忍びが転生したら〝異世界珍道中〟になった件   作:にゃんころ缶

203 / 239


 お待たせしました。203話です

 ツキハ

【挿絵表示】


 コハク

【挿絵表示】



 傭兵商会ルヴナン・真の紋章


【挿絵表示】



 ※〝打刀〟
【挿絵表示】








203話 地下迷宮運営の緊急会議

 

 

 急遽、地下迷宮(ダンジョン)の問題に対する、緊急会議開かれた。

 

 

 参加者は、リムル、ラミリス、ヴェルドラ、ツキハ、そしてオブザーバーとしてマサユキである。  

 ツキハは迷宮製作に最初から関わっているので、この会議にはアッサリ参加。

 運営担当としてミョルマイルも呼ばれていた。

 

 全員揃ったのを確認したリムルが口を開く。

 

「さて、迷宮を解放してから三日ほど経過した訳だが、現状は思わしくない。というより、全然駄目だ。ちょっと酷すぎる。俺達が楽しむ――じゃなくて、迷宮利用者の皆さんに何度も攻略に挑みたいと思わせる為にも、ある程度の指導を行った方が良いと思うんだが、どうだろう?」

「うむ! リムルの言う通りだ。このままでは、どれだけ待っても我の出番はなさそうだしな」

「そうだね。五十階層以下のアタシ達の力作を、早いとこ御披露目したいし、少しはヒントを上げても良いと思う!」

「あたしも、それに賛成。余りにもお粗末すぎ。これさ、あたしの罠だけで全滅出来るじゃん。流石にねぇ、うちの〝仕込み(忍び訓練生)〟の子供達より下はマズイでしょ」

 

 と、ヴェルドラ、ラミリス、ツキハはリムルの意見に賛同する。

 

 マサユキはというと、思案中――というより、困惑していた。

 何故この場に自分が呼ばれたのかと、戸惑い全開だったのだ。

 

(ま、突然呼び出したからな、無理もないか)

 

 リムルは、マサユキもその内落ち着くだろうと思い、その時に意見を聞く事にした。

 

 そこへ、憧れのマサユキに会えて上機嫌のミョルマイルが、張り切って口を開いて来た。

 

「宜しいですかな?」

「意見は大歓迎だよ。遠慮なく思う事を述べてくれ」

 

 リムルがそう言うと、ミョルマイルは一つ(うなづ)いた。

 

「ヒントを与えるとの事ですが、ほどほどにお願いしたいのです。開放されてから、まだ三日。今現在挑戦しておるのは、元よりランクの低い者ばかり。自由組合を通して熟練冒険者への呼びかけも行っておりますし、今後はCランク以上の挑戦者も増えるでしょう」

「なるほど。上手く行きそうなのか?」

「はい。ユウキ殿の思惑はわかりかねますが、約束はきちんと守ってくれたようですぞ。〝魔法通話〟にて各国各地の自由組合支部と連絡を取り、大々的な宣伝を行ってくれたようです」

「ふむ。組合にも利のある話だからな。それで?」

「はい。ワシの伝手で、商人達の口からも広まっておりますし、リアナ殿もそれに協力して頂いております。更に――」

 

 そこでミョルマイルは口を閉じツキハの方を見て、目で何かを訴える。

 

 するとツキハが、マサユキの方へと視線を移して――

 

「えーと、ガキんちょ、じゃなくて、少年。今から聞く事は、絶対に誰にも言っちゃ駄目だからね。他言無用。もし漏らしたら、わかってるよね?」

 

 と、にこやかに言った。

 

「えっ!? は、はひ、はい!」

 

 言われたマサユキは、魔国に来てから番外魔王の二人の事とルヴナンの事を散々聞かされてきたので、額に脂汗を滲ませながら顔を引き(つら)らせ、それに応えるように激しく首を上下に振る。

 

「うん、良い子」

 

 ツキハがそう言うと、ミョルマイルは再び話の続きを始めた。

 

「更にですな、ルヴナンが各国各地に放っている〝(ヘルバ)〟の者達が、酒場や裏社会の者どものたまり場などでも広めてくれております。これにより、腕の立つ用心棒や、その知り合いのならず者、戦場を転々とする熟練の傭兵などと、反応は上々だったと報告が上がっております」

 

 迅速な情報伝達、そして情報収集は重要である.

