忍びが転生したら〝異世界珍道中〟になった件   作:にゃんころ缶

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 お待たせしました。214話です

 ツキハ

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 コハク

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 傭兵商会ルヴナン・真の紋章


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 ※〝打刀〟
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214話 信仰と恩寵の秘奥

 

 

 運営会議が終わった翌日。

 

 

 リムルはシュナのところに向かう。

 

 そして、シュナを連れ立ってアダルマンのいる六十階層に向かったのだ。

 

「アダルマン、ちょっと邪魔するよ」

「おお、これはこれはリムル様!! 今回の件、心より痛痒(つうよう)を感じております。如何なる処罰も、甘んじて受ける所存で御座いますれば……」

「いや、それに関しては俺達の認識が甘過ぎた。今のお前には聖騎士の相手は厳しいだろうし、敗北は仕方ないと思う」

「――いえ、自分の不甲斐なさを嘆くばかりです。あのような未熟な者共に後れを取ってしまい……」

 

 今のアダルマンは、力を失った死霊(ワイト)でしかない。

 

「でだ、率直に聞くが、いいか?」

「はい、何なりと」

「今のお前は、どの程度の<神聖魔法>が扱える」 

 

 <神聖魔法>

 

 大気中の魔素を集めるでもなく、自身の魔素量(エネルギー)にも左右されない。

 知識と詠唱時間があれば、自己負担が少なくても大魔法が行使可能なのである。

 

 但し、これには〝神との契約が成り立っている場合に限る〟という前提が必要不可欠なのだ。

 

 この場合の神とは、魔素を構成する特殊な粒子である〝霊子〟を扱える存在を指す。

 

 この世界に概念的な〝神〟が存在するのかどうかは、まるで関係はないのだ。

 

 そう、〝霊子〟に直接干渉可能な存在を、〝神〟と呼称しているだけである。

 

 ルミナス教において、魔王ルミナスが〝神〟と(あが)められているように。

 

 アダルマンはルミナス教の熱心な信徒だった。

 だからこそ、死霊の王(ワイトキング)の身でありながら、〝霊子崩壊(ディスインテグレーション)〟が行使可能だったのだろう。

 

 だが今は、信仰対象がルミナスからリムルに変わり、〝神との契約〟が一旦破棄され、契約が成立がされないのではないかと、リムルは考えていたのだ。

 

「はい、まるで扱えぬようになりました。低階梯(かいてい)の魔法さえも、今の私には扱えません」

「ふむ、そうか」

 

(やはりな。<神聖魔法>も、要は<精霊魔法>の仕組みと同等なんだよな。契約に従い、上位存在の力を力を借り受けていただけ。あのヒナタでさえも、ルミナスの力を借りないと<神聖魔法>が使えない。でも不思議なのがコハクの場合は、ツキハを上位存在とは認識してはいない。あくまでも対等だと、そういう認識だ。まあ、智慧之王(ラファエル)さんの推測では、信仰という概念を愛情というものに捻じ曲げて、行使可能にしていると言っていた。〝思いの力〟、これはどちらにも共通するからだろうか? とすれば、ツキハは〝霊子〟を扱える存在という事になるよな。でもアイツ、〝霊子〟を使った技はなかった気がするけど……)

 

《告。恐らくツキハは、〝霊子〟以上のモノを欲したのではないかと、推測します》 

 

『え? それって――』

 

《解。精神波(サイコウェーブ)です。ある意味、二人が体内で作り出す超魔電粒子はその副産物とも言えるかもしれません》

 

『でも、〝霊子〟の方が強力じゃないか? あらゆるものを貫通する性質を持つし。俺の『絶対防御』でも完全に防げない気がするけど?』

 

《告。個体名:ミリムが持つ最強技、竜星爆炎覇(ドラゴ・ノヴァ)。これに含まれる〝星粒子〟は、〝霊子〟をも凌ぐ性質を持ちます。そしてこれは、唯一個体名:ミリムだけが操れる特殊粒子。過去にツキハは、個体名:ミリムとの戦いの中、流星拡散爆(ドラゴ・バスター)でコハクを失いかけています。この技にも星粒子が含まれています》

 

『ねえ、先生。その記憶もコッソリ覗いたの?』

 

《否。これはツキハから許可を受け覗いたものです》

 

『許可を受けたんならいいけども。じゃあさ、その〝星粒子〟をも超えるモノを目指しているって事なのか?』

 

