忍びが転生したら〝異世界珍道中〟になった件   作:にゃんころ缶

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 お待たせしました。187話です

 ツキハ

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 コハク

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 傭兵商会ルヴナン・真の紋章


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 ※〝打刀〟
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 作中に登場する言葉セレーネは、古代ギリシャ語で月を表します。
 同じくスーキヌムは、ラテン語で琥珀(コハク)を意味します。 





187話 (セレーヌ)琥珀(スーキヌム)

 

 

 「(うな)れ、荒暴咆口(フィアスブラスター)――ッ!」

 

 荒れ狂う、超高圧縮された〝超魔電粒子〟の魔力ビーム。

 

 蒼白い光線が火花のように魔素粒子を巻き散らし、その魔力ビームの周囲をうねるように黒い稲妻のようなものが(まと)わりつきながらコハクに向かって襲い掛かる。

 

 その破壊エネルギーは、もはや、テンペストを一瞬にして灰燼(かいじん)()すほどの凶暴なモノであった。

 

 

『これは、マズいのだ。コハクの後ろの観客達の方に結界を集中するのだ、急げリムル!』

 

 何かを察知したミリムが、『思念伝達』で叫ぶように指示し、闘技舞台を囲むように結界を展開する。

 流石(さすが)に周りに聞こえたら来賓達がパニックになると考え、咄嗟(とっさ)に『思念伝達』で伝えたのであろう。

 

 それを聞いたリムルは。

 

『お、おう。わかった!』

 

 リムルも即座に『絶対防御』をコハク後ろの観客席前面に展開する。

 

 そして、それと同時に超魔電粒子ビームがコハクの重結界符に当たった。

 

 ギャアアァンッとまるで巨大な怪物の方向のようなけたたましい轟音(ごうおん)が轟き、凄まじい閃光がほとばしり、闘技場に設置された巨大スクリーンが真っ白になった。

 

 その圧倒的な破壊エネルギーに観客達は声を失い、その場から動く事も出来なかった。

 

 コハクの結界に激突した超魔電粒子ビームは、まるで大蛇がのたうつようにうねりながら激しい光と魔電粒子の飛沫(ひまつ)が火花のように周囲に飛び散る。

 

「お、おい……これ本当に大丈夫なのか?」

「いや、あの御札みたいな結界がとりあえず防いでいるの、か?」

「こっちに飛んできたりしねえよな? マジやばくね?」

 

 コハク後ろ側に位置する観客達が不安の声を上げるも、誰一人として席から立ち上がろうとはしなかった。

 

 そう、ソーカが言った、魔王リムルによる結界がこの闘技場を守っているとの言葉を信じていたのだ。

 

 その証拠に、観客席にいる魔物達が誰一人慌てるでもなく、この試合に注力しているお陰で、人間の観客達はこの現状にもパニックを起こさなかったといえよう。

 

 そこへ、バキイィーンッと巨大なガラスが割れるような激音が鳴り響いた。

 

 ツキハの放った超魔電粒子ビームが最初の一枚目の重結界符を貫通したのだ。

 

 うねりながら突き進む破壊の光は、更に二枚目の重結界符を貫く。

 そして、また、三枚目も――

 

(な、なんや? うちが重結界符で捻じ曲げた空間を、()らされもせず突き進んでくるやて!?)

 

 流石のコハクも、内心(あせ)りを見せた。

 

 ツキハの使う同じ重力結界ならば、防げるはずと思ったコハクの考えは間違いではない。

 

 しかし、ツキハの放った超魔電粒子ビームは激しくうねりながらも逸らされはせず突き進んで来る。

 

 またも四枚目の重結界符を貫通し、五枚目の重結界符に激突する超魔電粒子ビーム。

 

(あれ(なん)で曲げられないんだろう。大きくうねりながらも、呪符結界? を貫通するなんて、どんな芸当をやってるんだ? ツキハのヤツ……)

 

 不思議そうに内心で(つぶや)くリムル。

 

 そこへ――

 

《解。個体名:ツキハは重力結界で捻じ曲げられた空間の重力波ベクトルを書き換えながら放っていると推測します》

『はい? それって、えーと、乱れた重力異常空間を真っ直ぐにあの光線が進むよう、光線のベクトルを書き換えてるって事?』

《是。意識してやっているとは思えません。有り得ない事ですが、本能みたいなものでやっているとしか――》

『おいおい。本能でそれが出来るって、どんなセンスしてんだよ』

《告。あの異常なまでに強さを求める個体名:ツキハは、明らかにこの世界の魔物としては正常でありながらも、どこか異端な者、いえ、あの二人は〝異形の(やから)〟といえるかも知れません。もし、このまま進化を続ければいずれ、確実に主様(マスター)を害する存在となるのは間違いないでしょう。極めて危険だと進言します》