 

 これには、〝藍闇衆(クラヤミ)〟の頭領であるソーカも協力していた。

 

 ミョルマイルと一緒に司会をしたソーカに、リムルがこの仕事に協力するよう申し伝えていたのだ。

 

 そして、ソウエイも独自に動いていた。

 ソウエイは今、ミューゼ公爵の身辺を調査している真っ最中で、その(かたわ)ら、リムルから迷宮の宣伝をそれとなくするよう(めい)じられていたのだ。

 

 これらを総動員した結果、自由組合の支部がない田舎町や辺境の田舎町まで、魔国の地下迷宮(ダンジョン)の噂が広まっていたのだった。

 

「つまり、各地から腕利きが集まるのを待って、それから判断しても遅くはないって事か?」

「左様です。まだまだ企画は立ち上がったばかり。ここで成果を性急に求めずとも、腰を据えて将来を見据えるべきだと愚考しますぞ! それに、各国の貴族が出資に乗り出すべく動き出したと、ルヴナンから報告が上がって来ました故、Bランク以上の参加も期待出来ましょうな」

 

 熱心にそう語るミョルマイル。

 

「そうだな、焦っても仕方ないか」 

「ええ。そうですぞ、リムル様。こういう時だからこそ、慎重に事を見定めなければなりません」

 

 迷宮に興味を持つ者は、リムルの予想より多かった。

 

 〝魔晶石〟に加え、魔物から剥ぎ取れる素材がある。

 それなりの副収入になると踏んで、迷宮に入って行く者が後を絶たなかったのだ。

 

 それ以上に貴族達の反応が、思っていた以上に乗り気だったのがわかった。

 

 中には目端が利く者もいたようで、帰国する際に冒険者を雇って迷宮攻略を依頼したらしい。

 そうして雇われた冒険者達は、決して欲望のまま行動はしない。

 

 入念な下調べと準備をし、計画を立てて行動している。

 

 そういった者達は今はごく少数だが、今後増えて来るのは間違いなかった。

 

「それでは、どうするのだ?」

「最初の階層に受付を設置しているし、そこで色々と体験させるべきかな?」

「体験って? どういう風にする訳よ?」

「迷宮に入る前に、初心者を訓練するって事よね?」

「そう。ツキハが言った通り、色々試せる訓練場を用意したらどうか、って思うんだよ。罠について学習したり、迷宮に入る前の準備についてとかさ。勿論、迷宮での魔物との戦闘訓練もな。これなら、ヒントを与えるよりも有意義なんじゃないか?」

 

 そんな事を考えて発言するリムルに、意外な人物が賛同した。

 

 マサユキである。

 

「それなら、迷宮攻略に関する講習も行った方が良いですね」

 

 と、何気ない発言をして来たのだ。

 

 驚いたリムルがマサユキを見ると。

 

「あ、勝手に発言するのはマズかったですかね?」

「いやいや、そんな事はないよ?」

「いやあ、それなら良かったです。僕にもわかる楽しそうな話題だったもので、つい口を出してしまいました」

 

 そう言って苦笑いを浮かべるマサユキ。

 

「それで、どういった講習をするんだ?」 

 

 リムルが講習の中身について尋ねると。

 

「ゲームとかによくあるチュートリアルですよ」

「ちゅーとりある? 何だ、それは?」

「美味しそうな名前だけど、食べ物?」

「あ、それ知ってる。教授が教えてくれた、〝ニャンコ大好き・ちゅるちゅーる〟というリムルがいた世界の猫のオヤツだよね!」

 

 マサユキの発言にヴェルドラ達が食いつく、も。

 

 ツキハは知ってそうな感じだったが、明後日(あさって)の方向にいき、食べ物という単語に食い付く。

 

 この世界の言語は、かなり親切に翻訳してくれるのだが、両者に共通認識がなければ意味が通じない。

 

 ヴェルドラが知らないとなると、ラミリスも知りようがないし、ツキハに関しては間違った方向で認識している始末。

 

 そこでリムルは、マサユキと一緒にチュートリアルについて説明をする事にした。 

 

「俺の考えでは、アスレチックみたいに実際に体験してもらう感じかな」 

「リムルさんが言うように、迷宮に入る前に色々と体験してもらうのは重要だと思います。なので、ミッション形式にして基礎知識をレクチャーすると、冒険者の皆さんにも伝わりやすいかと――」

 

 迷宮に関して長々と説明しても、大抵の者には伝わらないだろうと。

 

 自由に体験出来る場を用意しても、それは同じではないか?

