忍びが転生したら〝異世界珍道中〟になった件   作:にゃんころ缶

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 お待たせしました。197話です

 ツキハ

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 コハク

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 傭兵商会ルヴナン・真の紋章


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 ※〝打刀〟
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197話 反省会はまだまだ続く

 

 

 エルメシアが口を挟んで来た意図とは――

 

「なるほどねえ。そういう発明品が他にもあるのなら、私が買い取るわよお? 貴方達のいた世界では、確か〝特許〟って言うんだっけ? 権利に対する代価を支払うから、優先的に利用出来るようにして欲しいわねえ」

 

 この時、エルメシアが口にした〝特許〟と言う言葉。

 

 そう、これは教授から教えてもらった言葉であり、エルメシアも教授の事を知る数少ない一人でもあったのだ。

 

「あ、それじゃあエルちゃん。トイレやお風呂なんかも、この国の仕組みを導入して欲しいかもぉ!」

「わかったわ、エレンちゃん。吉田氏との交渉も上手くいったし、これからはもっと、私の館に遊びに来てよねえ」

「勿論よお!」

 

 リムルが返事をする間もなく、エレンが話に割り込んで来て色々と注文を付け始めた。

 

(ああ、ええと、何か嬉しそうに応じるエルメシア殿に、並んで座るエレンを見ていると、仲の良い姉妹にしか見えないな。というかさ、エレンも仮にも血縁者と言っても、皇帝相手にフリーダム過ぎないか? あ、いや、ツキハなんかとは素で言い合いなんかをしてたなエルメシア殿……もしかして、皇帝の方がフリーダムだったりして?) 

 

 今更ともいえる感想を思い浮かべるリムル。

 

 そんなエレンを、父親であるエラルドの方が血相を変えて、「ちょっと、エレンちゃん!?」と叫び大慌てしていた。

 

「へ、陛下! 我が娘ではありますが、エレンを甘やかさないで下さいませ! そしてエレンちゃん、皇帝陛下に対して、〝エルちゃん〟とか呼んじゃ駄目ですっ!!」

「もう、うるさいわねえ、エラルドは」

「ホント、パパっていつも大袈裟なのよねぇ」

 

(うっ、この二人も混ぜると危険なのか……。何で、何でだろう、俺の周りの女性って、混ぜたら危険な人多くないかあッ!?)

 

 リムル、心の叫び炸裂。

 

(あ、二人でハイタッチしてる。身分の差なんて感じさせない、あれは、本当に仲良しなんだ)

 

 西側諸国の王侯貴族でさえ、会おうと思っても叶わぬ人物――

 それが、エルメシア・エルリュ・サリオンだったハズなのだが……とてもそうは見えない光景だった。

 

 エルメシアの後ろに控える皇帝の守護騎士達も、その様子を見て驚いていた。

 

 ちなみに、黒の守護者(ブラック・ガーディアン)もいたが、フードを目深(まぶか)に被りながらも、フードが微かに揺れていた。恐らく、声を押し殺して笑っていたのだろう。

 

(アレ、今日はどっちがツキハ壱なのかな? 俺の見立てでは、多分今こちらにいるのが、ツキハ壱かな。何かこの間の鬱憤(うっぷん)を晴らすが如く、黒の守護者(ブラック・ガーディアン)をチラ見して。してやったりという笑みを浮かべていたものなぁ)

 

 今日はどちらがツキハ壱かと思い、リムルの予測では、今ヴェルドラの隣に座っているのがツキハ壱だと考えた。そう、今日は丁半博打で、ツキハ壱が勝ったのであった。

 

魔法師団(メイガス)の諸君! 今、君達が目にした事は、国家機密に相当する。絶対に他言無用にしてくれたまえ!! 後、黒の守護者(ブラック・ガーディアン)の二人。笑うのを()めよ!!」

 

 そうフォローするエラルドだったが、その効果の程は定かではない。

 

 しかしエルメシアは、そんなエラルドを気にする事もなく、自由気侭(きまま)に発言してくる。

 

「という訳だからあ。私達の国にも技術者を派遣して欲しいのよお。で、これは勿論、正式な要請なので技術指導料はお支払いするわあ」

「つまり、労働力はそちらで手配するって事なのか?」

「そおねえ。そうしたいけど、核心技術の流失を防ぎたいなら、必要な器材なんかは完成品を輸入する形でも問題はないわね」

「ふむ、なるほど。だとすると、我が国で製造した部品を輸送する必要があるんだよなあ。う~む」

 

