忍びが転生したら〝異世界珍道中〟になった件   作:にゃんころ缶

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 お待たせしました。189話です

 ツキハ

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 コハク

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 傭兵商会ルヴナン・真の紋章


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 ※〝打刀〟
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 ※作中使用の特殊フォントは、〝ライム酒様〟作成の特殊フォントを使用させて頂いています。 
 特殊フォントの反映には時間が掛かる場合がありますので、ご了承ください。








189話 あたし? アンタ? え?

 

 

 エキシビジョンマッチも終わり、休憩時間の間(ざわ)めく闘技場内。

 

 最後のイベント、地下迷宮(ダンジョン)のお披露目に、皆が期待に胸を膨らませる。

 

 特に各国の重鎮(じゅうちん)や貴族達は、この突如として魔国に現れたこの地下迷宮に、興味津々であった。

 

 地下迷宮(ダンジョン)といえば、大抵は古くからの地下遺跡や、大洞窟に作られた地下都市などが定番であるものの、突然発生する地下迷宮(ダンジョン)も、極稀(ごくまれ)にだが確認はされていた。

 

 まあでも、この突然発生する地下迷宮(ダンジョン)は、ほとんどが魔王ラミリスの仕業であるのは知られていない。

 

 後は、時空の(ゆが)みによる転移現象で突如として現れたものもあるが、これは、どこから来て何が干渉して起こったのかなど、一切の原因はわかってはいない。

 

 そして、この魔王ラミリスが魔国に住み着いて地下迷宮(ダンジョン)を創ったのだとは、開国祭に来ている者は夢にも思わないだろう。

 

 この件は、魔国の超重要機密事項なのだから。

 ソウエイ率いる暗部が徹底した情報操作と管理を行っているので、探る事はおろか、その真実に辿り着く事も不可能であろう。

 

 さらに言えば、ルヴナンもこれに協力しているのだ。

 

 この事を(かんが)みれば、魔国で機密情報を探るのが如何に困難か、(うかが)い知れるものである。

 

 

 そして今リムルは、そろそろ地下迷宮(ダンジョン)お披露目の時間が迫り、開放前の最後の確認を行う為に、最下層の大広間に降り立つ。

 

 そこには、エキシビジョンマッチを終えたツキハも来ていて、ヴェルドラやラミリスと談笑中であった。

 

 リムルを見つけたラミリスが飛んで来て、リムルの肩に座る。

 

「よお。もう間もなくオープンだけど、準備は万端か?」

「フフ~ンッ♪ アンタ、アタシを誰だと思ってるのさ?」

 

 ラミリスが、鼻を高くして自信満々に答えた。

 

 そしてヴェルドラも、どこか誇らしげな表情である。

 

「クアッーーーハッハッハ! 案ずるな、リムルよ。我に落ち度なし!!」

 

 ツキハもエキシビジョンマッチの凶悪さはどこにといった、いつもの気怠そうな表情で。

 

「フッフッフ。大丈夫よぉ。精神的にくる楽しい罠を、わんさか仕込んだよぉ♪」

 

 と、どこか嬉しそうに含み笑いを浮かべ言う。

 

(うっ、イカン……急激に不安になって来たぞ)

 

 リムル、三人とは別の方向で何ともいえない表情を取る。

 

「おいおい、本当に大丈夫か? 流石にお披露目で無茶をしたら駄目なんだぞ?」

「フッフフ。だいじょ~ぶ、なのさ! 任せなさい! 各種安全装置を抜かりなく作動させてあるよ」

「クックックッ。今日は、凶悪な迷宮の目覚めの日となるであろうがな!!」

「大丈夫だって。あたしの罠も即死するようなモノじゃないしぃ。精々(せいぜい)、足止めと大怪我する程度だよん。まあ、ぶっちゃけ即死級の罠もあるにはあるんだけども、迷宮では死なないんだし、いいよね? クシシシッ」

 

 顔を見合わせ、ラミリスとヴェルドラ、ツキハが邪悪に笑った。

 

