忍びが転生したら〝異世界珍道中〟になった件 作:にゃんころ缶
運営会議が終わった翌日。
リムルはシュナのところに向かう。
そして、シュナを連れ立ってアダルマンのいる六十階層に向かったのだ。
「アダルマン、ちょっと邪魔するよ」
「おお、これはこれはリムル様!! 今回の件、心より
「いや、それに関しては俺達の認識が甘過ぎた。今のお前には聖騎士の相手は厳しいだろうし、敗北は仕方ないと思う」
「――いえ、自分の不甲斐なさを嘆くばかりです。あのような未熟な者共に後れを取ってしまい……」
今のアダルマンは、力を失った
「でだ、率直に聞くが、いいか?」
「はい、何なりと」
「今のお前は、どの程度の<神聖魔法>が扱える」
<神聖魔法>
大気中の魔素を集めるでもなく、自身の
知識と詠唱時間があれば、自己負担が少なくても大魔法が行使可能なのである。
但し、これには〝神との契約が成り立っている場合に限る〟という前提が必要不可欠なのだ。
この場合の神とは、魔素を構成する特殊な粒子である〝霊子〟を扱える存在を指す。
この世界に概念的な〝神〟が存在するのかどうかは、まるで関係はないのだ。
そう、〝霊子〟に直接干渉可能な存在を、〝神〟と呼称しているだけである。
ルミナス教において、魔王ルミナスが〝神〟と
アダルマンはルミナス教の熱心な信徒だった。
だからこそ、
だが今は、信仰対象がルミナスからリムルに変わり、〝神との契約〟が一旦破棄され、契約が成立がされないのではないかと、リムルは考えていたのだ。
「はい、まるで扱えぬようになりました。低
「ふむ、そうか」
(やはりな。<神聖魔法>も、要は<精霊魔法>の仕組みと同等なんだよな。契約に従い、上位存在の力を力を借り受けていただけ。あのヒナタでさえも、ルミナスの力を借りないと<神聖魔法>が使えない。でも不思議なのがコハクの場合は、ツキハを上位存在とは認識してはいない。あくまでも対等だと、そういう認識だ。まあ、
《告。恐らくツキハは、〝霊子〟以上のモノを欲したのではないかと、推測します》
『え? それって――』
《解。
『でも、〝霊子〟の方が強力じゃないか? あらゆるものを貫通する性質を持つし。俺の『絶対防御』でも完全に防げない気がするけど?』
《告。個体名:ミリムが持つ最強技、
『ねえ、先生。その記憶もコッソリ覗いたの?』
《否。これはツキハから許可を受け覗いたものです》
『許可を受けたんならいいけども。じゃあさ、その〝星粒子〟をも超えるモノを目指しているって事なのか?』
《是。超えるどころか、自分の技全てに適応出来る性質を持たす事を目的としています》
『うーむ、何かそれ、とんでもなくない事を目指してないか?』
《是。ツキハとコハクは、自分達より強い者が現れる事を常に想定して生きて来ています。この思考はある意味、油断ならぬ脅威とも言えるでしょう》
『なるほどなあ。何があの二人をそこまで駆り立てるんだろうね?』
《……情報が足りません。真意は推測不能。但し、一つだけ言える事があれば、それは二人の自由の為だと》
『自由、猫は自由、かぁ。ほんと、訳わかんねえヤツラだよな。ククッ』
《是》
そんな事を思いながらリムルは、シュナに何故<神聖魔法>が行使できたのか聞いてみた。
「それではシュナに聞くけど、<神聖魔法>をどこまで操れる? そして、その信仰対象は何だ?」
「私の場合、厳密に言えば<神聖魔法>とは異なります。ユニークスキル『
(なるほど、模倣か。あの時に『
「私が信じるのはリムル様ですし、その御力を疑ってはおりません。なので、何となく出来るのではないか、と感じたのです。忍魔術は、あの印を切る動作を見ていたら、魔力の流れを制御しているように見えたので、やってみたという、感じなのです」
「――は? 私と戦った時、魔物でも<神聖魔法>を行使出来ると豪語していたのは……?」
「ハッタリですよ。確信しておりましたが、それを証明してくれたのは貴方ですわね。それに、後で知ったのですけど、コハク様は<神聖魔法>を行使出来ますよ」