 エルメシアの要望に応えるには、様々な条件をクリアしなければならなかった。

 

(そうだなあ。台所・浴室・便所といった水回りの配管は、カイジン達ドワーフの技術で加工したものだし。それをサリオンの技術者が再現出来るのかどうかは不明だし……。流石に教授の能力(スキル)をって訳には、いかないしなぁ)

 

 腕を組み頭を捻りながら、内心で考えるリムル。

 

(となると、こちらで製造した備品を、サリオンまで輸送するのが手っ取り早い、か。ガットエランテに依頼して輸送を引き受けてもらうか……いやいや、物量的に問題が――)

 

 リムルが思案に(ふけ)っていると。

 

「どうせならあ、あの列車というものを我がサリオンまで通して欲しいわねえ。お金なら私が提供するから、早急に開発をお願いしたいのだけどお」

 

 リムルの考えを読み取ったように、エルメシアが言う。

 

(え? ガゼルは読心系の能力(スキル)所持者だったけど、まさかエルメシア殿もなのか? まあ、今はそれは置いといて。この提案は、考慮に値する)

 

 エルメシアの提案にリムルは。

 

「列車の開発なんだけど、本体の開発がまだまだなんだよね」

 

 本音をぶっちゃけると、一瞬エルメシアが不思議そうな顔をするが直ぐにそれを察し、意味深な笑みをリムルに見せた。

 

(はい? 何、その、笑みは……ちょっと、怖い)

 

 そう、列車の開発には、教授は関わってはいない。

 

 リムルは、列車の開発は自分で、教授には自分とは違うモノの開発を依頼していたからだ。

 

 それが、リムルが開発に携わる精霊工学を用いた蒸気機関であり、魔素によって駆動する動力機関の開発を担当するのが教授であった。

 

 これは、役割分担ではあるが、二人で開発した方が早く完成するのはわかっている。

 しかしリムルは、自分が考案し計画したこの〝魔導列車〟を、魔国連邦(テンペスト)の一大事業と捉えている。

 

 なので、教授をそこまで関わらせる事は考えてはいない。

 

 但し、開発に行き詰った時などは、軽い助言を求めていたりもする。

 

 要は、魔国連邦(テンペスト)側と、傭兵商会ルヴナンとの間の線引きをしていたのだ、リムルは。

 

 教授が開発している魔導ジェネレーターは、リムルからの正式な依頼となっている。

 また、この開発成果はルヴナンへも還元される契約になっていた。

 

 傭兵、それ以外にも様々な取引や契約をしてはいるが、なあなあにはしないと、いう事である。

 

 だがもし、この開発に関わらせるとしたら、正式に傭兵商会ルヴナンと教授の技術者としての派遣契約を結ばねばならなくなる。それが万が一西側諸国に露呈すれば今は非常にまずい時期なので、そこを考慮しての事でもあったのだ。

 

 そこを、一瞬で見抜き察したエルメシアの恐ろしさがわかった一面であった。

 ちなみに、リムル個人の契約や魔国の根源に関わる事業などは、エルメシアは知らないし、二人からも聞かされてはいない。

 

 いくら最上級顧客としても、教えられない契約がある以上、ルヴナンはそれを遵守するからだ。

 

 (ただ)し、契約主がルヴナンを裏切ったり、契約以上に利用したりすれば、それは意味を成さなくなる。

 

 

「だからさ、そちらの魔導科学とやらの専門家が協力してくれるなら助かる」

「勿論よう! エラルド――?」

「ハハッ! 手配いたします」

 

 エルメシアに忠実なエラルド。

 

 それを見たガゼルは、大貴族と言うより便利な小間使いだなという感じを受け、そんなエラルドに憐憫(れんびん)な眼差しを送る。

 

 ガゼルも、エルメシアには頭が上がらない。

 だから、エラルドを見て思うところがあったのだろう。

 

 こうして魔導王朝サリオンは、皇帝であるエルメシアその人が協力に俄然(がぜん)乗り気になったのである。

 

 技術協定を結び、本格的な共同開発が始まるのも時間の問題であろう。

 

 サリオンの誇る魔導科学と、ドワルゴンが培った精霊工学。

 それが夢でなく、正式にこの地で結び付くのである。

 