(マジに、大丈夫なのか? 全然不安が解消されないんだけど……)

 

「でな、前にも言ったけど、もう一度念の為に言っておく、迷宮は()ぐに閉じるぞ?」

「な、(なに)ィ!?」

「なに驚いてるのよ、ヴェルドラ。あの時、ちゃんとリムルの話し聞いてた?」

 

(いや、まったくその通り。ほんと、その驚きはなんなんだよ。ツキハにも突っ込まれてるし)

 

 リムルは、以前から何度もこの事を説明していたのだが、ヴェルドラは聞いていなかったようだ。

 

 今日のお披露目の調子を見てから、難易度を再調整しようとリムルは考えていた。

 なので、短くとも一週間くらいは迷宮を閉じて、それから再び開放する予定だったのだ。

 

 それにまだ、迷宮への入場料金の設定も決まってはいない。

 入場許可証となる、〝迷宮カード〟や各種アイテムの販売をする受付など、教育の行き届いた職員の配置する必要がある。

 

 この職員選定はほぼ終わっており、間もなく教育を終える予定ではある。

 そしてこの受付には、シャルフューズの住人も雇われていた。

 

 冒険者といえど荒くれ者が多いのは、周知の事実。

 

 その荒くれ者共のクレームを一手に引き受けるのが、シャルフューズの傭兵住人なのだ。

 

 〝傭兵公国シャルフューズ〟、その名の通り住人全てが老若男女(ろうにゃくなんにょ)問わず現役の傭兵であり、引退した傭兵でもある。無論、子供達も傭兵の卵であり、傭兵なのだ。

 

 ひとたび〝全軍出撃〟の(めい)が出されれば、ルヴナンに所属する傭兵及びシャルフューズの現役傭兵は、皆出撃する事となる戦闘国家でもあるのだ。

 

 なので、そこらの荒くれ者どもが束になっても(かな)わない、そんな傭兵がクレーム処理に当たるのだから、無茶が通るはずもなく、大抵の者は引き下がるだろう。

 

 そして、引き下がらない者が痛い目に合うのは、言うまでもない。

 

 これは、リムルの国の迷宮に入場する冒険者などは大事な客でもあるが、ルールを無視した無茶なクレームには、一切応じないという断固としたリムルの意志の表れでもある。

 

 ちなみに、ルヴナンの傭兵というのは一切表には出さない、あくまでもただの受付として対応するだけなのだ。

 

 そういう事でこの忙しい中、そんな準備をする暇も人員に余裕がある訳もなく。

 祭りの後片付けを()えた(のち)、そうした問題をミョルマイルと相談しながら決めようとしていたのだ。

 

「まあ、ヴェルドラ、落ち着け。なるべく早くオープンするように頑張るから、楽しみはそれまで取っておいてくれ」

「うむ。お前を信じるぞ、リムルよ!」

 

 リムルにそう言われ、納得をしたヴェルドラであった。

 

(ふう、これで良し、と。今日は無事にお披露目を終えそうだ。あ、そう言えば一つ忘れてた。大事な件を聞いておかないと)

 

 リムルは何かを思い出し、ラミリスに口を開いた。

 

「そう言えば、ミリムが来なかった?」

「来たぞ」

「だね、さっき来てたよ」

「うん。〝復活の腕輪〟の回数制限をなしにしたヤツを二つ、アタシから奪って行ったわよ?」

「そうか。ところでアイツが用意した階層は、九十六階層から九十九階層までの、地形効果付きのドラゴン部屋だけだよな?」

「そだよ。めっちゃ気合入れて作ってたよ」

「その通りだ。嬉々として作っておったな」

「うんうん。ちなみに、ミリムとツキハが捕まえたドラゴンの支配権なんだけど、全部アタシに譲ってくれた!」

「まあ、あたしには眷属達がいるから、ドラゴンまではいらないもの」

「でねでね、上手く育てて竜王(ドラゴンロード)まで進化させると、ちゃんとアタシの命令を理解する知恵を付けるんだって! 凄いでしょ!!」

 

