忍びが転生したら〝異世界珍道中〟になった件   作:にゃんころ缶

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 お待たせしました。210話です

 ツキハ

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 コハク

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 傭兵商会ルヴナン・真の紋章


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 ※〝打刀〟
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210話 ディアブロ、とんでもない者達を勧誘する為、悪魔界に戻る

 

 

 迷宮運営緊急会議を終えた、翌日。

 

 

 時間は夕方を過ぎ、夜になろうとしていた。

 

 そしてリムルは、真面目に執務机に座り仕事中である。

 

 昼間は現地の見回り――リムル(いわ)く、遊び歩いている訳ではないらしい。

 では、夜は何をしてるとのかというと、夜に報告を受ける毎日を送っていたのだ。

 

 だから今は、執務館にある専用部屋で仕事に励んでいたのである。

 

 仕事の大半はリグルドが行っているが、リムルの決済が必要なモノもある為、この執務室に(こも)っていたのだ。

 

「リムル様、こちらがミョルマイル殿からの報告章と、ルヴナンへ依頼した案件の報告書となります」

 

 そう言って、シオンがリムルに紙の束を渡して来た。

 

「うむ、御苦労(お、シオンが真面目に仕事をしている。ちょっと驚きかも)」

 

 リムルはそんな事を思いながら報告書を受け取り、早速報告書に目を通していく。

 

 暫く、パラ、パラッと、紙のめくる音が静かな執務室に響いていた。

 

 一つは、昨日の迷宮運営会議で出た案を元に、ミョルマイルが纏めたものだった。

 

 そして、もう一つはルヴナンが現在掴んでいる、〝歩き巫女(ウォーキングシャーマン)〟から放たれている〝草〟についての報告書である。

 

(やっぱりなぁ。〝歩き巫女〟の〝草〟に付いては、当たりは付いても確証が得られずか。同じ〝忍び〟の者の組織だから、忍び潜む事はお互いお手の物だものな。これは、時間が掛かりそうだ。でもアイツら、よくここまで臭いヤツをあぶり出したものだよ。これに関しては焦りは禁物だが、悠長にもしていられないのも事実だし。う~ん、ジレンマだな、こりゃ……。まあ、慌てず悟られず慎重にだ。そして、迷宮運営は順調そうだから、こっちは安心安心、と)

 

 報告書を読み終えて、ホッと一息をつくリムル。

 

「とりあえずは、順調だな」

「喜ばしい事です」

 

 リムルの呟きに、ディアブロが頷く。

 

「昨日の今日で、酒場の売り上げが一割も向上しているしな。低ランクの挑戦者達に金が回ると、街の住人達にも良い影響が出そうだな」

「はい。全てはリムル様の読み通りかと」

 

 リムルの言葉に頷きつつ、そっとディアブロが紅茶を()れる。

 

 そしてリムルは、()れられた紅茶を一口飲む。

 

 すると。

 

「ん、あれ? いつもと味が違うけど、茶葉を変えたりした?」

「お口に合いませんでしたか?」

「え、いや、そんな事はないけど……」

 

 そう、リムル的には不味いとかそんな事はなく、ただ、いつもより苦みが少し強く感じていたのだ。

 

 そこへ、シオンが。

 

「す、直ぐに取り替えますので!」

 

 と、慌てたように言って来たのである。

 

(んん、まさか、おいおい、まさかまさか!?)

 

 リムルの直感が何かを訴える。

 

「もしかして、これは――」

「はい。それは第一秘書殿が、どうしてもと自らの手で用意されました。私が毒見をして、問題ない事は確認済みです」

 

(お、おう。しかし驚いたな、シオンの淹れた紅茶がここまで美味しいなんて。それにしても――)

 

 しかし、リムルが驚いたのはそれだけではない。

 

 ディアブロが、シオンに協力をしていた。

 これが、二重に驚きだったのだ。

 

「まさか、お前がシオンに協力をするとはね」

 

 リムルには毒は効かないので、別の意味での味見だったのだろう。

 

「ベニマル殿も毎日味見をするのを嫌がっておいででしたし、サンコに限っては必死な顔で逃げ回っていましたから、仕方ありませんでしたね。そのせいで、体調不良という初めての経験をさせ頂きましたし、何事もやってみるものですね」

 

 そう、笑顔で答えるディアブロ。

 