《是。超えるどころか、自分の技全てに適応出来る性質を持たす事を目的としています》

 

『うーむ、何かそれ、とんでもなくない事を目指してないか?』

 

《是。ツキハとコハクは、自分達より強い者が現れる事を常に想定して生きて来ています。この思考はある意味、油断ならぬ脅威とも言えるでしょう》

 

『なるほどなあ。何があの二人をそこまで駆り立てるんだろうね?』

 

《……情報が足りません。真意は推測不能。但し、一つだけ言える事があれば、それは二人の自由の為だと》

 

『自由、猫は自由、かぁ。ほんと、訳わかんねえヤツラだよな。ククッ』

 

《是》

 

 

 そんな事を思いながらリムルは、シュナに何故<神聖魔法>が行使できたのか聞いてみた。

 

「それではシュナに聞くけど、<神聖魔法>をどこまで操れる? そして、その信仰対象は何だ?」

「私の場合、厳密に言えば<神聖魔法>とは異なります。ユニークスキル『解析者(サトルモノ)』で模倣してみたのですが、これが案外上手く作用しました。ちなみに、忍魔術も模倣です」

 

(なるほど、模倣か。あの時に『聖浄化結界(ホーリーフィールド)』の解析をmかせていたから、その副産物で一部の<神聖魔法>なら模倣出来たんだろう。忍魔術、アレこそ模倣から入ってるしな)

 

「私が信じるのはリムル様ですし、その御力を疑ってはおりません。なので、何となく出来るのではないか、と感じたのです。忍魔術は、あの印を切る動作を見ていたら、魔力の流れを制御しているように見えたので、やってみたという、感じなのです」

「――は? 私と戦った時、魔物でも<神聖魔法>を行使出来ると豪語していたのは……?」

「ハッタリですよ。確信しておりましたが、それを証明してくれたのは貴方ですわね。それに、後で知ったのですけど、コハク様は<神聖魔法>を行使出来ますよ」

「な、何と……」

 

 笑顔で言い放ったシュナ。

 

 それを聞いたアダルマンは、骨だけなのに、何とも言えないような表情をしていた。

 

(うーむ。骨なのに表情豊かな男だな。さて、それはともかくとして――)

 

「では、シュナとアダルマンには、〝信仰と恩寵の秘奥〟を授けようと思う。これはルミナスから学んだばかりで、極秘事項だからそのつもりで頼む」

「〝信仰と恩寵の秘奥〟――」

「お、おおお……ついに私にも、真なる神が……」

「なるほど……。それでは私も、リムル様を信じる事で<神聖魔法>の習得が可能に?」

「うん、出来ると思う。暇な時にでも研究して、アダルマンの相談に乗ってやって欲しい」

「わかりました。私もどこまで習得出来るのか、とても楽しみです」

 

 歓喜するアダルマンに、嬉しそうに微笑むシュナ。

 

 こうしてアダルマンは<神聖魔法>を行使出来るようになり、シュナはシュナでよりレベルの高い<神聖魔法>を習得していったのだった。

 

 

 それから翌日。

 

 

 約束の時間にリムル達は集まった。

 

 

「へへへ、アダルマンの階層はバッチリだよ!」 

 

 リムルを見るなりラミリスが、自慢気に報告をする。

 

 どうやら昨晩の内に玉座の間を完成させていたのだ。

 

「おお、ありがとう。これで後は、アダルマンに任せておけばいいな」

「大丈夫か?」

 

 リムルの言葉に、ヴェルドラが少し心配気味に問う。

 

「うーん、昨日までよりはマシだろ。まあ、相手がAランクなら厳しいと思うけど、手の内を(さら)け出すくらいはやってくれるさ」

「そうか。ならばいいだろう」

 

 リムルはヴェルドラに、そんなに心配はいらないといったように返し、ヴェルドラもそれに納得を示す。

 

(ふふっ。対策は、二重三重に行うべし、ってね。という訳で、早速実行に移すとしようか)

 

 リムルがそう思った矢先――

 

「何をやっているのだ! 聞いたぞ、ワタシのドラゴン達がやられたそうではないかッ!! ツキハは何をやっているのだッ!!」

「え~、あたしはアンタの手伝いで捕獲しただけだしぃ。てかさぁ、四匹ともアンタが面倒みるって言ったじゃん」

 

