忍びが転生したら〝異世界珍道中〟になった件   作:にゃんころ缶

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 お待たせしました。198話です

 ツキハ

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 コハク

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 傭兵商会ルヴナン・真の紋章


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 ※〝打刀〟
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198話 反省会のつもりが、いつの間にか国家間交渉でした

 

 

 今度は、今まで黙って皆の話を聞いていたヨウムが、話を切り出して来た。

 

 

「旦那、あ、じゃなくて、リムル殿。質問があるのだが、いいだろうか?」

「何かな、ヨウム殿」

「俺から説明したいが、生憎と俺はそっち方面の学が無い。代わりに妻から説明してしてもらおうと思うが、構わないか?」

「ああ、構わない」

 

 リムルがそれを了承すると。ミュウランが立ち上がった。

 

「御無沙汰ですわ、リムル陛下」

「こちらこそ。ミュウランさ――殿も、お元気そうで何よりです」

「大恩あるリムル陛下ならば、私の事など呼び捨てでも構いませんよ」

 

 ミュウランは笑みを浮かべながら、リムルにそう返す。

 

(そういう訳にはいかんでしょ。とはいっても、既にエルメシア殿を筆頭に砕けた会話をしているんだけど。うーん、これに慣れたらいかんという気がするが……。まあでも、今更かな。とりあえず今は、話を薦めよう)

 

「それじゃあ、ミュウランさん。質問とは何でしょう?」

「はい。リムル陛下の今のお話にありました、ブルムンド王国から我が国を通り、ドワルゴンへと至る街道を整備するという案件にも関わる事です。これは、以前お話し下さった構想――新たなる人魔共栄圏の構築の一環と考えても宜しいのですね?」

 

(人魔、共栄圏、かぁ。人魔部隊ルードネスを作る時にも感じたけど、何ともしっくりくる言葉だな)

 

「その認識で構わない。それにしても、人魔共栄圏という呼び名はいいね。理想とする形が、とてもわかりやすいと思う」

 

(人類と魔物が、共存共栄の関係を築く。魔物と言っても多種多様で、亜人と呼ぶべき者が多い。まあ、それはそれとして。俺の理想は、まさにそれだ。魔国連邦(テンペスト)を中心として、東に武装国家ドワルゴン、西にブルムンド王国。そして南には、ミリムを頂点とする魔物の一大勢力圏。でだ、ブルムンド王国を基点として人類の勢力圏が広がる。北にファルメナス王国が隣接し、南に下れば魔導王朝サリオンが支配する広大な領土。そして、そのどちらにも属さない、俺より先に別の意味で人魔共存共栄を築き上げてた傭兵公国シャルフューズ。そして――西側諸国の窓口になっているブルムンド王国。まさしく、この国々が手を取り合える関係が完成したならば、それこそ人魔共栄圏と呼ぶのに相応しいだろうな。でもなぁ……)

 

 リムルは、人魔共栄圏という自分の理想に思いを()せる。

 

 しかし、ある一つの懸念を思い浮かべた。

 

(戦闘国家ともいえる傭兵公国シャルフューズ、(いくさ)生業(なりわい)にする傭兵商会ルヴナン。コハクとツキハが率いる、これらが、俺の理想に賛同してくれるかといったら、難しい――と言うより、多分無理だろう。確かに、傭兵業以外も様々な商売をやってはいるが、メインは(いくさ)だ。うーん……説得は、無理だ。アイツ等の生き様を否定すれば、間違いなくコハクとツキハは敵に回る。それは、エルメシア殿を見てて、わかった。エルメシア殿は皇帝という立場にありながらも、国には直接関わらない、個人契約というモノにしている。それは恐らく、コハクとツキハの生き様を否定はしないが肯定もしないと、いう事なんだろう。ようは、自分の目が届かぬところは(あずか)り知らぬ、と。それを言うと、エラルドもそういう節がある。例えコハクとツキハが悪人であっても。毒を食らわば皿までって、事かな。まあ、毒を(もっ)て毒を制すとも言うか、そんなところだろうか。ただなぁ、あのエレンがアイツ等に対して、何の警戒も忌避感ももっていないのは、ちょっと不思議だ。エレンの目には、どう映ってるんだろうか、アイツ等は……)