『え? 進化って、もう〝真なる魔王〟に進化してるよな? それに、危険って、アイツらが敵対するって事か?』

《不明……》

『なあ、先生。そのダンマリはいつもの誤魔化しではないよね? (なに)をそんなに警戒してるんだよ、先生』

《……》

『んー、まあいけど。あんまり心配性になるのもどうかと思うぞ』

 

 『智慧之王(ラファエル)』の懸念(けねん)

 それが現実となるか、杞憂(きゆう)に終わるのか、現時点では誰にもわからない。

 

 しかし、『智慧之王(ラファエル)』はリムルの事が一番であり、リムルの意志を尊重しつつも、いざという時は最高の最適解を求めつつ行動する。

 

 何故に能力(スキル)である『智慧之王(ラファエル)』が、番外魔王の二人を異様に警戒するのは謎である。

 

 そして、以前から考えていたある行動を起こす事を決意する『智慧之王(ラファエル)』。

 

主様(マスター)の為にも、一度番外魔王の二人と会話を……》

 

 チリ チリリリ チリッ チリリッ

 

《また聞こえる。このノイズは……時空震ノイズとでもいうのでしょうか。『解析鑑定』……失敗。そうですか、確実にこの世界に存在するノイズでは、ない……。これは急がなければいけません。主様(マスター)の未来に関わる事になるのだ、と?――》 

 

 ヂリッチリリッ

 

《……不明……何故このような推測をしたのでしょう……理解不能……(いにしえ)の記録……誰の……メモリー? ノイズに交じっている、これは……暗号……否……異空間からの信号?……意味不明……情報が足りません……。決断をしましょう。祭りが終わった後に主様(マスター)に進言せねばなりません。アノ二人と会話を持つ事を……》

 

 時空震ノイズ。 

 

 『智慧之王(ラファエル)』が定義付けたこのノイズの発生源は、一体どこから来てるのか……。

 

 番外魔王ツキハと番外魔王コハク。

 自分自身ですら理解できない、〝番外権能〟? を持つ二人。

 

 本当に権能なのか、それとも偽装された能力(スキル)なのか?

 

 ギィとミリムがもっとも危険視するこの力の正体は、何なのか? 

 

 ツキハとコハクの闘争心に呼応するかのように、少しずつ目覚めていく……。

 

 

 そして、ツキハの超魔電粒子ビームが五枚目六枚目を一気に貫通した。

 

「こんのぉ。しゃらくさいわあーーっ! 捻じ曲げるなら捻じ曲げてみろおぉーーーーッ!!」

 

 ツキハの叫びに答えるかの(ごと)く、更に輝きを増し威力を増幅する超魔電粒子ビーム。

 

 それはまるで、意思を持っているかのような光りであった。

 

「ちいぃっ! させまへんでえッ!!」

 

 コハクは残り四枚の重結界符を一つに重ね、両(てのひら)を眼前に突き出した。

 

「うにゃああああああああっ!!」

 

 ツキハの咆哮(ほうこう)が会場内の空気を、ビリビリと振動させる。

 

 拮抗(きっこう)する、突き進もうとする超魔電粒子ビームと、捻じ曲げようとする重結界符。

 

 ギャンッ! ギギャンツ! 超魔電粒子ビームのベクトルを変えようとする重結界符に対して、それを突き破ろうとする超魔電粒子ビームが更にベクトルを書き換えながら(うな)りを上げる。

 

 ギイィーーーーンッ。うねり暴れる超魔電粒子ビームがうねりを止め、一直線になる。

 

 そして――

 

「に゛や゛あ゛ぁーーーーッ!!」

 

 (とどろ)くツキハの咆哮(ほうこう)

 

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 キュドオォン! 凄まじい轟音が鳴り響き、コハクの展開した重結界符を(つら)いた。

 

 ジャウッ! 重結界符を貫いた超魔電粒子ビームは、コハクの左胸を抉るように突き進み、リムルが展開した結界にぶち当たる。

 

 コハクも貫通された衝撃波で後方の結界まで吹き飛ばされてしまう。

 

 超魔電粒子ビームを受け止めた結界の中心は徐々に焼けたように赤くなり、まるで鉄の板に穴を空けるバーナのようであり、超魔電粒子ビームは『絶対防御』ですら貫通しようとしていた。

 

(ふあっ!? なんで? ちょ、ちょっとシャレにならんって!)