 ミリムがプンプン怒りながら、会議室に怒鳴り込んで来たのだ。

 

 ツキハは怒鳴られながらも、我関せずと返す。

 

 そして怒鳴り込んで来たミリムの手には、ボロ雑巾みたいになったゴブタの姿が、あった。

 

「へへへ、自分、やったすよ……。クリア、して、やったすよ!」

 

 と、うわ言のように繰り返すゴブタ。

 

 それでも、意識はしっかりしてるようだった。

 

(おうおう。ミリムの鬼のような修行に耐えたのか……ボロボロじゃねえか。とても強くなったようには、見えないが、大丈夫なのだろうか?)

 

 リムルの心配などお構いなしに、ミリムは大きく頷いた。

 

「うむ。ゴブタは実に見事であった! ヘルモードをクリア出来るとは思わなかったぞ」

「ヘルモードって、どんだけよ」

「黙るのだ、ツキハ」

「あいあい」

「返事は一回なのだ」

「あい」

 

 茶々を入れて来たツキハを窘めつつ、満足そうにゴブタを褒めるミリム。

 

 するとそこへ。

 

「それならば、我が〝ヴェルドラ流闘殺法〟も伝授して――」 

「駄目なのだ! ゴブタはワタシの弟子なのだぞ!」

 

 ヴェルドラが口を挟んで来て、燃え尽きているゴブタを他所(よそ)に、二人は言い合いを始めてしまう。

 

(これは……関わり合いにはならない方がいいだろうな。うん、ゴブタの意志に任せるとしよう。ツキハも心得てるよな。ヴェルドラとミリムの言い合いに交ざろうともしない。流石、ミリムとの付き合いが長いだけあるわ)

 

 そんなゴブタを(ねぎら)うようにリムルは、ゆっくりと休むように告げると、ゴブタは直ぐに仮眠室に向かう。

 

 仮眠室へ着いたゴブタは、倒れ込むようにベッドに横たわると、そのまま意識が飛び、深い眠りへと落ちる。

 

 そして、ランガも。

 

「わ、我が主よ、た、ただ今戻りました」

 

 ゴブタ同様にランガもまた、ボロボロだった。

 

 そんなランガをリムルは優しく撫でて、ランガも嬉しそうに目を細める。

 

「よく頑張ったな、俺の影の中で休んでいいよ」

 

 リムルがそう声をかけるなり、ランガは素早くリムルの影の中に入ったのだった。

 

 

 ちなみに、後で元気になったゴブタに、リムルがどういった訓練をしたのか聞いてみたところ。

 

 修行内容は主に戦闘訓練ばかりだったのだそうだ。

 

 自分と同等か、若干上の魔物達相手に、ひたすら戦闘を繰り返していたとの事。

 

 そして、ランガとの意思疎通が完璧になってからは、ひたすらカリオンやミッドレイ、番外魔王眷属のイチオとの戦いに明け暮れていたのだと。

 

 何故、番外魔王眷属の中でイチオだけかというと、こういった訓練には一番慣れているからとの事だった。

 要は、やらかしが眷属の中ではイチコを除き、イチオが一番少ないのも理由である。

 

 とにかく、この三人を相手に、よく修行に耐えたと言えるゴブタとランガ。

 

 だから、ミリムが褒めたのであろう。

 

 それに、ゴブタはミリムから、「お前はどう頑張っても、それ以上の魔素量(エネルギー)は期待できないな。でも、安心するのだ。ランガと『同一化』出来るなら、その問題は解決するぞ。ならば後は、その増加する大きな力を使いこなせば良い話なのだ! 魔素量(エネルギー)の増加はランガに任せて、お前はひたすら感覚を磨くが良い!」と、言われたそうだ。

 

 「それ以降ずっと、戦闘感覚(バトルセンス)を磨く特訓っすよ」と、ゴブタは笑顔で言った。

 

 そして、エクストラスキル『賢者』を獲得し、思考加速も可能になったのである。

 

 

(大したヤツだ、ゴブタは。普段は飄々(ひょうひょう)としているのに、やる時はやる男なんだよ) 

 

 と、リムルは思うのだった。 

 

 ここで皆が揃ったのでリムルは、アダルマンと別れてから、ずっと準備を行っていた。

 

 それが、何とか間に合ったようである。

 