(あ、うん。そんな体験はする必要はないと思うんだけど、サンコですら逃げ出すほどだし。だけど、今回は素直に感謝だな。それにしても、シオンはとても嬉しそうだ。シオンも成長してるんだな。下手な毒物より強力な手料理しか作れなかったあのシオンが、スキルも使わずに紅茶を……)

 

 感無量とはこの事ばかりに、リムルは次の言葉を口にする。

 

「ディアブロ、ありがとう」

「いえいえ」

「シオン、よくやった。頑張ったな!」

「はい! ありがとうございます!!」

 

 そう言ったリムルは、今度はシオンの手でお代わりを()れてもらった。

 

 残った書類に目を通しながらリムルはふと、ディアブロへの褒美がまだだった事を思い出す。

 

「そう言えば、お前にはまだ褒美を与えてなかったな。ファルムス攻略も見事だったし、帰って来てからも雑事を任せてしまってた」

「いえいえ、私はリムル様の御役に立てる事が望みですので――」

「と、言われてもなぁ……」

 

(ハクロウには休暇を与えたし。今も嬉しそうに、モミジの修行を行っている。で、ゴブタには九十五階層にある特別会員専用のエルフのお店に連れて行った。そこで、ちょうどヴェルドラと豪遊しているツキハと偶然に会って、ゴブタが会員証も欲しがったんだけども、会員証を与えるのまだ早い。ゴブタにはこれをエサに、色々と頑張ってもらうつもりなんだけど。今は、ミリムが連れ去ったままなんだ……無事でいろよゴブタと、心の中で祈っておこう。まあ、他の者にもそれぞれに、適当と思える褒美を与えたんだから、ディアブロだけ何もないという訳には、いかないよなあ……)

 

 などと、既に褒美を与えた者達の事を考え、頭を悩ませるリムル。

 

 そこへ。

 

「それでは、一つ許可して頂きたい事が御座います」

 

 と、ディアブロが言って来た

 

「言ってくれ」

「はい。では、お言葉に甘えまして。私も、雑用を任せられる部下が欲しいと思います」

「あ、お茶の用意とか? やっぱり嫌だよな、そんな雑用は――」

「あ、いえ。それは違います。リムル様の身の回りの御世話は、この私の大事な仕事ですので! そうではなく、人の国を滅ぼすような、そんな雑事をですね。ツキハやコハクの眷属達みたいな、代わりに行わせる手下を用意しようか、と」

「はい? もしかして、アイツ(眷属)らって小国くらいなら落とせたりする?」

「ええ。今の眷属達なら、いえ、今のイチコとニコにサンコ、そしてイチオなら、小国くらいなら単独で落とせるかも知れませんね」

「マジかよ!? あの、最初に眷属になった四人だけ、眷属の中でも別格って聞いたんだけど、本当だったんだな。ヤベえな、アイツら……って、そうじゃねえ。それ雑事じゃねえし、大仕事と言わないか?」

「些細な事ですよ、リムル様。それにそうすれば、私は常にリムル様のお(そば)におれますので」

 

 笑顔でそう述べるディアブロ。

 

 しかし、次の言葉で笑顔のディアブロの目だけが鋭くなる。

 

「先日の出来事。私がお傍にいない時にリムル様に対して、無礼千万な行いが行われた事が私は許せないのですよ。愚かな侵入者チヨメ・モチヅキと、カゲロウという女。今度出くわしたら、チリも残さずに消して差し上げましょう。クフッ」

 

(笑顔でその目付きはやめろって、怖いわ!)

 

 狂艶(きょうえん)たるディアブロの目付きに、背筋がゾッとしたリムルであった。

 

「まあ、それはいいとして。でもな、そんな力のある者を、お前の下に付ける訳には――」

 

(うーむ。うちで一国を落とせるような、知略と武力を備えているような者となると、それこそベニマルとかソウエイくらいしかいない。どうしようかな、ディアブロの願いは叶えてやりたけども、うーーん……)

 

 どうにもこうにも結論が出ないリムルだったが、そう考えたのは早計だった。

 

「いえいえ、ベニマル殿の上に立ちたいなど、そのようなつもりは毛頭御座いません。古い知り合いに心当たりが御座いますので、少し勧誘してみようかと」

「ほう。それなら別に構わないけど。資金とか必要か?」

「いえ、金銭には興味を示さないでしょう。その代わりと言っては何ですが、依代(よりしろ)となる肉体を用意して欲しいのです」 

 