 

 いつの間にか無意識に『思考加速』をかけて、思い(ふけ)るリムル。

 

(あれだよな、自分達は信用はされていても、信頼はまだ得てはいない。信用は得た、しかし信頼はというと、これが本当に難しい。とは言っても、エルメシア殿はコハクとツキハとは二千年近いつき合いだから、それも当然かとは思うんだけど。この間エルメシア殿が話してくれた事の中で、何度もガチでコハクとツキハと喧嘩をした事もあるって言っていた。それに、コハクとツキハを悪と認めながらもアイツ等を自分と国の利益の為に利用し、アイツ等もエルメシア殿の権力と財力を利用していると、お互いが笑いながら言うって、どんだけだよ! と、俺は言いたい。でもなぁ……エルメシア殿の、その度量の大きさが正直羨ましい。それに、それだけじゃないんだろうエルメシア殿もコハクとツキハもな……。俺は、アイツ等がやっている事の全てを知って、エルメシア殿みたいに笑えるの、か? 正直、わからない。エルメシア殿は、エルメシア殿のやり方でアイツ等と接している。なら、俺は……)

 

 リムルは葛藤の中、ある答えを自分に出す。

 

(うん。四の五の言っても始まらない。これは、俺の気持ちの問題だ。俺は、アイツ等と敵対したくはない。それは、俺の国が大損害を被るのがわかっているし、恐らく幹部達の大半が死ぬ事になる。俺が負けるかは別としても、勝てはしないのは確かだろうな。『絶対防御』、これはあの二人に対して、絶対ではない。『智慧之王(ラファエル)』さんがどんなに力を尽くしても、貫通されるのは確実だろう――)

 

《……》

 

(あ、先生、何か気分を害したのかな? うん、その気持ちはわかるよ)

 

《……》

 

(反論はしてこないところ見ると、脅威とは感じているんだろう、あの二人を。でも……敵対したくないという俺の気持ちは本当だしな。お互いの被害が尋常じゃないくらい酷いものになるのは目に見えている。それに俺は、アイツ等が嫌いじゃないというのも本当だ。悪人ではあるんだけど、どこか憎めないというか、何か不思議なものがあるのも確かなんだ……。うん、そうだな――俺達の生き様を見て、コハクとツキハに判断してもらおう。それで(たもと)を分かつならそれも良し。もしあの二人が、一つでもそれに共感してくれたならば、それで良し。俺がアイツ等を判断するんじゃない。アイツ等が、俺達を判断するんだ。だから俺は、コハクとツキハには、全てにおいて正直であろう。それで喧嘩になるなら、とことんやってやる。そして、俺の思いを包み隠す事なく、ぶつけよう。それが一番、正解な気がする)

 

 色々と思う中リムルは、自分なりにコハクとツキハに対する付き合い方の道筋を決めた。

 

 それが功を成すか否かは、今は、わからない。

 

 (んん? あ、つい考えに(ふけ)ってしまったわ)

 

 ここでリムルはハッと我に返り、無意識にかけていた『思考加速』を解除する。

 

 ちょうどタイミングよくミュウランが、発言するところだった。

 

「ありがとうございます。では、質問を。その理想を実現する為に、我が国は全力で協力しようと考えております。幸いにも我が国の貴族達は、そこのディアブロ様と番外魔王眷属であるイチコ殿に脅迫――コホン」

 

 極自然に脅迫と言葉にしたミュウランは、軽く咳払いをして、言い直す。

 

「説得されて、とても従順――コホン、協力的になっておりますので、私共の意見は何でも聞いて下さいますの。それで、新興国としての第一歩を踏み出す為にも、国家事業を行おうと考えております。ですので――」

 

 何をすれば良いのか? というのがミュウランの質問だったのだ。

 

「そ、そりゃあ前にも言った通り、農業をだね――」

「問題御座いません。全てつつがなく、指定された農作物の栽培に着手させておりますわ」

「おお。じゃあ、ええと他には――」

 

 ここでリムルは、少し思案をする。

 