 ミリムもツキハも良いところがあるよねーと、ご機嫌なラミリスであった。

 

 ミリムとツキハが捕獲した竜を抱えて空を飛んで来る姿は、それを目撃した人々が大層驚いたものだった。

 最初の一回目と二回目は苦情が出たそうだが、三回目からは慣れてしまい、住民達も驚きもせずに、いつもの事だと割り切っていたようだ。

 

 まあそこは、ツキハや眷属達のやらかしを日常的に目撃しているので、慣れるのも早かったのもある。

 

 ミリムが捕獲したのは、火炎竜(ファイヤドラゴン)氷雪竜(アイスドラゴン)

 ツキハが捕獲したのが、烈風竜(ウインドドラゴン)地砕竜(アースドラゴン)

 

 二人合わせて、計四体の竜である。

 

 約束通り属性を持つ上位龍族(アークドラゴン)であり、今でも家畜並みの知恵はあるのだ。

 

 ペット感覚で大切に育てれば、意思の疎通も可能になるとのことだった。

 

「ふーん、それじゃあその四体にも、首輪を()めているのか?」 

「今はね。でも、アタシの可愛いシモベだから、ちゃんと主従関係を構築する予定なのよさ!」

「なるほど。お前はお前なりにちゃんと閑雅ているんだな」

「モチの、ロンよ!」

 

 腰に両手を当て、小さな胸をこれでもかというように大きく張って、自慢げに答えるラミリス。

 

「で、話を戻すけど。ミリムは、そのドラゴン部屋か?」

「そこじゃないのよさ。アタシのシモベの運動不足解消に、遊び相手を見つけたって言ってたから、今は多分、この間作った、師匠とツキハの秘密の地下闘技場、〝竜の穴〟にいるよ!」

「あれは確か、この前一緒に釣りをした小僧だったように思うが、ドラゴンで何をして遊ぶのであろうな?」

「ヴェルドラ。そこは知らない方が良いと思う」

「む、何故だ、ツキハ?」

「ミリムの遊びだもの、深く考えても仕方ないよ?」

「む、むう。確かに、そうではあるな」

 

 ヴェルドラの素朴な疑問に、ツキハがミリムの事だからと一蹴する。

 

(ツキハの言う通りだ。俺としては、ミリムの明確な居場所が知りたかっただけだし。あそこなら深層だし、間違ってもお披露目には影響ないだろうよ)

 

「わかった。なら、邪魔にはならないだろうし、問題はないな。この後直ぐに迷宮を解放するから、お前達も貴賓室に来るか?」

「うん! アタシは行くよ。こういう時の為に、コハクに作ってもらった〝認識阻害〟の術式が組み込まれた首飾りがあるからね!」

 

 小さなラミリス用の首飾りを、ドヤ顔でリムルに見せ付けるラミリス。

 

「おお、それは便利なモノを作ってもらったな。確かに、お前の存在を他国に知られるのはマズイからな。俺がそれを何とかしようと思って誘ったんだが、しかし、それいいな。俺も一つ欲しいかも」

「リムル」

「なんだ?」

 

 ラミリスがリムルの顔の前に飛んで来て、真顔である事を尋ねた。

 

「ねえ、リムル。アンタさ、ツキハとコハクから信頼は、得た?」

「んん? 信頼?」

「そうよ」

 

 そう言うとラミリスは、ツキハに視線を向けた。

 

「信用は得たね。でも、信頼は、まだだよ」

「じゃあ、これは使えないわね。これは、二人から信頼を得た者しか、効果を発揮しないのよさ」

「信用は得ても、信頼はまだか……。まあ、まだそんなに付き合いも長くないし、気長に頑張って信頼を勝ち取るしかないか」

 

 使えない理由を聞いたリムルは落胆しつつも、信頼を得るようやるしかないと気持ちを切り替えた。

 