 早速リムルは、完成したばかりのアイテムを取り出し、皆に見せた。

 

 ヴェルドラ、ラミリス、ツキハ、ミリムの興味深げな視線が、リムルが手に持つアイテムに投げかけられた。

 

 

 

 

 

 

 ◆◆◆◆◆

 

 

 

 ※ショートストーリー

 

 

 ☆ツキハとロモコの酒場巡りで出会った、変態という名の紳士?☆

 

 

 夜の賑わいが真っ盛りの時間。

 

 珍しい二人連れが、テンペスト酒場通りを歩いていた。

 

 既に三件もの酒場を回り、出来上がっているロモコ。

 

「ツ~キ~ハ~様ぁ。次はどこに行きますかぁ」

「う~ん、とねぇ。そうだ、ロロロオの店に行ってみる?」

「えーーッ、そこですかぁ」

「んや? 行くの嫌?」

「いやあ~、そうではないんですけどぉ。ツキハ様の(おご)りですよねぇ?」

「うん、いいよ。今日はあたしが全部持つっていったからね。全然かまわないよ、ロモコ」

「そうですよぉー。いつも私のランチを掻っ攫おうとするんだからぁ」

「いや、ゴメンって。だからお詫びにお酒御馳走してるんじゃない」

「わかってるんなら、良いんですよぉ。このぉ、略奪、あるじぃ~」

 

 相変わらずの物言いのロモコ。

 

 そう、この酒場巡りはツキハがロモコを誘ったのである。

 

 あまり知られてはいないが、ツキハは不定期ながらも眷属達を酒に誘ったり、食事に誘ったりしていた。

 人数はまちまちながらも、誘われた眷属は誰一人として断らず、喜んでお供をするのだ。

 

 で今日は、ロモコである。

 

 そしてコハクも、不定期ながらもこれと同じような事をしていたのだ。

 

 ツキハもコハクも眷属達が大好きであり、また眷属達も暴言を吐きながらも二人が大好きである。

 

 まあ、普段の猫使いが荒いのを、ツキハとコハクは自覚はしているのだろう。

 

 あと、人間や魔物の傭兵達には、部隊ごとにツキハとコハクが自分の財布から慰労金として、これも不定期ながら酒代を支給していた。

 

 良い気分で酒場通りを歩き、ロロロオの店を目指すツキハとロモコ。

 

 近道しようと暗い路地裏に入ると、一瞬不穏な気配を察知した二人。

 

 この路地裏は人通りが極端に少なく、ある者が出没すると、女性から多数の被害報告が上がっていたのだ。

 

『ロモコ、何かいる』

『ですねぇ、何かいましたねぇ~』

 

 周りに聞こえないように、『思念伝達』で話す二人。

 

『あれかな。ソーカがこの間言ってたヤツ』

『あ~、姿の見えないアレですかぁ?』

『そう。姿は見えないけど、あの時だけ姿を見せる、ド変態』

『コハク様ですかぁ?』

『違う! コハクは〝真のド変態女〟。アレは、ただの〝ド変態〟。そこは間違えたら、ダメよ?』

『え~、どっちも同じじゃないですかぁ~。ド変態にはぁ、変わりないですよねぇ?』

『アンタ、コハクにシバかれても知らないよ?』

『あぁ……前言撤回しますぅ~ッ!』

 

 そんな馬鹿な会話を繰り広げている二人の背後で、何かが動いた。

 

「「んん?」」

 

 背後を振り向き、何もいないのを確認すると、次は前にその気配が現れた。

 

 ツキハとロモコは前に向き直ると、そこには――

 

 真っ黒な外套(がいとう)を着た者が立っていた。

 

 フードを目深に被り、顔は見えなかったが、二人はそれが誰なのかに気付いた。

 

「ありゃ、人間の男じゃね?」

「ですねぇ。人間のオスの匂いがしますねぇ」

「それに、あの外套(がいとう)魔宝装身具(アーティファクト)だわ」

「姿隠しにぃ気配を立つ、術式がぁ、組み込まれていますねぇ」

 

 ツキハとロモコは、『解析鑑定』で外套(がいとう)の性能を見抜く。

 

 すると、前に立つ男が不意に笑い出した。

 

 フフフ フフッ

 

 フッフッフ

 

 フハハハハハ

 

 ウハハハハハハ

 