 真面目な者しか利用しないのではないか?

 

 というのが、マサユキの意見で。

 

 そこで、ミッション形式という事になる。

 

 入場許可証を発行する前に、簡単なミッションを受けてもらう。

 そうすれば、最低限の知識を身に付けた上で、冒険者達が迷宮に挑む形になるだろう、と。

 

 リムルとマサユキの説明を聞いて、ヴェルドラとラミリスは納得をし、ツキハは言わずもがな。

 

「良いかも知れぬな。我が思うに、今のままでは歯ごたえがなさ過ぎてつまらぬ。修行の場を与えて、ある程度は腕を上げて欲しいものよな」

「アタシもそう思う! ミリムが見たら、激怒してアイツ等全員ブッ飛ばしてると思うよ!」

「ホント、それ。ミリムなら、マジやりかねんよねぇ。何なら、うちの訓練施設でも参考にしてみる?」

 

 リムル達の説明を聞いて、ヴェルドラやラミリスにツキハも同意した。

 

 更に、ミョルマイルまでも。

 

「そのチュートリアルの後にでも、テンペスト印の武器や防具を試着してもらうのもアリですな。攻略に行き詰った者を対象に、難易度の高いミッションを用意するのも面白そうですわい」

「そうだな。いっその事、一階層を訓練場にするのも面白いかも」

 

 中々に参考になる意見を出すミョルマイル。

 

 という感じで、一階層は訓練場へと改装する事に決まったのだ。

 

「そうね、あった方が良さそう。任せて。早速創り変えるよ!」

 

 と、ラミリスも快く請け負ってくれた。

 

「それじゃあ、今回の運営会議は――」

 

 こうして話も纏まり、リムルが会議を終えようかと思ったその時。

 

「あ、待ってください。他にも気付いた事があります」

 

 そこへ、マサユキが目を輝かせて、自分から意見を述べて来たのだ。

 

「今は安全地帯にしか宿屋と食事処がないみたいですけど、階層ごとに用意してもいいのではないですか? それにですね、トイレとかもなくて困っているんですよ。どうせ空間を繋げられるのなら、各階層の階段付近にでも扉を設けたらいいんじゃないでしょうか。寝袋さえも用意せずに攻略に乗り出す人もいますし、割高でも利用してもらえると思いますよ?」

 

(何ッ!? コイツ、天才か? というか、トイレね……。あれだわ、俺自身が排泄の必要がないというか、内臓そのものがないから、すっかりトイレという存在自体忘れていたわ……)

 

 リムル、思ったより有用な意見が飛び出て来て驚きである。

 

 そのままリムルがラミリスに視線を向けると、力強く頷きが返って来た。

 

「マサユキ君。その案だけど、採用だとも!」

「流石はマサユキ様ですな。着眼点が素晴らしいですぞ!」

「うんうん! 安全地帯をなくして、階段付近に休憩場に繋がる扉を用意するよ!」

「あ、それとですね。あー、でも――」

「思った事があるなら、遠慮せずに言いなさい」

 

 ミョルマイルとラミリスがマサユキの意見を褒めているところへ、まだ言いたい事があるのかマサユキが口籠っていると、リムルがそれを言うように促す。

 

「えーとですね。一回だけ使用可能な記録地点(セーブポイント)を用意出来ませんか? 僕は幸運にも十階層まで到達出来ましたけど、落とし穴がなくなった今、かなり時間がかかるようになったと思います。挑戦者にとってはゲームではありませんし、時間的拘束が長くなるというのも、難易度が高くなる要素だと思うんです」

 

(ふーむ、なるほど。確かに一理ある)

 

 リムルが内心で納得をしていると。

 

「うむ、そこの小僧の言う事ももっともであるな! 我もそう思っておったのだ。人間は脆弱であるからして、少しは配慮してやらねばなるまいよ」

「だよねぇ。アイツ等、欲に目が眩んだら、後先考えないで突っ走るヤツ多過ぎだもんね」

 

 ヴェルドラとツキハが真っ先に、マサユキの案に乗っかった。

 