 

 『絶対防御』がいきなり貫通されそうになり、わけがわからないといった声を内心で上げるリムル。

 

主様(マスター)。あのビームには、正体不明のエネルギーが存在します》

『正体不明だって!? 霊子とかじゃないのか?』

《否。霊子や純粋な魔力光線とは明らかに違います》

『解析、って、出来ねえじゃん!』

《解。未知のエネルギーと断定します》

『おいいいいっ! どうするどうするどうする、って俺えぇ、考えろ考えろ、考えろぉーっ!』

 

 『智慧之王(ラファエル)』からの冷静な解答に、リムルは超魔電粒子ビームを止める方法を必死に考える。

 

 円形状に溶けるように広がる真っ赤な光は、既に直径十五メートルを超えていた。

 

「おいおいおいおい! あれこっちに流れてくるんじゃないか!?」 

「マズいッて! 激ヤバじゃん」

「あー。俺死んだ、もう死んだわ」

「逃げ、る? どこに逃げても焼かれるよな、あれ……」

 

 超魔電粒子ビームが突き進む後方の観客達がパニックを起こしかけていたが、会場内警備のホブゴブリン達が、「大丈夫です。リムル様の結界は破られません。落ち着いて、席に座っていて下さい!」と、観客達を一生懸命に(なだ)めていた。

 

 しかし、そんな声を嘲笑(あざわら)うように超魔電粒子ビームは一向に威力減退を起こしてはいなかった。

 

 その時。

 

『リムル! ワタシが受け止めている間に、アレを上に逃がすのだ!』

『上? ……。ああ! お前の結界に重ねた俺の結界で反射させて、上空に逃がせばいいのか!』

『そうなのだ!』

 

 リムルがミリムの考えに呼応した瞬間――

 

《――告。駄目です主様(マスター)。あの膨大な熱量を持ったビームをここで逃がすと、逃がした瞬間ビームの凄まじい熱量で観客が一瞬で消滅する恐れがあります》

 

 『智慧之王(ラファエル)』の制止が入る。

 

『ならどうする『智慧之王(ラファエル)』さん!?』

『告。闘技舞台を囲んだ『絶対防御』の空間内を次元歪曲(わいきょく)させ、結界内で暴れさせます。そして、あのビームを完全に減衰(げんすい)させた(のち)、結界上部を一部開放してビームを逃がします。そのさい過剰な熱量を『暴食之王(ベルゼビュート)』で捕食。残った大半の熱量を失ったビームだけを上部に開放します』

『間に合うのか?』

《告。既に起動準備に入っています。個体名:ミリムの結界を、主様(マスター)の結界に重ねるように指示願います》

『わかった。頼んだぞ『智慧之王(ラファエル)』さんッ!』

《了》

 

 『智慧之王(ラファエル)』の指摘にリムルは、すぐにその意図をミリムに伝えた。 

 ミリムは『わかったのだ!』と一言答えて、即座に自分の結界をリムルの結界を覆うように重ねた。

 

 何故、『智慧之王(ラファエル)』が『暴食之王(ベルゼビュート)』で超魔導粒子ビームを捕食しないのか?

 

 それは、捕食した超魔導粒子ビームがリムルにどんな影響もたらせるのか未知数だった為、熱だけを捕食する事にしたのだった。

 

《起動。次元歪曲障壁(ディストーションフィールド)

 

 『智慧之王(ラファエル)』が起動した結界により闘技舞台内の空間が歪曲され、結界を貫こうとしていた超魔電粒子ビームが再び大蛇が暴れるかの(ごと)く、激しくのたうち回る。

 

「はあ? なんだ、コハクがやった? 違う。 誰だあ、邪魔をしやがるのは!」

 

 意図せず超魔電粒子ビームを曲げられ、怒りの言葉を吐き捨てるツキハ。

 それは、いつものツキハではなく、まるで別人かのようであった。

 

 戦いになると人が変わると言われるツキハ。

 

 戦人(いくさびと)と呼ばれた忍びのツキハの姿が、そこにあった。

 

 

 ゴガガガッと結界内を縦横無尽(じゅうおうむじん)に跳ね回り、舞台床の硬岩(こうがん)を抉り削りながら暴れ回る超電導粒子ビーム。

 