(ああ、なるほど。ディアブロの知り合いとは、多分悪魔族(デーモン)だな。依代(よりしろ)かぁ、ツキハとコハクの憑依体も作らないとだし。よし、こうなったら、ツキハとコハクの憑依体を採算度外視の試作体として、そのデータを(もと)に、量産型の依代(よりしろ)を作成しよう。なんか、面白くなって来たぞお)

 

 などと、急に研究意欲を(たぎ)らせるリムルであった。

 

「わかった。ベレッタに与えたようなものでも、別にいいんだろう?(人間の死体でとか言われても困る)」

「はい。文句は言わせません」

「そうか(ならば良し!)」

 

(あ、そう言えば、ラミリスからも、トレイニーさんの姉妹達にも、肉体を用意してあげて欲しいと頼まれてたのを思い出した。いっそのこと、みんな纏めて作ってやるかあ。こりゃあ、忙しくなるわ)

 

 と、どこか嬉しそうに考えるリムルだった。

 

「でさ、褒美はそれだけでいいのか?」

「問題ありません。ですが、私の子飼いにしようと考えている者達にも、配下がいたように記憶しております。その者共もついでに引き抜こうと考えおりますが、宜しいでしょうか?」

 

(ほんと、相変わらず凄い自信だ。断られるなど、まるで考えていない口ぶりだな、ディアブロは)

 

「ルヴナンみたいに、給料は出ないけど、大丈夫か?」

「その者達にも肉体を与えて頂ければ、皆も喜んでリムル様に御仕えするでしょう!」

 

 有無を言わせぬとばかりに、ディアブロが断言する。

 

「ふむ。それで、何人くらい従えるつもりだ?」

 

 とりあえずは、色々と準備する手前、配下にする人数を聞くリムル。

 

「そうですね、精々数百体、多くてもツキハとコハクのところの眷属と同数でしょうか、と」

「多いわ!!ッ」

 

 流石のリムルも、あまりの多さに盛大に突っ込みを入れる。

 

(それって、全部が悪魔族(デーモン)なんだろ? どんな大戦力なんだよ……って、あれ? そう言ったらツキハとコハクの眷属だけでも大戦力だよ、な。え? 何で、今までそう思わなかったんだろう?)

 

《解。恐らく、最初期に『言霊逸(ことだまそ)ラシ』を仕掛けられていたのでしょう。しかし、主様(マスター)がそう思った瞬間にその効力は失われました。それに、眷属達の普段の行いがその効果を増幅していたと推測します》

『ああ、なるほどね。確かに、俺の中の眷属達の印象って、基本、何やってんだ、お前ら? みたいな感じだったものな』

 

 リムルのふとした疑問に、智慧之王(ラファエル)が答え、一応それに納得をするリムルであった。

 

「でだ、お前はたった一人で、手下集めの戦争でも始める気か!?」

「いえいえ、私と戦いになるとは思えません。なったとしても、苦戦はしないかと」

 

 平然とそう答えるディアブロ。

 

「それって、本当に大丈夫なのか?」

 

 ディアブロに、少し心配気味に尋ねるリムル。

 

「確かに、数だけ多くても仕方ないですね。わかりました。私が厳選し、不要な者は処分して――」

「違う、そうじゃない! お前自身が、大丈夫なのか? と、俺は言ってるんだよ」

 

 リムルがそう聞き返すと、ディアブロは嬉しそうに笑った。

 

「何も問題は御座いません」

 

 あまりにもキッパリと断言するディアブロを見てリムルは、心配するのも馬鹿馬鹿しいと思うも、(もしかして、ディアブロって、俺よりも強いかも知れない……)などと、思うリムルだったのだ。

 

「じゃあ、千体分の依代(よりしろ)を用意しておく」

「宜しいのですか?」

「ああ、これは褒美だからな。だからお前は、怪我をしないように気を付けて行ってこい」

 

 リムルは、心配する必要はないだろうがとも思うも、一応そう言っておいた。

 

 それを聞いてディアブロは、感極(かんきわ)まったように一礼をする。

 

「承知しました。断腸の思いですが、(しばら)くの間、リムル様のお傍を離れる事をお許し下さい」

 

 そしてディアブロは、大袈裟過ぎる挨拶をしたのである。

 

「後の事は私に任せて、さっさと行け」

 

 邪魔者を追い払う感じに、シオンが言う。

 

 シオンとディアブロ。

 その二人を見てリムルは、(仲が良いのか悪いのか、判断出来ないな)と、思うのであった。

 