「使い捨ての記録地点(セーブポイント)なら、アタシの力で用意出来るよ? でもさ、宿屋を使ってもらった方が、利益が出るんじゃないの?」 

「いやいや、そうとは限りませんぞラミリス様。これは逆に、高額に設定しておけば良いのです。用事がなければ宿屋に泊るでしょうが、定期報告を要求される者もいるでしょうからな。それに、迷宮内で不慮の事態が起きた場合に備えて、一つくらいは保管しておこうという者もおるでしょうし。それと併用して、〝帰還の呼子笛(よびこふえ)〟の売れ行きも伸びるでしょうな」

 

 ラミリスの意見に対して、ミョルマイルは勝算があるのか、〝帰還の呼子笛(よびこふえ)〟の製品化に乗り出す気でいた。

 

(そうだな。確かにいくつか使いどころがある。迷宮内で数日間も滞在すれば、外の様子が気になる場合もあるだろう。今後、貴族から雇われた者達も参戦する訳だし、定期的な報告義務が生じるだろうな)

 

 ミョルマイルの意見を聞きながらリムルは、うんうんと納得をする。

 

 そして、マサユキの意見は続いていく。

 

「僕の場合は、仲間が簡単に倒してくれましたけど、十階層の記録地点(セーブポイント)前では、強い魔物が守っていたじゃないですか? アレに挑む前に記録地点(セーブポイント)を利用したいと思う人って、結構いるんじゃないかと思うんですよね」

 

 マサユキの言葉に、リムルは深く頷いた。

 

「確かに、そうだな。考えてみれば、少し不親切過ぎたかも知れない」

 

 リムルが同意すると、ヴェルドラやラミリスにツキハが、コクコクと頷いた。

 

「小僧、いや、マサユキと言ったか? 貴様の意見はなかなか参考になるぞ」

「うんうん。凄いよ、凄い。流石はリムルと同じ〝異世界人〟だよ。これからも宜しくね、マサユキ!!」

「ガキん、じゃねえ、マサユキ少年、いい意見だわ。アンタ、意外に見所があるわよ」

 

 とまあ、いつの間にかマサユキを仲間認定した三人だったのだ。

 

 そして、マサユキも。

 

「本番である五十階層以下では、甘えをなくしてもいいと思いますけどね。でもせめて、熟練の冒険者が少ない階層では、少し甘さを残しておくのもアリかと思います」

 

 マサユキは、完全に運営目線での意見を述べて来る。

 この順応性の高さこそ、マサユキの真骨頂なのだろう。

 

 と、色々意見が出揃ったとこへ、ツキハが手を上げて来た。

 

「あ、えーと、あたしも一つ提案があるんだけど、いい?」

 

 それを聞いたリムルが、快く了承する。

 

「ん? おお、いいぞ。良い意見なら大歓迎だ!」

「ありがと」

 

 それにツキハが礼を言うと、意見を話し始めた。

 

「良い意見かどうかはわかんないんだけど。うちの(眷属)達がさ、迷宮内で不定期の移動雑貨屋台をしたいと、言ってるんだよ。要は、小遣い稼ぎをしたいんだと、言って来たんだわ」

「ほほう、不定期移動雑貨屋台とは、どのようなものでしょうか?」

 

 ツキハの言葉に、ミョルマイルが飛び付いた。

 

「まあ、()ずは、これを見てもらえるかな」

 

 そう言ってツキハは、全員に思考イメージを送った。

 

「ほほう。これは人が引く荷車に屋台を乗っけた物ですかな。前にあるのは、何でしょう?」

「また珍妙なモノを考えて来たな、ツキハ」

「なになに、前にあるこれは、人が乗るもの?」

 

 ミョルマイルにヴェルドラ、ラミリスは、思考イメージで見せられたものが、屋台とは認識出来たものの、完全には把握出来なかった。

 

 しかし、リムルとマサユキは。

 

「「ああ、これ、自転車で屋台を引くのか!」」

 

 と、即座に理解した。

 

『なあ、ツキハ。これってさ、教授に作ってもらったのか?』

『そだよ。教授に、迷宮内を移動出来る屋台を作ってと頼んだんだよ。そしたら、これを作ってくれたの』

『報告にあった〝魔導ドライブ〟を組み込んだ移動屋台かあ。荷台の両サイドに付いたキャタピラをペダルで()いで動かすシステムって、ホント、俺がいた日本の電動アシスト自転車だな。車輪については、まだゴム製のタイヤを作る段階には程遠いから、キャタピラとはね。これなら、魔鋼から作れるから理に適ってるな』

