忍びが転生したら〝異世界珍道中〟になった件   作:にゃんころ缶

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 お待たせしました。204話です

 ツキハ

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 コハク

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 傭兵商会ルヴナン・真の紋章


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 ※〝打刀〟
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204話 これからの迷宮運営

 

 

 思った以上に有意義な意見出て満足なリムル。

 

 

 一階層はアナウンスを含む、事前体験用の訓練場へと創り直す事となる。

 ミッション形式で案内を行い、最低限度の知識を身に付けてもらう。

 

 これらを利用するかしないかは、各人に任せる事にした。

 その変わり、事前にこれらの必要性を簡略的に説明する事としたのだ

 

 強制してもろくな事にならない、何事も自己責任が大事だと、リムルは判断したのである。

 

 そして、この一階層に限っては、死亡しないよう設定を変えていた。

 

 これに関しては、問題を起こす冒険者を想定したもので、何しろ迷宮運営係員に何かあっては困るからだ。

 とはいっても、この一階層に関しては、ルヴナンの傭兵である人間の男女が幾人か素性を隠して係員として派遣されているので、寧ろ、問題を起こした冒険者の方が大変な事になるのは明らか。

 

 年齢的には四十から五十代の男女なのだが、現役の熟練の傭兵であり、そこらの冒険者などが敵うはずもないのだから。

 

 更に、広い面積を利用して、魔国の新兵を鍛える訓練場も新設された。

 これは、ルヴナンの訓練場を参考にして、リムルが考案した訓練施設である。

 

 ついでに、〝人魔部隊ルードネス〟の訓練場も、ここに移転されたのであった。

 

 

 と、こんな具合に一階層の改装は進められていったのだ。

 

 

 だがしかし、本番は二階層からである。

 

 四階層までは即死系の罠は排除してあり、ツキハの極悪罠系は、五十階層以下から設置する事にした。

 徘徊する魔物もEからFといった低ランクに設定し直す。

 

 ただし、各部屋にはDランクの魔物を配置して、宝箱からは迷宮攻略に有利となりそうな下位回復薬(ローポーション)や金貨や銀貨などが出るように設定された。

 

 金貨などに関しては、移動雑貨屋台に運よく遭遇した際に、必要な物質補給や装備品の手入れなどが行えるようにと、配慮したのだ。

 

 後、魔物から剥いだ素材も、移動雑貨屋台で鑑定買い取りが出来、しかも素材で物々交換も出来るようにした。

 

 そして、装備品等の高価なアイテムは、五階層以下から出現させる。

 

 と、こんな具合に再調整が行われ、難易度の変更を行って行ったのだった。

 

「それじゃあ、議題はこんなもんかな? 何か、他に意見はあるか?」

 

 そうリムルが切り出した時に、ミョルマイルが意見を言いたそうに口を開いて来た。

 

「宜しいですかな?」

「あれ? まだ何か意見が?」

「はい。と言いましても、こちらは迷宮運営の方に関してですな」

 

 そうミョルマイルは、迷宮の内容ではなく宣伝や料金回収について、言いたかったのだ。

 

 いち早くお金の匂いを嗅ぎつけたのか、ラミリスが目を輝かせてミョルマイルを見ていた。

 

「ハハッ、そのように期待されましても、まだまだ資金回収は始まったばかり。今回ワシの報告は、宣伝に関する事なのですよ」

 

 ラミリスに弁明するように言って、ミョルマイルは苦笑した。

 

 しかし、直ぐに表情を改め、ミョルマイルは説明を始める。

 

「貴族の方々の興味を引く為に、褒賞金の算定をしました。金貨百枚でどうでしょう?」

「ほほう? それは、当然――」

「勿論。支払いは星金貨一枚となります」

 

 ミョルマイルはリムルの意を()んで、これを提案して来たのだ。

 

(流石は、ミョルマイル君。前回の失敗から、俺はさっさと星金貨を崩したいと考えていたんだ。何しろ、あのツキハとコハクが全力で嫌がるくらいだからな。星金貨の実情を知ったら、もうね……。それにしても、金貨百枚となると、俺の感覚で一千万円くらいかぁ)

