忍びが転生したら〝異世界珍道中〟になった件   作:にゃんころ缶

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 お待たせしました。190話です

 ツキハ

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 コハク

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 傭兵商会ルヴナン・真の紋章


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 ※〝打刀〟
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190話 地下迷宮のお披露目・攻略前編

 

 

 短い休憩も終わり、大勢の人々が観客席に戻って来た。

 

 眷属達はエキシビジョンマッチの終わりと共に、どこかへと散って行った。

 サンコはルヴナン敷地にあるキャットタワーのペントハウスの自分の部屋で、ふて寝中である。

 

 

 そして、その直前にリムルとラミリスにツキハ壱も、貴賓室に潜り込む。

 

 

「お帰りなさいませ、リムル様」 

 

 と、ディアブロが笑顔で出迎える。

 

 審判役と見届け役が終わったので、貴賓室に来ていたディアブロ。

 

 

 リムルの右隣り席から少し離れたところに、コハクがいた。

 

 (なに)やら、三人の貴族から傭兵契約の懇願をされていて、「それなら、〝支店〟の方へ来なはれ」と、微笑みながらあしらっていた。

 

 支店は本店へと移行したのだが、便宜上、本店という事を隠したまま支点と名乗っていたのだ。

 

 そこへツキハの姿を確認したコハクは、「ほな、またな」とバッサリ切り捨て、手ではよ行けとというように促し、三人の貴族は渋々(しぶしぶ)コハクから離れていった。

 

 

「ツキハ。はよ、ここに座りなはれ♪」

 

 コハクは何故か二人座り様の長椅子に座っていて、自分の左側を左手でポンポンと叩く。

 

「ええ……なんで二人座りなのよ。あんまり顔に傷をつけたつけた(うるさ)いから、一緒に迷宮のお披露目を見る事にしたけども、そんな椅子は許可した覚えは、ないけど?」

「なに()うてますねん。そんなん最初に言いなはれ。それに――」

 

 スーッとコハクの目が細められると。

 

「なーに、アレを使ってますねん。どうせ、ヴェルドラとイチャイチャしたいから、アレ使ったんやろ? しかも、もう一人のアレに、どっちがここに来るかの勝負で負けて、あんさんがここに来た、と。ふふ♪」

「うっ、うっさいわね。来たからいいじゃん。なんでわかったのよ、まったく、ゴニョゴニヨ」

「うちは、あんさんの事なら、何でもお見通しやで。ふふふっ」

 

 コハクに影分身の事を言われ、不貞腐(ふてくさ)れるように左端に座り、尻尾を動かし長椅子の真ん中に置いて仕切りを作ったツキハ。

 

「ここから近づいたら、はっ倒すかんね。いい?」 

「はいはい。わかってますえ」

 

 コハクはそう言うと、自分の尻尾をツキハの尻尾にふわりと重ね置く。

 

 一瞬ツキハが目を吊り上げるも、コハクが小声で「これ以上はせえへんから、安心しよし♪」と、妖艶な笑みをツキハに向けて言う。

 

 それを見ていたリムルは、「まったく、仲がいいんだか、悪いんだかわからないなあの二人は」と呟き、軽い苦笑いを浮かべた。

 

 

 そうしてる内に、お披露目の時間がやって来た。

 

 

 今から行う地下迷宮(ダンジョン)のお披露目には、様々な思いが思惑が込められていた。

 

 今後の国家事業の(かなめ)の一つとなる目玉企画なので、出来るだけ多くの来賓の方々に見て欲しいと願っていたリムル。

 

 幸いにも、短い休憩を終えてもそのまま帰った者はいなかったようだ。

 

 貴賓室もほぼ満室に近く、これで来賓には十分に宣伝出来るというものである。

 

 リムルが会場に目を向けると、そこに立つのは、ソーカとミョルマイル。

 

 ミョルマイルはディアブロと交代して、案内役としてアナウンスする事になっていたのだ。

 

 

 時間が来た、リムルが二人に合図を送る。

 

 

『さあ、時間となりました! それでは、あの悪辣非道な番外魔王()二人の戦いの熱も冷めやらぬではありましょうが、開国祭三日目の、最後の催しをご紹介します!』

 

 ソーカが高らかに、地下迷宮(ダンジョン)のお披露目を宣言する。

 

 そして次に。

 

