考誘導を、周囲の人間に対し自然と行う力か。思考誘導ねえ……ツキハの正体不明のアレもこの系統なのかな――)

 

《告。個体名:ツキハのアレは、正体を偽り隠す事に特化したものだと推測しますので、あの思考誘導みたいなモノは、その力の副産物なのでしょう》

 

(ふむ。それはそうだな。マサユキと同じ事が出来たら、シャレにならないよな、マジに……。まあ多分だが、その力はマサユキの英雄化を目指しているのかもな。そこにマサユキの意志は関係ない、止めて欲しいと願っても否応が無しに効果は持続してしまう、か。使い勝手が良いのか、悪いのか、わからんよなまったく……)

 

 それなりにリムルは、マサユキのユニークスキルを独自解釈する。

 

「けどさ、お前の力って凄いよな。あのまま辞退しなければ、お前の優勝だったぞ?」

 

 そう、リムルが言う通り、このユニークスキル『英雄覇道(エラバレシモノ)』の力の効果が本物なのは、今回の大会結果が証明していたからだ。

 

「そうなんですけどね、でも、本当にそれで困っているんです。僕が何もしなくても、周囲が勝手に勘違いしちゃってさ……。イングラシア王国でも、そんな感じで優勝出来ちゃったんですよね」

 

 困り顔のマサユキは、それでついつい調子に乗っていたのだ――と、マサユキは言う。

 

 奴隷商会オルトロスという犯罪組織を潰した時でさえ、神輿(みこし)として祭り上げられただけで、マサユキ自身は何もしていなかったのだ、とも、告白をする。

 

 自分の意志を放棄していても、結果が勝手についてくるので、楽といえば楽だったと、も。

 

 しかし今回は、一つ間違っただけで身を滅ぼすと感じたらしい。

 特に、魔国連邦(テンペスト)に来てからは、傭兵商会ルヴナンの噂をよく耳にするようになり、ここに目を付けられたら、生きてこの国を出られないのではと、思ったのだと。

 

 それで急遽(きゅうきょ)、強引にも方針転換を決意したのだと、本音をぶちまけるマサユキ。

 

(そうね、正解だと思う。俺に『英雄覇道(エラバレシモノ)』の影響は――)

 

《解。究極能力(アルティメットスキル)の前には、ほぼ全ての下位能力(スキル)が無効化されます》

 

(やっぱりね。究極能力(アルティメットスキル)持ちには、通用しないか。俺も、いざ戦う事になったなら、手加減するつもりだったけど、まさか素人同然とは思わなかったわ。これ、多分だが、軽くパンチを一発放っただけで、マサユキは悲惨な事になっていたと思う。不幸中の幸いだな、眷属達の出場を許可しなかったのは。絶対にアイツ()、手加減しないだろうからなぁ。マジでマサユキを殴り飛ばして、大惨事になりかねなかったわ……)

 

「お前、最後の最後で正しい選択をしているよ。それは、誇ってもいいと思うよ?」

「そうですか? でも、あのゴブタって人でさえ、あんな凶暴な姿に変身しちゃうし、普通に考えたら、絶対に勝てるハズがないって気付きますよ」

 

 とまあ、こんな感じでリムルとマサユキは色々と語り合い、お互いの事情も説明し合った。

 

 リムルの方は軽く身の上話をしただけで、ほぼマサユキの話を聞く専門になっていた。

 

 どうやらマサユキの仲間達は、マサユキを神のように(あが)めるばかりで、本音で語り合う事も出来なかったそうだ。

 

 必然的に、愚痴を言える相手がユウキしかおらず、そうは言っても忙しい彼とは時間の都合が付き(にく)い。

 

 当然、マサユキ自身に不満とストレスが溜まっていたようである。

 

 なので、リムルが詳しく聞くまでもなく、これまでの経緯(いきさつ)を詳しく説明してくれたのだった。

 

「さて、もっと話を聞いていたいが、そろそろ昼休みも終わるし、エキシビジョンマッチが始まる。それで質問なんだが、お前はこれからどうするつもりなんだ?」

 

「どうとは?」

「いや、ゴズールと再戦を約束をしていただろう? 地下迷宮(ダンジョン)の攻略に挑むのか?」

「ああっ!」

 

 マサユキは、今の今までゴズールとの約束を忘れていた事を思い出す。

 

「ど、ど、どうしたらいいですかね?」

「落ち着け、安心しろって。ゴズールが守るのは、地下五十階層だ。地下迷宮(ダンジョン)は無茶苦茶広いから、そこに辿り着くだけでも数日はかかる」

「じゃ、じゃあ、取り()えず攻略を進めるフリをしておけば、今日を乗り切れるって事ですよね?」

「その通り。招待した来賓方は、明日には帰国の途に就く予定だからな」

 

 祭りは三日間の予定。

 

 明日は、街道が人と馬車で溢れると予想されるので、交通整理がメインの仕事となる。

 

 エキシビジョンマッチの後の地下迷宮(ダンジョン)のお披露目は、今回は来賓方に対するデモンストレーションでしかない。

 

 プレーオープンする前というか、本格稼働する前の一時的な開放になる。

 