 

 リムルは、元いた世界の貨幣価値で考えてみた。

 

「なあ、それではちょっと安過ぎじゃないか?」

 

 庶民の考えでは大金だが、金持ちである貴族が動くには安過ぎるんじゃないかと考えたリムル。

 

 そんなリムルの疑問に、ミョルマイルはニヤリと笑った。

 

「フッフッフ、その疑問は当然でしょう。この褒賞金は、五十階層を突破した者に与えると宣伝しておきました。初回限定、月ごとに先着一組。ソロ攻略なら総取りですし、パーティを組んでいるならば、皆で分配してもらう形ですな。褒賞はこれだけではなく――」

 

 ミョルマイルの説明によれば、各階層の守護者ごとに褒賞金を用意したと。

 

 更に宝箱には、ランダムで銀貨をメインに、金貨などが一枚から二枚出るように設定したと言う。

 これは、移動雑貨屋台や、九十五階層の宿屋や食堂で消費してもらう狙いがあった。

 先立つモノがなければ、消費も生まれないからである。

 

 十階層ボスの討伐褒賞金は、金貨三枚。

 二十階層のボスは、金貨五枚。

 三十階層のボス討伐は、金貨十枚。

 

 どのボスも、先着五組となっている。

 

 そして、ここから先が本格的に厳しくなってくるのだ。

 

 四十階層のボスには、予定通りにA⁻ランクの嵐蛇(テンペストサーペント)が配置してある。

 この魔物は『毒霧吐息』という超強力な範囲攻撃を持つ。

 下手なパーティでは、一瞬で全滅する程の凶悪な魔物。

 

 ガイ程度のAランク冒険者では、一人でこれを倒すのは無理であろう。

 

 褒賞金は、金貨二十枚。

 

(あれねえ。毒耐性か、毒解除の魔法、それにポーションがないと討伐は無理臭いよなぁ)

 

 先着三名との事だが、そんなにホイホイと討伐出来るも者は現れないだろうとリムルは思った。

 

 五十階層の守護者は、ゴズールとメズールが交代で行う予定だ。

 

 そんな五十階層を突破すれば、褒賞として金貨百枚となる。

 一気に金額が跳ね上がるが、難易度からして当然であろう。

 

「なるほど、よく考えられた配分だな。それで宣伝効果が期待出来るから、貴族達の競争心を(あお)れるという訳だね?」

「その通りです。月ごとの討伐者を発表する事で、挑戦者の競争心も向上する事でしょう。褒賞を与えるのは初回限定ですので、同じ者が何度も褒賞金を得る事は出来ません。これで、過剰な競争が起こる事はありませんでしょう」

「なるほど、な。それで、採算は取れそうなのか?」

「問題は御座いませんな。この三日の売り上げから試算するに、もう少し増やしても良さそうです」

 

 ミョルマイルは、収益からすれば微々たるもので、射幸心や競争心を(あお)れると言う。

 

 リムルとしてはコチラの懐は痛まないし、素晴らしい作戦だとミョルマイルを褒める。

 

「何でしたら、マサユキ様に五十階層を突破してもらい、大々的に宣伝するという手も取れるかと――」

「え!?」

 

 いきなり五十階層を突破してもらうと言われたマサユキは、一瞬固まってしまう。

 

「何、マサユキ様の実力なら、時間の問題でしょう」

 

 それを気にせず、にこやかに言うミョルマイル。

 

(ほほう。流石はミョルマイル君。どこまでも攻める男だねえ。いい感じに計画を練っているようだし、このまま進めてもらってもいいだろう)

 

 ミョルマイルの意見に、大いに賛同するリムル。

 

「いい案だな。これでますますマサユキの名声も高まるし、地下迷宮(ダンジョン)の宣伝にもなる。攻略が停滞した時期を見計らって、その作戦を実行するか」

「ワシもそう考えておりました。流石はリムル様。グッフッフ」

「そうでもないさ、ミョルマイル君。ムッフッフ」

 