「よくぞ見抜いた、獣人のお嬢さんの二人」

「あたしが、お、お嬢さん?」

「ほえ~、ツキハ様がお嬢さんとはぁ、何の冗談ですかぁ~」

 

 男の言葉にツキハはキョトンとした声を出し、ロモコは何気にツキハをディスって来る。

 

「こんな夜更けにこんなところを歩くとは、フフッフ、私の餌食になりに来たのですねえぇ――ッ!」

「はい?」

「馬鹿でしょうか、コレ?」

 

 訳が分からず首を傾げる、ツキハとロモコ。

 

「馬鹿ではない! しからば見よ、お嬢さん方。この私の素晴らしき、姿をッ!!」

 

 そう言うと男は、外套の前を大きく広げ見せた。

 

 ガバッと広げたそこには、真っ裸の男の身体があった。

 

 大の字ポーズで外套を広げフードも落ち、短めボサボサ髪の、どう見ても四十代半ばの小太り中年オヤジの男。

 

 そこそこ鍛えてはいるが、ポッコリと突き出たお腹がそれを物語っていた。

 

「「あぁ~」」

 

 ツキハとロモコは変な声を出しながら、視線を上下に動かした。

 

「フフフ。お嬢さん達、私の立派なモノに声も出ないかな?」

 

 ニンマリと嫌な笑みを浮かべ、男は言う。

 

 そこへロモコが、言葉の一撃を放つ。

 

「立派ですかぁ、ソレ。う~ん、子供チンチンですよねぇ、ソレ」

「シッ! せっかく勇気を振り絞って見せてるんだから、柔らかく包んで言ってあげて」

「でも、どう見ても子供チンチンですよぉ?」

 

 驚きもせず、淡々と言い放つ二人。 

 

「な、な、何だとお―ッ!」

 

 いきなりそんな事を言われて、唇をプルプルと震わせ怒り言う男。

 

「まあまあ、そんなに落ち込まない。人間の物質体だから、まだ成長するかもよ? 頑張れ、オッサン」

「でもお、その年齢なら、もう成長はしないですよねぇ。どんなに頑張っても、無理でしょうねぇ~」

「こらっ! ロモコ。そんなにハッキリ言ったら、ダメでしょッ! もっと、包んで言わないと、可哀そうじゃん」

「お、お、お前らなあッ! 驚きもせずに馬鹿にするとは、お前ら変態だな!?」

「「お前が言うな」」

 

 男が怒り心頭で言うと、二人はドスの効いた声で返した

 

「あ、はい……」

 

 あまりの迫力に、意気消沈する男。

 

 今までは、裸体を見せると悲鳴を上げて逃げてしまう女性達ばかりだった。

 

 それが快感でこのような事を繰り返していたのだ、が。

 

 一応は冒険者である男、しかしランクはC。

 

 迷宮攻略で幾度も失敗をやらかし、挙句パーティをクビになり、その悔しさと怒りでこのような事を始めたのである。

 

 パーティのリーダーが女性だった事もあり、女性に復讐という変態行為をしていたのだ。

 

 要は、単なる八つ当たりでしかない。

 

 まあ、殺人や傷害沙汰を起こさない当たりマシではあるが、犯罪は犯罪である。

 

 ここ数日間、酒場通りの路地裏で女性だけを狙った変態行為の正体は、この男であったのだ。

 

「クソがあああッ! お前らに俺の気持ちがわかってたまるかあッ!!」

「うん、わからん」

「わかりませんねぇ」

「え!?」

 

 何か返って来るものと言ったら、即座に否定を返され、キョトンとなる男。 

 

「あたしは、アンタじゃねえし。わかる訳ないじゃん」

「ですよねぇ。私もそれに同感ですぅ」

「俺はなあ、ちょっと失敗をしただけで、パーティをクビになったんだ。あの女、リーダーだからって、デカイ(ツラ)しやがってえ! 許せねえ!!」

「いや、オッサン、アンタ失敗多かったんじゃね?」

「ですねえ。一度やぁ二度の失敗ではぁ、普通クビにはなりませんよねぇ?」

「あああ? テメエらも、俺を馬鹿にするのかあッ!?」

「馬鹿にするも何も、むしろ可哀そうだと思ってるよ? オッサン」

「オヤジぃ、アンタはぁ、自分の力量を知らないとぉ、駄目ですよぉ」

「そうそう。自分の失敗を他人のせいにしたらダメじゃん。その失敗から、何が悪かったかを学ばないと」

「え? 何で、何で俺を責める?」

「責めてないし。己を知れと言ってるだけ」

 