 そして、行く未来には、その技術発展の中心に、教授がいるんだろうなとリムルは考えた。

 今は無理だが、教授が望む望まないとしても、それは訪れる事になるかも知れない……。

 

「頼もしいですよ、エルメシア殿。これで開発にも弾みがつくので、〝魔導列車〟も直ぐに実用化出来るでしょう」

「ほう? あれは〝魔導列車〟とういうのか?」

「ああ。精霊を利用した動力炉で、〝精霊魔導核〟を搭載し、それを適切に制御する魔法術式(システム)を魔導科学で構築する。完璧だろ?」

「フッ、簡単に言うものよ」

 

 ガゼルが楽天的過ぎると言葉を返し、エルメシアもクスリと笑うと、リムルに対して『思念伝達』を送って来た。

 

『ねえ、リムル殿。貴方、リュウコちゃんに色々と聞いたのではなくて?』

『あ、はい。まあ、たまに助言などをもらってはいたかな』

『そうなのねえ。あの()をこれに関わらせる事をしなかったのは、正解だわよお。下手に関わらせるとトンデモない事をしたりするものリュウコちゃんって。えーとそうねぇ、ツキハちゃんから借りて見てる漫画にあったわねえ。うーん……そうそう、魔改造って言うのかしら? アレに近い事を考えつくわよお、リュウコちゃん』

『えぇ!? 漫画って、アイツ、エルメシア殿に貸してたりしたのか。しかし、魔改造かぁ、確かにやりかねない気も、する……』

『でしょお。それに、魔導ジェネレーターとか? いうのも作ってるらしいじゃない。先日久しぶりに会って、話しをしたのよお。アレ、更に魔改造してからの小型化成功でえ、〝魔導ドライブ〟って呼んでたわよお』

『はいッ!? それ、俺はまだ聞いてないんですけど?』

『祭りが終わってから話すと言ってたしい、明日か今夜あたり、報告があるんじゃないかしらあ』

『そうなんですか。〝魔導ドライブ〟かぁ、でも、何か楽しみ――』

『リムル殿。リュウコちゃんの存在は、まだ他国に知られてはいけないから、そこのところはお願いねえ』

『はい、心得てますよ、エルメシア殿』

 

 そこでエルメシアの『思念伝達』は終わる。

 

 『思考加速』もかけていたので時間にして三秒ほどだった。

 

 

「面白いわあ! 本当に、面白い。是非とも早く実現して欲しいものよねえ」 

 

 と、何食わぬ顔でそう言った。

 

 そしてエルメシアの表情は、新たな玩具(オモチャ)を見つけた子供のように輝いていた。

 半面、憂鬱そうなエラルドとは対照的で、とても印象的である。

 

 

「それじゃあ、先にサリオンまで軌道(レール)を敷いておくか。街道工事と並行して出来るし、手間も省けるしな」

 

 そうリムルが言うと――

 

「待って! この前、ベニマル様から提案された〝トンネル〟というものですが、それは将来必要となるものなのでしょうか?」

 

 思わぬところからの質問が来た。

 

 その質問をした者は、何とモミジである。

 

 リムルは、もしかして俺達が山を掘る事を検討しても良いって事なのかと考え、丁寧に思ってる事を話す。

 

「出来れば、将来的には開通させたいと思っている。()ずは、ブルムンド王国に中継地点を設ける予定でね。そこからファルメナス王国を経由して、武装国家ドワルゴンの西口まで繋ぐんだ」

「なるほど。西回り経由なのですね」

 

 リムルの説明を、フンフンと聞くモミジ。

 

「そう。そして同じくブルムンド王国から南下させるように、魔導王朝サリオンへの街道を整備する予定なんだよ。西側諸国の国々を経由させると、土地の使用権利を獲得するだけでも困難だしさ、山沿いに迂回するルートを通ると、膨大なロスが生じるんだ、が。こちらとしては、そちらが嫌がる事を強引に推し進めるつもりはない」

「わかりました。リムル陛下のお言葉を信じましょう。御山に影響が出ないという保証があるのならば、〝トンネル〟を通す事を承認しようと存じます」

「マジで!?」

「マジで、です。ただし、当方の希望としてですが、責任者として、ベニマル様を派遣して頂ければと――」

 

 頬をほんのりと染め、そんな事を言い出すモミジ。

 