 途端に悪い顔になって笑い合う、リムルとミョルマイル。

 

「あのう、僕の意見は……」

 

 マサユキが何か言いたそうにしていたが、そこへツキハが来てマサユキの肩をポンと軽く叩き、諦めろと言う顔でにこやかに笑みを浮かべる。

 

 

 だがしかし。

 

 ミョルマイルの話はここで終わりではなかった。

 

「そこでリムル様に相談なのですが、もっと大きく仕掛けたいと考えておるのですよ!」

 

 ミョルマイルが更に、これでもかという悪い顔を浮かべて、言ってきたのだ。

 

「言ってみなさい、ミョルマイル君」 

 

 リムルも爽やかに笑みを浮かべて、ミョルマイルに応じる。

 

「周辺各国の貴族連中の度肝を抜くように、最下層突破者には褒賞として星金貨百枚と公表したく考えておるのですよ! しかし、これには条件が御座います。本ボス、裏ボスを倒してこその、真の最下層突破褒賞として出すのです!」

「――!?」

「ほほう?」

「えっ!?」

「ほぉ~?」

「えっと、それって日本円にしてどのくらいなんですか?」

 

 リムル達が驚くと、マサユキが星金貨百枚の価値を聞いて来た。

 

「うーん。日本円にして、およそ十億円かな?」

「じ、じゅ、十億円!?」

 

 余りの金額に、開いた口が塞がらないマサユキであった。

 

「吹っかけるねえ、ミョルマイル君」

「ふっふっふ。これくらい言えば、腰の重い連中も動かざるを得ないでしょうな。こぞって迷宮を攻略に参加する為に、冒険者や傭兵を雇おうとするはずですわい。それと、ツキハ様」

 

 ここで神妙な顔付きでミョルマイルが、ツキハに言った。

 

「なに?」

「身分を隠した一部の方や、表のルヴナンの傭兵なのですが――」

「うん、わかってるよ」

 

 ミョルマイルが全部を言わない内にツキハがそれを了承した。

 

「貴族の用心棒や、依頼が来て雇われたうちの傭兵達には、適当に攻略するように(めい)を出しておくよ。ただし、あまり手を抜くと、うちの信頼に関わるから、そこは勘弁よ?」

 

 いつもの口調でコテリと首を傾げるツキハ。

 

「ええ、わかっておりますとも」

「なら、いいよ。精々、適当に貴族どもに利益をもたらして、ルヴナンの利益はそれ以上に頂くとしようかね。にゃふふふ」

「流石は稀代の悪と言われた、ルヴナンですな。ふっふっふ」

「褒めても何も出ないよ? にゃっふっふっふ」

 

 これでもかという悪い顔で頷き合う、ツキハとミョルマイルであった。

 

(こいつ等、何て悪い顔をしてるんだよ。怖えわ!)

 

 リムル、自分の事を種に上げて内心で突っ込みを入れる。

 

 そこへ、ラミリスが心配そうに叫ぶ。

 

「で、でも、そんな大金……」

 

 しかし、自信あり気なミョルマイルは動じない。

 

「この迷宮の支配者はどなたでしたかな?」

 

 そして、挑発するようにそう言って、チラリとヴェルドラを見た。

 

 それに反応するヴェルドラ

 

「クックック、クアーー―ハッハッハ! 我だ。偉大なる〝竜種〟たるこの我、〝暴風竜〟ヴェルドラである!! そして! 我の裏に控えるのが、番外魔王ツキハであるぞ!!」

 

 これでもかと偉そうに名乗りを上げ、ツキハも付け加えるヴェルドラ。

 

「え!? 〝暴風竜〟ヴェルドラって、何処かで聞いた記憶が……」

 

 マサユキが何か気になり思案顔になるが、ミョルマイルは悪人顔で頷き、ツキハもまた同じく悪人顔で頷いていた。

 

「無論、存じておりますとも。ヴェルドラ様を倒せる者など、どこを探しても見つからぬでしょう? ツキハ様に関しては、現魔王でもない限り無茶を通り越した何かでしょう?」