(うーん、他に何があったっけ? 貴族の掌握はディアブロとその補佐のイチコ殿によって完了済だし、軍事関係も余計な部署を削ったお陰で、一つに纏まってスッキリしたしぃ……国内もそれに伴って安定を取り戻した、と。貴族の利権絡みを徹底的に潰したらしいし、ディアブロが。その情報は恐らく、ルヴナンから提供されたみたいだな、イチコ殿を通して。農業に関しては、今後それを重視すると、国民への通達は既に終えている。ディアブロのお膳立てを引き継いでこれだから、ミュウランは本当に優秀だな)

 

 ディアブロの計画をしっかりと遂行しているミュウランに、リムルは内心で感心の声を漏らす。

 

「それじゃあさ、仕事にあぶれた者なんかを集めておいてくれる?」

「承りましたわリムル様。出来れば是非、私共も自分達の手で、軌道(レール)を敷くという工事に携わりたいと考えていましたの。我が国にで作る農作物を運輸する手段として、交通網は生命線となるのでしょう?」

「まあ、そうなるだろうね。自分達で消費する分だけでなく、これからはもっと大量の農作物を作る事になるのだから。腐らせる前に必要とする国に運ぶ事もまた、国家としての重要な政策になると思うよ」

 

 以前の元ファルムス王国では、ドワーフ王国の商品を横流ししていた。

 その運搬の責任は商人達が負い、国家としてはそれに関税をかけて、労せずして収益を上げていただけである。

 

 しかし、これからはそうはいかない。

 

 積み荷に責任を負うのは商人だけではなく、国家としても信用を高める必要が出て来る。

 

 そう、物流の合理化(ロジスティクス)を、国家が保証する時代になるのだ。

 

「〝魔導列車〟が大草原を走る日が楽しみですね。これからは、商人達もその有り様を変えるのでしょうから、私共もそれに対応するように、勉強していかねばなりませんね」

「馬車よりも速く、それこそ一週間かけて運んでいた商品を、三時間かからずに届けられるようになる。しかも、運搬量は百倍以上になるだろうな」

「「「「はあっ!?」」」」

 

 ガゼルやエルメシアは予想していたのか驚かなかったが、その他の者はそうではなかった。

 

 余りにも荒唐無稽(こうとうむけい)に思えたのか、誰もが驚き固まっていたのだ。

 

 ユウキやヒナタ、マサユキなんかは、別の意味で乾いた笑いを浮かべていた。

 

 そこで更にリムルから、ある計画が告げられる。

 

「でだ、この〝魔導列車〟に加えて、荷馬車の効率化も計画しているんだ」

「それは何だ、リムル?」

 

 ガゼルがそれに問い返す。

 

「ちょっとした、荷馬車の魔改造かな。荷馬車に簡単な補助動力を付けて、荷を引く馬の負担軽減と、今までの二倍以上は運べるようにしたいのさ」

「へえ。それってさ、仕組みは僕らの元いた世界の電動アシスト自転車みたいなものなのかな?」

 

 それを聞いたユウキが、リムルに質問を投げかける。

 

「そう。馬四頭引きなら馬二頭、馬八頭引きなら馬四頭で済むみたいかな。その動力源もほぼ開発出来てるんだ」

「なるほど。それもリムルさんが開発したのかい?」

「ああそうだ。俺が開発した」

「そうなんだ。〝魔導列車〟に荷馬車の補助動力か。ほんと、怖くなってくるねえ」

 

 ここでリムルは嘘ついたが、ユウキはアッサリとそれを信じた。

 

「まあ、そう言うなって。これは()ず、ガットエランテから試験運用しようと考えてるんだ。軍事転用はさせないし、もし、しようとしたら自壊術式が発動して、補助動力システムごと消滅するようにするつもりだ。この事の交渉は、ミョルマイル君に一任している」

「ふむ。そこまで考えているのなら良いだろう。それにガットエランテなら、その補助動力とやらを盗もうとしても、おいそれとは手が出せぬだろうからな」

 

 リムルが万が一補助動力を盗まれたとしても、対策を打つと言ったのを聞いてガゼルは頷きながらそれに賛同した。

 

「急激な革新は軋轢(あつれき)を生むが、本当に新たな物流網の到来になったな。我々は責任を持って、これを上手く活用せねばなるまい」 

 