 信用と信頼は別モノ、ツキハとコハクから信頼を得れば、ツキハの権能『猫騙し』の恩恵を、コハクの術式から三分の一ほど受けれるのだ。

 

 三分の一の効力でも、十分に相手の認識を阻害出来るので、お忍びや潜伏には重宝するのだ。

 

 ちなみに、エルメシア皇帝もコハクの術式が組み込まれた、豪華なブレスレットを一つ持っている。

 

 そして、そんな会話が終わったのを確認したヴェルドラが口を開く。

 

「我は遠慮しておこう。ここで挑戦者を待つのも、迷宮の王の役目ゆえに!」

 

(……いや、だからさ、今日はこんな最下層まで来るわけないって。話聞いてたのか、オッサンは!?)

 

 やはりどこかリムルの話を聞いてはいない、ヴェルドラだった。

 

 するとそこへ。

 

「あ、ならあたしも、ヴェルドラとここに残るわ」

 

 ツキハがそうリムルに言ったが、しかし。

 

「え? コハクが貴賓室でお前を待っているけど、どうすんだよ?」

「リムルが言っておいて、あたしはヴェルドラと迷宮にいるからと、ね♪」

「嫌だよ、そんな恐ろしい伝言を伝えるのは」

「なんで!?」

 

 リムルがツキハのお願いを、即拒否った。

 

 流石のリムルも、これを伝えた瞬間のコハクの怒りのトバッチリを受けるのは、勘弁なのである。

 

「いいじゃん! 一言、来ないって伝えるだけだよ!? ケチ!!」

「ケチって、お前なぁ。ともかく、自分でそう伝えてくれ。お前らの痴話喧嘩に巻き込まれるのは、真っ平ごめんなんだよ」

「痴話とはなんだ! 怒るよ、リムル? 大体ね、コハクとはそんな関係じゃねえし!! あ・た・し・が、愛しているのは、わかってる? ヴェルドラだけよ!!! まったくもう、じゃあラミリス――」

「――いやよ」

「はあッ!? くそおおおおおっ、どいつもこいつも、そんなにあたしを、コハクとくっつけたいのかあッ!!」

「誰もそんなこと言ってねえし」

「右に同じ」

「アンタらなあ、むきいぃ―ッ」

 

 ラミリスにも拒否られ、荒れるツキハ。

 

 しかし、コハクに自分が伝えると、下手をすればここに来かねない、いや絶対来るだろう。

 

 それだけは何としても阻止したいツキハは、頭を抱え、下を向きブツブツと呟き始め。

 やおら顔を上げると、ポンと手を叩き、バババッと一瞬で印を七つ切ると。

 

 言霊(ことだま)がツキハの眼前に浮かび上がる。

 

 つきかげ

 (月影)

 

幻遁(げんとん)、影分身・月影」

 

 術名が告げられると、ツキハの前に蒼白い魔素粒子が渦を巻き、あっという間に人の姿を形どり、最後に頭の上に猫耳と、お尻の仙骨(せんこつ)がある辺りから尻尾が生えて来た。

 

 そう、ツキハが創り出した分身体は、並列存在である、影分身だったのだ。

 

「ほ。それがこの間の分身体なのか。凄いな、それ」

「へえー。ツキハ、それ完全に使えるようになったんだ」

「ふむ。以前より、思考分割の精度が向上しておるな」

 

 ツキハの影分身を見て、リムルが感嘆の声を上げ、ラミリスとヴェルドラは、以前から知っていたというような声を上げた。

 

 そして、ツキハは――

 

「じゃあ、アンタは、コハクのところへ、よろしくね♪」

「へ? なんで?」

「ああ? 分身体が口答えしない。いいから、さっさと、行く」

「いやよ。あたしもヴェルドラのところがいい。ド変態はお断り」

「あ゛? あたしを怒らせ――」

「いやいや、あたしは、あたしだし。そもそも、あんたもあたし。あたしもあんただし。そこに、優劣関係はない。そこのところ、わかってる?」

「はあ? 優劣関係だとお? あたしのくせに、なに小難しいこと言ってんだあ!」

「思考分割したのだから、どちらもあたしであり、並列存在と化したあたしは、あたしが同時に二人存在するという事なんだけど?」

「ほえ? あたしがあたし、同時にあたし? いや、そうなんだけどぉ、本物はぁ、あたし? アンタ? え? どっち? うやああ!?」

 