  なので、エキシビジョンマッチ後の数時間だけでは、浅い階層しか攻略出来ないだろうと、リムルの見解であった。

 

 ゴズールとマサユキの戦いに関しては、リムルにちょっとした考えがあった。

 

 だから、マサユキのパーティーのアタッカーであるジンライに、魔国製の装備を与える事にしたリムル。

 

 ゴズールには悪いが、リムルとしてはマサユキを倒されたら困るので、今回マサユキには、地下迷宮(ダンジョン)の広告塔して役立ってもらおうと考えたのだ。

 

 そう、地下迷宮(ダンジョン)攻略組の先頭に立ち、挑戦者達を(あお)ってやる気を起こさせる役目を。

 

「とまあ、こんな感じで、お前に役立って欲しいと考えたんだが、どうかな?」

「なるほど、とても頼もしいです。それに、ジンライに凄い装備をプレゼントしてくれるなんて。僕としても、失敗しても死なないのなら安心して挑めますし、願ってもない話です!」

 

 マサユキは、快くリムルの提案を受け入れた。

 

(まあ、あんな上半身裸みたいな恰好で地下迷宮(ダンジョン)に潜るなんて、自殺行為みたいなもんだからな。アタッカーがあれでは、パーティーが全滅しかねないんだよねえ)

 

 リムルは、地下迷宮(ダンジョン)攻略の基本を頭に置いての判断だったのだ。

 

「お前には、それとなく攻略情報を流す。それを使って、上手く地下迷宮(ダンジョン)攻略を進めてくれたらいい。後、改善点など気付いた点があれば、遠慮なく教えてくれ」

 

 五十階層以下に関してはリムル達もマジなので、攻略情報を流すつもりはないと。

 その点だけは注意するよう、マサユキに忠告をするリムル。

 

「わかりました! 何だか、RPGオンラインゲームのテストプレイヤーみたいな感じですね」

「おお……そう言われると、確かにそんな感じだな。まあ、今日のところは無理はしなくていいから、五階層でも目指してくれ」

「はい。リムルさんと話せて良かったです。不安も解消されたし、何だかこの世界も悪くはないなと思えてきました。それで、えと、(あと)、そのですね、傭兵商会ルヴナンは――」

 

 マサユキがどこか気まずそうに口籠(くちごも)ると。

 

「――そっちも心配しなくていい。俺の国では、俺のルールに従う契約になっているから、大丈夫だと、思う?」

「思う?」

「あ、いやあ、アイツ()はさ、本当に自由なんだよ、いい意味でも悪い意味でもね」

「はあ、そうなんですか……」

「でも、俺の許可がない限りこの国では(コロシ)を起こしたりしないから、俺に〝危害〟が及ばない限りはね。だから、そこは安心してくれ」

「なるほど。でも、命令ではなく、許可なんですね?」

「ああ。俺の配下でも下でもないからな。許可、もしくはお願いをした時だけ、役目を果たしてくれる。だから、俺の国では勝手に事は起こさないよ。まあ、喧嘩程度は日常茶飯事なんだけどな。だから、お目達には絶対に手を出さないよう、きちんと言っておく。でもな、俺の国とジュラの大森林だけだからな、その契約が効果を発揮するのは。もし、他の国で傭兵商会ルヴナンとトラブルを起こしたら、俺は口添(くちぞ)えは出来ても、それを止める事は出来ない。そこは、肝に銘じておいてくれ」

「はい、わかりました。それが聞けただけも、本当に安心出来ます」

 

 リムルと傭兵商会ルヴナンとの関係を聞けた事で、本当の意味での安堵(あんど)の表情を見せたマサユキ。

 

 今までも能力(スキル)効果で楽をしていたようだが、それはそれで気懸(きがか)りも多かったのだろう。

 

 リムルが後ろから支えると約束をしてくれた事で、そうした心配事が払拭(ふっしょく)されたのだろう。

 

 何よりも魔国は、文化の最先端を走っている。

 宿は、風呂とトイレも完備してある、しかもトイレは水洗だ。

 その快適さは、他国をまるで寄せ付けない。

 

 その上、食事の種類の豊富さと、美味しさに驚いていたマサユキだった。

 

「楽団もあるし、絵画も勉強させている。その内さ、演劇なんかも流行(はや)らせるつもりなんだ。俺も楽しみたいし、そういう面では投資を惜しむつもりはないんだよ。それに、色々な面での協同出資者も出来たからね」

「おお。リムルさん、マジで尊敬しますよ! もしかして、漫画とかも――」

「フッフッフ。当然だろ、マサユキ君? そこに至るまでの道は遠いが、諦めたらそこで試合終了だからね!」

「うおおおぉ! 俺、リムルさんにずっとついて行きます!」

 

 そしてマサユキは、魔国に滞在する事となった。

 

 リムルとしては、こまめに連絡を取り合い、情報を共有するつもりである。

 

 何より、マサユキの漫画の記憶にも用事があるリムルだった。

 

 

 こうして、リムルは新たな仲間を得たのであった。

 

 

 そして、エキシビジョンマッチの時間がやって来る。

 

 

 





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