「な、何と……」
笑顔で言い放ったシュナ。
それを聞いたアダルマンは、骨だけなのに、何とも言えないような表情をしていた。
(うーむ。骨なのに表情豊かな男だな。さて、それはともかくとして――)
「では、シュナとアダルマンには、〝信仰と恩寵の秘奥〟を授けようと思う。これはルミナスから学んだばかりで、極秘事項だからそのつもりで頼む」
「〝信仰と恩寵の秘奥〟――」
「お、おおお……ついに私にも、真なる神が……」
「なるほど……。それでは私も、リムル様を信じる事で<神聖魔法>の習得が可能に?」
「うん、出来ると思う。暇な時にでも研究して、アダルマンの相談に乗ってやって欲しい」
「わかりました。私もどこまで習得出来るのか、とても楽しみです」
歓喜するアダルマンに、嬉しそうに微笑むシュナ。
こうしてアダルマンは<神聖魔法>を行使出来るようになり、シュナはシュナでよりレベルの高い<神聖魔法>を習得していったのだった。
それから翌日。
約束の時間にリムル達は集まった。
「へへへ、アダルマンの階層はバッチリだよ!」
リムルを見るなりラミリスが、自慢気に報告をする。
どうやら昨晩の内に玉座の間を完成させていたのだ。
「おお、ありがとう。これで後は、アダルマンに任せておけばいいな」
「大丈夫か?」
リムルの言葉に、ヴェルドラが少し心配気味に問う。
「うーん、昨日までよりはマシだろ。まあ、相手がAランクなら厳しいと思うけど、手の内を
「そうか。ならばいいだろう」
リムルはヴェルドラに、そんなに心配はいらないといったように返し、ヴェルドラもそれに納得を示す。
(ふふっ。対策は、二重三重に行うべし、ってね。という訳で、早速実行に移すとしようか)
リムルがそう思った矢先――
「何をやっているのだ! 聞いたぞ、ワタシのドラゴン達がやられたそうではないかッ!! ツキハは何をやっているのだッ!!」
「え~、あたしはアンタの手伝いで捕獲しただけだしぃ。てかさぁ、四匹ともアンタが面倒みるって言ったじゃん」
ミリムがプンプン怒りながら、会議室に怒鳴り込んで来たのだ。
ツキハは怒鳴られながらも、我関せずと返す。
そして怒鳴り込んで来たミリムの手には、ボロ雑巾みたいになったゴブタの姿が、あった。
「へへへ、自分、やったすよ……。クリア、して、やったすよ!」
と、うわ言のように繰り返すゴブタ。
それでも、意識はしっかりしてるようだった。
(おうおう。ミリムの鬼のような修行に耐えたのか……ボロボロじゃねえか。とても強くなったようには、見えないが、大丈夫なのだろうか?)
リムルの心配などお構いなしに、ミリムは大きく頷いた。
「うむ。ゴブタは実に見事であった! ヘルモードをクリア出来るとは思わなかったぞ」
「ヘルモードって、どんだけよ」
「黙るのだ、ツキハ」
「あいあい」
「返事は一回なのだ」
「あい」
茶々を入れて来たツキハを窘めつつ、満足そうにゴブタを褒めるミリム。
するとそこへ。
「それならば、我が〝ヴェルドラ流闘殺法〟も伝授して――」
「駄目なのだ! ゴブタはワタシの弟子なのだぞ!」
ヴェルドラが口を挟んで来て、燃え尽きているゴブタを
(これは……関わり合いにはならない方がいいだろうな。うん、ゴブタの意志に任せるとしよう。ツキハも心得てるよな。ヴェルドラとミリムの言い合いに交ざろうともしない。流石、ミリムとの付き合いが長いだけあるわ)
そんなゴブタを
仮眠室へ着いたゴブタは、倒れ込むようにベッドに横たわると、そのまま意識が飛び、深い眠りへと落ちる。
そして、ランガも。
「わ、我が主よ、た、ただ今戻りました」
ゴブタ同様にランガもまた、ボロボロだった。
そんなランガをリムルは優しく撫でて、ランガも嬉しそうに目を細める。
「よく頑張ったな、俺の影の中で休んでいいよ」
リムルがそう声をかけるなり、ランガは素早くリムルの影の中に入ったのだった。
ちなみに、後で元気になったゴブタに、リムルがどういった訓練をしたのか聞いてみたところ。
修行内容は主に戦闘訓練ばかりだったのだそうだ。