『うん。教授もそんな事を言ってた。ってかさ、これ、教授が元いた世界のオンラインサバイバルゲームに出て来たものを参考にしたんだって』

『ふーん。オンラインサバイバルゲームねえ……。あ!? あれかあ、俺もそれやった記憶があるわ。何百階もあるダンジョンを上るヤツ。懐かしいなあ』

 

 教授の事は機密事項なので、リムルは『思考加速』付きの『思念伝達』でツキハに尋ねた。

 

 そんな事を話してるとマサユキが。

 

「ああ、これ、懐かしいですね。僕がいた日本のオンラインサバイバルゲームに出て来た移動屋台ですね。えーと、ツキハ、様。で、いいんですよね?」

 

 マサユキからの問いに『思念伝達』を終えて、答えるツキハ。

 

「うん。まあ気軽に、さん付けでもいいよ。アンタ、リムルも、さん付けで呼んでるみたいだし」

「え!? ありがとうございます」

 

 噂からは想像出来ない事を言われて、喜ぶマサユキ。

 

 だがしかし、それに対してリムルが。

 

「あー、マサユキ君。それ、油断すると超危険だから。猫を被ると言うだろ? 気を付けるように」

「ええッ!? やっぱり、様付けします」

「それとか言うな、リムル! で、マサユキ!」

「は、はい!」

「別に、喧嘩売らなきゃ大人しい可愛いニャンコちゃんだから、さん付けで良し! いいね?」

「あ、はい。つ、ツキハさん」

 

 茶々を入れて来たリムルに、ツキハがプリプリ怒りながらマサユキに言って、その勢いに呑まれたマサユキであった。

 

 そして、落ち着いたマサユキは、再度ツキハに聞いて来た。

 

「ところで、つ、ツキハさん。あの移動屋台は、どこで知ったんですか?」

「ん? ああ、リムルに作ってもらったんだよ。これを思い付いた時にね。ね、リムル」

「あ、ああ。そうそう、ツキハに移動する屋台を作ってくれないかと、頼み込まれてねえ」

「なるほど! それで、元いた日本のオンラインサバイバルゲームに出て来た移動屋台を参考にしたんですね。流石です!」

 

 ツキハは、咄嗟(とっさ)にリムルに作ってもらった事にして誤魔化し、リムルもそれに頷くように返した。

 

 ――〝迷宮内移動雑貨屋台〟 

 

 荷台の大きさは、長さ約一・八メートル。

 幅、約一・五メートル。

 高さ、約四十センチ。

 

 荷台の両側に、走行転輪(てんりん)が五ついていて、その前後に履帯(キャタピラー)を動かす起動輪があり、駆動するのは後輪の起動輪の後輪駆動である。

 

 この起動輪は別名スプロケットホイールと呼ばれ、歯車状の突起物で履帯と噛み合い、回転運動を伝達し、履帯を動かす。前輪のは、履帯が外れるのを防止する為に同じものが付いている。 

 

 そして、前部には自転車を模した前輪とサドルまでの部分が付いていて、後輪はなく、サドルの後方部分が荷台と連結されている。尚、前輪部分は固めたゴムをそのまま輪状に貼り付けてあるだけであった。

 

 荷台の屋台部分は高さ二メートル、屋根は三角屋根である。

 そして、左右が跳ね上げ式の扉になっていて、扉部分は八十センチ、残り下一メートルがテーブルになる。

 後方も跳ね上げ式の扉になっていた。

 

 これで、迷宮内を移動して商売をするのである――

 

「これは、不定期ながら迷宮内で出会えたらラッキーみたいなものなんだよ。迷宮内で不意にアレが欲しいとか、アレが切れたから補充したいとか。そんな時に不意に現れる、不定期屋台。その名も、猫の気まぐれ雑貨屋台〝やんのかニャンコロ〟! ってね。どうかな?」

「また変わったネーミングだな、ハハッ。ところでさ、何を売るの?」

 

 リムルが吹き出しならツキハに問う。

 