 それを察したリムルは――

 

「ベニマル君!」

「ちょっと待って下さいよ!? 俺を売るつもりですかリムル様?」

「人聞きが悪いぞ、ベニマル君。ゲルドは今、大仕事の真っ最中だしさ。人を率いるのが得意な人物となると、君が一番適任じゃないか!」

 

 リムルの言葉に頷くゲルド。

 

 それに対して、呆れたような表情を見せるベニマル。

 

「だから無理ですって。そもそもの話、俺に工事についての知識なんてないんですから!」

 

 ベニマルはそこまで言うと、すかさず『思念伝達』でリムルに釘を刺しに来た。

 

『リムル様。もしかして、教授にお願いしようなどと思ってはいませんよね?』

『え? まさかそんな事は、思ってはいないよ?』

『いいですか、こんな事をお願いしたら、絶対に、教授から怒られますからね!』

『あ、うん。怒られるのは嫌だから、やらないよ?』

『では、そのようにお願いしますリムル様』

 

 リムル、ベニマルに先読みをされる。

 

「そうだよね、やっぱり無理だよね……」

 

 中々に、思った通りにはいかないものである。

 リムルの思惑、瞬殺であった。

 

「残念だけど、ベニマルは俺の片腕だからね。俺に同行して、たまに視察に向かうくらいなら――」

「あ、それで構いません。その際に、我が里に寄って下さるのならば」

 

 満面の笑みでモミジはそう言い、その横でハクロウが、してやったりという顔で笑っていた。

 

「ベニマル君、諦めよっか?」

「諦めませんが、リムル様の護衛として視察に同行するくらいなら引き受けますよ」

 

 肩を(すく)めて、そうベニマルが応じる。

 

 これが、ベニマルとしての最大の譲歩なのだろう。

 

 それでもモミジは、嬉しそうだった。

 

「では、モミジ殿――」  

「モミジと呼び捨てで構いませんわ、リムル様」

 

 モミジが敬称無しで良いと言い、ハクロウもそれに頷く、

 

(そっか。堅苦しくしなくても構わないという事か) 

 

「それではモミジさん、トンネルを開通可能かどうか調査しようと思うけど、いいかな?」

「はい。ですが、御山を掘る調査なら、ルヴナンが膨大な調査情報を持っているので、それを見せてもらえば宜しいかと存じます」

 

 このモミジの発言に、ザワリと場が(ざわ)めいた。

 

 そう、長鼻族(テング)がルヴナンと傭兵契約を結んでいるなど、一部の者と、魔物しか知らない事なのだから。

 

 クシャ山脈の山頂にはテングの里があるので、昔からクシャ山脈事態が不可侵と言うか神格化されていて、人間達はおいそれとクシャ山脈には入らなかったのが実情で、テングとの交流も一切ない。

 

 そして、このテング達はかなりの武闘派でも知られていたからである。

 

 だから、元魔王のフレイと揉めていたのは、知る由もなかったのだ。

 

 その経緯をモミジは簡単に説明し、人間側の者達はそれに納得を示した。

 

 ユウキだけはさり気なく、「ルヴナンがあそこの鉱物資源を独り占めしてるとは、中々に悪辣だねえ」と、笑みを浮かべながら言う。

 

 それに対してコハクが、「そんなん、先に目をつけたもんが勝ちや。でもな、これは長鼻族(テング)との正式な契約やねん。文句を言われる筋合いはないでえ」と、笑いながら言った。

 

「ええ、確かにそうですね。これは、単なる愚痴です。何せ昔から、あそこには膨大な鉱物資源が眠っていると囁かれていましたからねえ。それが〝人類〟ではなく、あの傭兵商会ルヴナンがその権利を有していると言うのが、どうにもね、と、言うのが本音ですよ」

「――ブッ!?」

 

 ユウキの口から人類という言葉が出て、ツキハが一瞬飲みかけたお茶を吹き出しかけて下を向き、(たもと)で顔を隠す。

 

 そして、ワザとらしくコホコホと軽く咳をして、むせたような感じを見せ、軽く『思考加速』をかけた『思念伝達』でユウキに言い放つ。

 