 何故か創り出した、影分身であるもう一人の自分に、言い負かされるツキハ。

 

 そんなやり取りを見てたラミリスが、ポツリと呟く。

 

「相変わらず不器用というかさ、間が抜けてるというか、賢い部分だけをあっちのツキハに持っていかれたんじゃないの?」

 

 と、若干呆れ顔で言い放った。

 

 それを聞いたリムルとヴェルドラは。

 

「ああ、確かに。言い得て妙だけども、そうなるよな」

「うむ。やはりツキハは、どこかでやらかすのだな」

 

 と、同じくジト目で言い放つ。

 

 しかし、ツキハとツキハの口喧嘩は次第に過激さを増し、とうとう実力行使に出ようとしたその時。

 

「「テメエ、ぶっ殺す!」」

「ちょっと待て」

「「あ゛?」」

「あ゛じゃねえよ! お前ら二人がここで暴れたら、せっかくの迷宮お披露目がご破算になるぞ!!」

「「あ!? ……それは、マズイ」」

「いいから落ち着けって。まったくお前と来たら、冷静なのか、超短気なのか、バカなのか、よくわからんわ。まったくもう、本当に大事なお披露目の日なんだから、そこ優先! 争いは、キ・ン・シ!! じゃないと、ペナルティを科して、ルヴナンに違約金を請求、す・る・ぞ?」

「「あう、それはやめて。コハクから、エロエロの刑が科せられるから、ほんとごめんて。もう、喧嘩しないから……」」

 

 リムルの説教に謝罪を入れて大人しくなる、ツキハとツキハ。

 

「お前達、というか、二人? まあどっちでもいいか。勝負を付けるなら、ジャンケンにしろよ。それなら、いいだろ?」

「「うん、わかった」」

 

 リムルの提案に素直に従う、ツキハとツキハであった。

 

「「さいしょは、グー」」

「「ジャーン、ケーン、ポンッ!」」

 

 お互いに、パーで、あいこ。

 

「「ポンッ!」」

 

 お互いに、グー、あいこ。

 

 ポンッ!

 

 ポンッ!

 

 ポンッ!

 

 

 ポー―――ンッ!

 

 お互いに、チョキ。

 

 二人とも、出す手出す手が常に同じで、あいこの繰り返し。

 

「ねえ、リムル、これってさ」

「リムルよ、これは」

「ああ。同じ思考だから、永遠に勝負付かないよな」

 

 ラミリスとヴェルドラの指摘にリムルは、単純なミスを犯した事に気付く。

 

 そして、とりあえず二人に待ったをかけた。

 

「ああ、二人ともちょっと、待っただ」

「「ほえ?」」

 

(う。同じ顔が同じように首を(かし)げる姿は、ちょっと……うくっ、いかん、笑ってはいか……って、くはっ)

 

 リムルは、ツキハがいつもやる仕草が二人同時なのについ笑いが漏れ、それを必死に押し殺す。

 

「あー、ジャンケンはやめよう」

「「うん?」」

「でだ、ちょっと待ってろ、すぐに……」

 

 そう言うとリムルは『胃袋』内で急遽、サイコロを二つ作り出し、それを自分の手の中に取り出した。

 

「「サイコロ?」」

 

 それ見たツキハとツキハが、(いぶか)()に言う。

 

「そう。この二つのサイコロを振って、出した目の合計が多い方が勝ち。どうだ?」

「「うん。それでいいよ」」

 

 素直にそれに応じたツキハとツキハにリムルは。

 

「じゃあ、先に振るのはお前、影分身を創り出したツキハ壱。そして、次は影分身のツキハ弐だ。番号を振ってすまないが、いいか?」

「「別にかまわないよ」」

 