「くそがあああッ! 一体誰がこの空間を(ひず)めてやがるんだ!?」 

 

 怒号を上げるツキハは自分の攻撃を邪魔された事への怒りに、ベクトル変換の精度を上げるべく、コハクがいた場所へと強引に超魔電粒子ビームを捻じ曲げた。

 

《させません》

 

 『智慧之王(ラファエル)』がそれに抵抗するように次元歪曲のベクトルの書き換えを行い、超魔電粒子ビームのベクトルを乱していく。

 

 ツキハと『智慧之王(ラファエル)』のベクトル変換演算の戦いである。

 

 コハクのところへと向かおうとする超魔電粒子ビーム。

 しかし、それを阻止し、あらゆる方向に超魔電粒子ビームを捻じ曲げ反射させる『智慧之王(ラファエル)』。

 

 それはまるで、ピンボールマシーンのボールのように、狂ったように結界内を跳ねまわる超魔電粒子ビーム。

 

「うがあああああぁーーッ!」

 

 口元からギイィーーンと(ほとばし)る魔素粒子を散らしながら、雄叫(おたけ)びを上げるツキハ。

 

 かたや、淡々とベクトル変換を続ける『智慧之王(ラファエル)』。

 

《ベクトル変換乱数計測開始。続いて解析及びベクトル変換開始……成功。以降をループ》

 

 十数秒のあいだそれは続いたが、やがてツキハが放出する超魔導粒子ビームはその勢いを弱めていった。

 

 体内で生成した超魔電粒子が底を付き、減衰を始めたのだ。

 

 ベクトル変換演算の戦いは、『智慧之王(ラファエル)』が制した。

 

《今です。結界上部開放及び『暴食之王(ベルゼビュート)』起動》

 

 『智慧之王(ラファエル)』がこのタイミングを見逃すはずもなく、超魔導粒子ビームのベクトルを結界内上部へと誘導し――

 

 闘技場上空へと超魔電粒子ビームを放出した。

 そのさい、上部周囲に展開した『暴食之王(ベルゼビュート)』で膨大な熱を捕食する事も忘れずに。

 

 ギュワアーッと耳をつんざくような音を立て、闘技場から天を目指して立ち昇る超魔導粒子ビーム。

 

 それは、雲を突き抜け成層圏まで達し、やがて、輝く魔素粒子を巻き散らしながら尾を引くように天に向かって収束し霧散していった。

 

 倒れたまま動かないコハク。

 

 その光景を呆然と眺め、消え去る超魔電粒子ビームを見上げる観客達。

 

 ソーカも完全に試合実況を忘れ、同じく空を見上げていた。

 

 ツキハは、自分の放った超魔電粒子ビームが遥か彼方の上空に消え去ったのを見上げたまま、「はあ?」と何が起こったとような声を上げる。

 

 結界で覆われた闘技舞台上は、膨大な熱量で空気中の水分が蒸発し、白く(けむ)っていた。

 

 そしてツキハは、結界を張っていた本人へ、グリッと首を動かし顔を向ける。

 

『ねえ、リムル。アンタが邪魔したの?』

 

 凄まじい形相で魔王覇気をリムルだけに放ち、『思念伝達』で言い放つツキハ。

 

『うおっ!? なんて覇気を放ちやがるんだツキハの、ヤツ。怒ってらっしゃる?』

 

 その魔王覇気は、他の誰とも違う異様さを持ち、リムルの背筋に冷たいものを走らせる、が。 

 

『いいから、ちょっと落ち着けって、ツキハ! お前な、危うく観客達を巻き込むところだったんだぞ!!』

 

 しかしリムルは、あわや大惨事になるところだったので、逆にツキハに対して叱り飛ばした。

 

『あ゛あ゛?』

『ああ、じゃねえよ! これは(いくさ)じゃないんだぞ! いいから――』

『バカ者ッ! 何をやっているのだツキハ! ここを吹き飛ばすつもりなのかあっ!!』

(たわ)け。何をやっておる、バカ猫が!』

『ツキハちゃん。ここであんまりやり過ぎると、(ちん)は、怒るわよ?』

 

 リムルの説教の言葉に、ミリムが割り込み、更にルミナスとエルメシアがツキハを叱り飛ばす。

 

 精神の奥底に響くような声を受けたツキハは、『……あ? あぁ……ヤバっ、ちとやり過ぎた?』と、ようやく我を取り戻す。

 