 男を(いた)わるようで辛辣な言葉を浴びせる、ツキハとロモコ。

 

 それに男は、訳がわからないといった表情になる。

 

「とりあえず、オッサン。そのプラプラさせてるモノを仕舞え」

「ええ? 何を?」

「子供チンチンを~、仕舞えって言ってるんですぅ。もうぅ、燃やしても良いですかぁ、アレ?」

「ダメ。我慢しなさい、ロモコ。ほら、()よ仕舞えって、オッサン」

「え、あ、はい」

 

 ツキハの(プレッシャー)気圧(けお)されて、しぶしぶと外套(がいとう)の前を閉じる男。

 

「アンタさあ、魔国で犯罪はマズイよ?」

「えと、死刑とか、生涯牢獄とかなのか?」

「チンチン出したくらいで、死刑とか終身刑とかはないけども。ここの女性幹部に見つかったら、多分、確実に半殺しよ? 運よくて、物凄いお説教くらいかな。あとはね、暫くの強制労働くらい?」

「それだけ? 半殺しくらいなら、我慢できるから大丈夫だな。強制労働? 問題はない!」

「えとね、勘違いしてるようだけど、女性幹部の一人の半殺しは、こんな感じよ?」

「ん? ……ほわああーーーッ!? なんじゃこりゃあああああああああッ!」

 

 ツキハは『思考イメージ』で、何と、シオンがエドマリス王にした拷問をこの男に見せたのだった。

 

 この男に取って、それはあまりにも衝撃的で(おぞ)ましく、耐え難い精神的苦痛をもたらすものだった。

 

 それは、屈強な冒険者でも顔を(そむ)けるほどのモノ。

 

 ならば、この男の精神ではもたいないのは明らかであった。

 

「あ、あぁ……ああ……」

 

 力なく声を発すると、男は目がグルッと白目になり、口から泡をブクブクと吹き上げ。

 

 両膝をガクッと地面に付くと、空を見上げたまま気絶して、盛大に失禁してしまう。

 

 空しく地面に広がる、水溜り。

 

「クサッ! コイツ、漏らしやがったよ」

「ツキハさまぁ、アレを、普通みせますかぁ? 猫が悪過ぎですよぉ」

「え? アレくらい、どうって事ない?」

「そんな事言うのはぁ、ツキハさまくらいですよぉ?」

「それなら、アンタならどうなのよ!?」

「私ですかぁ? アレ、見た時は、笑っちゃいましたあぁ」

「あたしより酷いじゃん!」

「ええ? お互いさまじゃないですかぁ。馬鹿ですか? ツキハさま~」

「いや、アンタよりマシだと思うけど」

「もう、何でもいですぅ。ほらほら、ロロロオのお店に行くですよおぉ」

「はいはい。じゃあ、ソーカに伝えるから、ちょっと待っててね」

 

 そう言うとツキハは、『思念伝達』をソーカに飛ばす。

 

『ソーカ。今、手が空いてる?』

『あ、ツキハ様。どうかされましたか?』

『いや、アレ、夜に出て来るド変態が今目の前で気絶してるんだけども、捕縛する?』

『はい? えーと、最近酒場通りの辺りを騒がせている、変態ですか?』

『そう、ソレ』

『なんと! わかりました、直ぐに向かいます』

『じゃあ、空間座標送るから、あたしはもう行くね』

『はい、ご苦労様です、ツキハ様!』

 

 そこで『思念伝達』を終えるツキハ。

 

「すぐに来るって」

「それじゃあ、ロロロオのお店にゴーゴーですぅ~」

 

 気分を変えて、ロロロオのお店へと歩き出す二人。 

 

 それはまるで、主と配下という関係ではなく、まるで長年の友人のようであり姉妹のようだった。

 

 

 そして、ソーカ達が現場に着くと、目にしたのは。

 

「きゃああああああ! 何ですかこの男は、気絶して盛大に漏らしてるじゃないですかあッ!」

 

 人が増えれば、このような(やから)も出て来る。

 

 千差万別。

 

 様々な人や魔物が集う魔国連邦(テンペスト)

 

 ソーカや街の警備をする者達の苦労は、絶えないのであった。

 

 





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