『御来賓の皆様方、大変お待たせしました。これより一部お見せするのは、この魔国連邦(テンペスト)が誇る難攻不落の地下迷宮(ダンジョン)で御座います。魔王リムル陛下が冒険者達へ開放する、最難関。さてさて、これを突破出来る猛者は現れるのでしょうか――ッ!?』

 

 ミョルマイルが舞台中央にて、魔力式マイクを片手に説明を始めた。

 ソーカと違い、多少のぎこちなさがあるが、それでも商人をしているだけあって、それなりに様になっていた。

 

 説明の内容とは――

 

 リムルは、最初は普通に見学会をしようと考えていたのだが、大勢の人間を案内するには、地下迷宮は危険すぎる場所であった。

 

 王侯貴族だけでも数百名、付近の住民や冒険者に商人を含めれば、数千人を超える規模になる。

 

 そこで考えたのが、複数パーティによる攻略状況を、闘技場内に設置された四枚の魔力式巨大スクリーンに投影して公開するという手法に出たのだ。

 

 これは、武闘大会やエキシビジョンマッチの戦いでも、ハッキリと迫力ある観戦が出来たので、問題はなかったのだ。

 

 今回、スクリーンに映像を映し出す映写機であるが、地下迷宮攻略の状況を映し出すのは、ガビルとベスタ―が、リムルと教授が作ったモノを改良した魔力式映像水晶球を、もっと簡略化したものだった。

 

 リムルと教授が共同で作った映像システムは若干コストが高過ぎて、おいそれと量産は出来かねないものだったのだ。

 

 それでリムルがガビルとベスターに、改良版の作成を依頼していたのである。

 

 ちなみに、教授が組んだ魔力式投影プログラム術式は、この世界で一般的に使われる魔法通信の応用で、記録水晶球に取り込んだ音声と映像を魔法通信に変換するという技法を取っていた。

 

 要は、教授が元いた世界のテレビの電波信号を疑似的に作り出し、魔法通信というものに組み込んだ魔力式映像通信ともいえるものなのだ。

 

 これにより、往来の記録からリアルタイム映像を中継する事が出来るようになったのである。 

 

 で、その改良版が、地下迷宮の実況映像に使用される事となったのだ。

 

 今回、各迷宮の要所にはその改良版刻印型映像投射水晶球を組み込んだ、魔力式映像器が設置されていて、余すことなく攻略状況を実況出来るようになっていた。

 

 そう、観客達は安全な場所から、危険な地下迷宮の攻略を観戦出来るのである。

 

 この画期的な魔導技術革新は、この世界に様々な影響をもたらす事になるだろう。

 

 良いにしろ悪いにしろ、これの用途はこの世界の有り様を一変させるかも、知れない……。

 

 

 そして、次なる事がアナウンスされる。

 

『では早速、挑戦者を募集したいと思います! 我が国が誇る地下迷宮を攻略してみようという、勇敢な者はいませんでしょうか?』

 

 楽しそうにソーカが声を張り上げ、挑戦者を募った。

 

 その声を合図に、リムルも行動を開始する。

 

 エキシビジョンマッチで傷つき表面がひび割れ(えぐ)られた舞台床。

 

 (さい)の目状に並べ結合していた床なので、リムルがさっと手を振ると、『胃袋』から転送した新しい舞台用の硬岩を一瞬で交換した。

 

 それを見た観客達は、驚きの声を「「「「「おおー」」」」」と上げる。

 

 (なお)、『胃袋』に回収した硬岩は修復再利用する模様。

 

 更にリムルの肩に乗ったラミリスが、舞台の中央に迷宮への仮の扉を召喚して見せ。

 

「「「「「おおおっーーーーッ!!」」」」」

 

 先ほどより大きな歓声が沸き起こる。

 と同時に、観客達に静かな興奮が伝わっていった。

 

 見学していた冒険者達が、互いの様子を探り合っていたのだ。 

 

 最悪、希望者がいなくても、マサユキ達がいる。

 マサユキとは交渉で、この地下迷宮のお披露目の時に、出てもらう事になっていたのだ。

 

 とりあえず、失敗しないように五階層までの地図も渡していたのである。

 

(さてさて、挑戦者は現れるだろうか?)