 しむじみとガゼルがそう言うと、皆がそれに頷いていった。

 

 リムルもガゼルの言葉を噛み締めつつ、ミュウランに言う。

 

「それで、ミュウランさん」

「はい?」

「出来れば今の内に用地を買収してさ、可能な限り直線距離で効率的な運搬経路を計画しておきたいんだ。ゲルドの部下やこの街で学習中の獣人達なんかが、そろそろ地形測量を出来るようになる頃なんだよ。最終確認は俺がするから、任せてみようと思っているんだ。でだ、集めてくれた労働者は、そいつらの指揮下に入らせる。読み書きが出来る者をリーダーとして、班分けを行っておいて欲しい」

「心得ました、リムル陛下。何だか、ワクワクしますわね」

 

 ミュウランはそう言って、リムルの申し出を快く引き受けた。

 

 こうして、ミュウランの案件は滞りなく終了したのだ。

 

 そんな中、次に挙手したのはフューズであった。

 

「お偉い方々ばかり集まっていましたので、挨拶が遅れました」

 

 そう言いながら苦笑いするフューズ。 

 

「いやあ、悪い。流れ的にそろそろそちらからも、発言があるとは思っていたんだ」

「いえ、先程のお話も重要な案件。流石に横から口は挟めませんよ。それよりもですね、今日は我が友がお話がしたいと、と。それも丁度良く、今話題になっておる内容についてです」

 

 そう言ってフューズが紹介したのは、リムルも良く知るベルヤード男爵であった。

 

「只今ご紹介に(あずか)りました、ベルヤードです。本日は無理を言ってこの場に参加させて頂きました。リムル陛下に多大なる感謝を。そして、この場におられる皆様には、是非ともお見知りおき願いたい」

 

 スッ椅子から立ち、綺麗な姿勢で優雅に一礼するベルヤード。

 とても小国の下級貴族とは思えぬ、見事な挨拶だった。

 

「それでは、我がブルムンドの王、ドラム陛下に代わりまして、私が質問をさせて頂きたく思います」

 

 ベルヤードは一瞬、隣の席に視線を移し戻した。

 そこに座るのは、今名前が出たブルムンドの国王夫妻である。

 

(うおっ。いたのかよ、ってか。ちょっと存在感薄くね……? なんか、アイツ等みたいな? という冗談はさておいて。ドラム王には、正式な会談を予定するとは伝えておいたんだけど。その必要はなくなったみたいだな。それにしても、ニコニコ笑って好々爺(こうこうや)然としているが、この王って油断ならないというか、超やり手と言うか、コハクも褒める夫妻なんだよなぁ。情報を売りもすれば買いもしているとコハクは言っていた。情報戦に()けている小国、ブルムンド王国。情報戦に限れば、大国をも凌ぐとツキハも言っていたな。さてさて、どんな話が飛び出してくるのやら、だ)

 

 ベルヤードから如何な話しが出るのか、リムルは少しワクワクする。

 

 そしてベルヤードは話し始めた。

 

「リムル陛下のお言葉ですが、我がブルムンド王国の今後の在り方に関するものがあったと、フューズから聞いております。そしてドラム王からも、我が国を流通の中心地とする予定であると伺っております。それはどういったものなのか私なりに考えてみたのですが、今までの話を聞いていて理解致しました」

 

 そう言うとベルヤードは一度、浅く息を吸いそして軽く息を吐くと、話を続けていく。

 

「つまり陛下は、我が国に物流の集積地としての役割を担わせようとお考えなのですね。陛下の仰る〝魔導列車〟に荷馬車の補助動力の登場は、物流の常識を一変させる。その中継基地が我が国に造られるのならば、世界各地から様々な荷物が集まるのは必然であり、その荷と共に情報も集まるのが必然でありましょう」

 

 リムルをしっかりと見ながら言うベルヤードに、リムルは静かに(うなづ)く。

 

 それを確認したベルヤードは、また一瞬だけブルムンド王に視線を向けると、国王夫妻はニコニコと頷いていた。

 

「さすれば、その品々を管理する者が必要となる。また、各国に何が足りないのかを調べ、適切に手配する役割も求められるようになるでしょう。リムル陛下、貴方はそれを、我々に望んでおられるのでしょうか?」