 そう言いリムルは、影分身を創り出したツキハ壱にサイコロを渡した。

 

「ああ、言っておくけど、能力(スキル)等を使うのは禁止な。もし、使用した形跡を感知したら、その時点で失格、負け確定だから。いいか?」

「「あいよ」」

 

 即席ルールも承諾したツキハ壱とツキハ弐。

 

 そして、ツキハ壱は地面に腰を下ろすと、サイコロ二つを両手で握りしめ頭上に(かが)げて。

 

「うにゃああああああ! あたしの運よおおおおおおおっ!! あたしを勝たせたまえええええッ!!! ほにゃあーーーーーっ!!!!」

 

 凄まじい気合の入った声でサイコロを、地面に投げ放った。

 

 カチン カラカラカラ カラカラ カラッ カラ

 

 ……

 

 出た目は、三と、六の、合計九。

 

「よっしゃああああああっ!!」

 

 勝ちを確信したツキハ壱。

 

 

「……」

 

 それを冷ややかな目で見る、ツキハ弐。

 

 そして、右手でサイコロを二つ握ると、パッと投げ捨てるように地面に投げた。

 

 カララッララ カラララ カラ カラッ カラ

 

 ……

 

 出た目は……

 

 

 五と。

 

 

 五。

 

 

 ゾロ目の、合計、十。

 

 

「ふあああッ!?」

 

 声が裏返るツキハ壱。

 

「フッ」

 

 勝ったと、静かな笑みを浮かべるツキハ弐。

 

 

「はい、ツキハ弐の勝ちね。ツキハ壱は、俺とラミリスと一緒に貴賓室な」

「なんでだああああああッ!? 勝負のやり直しを要求するーーーーッ!!」

「往生際が悪いよ、ツキハ壱さん。いいのかな? ペ――」

「――あい。エロ猫の、生贄となります」

「いや、そこまでじゃないだろう。もう、お披露目の時間だ。急ぐぞ」

「あい……」

 

 策士策に溺れるとは、この事。

 

 下手に影分身を出した事により墓穴を掘った、ツキハ壱。

 

 

 そして、ツキハ弐は、満面の笑みでヴェルドラの腕を両手で抱えるように掴むと、ツキハ壱に向かって、薄い笑みを向けた。

 

「くそがあああああああっ! ぶっ殺してやるうううううッ!!」

「はいはい。わかったから、行くぞ、ツキハ壱」

「……あい」

 

 怒りの咆哮を上げるも、あっさりリムルからスルーされ、しょぼんとした返事を返すツキハ壱。

 

「あれよねえ。自分と喧嘩するなんて、ほんとお間抜けさんなのよさ、ツキハったら。ウフフッ」

 

 リムルの肩の上に座っているラミリスが、口に手を当てクスクスと笑い出す。

 

「ちっさいのは黙ろうね」

「なんですとおー! 四十八の必殺技をお見舞いするわよ!!」

 

 ツキハ壱の前に飛んで行き、飛び蹴りを入れるラミリス。

 それを首だけ(かし)げて、ヒョイヒョイと(かわ)すツキハ壱。

 

(ん~、ツキハ壱は気付いてないのか? 影分身を解除すればいいだけなんだけど、な。ま、あれだ、ヴェルドラの(そば)にいたいという思いが、それを気付かせなかったのかと、いうところだろうか。どっちにしろ、ほんと、悪のくせに面白いヤツだよなぁ。クククッ)

 

 リムルは、ラミリスとギャアギャア騒ぐツキハ壱を見て、内心面白いヤツだと笑いを漏らす。

 

 

 こうしてツキハ壱は(くや)しくも、貴賓室に向かう事になったのである。

 

 

 リムルはラミリスとツキハ壱を伴い、貴賓室へと『転移』したのだった。

 

 

 

 

 

 





 今回もこの作品を読んで頂き、ありがとうございます!

 次回の更新も、よろしくお願いします!



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