 

 リムルがそんな事を考えていると。

 

「へへっ、魔王の迷宮かなんか知らんが、俺達がそのメッキを剥がしてやるぜ! 武闘大会などと大袈裟な出来レースに、番外魔王同士などの茶番を見せ付けやがって。俺達を(だま)して威圧しようたって、そうはいかねーぞ!」

「おうよ! バッソンさんの言う通りだぜ!」

「道が混んでなきゃ、バッソンさんが大会で優勝したに決まってらあ!!」

「フフフ、この俺の事も忘れてもらっちゃ困るぜ?」

「そう言うなや、ゴメス。お前の強さは、コイツ()も認めてるさ。俺とお前が組んでる限り、俺達のパーティ〝豪雷〟は敵ナシなんだからよ! 番外魔王のルヴナンなど、目じゃねえ!!」

 

 このバッソンという男、屈強な筋肉を持つ大柄な体格で、頭はスキンヘッドにもみあげから繋がる顎髭(あごひげ)、上半身裸に皮の(よろい)(じか)に着用していた。武器は、ブロードソードに円形の盾を持っていた。

 

 そしても一人の男ゴメスは、長身で髪は無造作に肩上まで伸ばし、杖を持ち、黒の魔導士のローブを着ていた。

 

(ん? 何か挑戦者が現れたっぽい? ふーむ。時間に遅れて武闘大会に出れなかったのか。しかしなぁ、番外魔王と傭兵商会ルヴナンを軽く見てると、何が起こっても知らんよ? まあそこは自己責任でどうぞという、感じだけども)

 

「勇者マサユキってのも、存外大した事なかったな? 実力は認めるが、敵にはキッチリ(とど)めを刺さなきゃよ。この国の魔王を討伐するのに猶予を設けるなんざ、甘過ぎて反吐(へど)が出るぜ!」

 

(あ、うん。マサユキの実力は認めちゃうんだ……)

 

「この迷宮という虚仮威(こけおど)しも、バッソンとこの俺が、その正体を見破ってやるさ!」

 

 と、息巻き豪語するバッソン一行。

 

(おい。流石に、それ以上言うと――)

 

「リムル様への無礼の数々、許せません」

「私が行って、軽く黙らせて――」

()めろ!」

 

(ほらな、こうなる。油断も隙もない、この二人)

 

 シオンが見る見るうちに不機嫌になり、ディアブロが暴走しかけ、それを慌てて止めるリムル。

 

 リムルがチラリとツキハ壱とコハクの方を見ると、クスクスとこちらを見て笑っていた。

 

(うっ、なんかバツが悪い……。しかし、ん~、何故かあの二人の眷属が大人しい、解せぬ)

 

 そう(いぶか)しく思うリムルであった、が。

 

 それもそのはず、賭けが終わりロロロオ達は、さっさと酒場やどこかに遊びに散っていた。

 賭けに参加した者達はこの時の為に、警備シフトを最終日に合わせて休暇を取っていたのだ。

 で、サンコは、絶賛ふて寝中である。

 

 スキンヘッドの戦士、バッソン。

 黒ローブの魔術師、ゴメス。

 その他、小者が四。

 

 この六名から成る〝豪雷〟が、最初の挑戦者と決まった。

 

 

 続いて、なんと予想外の者達が。

 

「私達も挑戦しますぅ!!」

 

 そう叫んで、三人組が飛び出して来た。

 

 

(んんん? どこかで聞いた声が、って、エレン達じゃん、よ!?) 

 

 

 エレン達三人組は、リムルの要請でヨウムの建国を手伝っていたのだ。

 

 旧ファルムスの自由組合を回って、ヨウムに協力していたのである。

 

 エレン達はBランク冒険者でもかなりの権威があった。

 現在は、B⁺ランクに昇格していたのだ。

 

 

(ヨウムと一緒に帰って来なかったから、どうしたんだろうとは思っていたけど。こんな事を企んでいたとはねえ。あれだな、エラルド公爵の反対を阻止する為に、秘密裏に行動していたんだろうよ)

 

 

「本当にやるんでやすか?」

「当たり前じゃない。やるに決まってるのよぉ。ここ最近、全然冒険していなかったし、この時を待っていたのよぉ!」

「えーと、一応聞きたいんだけど、リーダーの俺に決定権って、あるんかな? あるんだよね? あるよね?」

「もちろん、ないわよそんなの。これはね、決定なのよぉ!!」

 

(あらら、無茶苦茶だな。カバルがちょっと可哀想になるわ)

 

 リムル、エレンの暴君発言に、カバルとギドに同情する。

 

 そして、隣の貴賓室からは、エラルド公爵の絶叫するような声が響き、直後、スパーンという音の後に静かになった。

 

 リムルは何が起きたか想像出来たが、()めておく。

 意識を取り戻したエラルド公爵がまた騒ぎ出す前に、エレン達の出番が終わってればいいなと、願うリムルであった。 

 