『テメエ、なーにが、人類だよ。笑わすんじゃないわよ! ブハッ、ウハハハハ』

『ごめんごめん。そんなに可笑しかったかな、番外魔王ツキハ?』

『魔物と手を組んで世界征服を企む奴が、人類とか、笑うわ! ブハハハハハ』

『確かに、そうかもね。そうそう、今日の会に来たのは、あの契約の期限切れを伝えに来たのかい?』

『相変わらずの根性してるわねえ。違うよ。うーん、そうだねえ、見届けに来た、そんな感じかな』

『ふーん。見届けねえ……。僕の正体をここでバラすつもりはないと?』

『うん。そんな事したら面白くないじゃん』

『ハハッ。それ、何を企んでいるのかな、番外魔王ツキハ』

『なんも。言葉通りの意味だし、後は言わなくともわかるよね、アンタなら』

『はあっ。本当に面倒くさい魔物だよ、お前()は』

『ありがと。でさ、素が出てるぞ、総帥。クスッ』

『じゃあ、まだ期限内という事で、いいんだよな?』

『だねえ。まあ、頑張れよ、そ・う・す・い。ニャフッ♪』

『ああー、本当に、番外魔王共々ルヴナンをぶっ潰したい気分になるよ』

『いいよー、いつでも来な。あたしとコハクが直々に、相手してやんよ』

『そうだね。その日が来たら、こちらも全力で、お前と番外魔王コハクを潰すとしよう』

 

 最初はツキハが揶揄(からか)うように言っていたが、段々とユウキが本性を剥き出しにして来る。

 

 そして、最後に二人は静かにそう言葉を交わすと、ツキハは『思念伝達』を切った。

 

 この会話の間ユウキとツキハは、終始笑顔を浮かべていた。

 

「では、そういう事ですのでコハク様。御山の調査情報を、リムル陛下にお見せ頂きたいと存じます」

「へえ。契約主の(おさ)である娘のあんさんが言うのなら、それに従いましょ。でも、無償で見せるなんて、いけずな事を言わはる。手数料くらい取ってもよろしやろ?」

「駄目です、コハク様。御山の採掘情報を、何卒(なにとぞ)、無償でお願いします」

「はあっ。恋は盲目と言うんやけど、ほんまにそうなんやなぁ。ふふふ――」

「え、え、そんなのとは違います! あくまでも、ベニマル様に協力するのであって――」

「モミジ。本音が駄々洩れやで。そこは、リムル陛下やろ。何でベニマルやねん。おぼこい()は、ほんまかわええなぁ♪」

「は、はい!? ち、違います、勿論リムル陛下に協力しますんです。で、でも、ベニマル様はリムル陛下の片腕ですので、で――」

 

 そこまで言うとモミジは顔を真っ赤に染めて、恥ずかしさのあまり着ている装束の両(たもと)で顔を覆い隠した。

 

 そんなモミジをハクロウが優しく頭を撫でながら、「コハク様。そこまでで、勘弁して下さいませぬか」と、苦笑い気味に言った。

 

「ふふ、あんまり可愛(かわい)いもんやからついな、堪忍やで。でな、リムル。後で調査資料をそちらにもっていかせるさかい、それでええか?」

「ああ、助かる。これで調査の手間が省けるから、工期の短縮に繋がるよ。という事なので、エルメシア殿。国境を越えてサリオン内への通行許可と、調査の許諾を――」

「全てオッケーです。エラルド、そのように計らいなさいね」

「ハッ、承知しました。リムル陛下、許可は私の方で発行しておきます。ただし、我が国内での工事に関しましては、こちらが仕事師を用意する事をお許し頂きたく思います」

 

 どこか、疲れたような感じが滲み出てくるエラルド。

 

(こんな自由な皇帝のところで働いていれば、嫌でも優秀になるよなあ。毎日が、戦争みたいなもんだろう。皇帝に、ツキハとコハクの相手をしていればな。それに、大事な点だけは押さえて来るあたり、やっぱり抜け目がないというか、そこは皇帝譲りなんだろうね。まあ、こちらで全て工事となると、色々と都合が悪いんだろう。俺としては、異論はないので、これはいいだろう)

 

 リムルはエラルドの提案を了承する事にし、話は纏まったのであった。

 

 反省会のつもりが、どんどんと重要議題が決まっていく。

 

 重鎮がこれだけ揃っているお陰で、様々な段取りを無視して決められるのが原因だろう。

 

 

 そんな状況の中で、今まで黙って話を聞いていたヨウムが話を切り出して来た。

 

 

 

 





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