「当然だとも。ミョルマイルよ、貴様は実に賢い男だな。クアッハッハッハ!」

「フッフッフ、いえいえ。これも普段から、リムル様より勉強させて頂いておる成果で御座いますれば」

 

(って、俺かよ)

 

 ヴェルドラとミョルマイルに会話に、内心でぼやくリムルである。

 

 リムルはヴェルドラとミョルマイルの笑い声が響く中、ミョルマイルの提案について考えてみた。

 

(提示した褒賞金は、星金貨百枚。破格の金額だが、最下層突破、それもヴェルドラと裏ボスのツキハを倒す必要があるという事。うん、無理だわ、それ。詐偽っぽいけど、嘘は言っていない。というか、それ以前にだな。百階層まで到達出来る者がいるかどうかも怪しいのが現状だわ) 

 

 とりあえず、こう結論付けたリムルであった。

 

「確かに。俺達の迷宮は、攻略不可能だと思う」

「うんうん」

「実に当然の話よな」

「そうそう、ヴェルドラを倒せる者はいないって。あたしの出番は、永久にないわよ」

「その通りです。五十階層までならともかく、それ以降の階層の難易度ともなると、ワシには想像もつきませんわい。ツキハ様とミリム様が捕獲したドラゴンなどもおるのです。一体どこに、ドラゴンを倒せる冒険者がおるのやら」

 

 そう言って、若干呆れた顔を浮かべるミョルマイル。

 この豪胆で強欲な男でさえ呆れるのだから、迷宮の防衛力は過剰もいいところなのだろう

 

「星金貨百枚、支払う必要はなさそうだな」

「もとよりそのつもりです。これは貴族向けの撒き餌ですので、大盤振る舞いの金額でも問題ないと愚行しますぞ。それに、聖騎士(ホーリーナイト)の皆様方が挑戦するそうですが、結果がどうなるか、実に楽しみですな」

 

 ミョルマイルは口ではそう言うも、攻略は絶対に出来ないと確信してるようだった。

 

 そして、リムルも同様であった。

 

「ミョルマイル君、その方向で話を進めてくれたまえ!」

「はは、承りました」

「しっかりと、これから参加したがる者が増えるような宣伝を頼むぞ」

「勿論で御座います。魔王からの挑戦状という感じで、煽るだけ煽って見せましょう!」

 

(それって、宣伝になるのか? いや、待てよ。今後も魔王を名乗る以上、無謀な命知らずが俺に挑んで来る可能性は高くないか? ツキハとコハクが言ってよな。番外魔王に成り立ての頃は、やれ討伐だ、人間や魔物から勝負を挑まれまくって大変だったと。今や、そのツキハとコハクも悪名と同時に、凄まじいまでの凶悪さが世界に知れ渡った結果が今だからなぁ。かたや俺はいうと、だな。そんな者達の相手をイチイチするのは面倒だ。だから、百階層を突破した者に挑戦権を与えると触れ込めば……? そうだ、そうだよ。そうすれば、ツキハと遊んでばかりいるヴェルドラの価値も高まるというものじゃね。うんうん、これで行こう)

 

「その挑戦に打ち克った者には、俺と戦う権利をプレゼントでも言っておいてくれ。もしも周囲から俺と戦えとか煽られても、のらりくらりと話を()らしておくといいよ」

「わかりました。正直、リムルさんと戦う気なんてないですからね。助かります」

「わかってるって。それじゃあミョルマイル君、頼んだよ!」

「お任せ下さい。それでは、ワシはこれで」

 

 話が纏まるなり、そそくさと席を立つミョルマイル。

 

 そのままリムル達に一礼して、部屋から去って行ったのだった。

 

 リムルは見送りながら、(ホント、仕事人間だねミョルマイルは)と、誰にも聞こえないよう小さく呟く。

 

それからリムル達は残った者と軽く雑談をし、緊急会議を終えた。

 

 

 そしてその日の内に、迷宮の再調整を行ったのだった。

 

 

 





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