「まあ、食料品から携帯用のポーション類にその他備品、武器防具の簡単な手入れから剣などの()ぎなどなど」

「へえ。眷属達って、武器防具の手入れも出来んの?」

「うん、出来るよ、リムル。ルヴナン立ち上げ当初は、お金が全く無くてねえ。武器とか自分で手入れしないといけなかったんだよお。だから、あの(眷属)達は、剣も()げるし防具の簡単な修理なら出来るんよ」

「ほお~。ん? あ! そうそう、クロベエが言っていたのを思い出した。眷属達が、剣とかの作製依頼に来た時の注文が、下手な鍛冶職人より的確だったと。移動雑貨屋台、いいんじゃね?」

「ワシも、賛成ですぞ。迷宮内を移動する、いつ現われか知れない、雑貨屋台。上手くやれば、迷宮攻略の醍醐味の一つとなるかもですな」

「ですね。あれって、ゲーム内でも結構助けになったから、現実で迷宮内にあれば面白そう」

 

 リムルにミョルマイル、マサユキもツキハの提案に同意を示した。

 

 そして。

 

「うむうむ。我もその案に賛成するぞ。困った時に突如として現れる屋台。いいではないか、脆弱な人間に救済を、という訳だな」

「アタシもそれ良いと思うよ。迷宮内の移動する雑貨屋台。不定期というところが、何か面白いわね」

 

 と、ヴェルドラとラミリスもツキハの意見に賛成したのだ。

 

 こうして、ツキハの移動雑貨屋台の案は、満場一致で採用されたのであった。

 

 リムルは、とりあえずの会議の纏めに入る。

 

「よし、それでは各階層の階段手前に、休憩部屋を用意するか。そして、料金を支払えば九十五階層の一角に出向けるとしよう」 

「その一角に、宿屋と食堂を用意する訳ですな?

「そうそう。流石に、特別会員専用のエルフのお店を一般開放する気はない。だから、冒険者専用の店を出そうじゃないか。言うまでもないけど、割高料金でね!」

「ふっふっふ、心得ておりますとも」

 

 二人して悪い顔で笑い合う、リムルとミョルマイル。

 

 観光地だと物価が上がる。

 宿代や飲食が高くなるのは、当たり前。

 

 それと同様で、迷宮内部で利用可能な施設は、外の町よりも割高になるのは当然であった。

 

 これで、九十五階層の町の有用性も増すと、ほくそ笑むリムル。

 

「それで、ラミリス。使い捨ての記録地点(セーブポイント)なんだけど、本当に用意出来るのか?」

「もっちの、ろんよ! 余裕ですとも。〝事象の記録玉〟というアイテムでね、使い捨てで登録可能だよ」

 

 ラミリスの創り出したアイテムは、非常に便利な代物だった。

 

 迷宮内ならばどこでも使用可能で、用途は記録地点(セーブポイント)と同じ。

 〝事象の記録玉〟に登録してから死亡したら、記録した地点から復帰可能となる。

  

 〝帰還の呼子笛〟で迷宮外に出た場合は、再入場先が〝事象の記録玉〟への登録地点となるのだ。

 

 これは、迷宮の内部構造が作り変えられても適用される。

 

 同一地点ではないものの、最寄りの安全地帯へと転送されるのであった。

 

「売店にて、高額で販売する事にしましょう。そうですな、移動雑貨屋台でも売ってもらってはどうでしょう?」

「いいね、それ。後さ、三回限定の、周りから見えない音も聞こえないっていう、折り畳み簡易結界付き(かわや)ってのはどう? 既に人間に使ってもらって、試したんだ。出した物は、空間収納式で、漏れない臭わない。使用済は刻印式炎の魔法でスッキリ焼却ってね」

「おお、ツキハ様。それは間違いなく、屋台で売れますぞ!」

「ならさ、それを宣伝目的で少しバラ()きたいな」

「そうね、リムル。じゃあさ、宝箱の希少級(レア)ドロップに交ぜておくよ!」

 

 トントン拍子に話は纏まっていく。

 

「クアーーッハッハッハ、これで少しは楽しみが増えそうだな」

「それは気が早いと思いますけど、攻略を諦める挑戦者は減ると思いますよ」

 

 ヴェルドラとマサユキも、嬉しそうに会話を交える。

 

 こうして問題点が洗い出され、皆で意見を出し合い改善案が提示されたのだった。

 

 

 





 この作品を読んで頂きありがとうございます!

 次回の更新も宜しくお願いします!


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。