 こうしてディアブロは、とんでもない者達の勧誘へと、悪魔界に戻って行ったのである。

 

 

 ――ちなみに余談だが、(のち)にツキハとコハクの憑依体をリムルが作ったとディアブロが知る事なったのだが。

 

 それを知った夜にディアブロは、ツキハとコハクの自宅へと(おもむ)き、何を二人と話したかは定かではないが、ブチ切れたツキハと大喧嘩が勃発してしまったのである。

 

 コハクは呆れたように「しょうもな」と言い、ルヴナン敷地に広域の防御結界を張り、敷地外に被害が及ぶのを防いだ。

 

 必死の形相で逃げ惑う眷属達。

 

 キャットタワーは二人の攻撃の余波で粉々に粉砕され、キャットタワーに避難していた忍魔猫達は放物線を描きながら吹き飛んでいた。

 

 コハクの防御結界により、数十人の眷属達は敷地外に逃げる事も出来ず、阿鼻叫喚の地獄絵図と化したルヴナン敷地内。

 

 激しくぶつかり合う、ツキハとディアブロ。

 

 お互いが放った魔力弾の爆発余波が、周辺の被害を拡大していく。

 

 そして、ロモコ達もキャットタワーや、ルヴナンの温泉浴場などに来ていたが、ロモコが浴場でゆったりとしている最中、ディアブロが敷地内に現れたのを察知し、コハクが防御結界を張る前にロモコ達は脱兎の如くルヴナン敷地から逃げ出していて、被害を免れていた。

 

 これは、真っ先にロモコが敷地から逃げ出して、それに他の班員が追従した形であったのだ。

 (なお)、ロロロオは観光娯楽地区に自分が経営する小さなBARを開いていて、そこのマスターをしていたので、ここにはいなかった。

 

 そして逃げ遅れた眷属達は、ブチ切れ状態のツキハにあらゆる暴言を浴びせながら、逃げ惑う。

 だが、この惨状の中、ツキハに暴言をぶつける眷属達の胆力は、中々のものである。

 

 二階建てのルヴナン本店は半壊。

 ツキハとコハクの自宅、全壊。

 ツキハの工房、全壊。

 ルヴナン温泉浴場、半壊。

 

 教授の自宅兼研究所は、教授が起動した防御結界により被害は軽微であったが、次の日に教授がツキハに対してニコニコ笑顔で苦情を入れ、ツキハが平謝りする事になる

 

 野良魔猫用の餌場と砂のトイレは、奇跡的に無事。

 ちなみに野良魔猫達は、ロモコ同様危険を察知して、即座に敷地内から逃げ出していた。

 

 最終的に、この二人の大喧嘩を察知したリムルが、喧嘩の仲裁に介入。

 

「お前ら、いい加減にしろ!!」

 

 と、盛大な雷を落とし、この大喧嘩は終息したのであった。

 

 そして、ツキハとディアブロは、リムルから執務室へと連行されてしまう。

 

 リムルは、ドカッと執務机の椅子に腰を下ろすと。

 

 開口一番、ドンッと机を叩き。

 

「二人ともなあ、何でいつも喧嘩になると、ガチの殺し合いに発展するんだよ!? 少しはなあ、自重しろ!!」

「あ、うん、なんかごめん」

「申し訳ありません、リムル様」

 

 リムルの怒りに、シュンとなるツキハとディアブロ。

 

「大体、お前らの喧嘩は、喧嘩とは言わないんだよ! 周りの被害が大き過ぎるんだからな――」

 

 と、矢継ぎ早にお叱りの言葉が飛び出して来る、リムルである。

 

 

 こうして、懇々(こんこん)とリムルから説教を受ける羽目になった、ツキハとディアブロであったのだ。

 

 

 それで、半壊したルヴナン本店はどうなったかというと。

 ルヴナン本店の修理にゴブキュウ達が突貫工事をしても数日を要し、その間の営業は臨時休業となる。

 

 キャットタワーはリムルが作り直して、ツキハとコハクの自宅や、ツキハの工房に教授の自宅兼研究所の修理は、本店の後に建築作業と修理作業が行われた。

 

 

 そしてツキハはというと――

 

 リムルからの説教から解放された翌日に、コハクから臨時休業の間だけ限定の〝裸抱き枕の刑〟を喰らったのは、言うまでもない……。

 

 

 

 





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