 

 次に、エレン達の後に登場したのがマサユキである。

 

 悠然と舞台に進み出て、観客達に笑顔を振りまいていた。

 

『マ~サッユキ、マ~~サッユキーーーーッ!!』

 

(おおう。もういいよ、もうわかったから)

 

 と、リムルが内心でボヤクほどの人気である。

 

(ほんと、相変わらずの人気者だね、マサユキは)

 

 マサユキはマサユキ含めた四人パーティ。

 

 あまりにも防御に乏しい半裸族のジンライは、リムルがプレゼントした(よろい)を装備していた。

 

 ガルム作、魔銀全身鎧(ミスリルアーマー)

 これは、希少級(レア)に相当する一品である。

 

 そしてマサユキには、細剣(レイピア)をプレゼントしていたのだった。

 

 これは、リムルが何気(なにげ)に何故どの試合も剣を抜かなかったのと聞いたところ、マサユキはポロッと「だって、重いし、両刃で手を切りそうだし……」と抜かしたのだ。

 

 まあこれは、いくら剣道を(たしな)んでいたとしても、竹刀と実剣では明らかに重さが違う。

 

 それにブロードソードにしろ、大剣にしろ、その(たぐい)の剣は叩き斬る、もしくは叩き潰すといったものが主流であり、日本刀のように純粋に斬るのが主流ではない。

 

 これに関しては、斬るという目的の為にこの世界にも曲刀や短剣、片刃の剣があるが、運用技法は日本刀のそれとは全く違うのである。

 

 それでリムルは、突くなり斬るなり、どちらにも対応出来、尚且(なおか)つ軽めの剣である細剣(レイピア)を選びプレゼントしたのだった。

 

 これなら、片手でも扱えるので、ポーズを決める時や鼓舞する時に抜き構えるのに問題なく扱えるだろうとの、リムルなりの配慮であったのだ。

 

(まあマサユキ達は大丈夫だろう。せいぜい宣伝を頑張ってもらうとしよう)

 

 これで三組。

 

 リムルは、内心少々少ない気もするがと思うも、胡散臭(うさんくさ)い魔王の迷宮ともなると、二の足を踏む者もいるのも仕方ないなと思う。

 

 しかし、今日の宣伝でそうした者達の不安を払拭(ふっしょく)すればいいと考えた。

 

 では、そろそろと、リムルが思ったその時――

 

「待て。俺も参加してやろう」

 

 そう言って、黒尽くめの男が舞台へと姿を見せる。

 

 〝流麗なる剣闘士〟であった。

 

(はい? 何しに来たんだ、アイツ)

 

 リムルがそう思う矢先。

 

「くだらんハッタリとトリックで、よくも狡猾(こうかつ)に罠に嵌めてくれたな? クックックッ、魔王配下の〝四天王〟とやらも、汚い真似(まね)をするものよ。この俺の実力を恐れるのは理解出来るが、甘かったな。貴様が何を企てようと、この俺がその野望を打ち砕いてくれるわ!」

 

 と、ジト目のリムルが思う事を説明するガイ。

 

(そうか。ランガに速攻で倒されたのだと理解出来ず、何か罠に()められたと思っていたのか。さもありなん、魔王の迷宮だから俺が何か企んだと考えたのね。まあ盛大に勘違いしてるみたいだけど、まあせいぜい迷宮攻略を盛り上げてくれとしか、思わないな)

 

 やれやれとそんな事を思うリムル。

 

 そこへまたも。

 

「クフッ。今度こそ、サクッと――」

「うむ。行け、ディアブロ!」

「行かなくていい。そしてシオン、俺の声色を真似るんじゃない!」

 

(はぁ~っ。コイツ等って……ほんと、何でこうなんだろう? 俺に対して何か言う相手には、容赦しないんだよなぁ。ある意味、あの二人の眷属に通じるものがあるわ。眷属は(あるじ)に暴言かますくせに、他者がそれを言うと、いきなり()りに行こうとするくらい過激だもの。なんなんだろうね、あの思考って、さ。シオンなんて段々芸が細かくなってきているし、ちょっと真面目に対策を考えるべきだろうか……? でもまあ、今はいいや。ガイはソロで挑戦か。これは、ソロで迷宮に潜るとどうなるか、良いサンプルが手に入りそうだ)

 

 リムルの思いも裏腹に。

 

 こうして、四番目の挑戦者として、ガイも参戦したのであった。

 

 

 





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