 

(ほう~。流石はドラム王の信頼も厚いベルヤード。俺が頭の中で考えていた内容を、見事に言い表してくれたよ)

 

「その通りだが、出来るかな? 言うまでもないけど、場所だけを提供してくれても構わない。その際は土地使用料として、毎年一定割合の税金を納める事を約束するけど?」

「御冗談を。その仕組みから取り残され、得られる利益だけで怠惰に生活するだけなど、我が国の民を甘く見るにも程がありますぞ。荷が集まれば情報も(おの)ずと付いて来る。ならば、今から教育施し、(きた)るべき時に備えるようにしますとも!」

 

 そう言い切ったベルヤードは、力のこもった目でリムルを見詰める。

 

(やべえ。コイツ、マジもんにやべえ。マジで、どこまで見通してるんだろう。俺には頼もしき智慧之王(ラファエル)先生がついてるが、ベルヤードは地の頭だけで、この会話についてきているのか?  マジやべえ、あの王にして、この男爵か。あのコハクが誉めるだけあるわぁ)

 

 先見性があるというレベルではなく、とんでもなく頭の切れる男であったベルヤード。 

 

 ブルムンド王国では、これまでの価値観が一変するパラダイムシフトが起きるのは間違いないだろう。

 それは他の国々でも起きるのだが、ブルムンド王国のそれは劇的なものになると容易に推測出来た。

 

 ベルヤードはそれを見通して、今から備えると宣言したのである。

 

 リムルは思い出す、以前コハクが言った言葉を。

 

(そう言えば、コハクのヤツが以前にこうも言っていたよな。『うちらに情報戦を挑まれて、唯一抗えるのはブルムンド王国だけやろなぁ』と。どこか楽しそうに言っていたのを思い出したわ。ブルムンド王国が敵でなかったのが頼もしく思えるよ、全く)

 

 ベルヤード男爵を見て、しみじみそう思うリムルであった。

 

「それなら是非、お願いします。各国の輸出入の品目を調べて、必要なモノを必要な場所へと輸送する仕組みを作り上げてもらいたい。傭兵商会ルヴナンと同じく、情収集と情報操作に()けた貴国なら、こうした仕事は得意でしょう?」

「これはこれは、リムル陛下は油断ならぬ御方。わかりました、この件に関しましては持ち帰って、より詳しく検討する事をお約束致します」

 

(いや、アンタに油断ならないとか、言われたくないんだが。どんだけよ、と、俺は言いたい)

 

 そう思いつつも、リムルは頷いて見せた。

 

 こうしてブルムンド王国との交渉も、無事に終わった。

 

 リムルはベルヤード男爵に何をお願いしようかと、内心で悩み始めていた。

 

 着々と進む反省会ならぬ、国家間の交渉事。

 

(さてと。今後の国家運営に関わるような難しい問題ばかりであれだな。今は反省会だ。気持ちを切り替えて、他の者の意見も聞こう)

 

「えーと、他に何か意見は――?」

 

 と、リムルが言うと。

 

 そこへ、誰かが小声で話す声が聞こえて来たのだった。

 

「駄目だってヴェルドラ。何回もあたしが言ったでしょ、最下層まで来る冒険者なんて、当分来ないって」

「いや、だがなツキハ。そうは言っても、我はいつまで待てばいいのだ?」

「だから、当分来ないって」

「当分って、何時(いつ)なのだ?」

「えーと……二、三年、あ~、うーーんとね、十年くらい?」

「はあ? ちょっと待て。十年は長すぎるぞ!」

「もう、ヴェルドラったら。あたしらに十年なんて()ぐじゃん。大人しく待とうよ、ね?」

「いや、まあ、そうではあるが。しかし、でもな――」

 

 その声の主は、ツキハとヴェルドラである。

 

(あー、嫌な予感がする。気付かなかった事にしようかな……)

 

 リムルがそう思った瞬間、立ち上がった者がいた。

 

「リムルよ、我はいつまで待てば良いのだ?」

 

 ヴェルドラである。

 

 横でツキハが、もうしーらないといった顔で、お茶菓子のビスケットをポリポリと食べていた。

 

 

 

 





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