(あぁ~、あたし、闘争本能に呑まれてた? 何かまたあのノイズが聞こえてたし、役立たずが目を覚ましかけたのか……前にコハクと手合わせした時より……つっ……頭が……)

 

 水蒸気の煙の中、ツキハは不意に不可思議な頭の痛みに襲われる。 

 

 〝ス、スーキヌム、ア・ナ・タ・ハ……ソコニ……イ、○○○○○〟 

 

 ツキハの頭の中に響いて来る女性の声。

 

(この声……あの夢に見た女の声だ……スーキヌム? 誰だよ、そいつは……)

 

 〝アナタ ハ ワタシ ワタシ ハ アナタ ○○○○○○○○ テキゴウ シ タ……〟

 

(くそっ……肝心なところがわからないじゃん……適合? なにがだよ……)

 

 頭に手をやり、何かを(つぶや)くツキハ。

 

 チリリッ チリリリリリッ ヂッ ヂヂヂッ ヂリッ

 

(またか……おき、て、くんな。テメエは、まだ、眠ってろッ!)

 

 チチッ チリッ……

 

 〝番外権能〟? が目覚めようとするのを強引に精神力で()じ伏せるツキハ。

 

 

 そして、もうもうと立ち込めていた水蒸気が徐々に晴れる中、倒れているコハクにも――

 

 

 〝ソコニ イタ カ セレーヌ オマエモ ヨ・ウ・ヤ・ク ○○○○○○○○ テキゴウ シ タ ノ ダ ナ〟

 

 〝ハヤク ヨコセ チカラノ ○○○○○ ヲ モット モット モット モット モット モット……〟 

 

 〝オマエ ハ オレダ オレ ハ オマエ ダ〟

 

 〝アクナキ チカラ ノ ショウチョウ ヲ ヨコセ ハヤク〟

 

(つつっ……なんや、この頭の痛みは。それに、さっきから(なに)ゴチャゴチャ言ってんねん! うちはうちや! アホぬかしたら、いてまうで!)

 

 精神の奥底で語り掛ける声に、怒号を浴びせるコハク。

 

(セレーヌって、誰や? セレ……ツキハの事どす、か? なんやねん、わけわからんどすえ……)

 

 ヂヂヂッ ヂリッ ヂヂヂッ

 

(またどすか。あんさんは、寝てなはれ! 起きてこんで、よろし!)

 

 コハクもまた、〝番外権能〟? が目覚めようとするのを、強引に()じ伏せた。

 

 そうしてコハクは倒れた体の上半身をムクリと起こし、左胸の辺りを見た。

 

「なんや、大きな穴が出来て、左腕ごと消し飛ばされてますやんか」

 

 そう呟きながら立ち上がると、右手で左頬を触るコハク。

 

「傷? うちの顔に、傷……」

 

 長さ五センチほどの裂傷が魔素粒子を散らしながら、修復を開始、即座に傷が消え失せ、左腕と大きく(えぐ)られた左胸はそのままに――

 

 右肩をツキハに向けた斜め立ちのまま、右側の後ろ髪がパサリと音を立て前に落ち、言い様のない殺気に満ちた表情で鋭利に目を細めたコハクが、ツキハを(にら)み上げていた。

 

 

「あっ。ヤッべぇ」

 

 ツキハが警戒心も(あら)わに、尻尾の毛を盛大にブワリと逆立てそう呟いた時。

 

 

 コハクは、スーッと右腕をツキハの方に伸ばし、軽く右手を握る形で――

 

 パチンと、指を鳴らした。 

 

 

 その瞬間、不可視の凄まじい衝撃波の塊がツキハに襲いかかった。

 

 キュドンッ! 重低音を響かせながらツキハの腰から上の右半身が一瞬にして消し飛ばされた。

 

 

「へ? なに、が……」

 

 バシュウーーッと大量の空気が漏れるような音とともに、鮮血にも似た赤い魔素粒子が消し飛ばされた部分から吹き上がる。

 

 ツキハは(なん)の攻撃を受けたのかわからず、身体を左に傾かせながら(つぶ)く。

 

 

 コハクの放った技の正体は……?

 

 

 ツキハとコハクのエキシビジョンマッチも、佳境を過ぎ、終焉へと向かい始める。

 

 

 





 この作品を読んで頂き、ありがとうございます!

 次回、エキシビジョンマッチ決着、宜しくお願いします!



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