自分と同等か、若干上の魔物達相手に、ひたすら戦闘を繰り返していたとの事。
そして、ランガとの意思疎通が完璧になってからは、ひたすらカリオンやミッドレイ、番外魔王眷属のイチオとの戦いに明け暮れていたのだと。
何故、番外魔王眷属の中でイチオだけかというと、こういった訓練には一番慣れているからとの事だった。
要は、やらかしが眷属の中ではイチコを除き、イチオが一番少ないのも理由である。
とにかく、この三人を相手に、よく修行に耐えたと言えるゴブタとランガ。
だから、ミリムが褒めたのであろう。
それに、ゴブタはミリムから、「お前はどう頑張っても、それ以上の
「それ以降ずっと、
そして、エクストラスキル『賢者』を獲得し、思考加速も可能になったのである。
(大したヤツだ、ゴブタは。普段は
と、リムルは思うのだった。
ここで皆が揃ったのでリムルは、アダルマンと別れてから、ずっと準備を行っていた。
それが、何とか間に合ったようである。
早速リムルは、完成したばかりのアイテムを取り出し、皆に見せた。
ヴェルドラ、ラミリス、ツキハ、ミリムの興味深げな視線が、リムルが手に持つアイテムに投げかけられた。
◆◆◆◆◆
※ショートストーリー
☆ツキハとロモコの酒場巡りで出会った、変態という名の紳士?☆
夜の賑わいが真っ盛りの時間。
珍しい二人連れが、テンペスト酒場通りを歩いていた。
既に三件もの酒場を回り、出来上がっているロモコ。
「ツ~キ~ハ~様ぁ。次はどこに行きますかぁ」
「う~ん、とねぇ。そうだ、ロロロオの店に行ってみる?」
「えーーッ、そこですかぁ」
「んや? 行くの嫌?」
「いやあ~、そうではないんですけどぉ。ツキハ様の
「うん、いいよ。今日はあたしが全部持つっていったからね。全然かまわないよ、ロモコ」
「そうですよぉー。いつも私のランチを掻っ攫おうとするんだからぁ」
「いや、ゴメンって。だからお詫びにお酒御馳走してるんじゃない」
「わかってるんなら、良いんですよぉ。このぉ、略奪、あるじぃ~」
相変わらずの物言いのロモコ。
そう、この酒場巡りはツキハがロモコを誘ったのである。
あまり知られてはいないが、ツキハは不定期ながらも眷属達を酒に誘ったり、食事に誘ったりしていた。
人数はまちまちながらも、誘われた眷属は誰一人として断らず、喜んでお供をするのだ。
で今日は、ロモコである。
そしてコハクも、不定期ながらもこれと同じような事をしていたのだ。
ツキハもコハクも眷属達が大好きであり、また眷属達も暴言を吐きながらも二人が大好きである。
まあ、普段の猫使いが荒いのを、ツキハとコハクは自覚はしているのだろう。
あと、人間や魔物の傭兵達には、部隊ごとにツキハとコハクが自分の財布から慰労金として、これも不定期ながら酒代を支給していた。
良い気分で酒場通りを歩き、ロロロオの店を目指すツキハとロモコ。
近道しようと暗い路地裏に入ると、一瞬不穏な気配を察知した二人。
この路地裏は人通りが極端に少なく、ある者が出没すると、女性から多数の被害報告が上がっていたのだ。
『ロモコ、何かいる』
『ですねぇ、何かいましたねぇ~』
周りに聞こえないように、『思念伝達』で話す二人。
『あれかな。ソーカがこの間言ってたヤツ』
『あ~、姿の見えないアレですかぁ?』
『そう。姿は見えないけど、あの時だけ姿を見せる、ド変態』
『コハク様ですかぁ?』
『違う! コハクは〝真のド変態女〟。アレは、ただの〝ド変態〟。そこは間違えたら、ダメよ?』
『え~、どっちも同じじゃないですかぁ~。ド変態にはぁ、変わりないですよねぇ?』
『アンタ、コハクにシバかれても知らないよ?』
『あぁ……前言撤回しますぅ~ッ!』
そんな馬鹿な会話を繰り広げている二人の背後で、何かが動いた。
「「んん?」」
背後を振り向き、何もいないのを確認すると、次は前にその気配が現れた。
ツキハとロモコは前に向き直ると、そこには――
真っ黒な
フードを目深に被り、顔は見えなかったが、二人はそれが誰なのかに気付いた。
「ありゃ、人間の男じゃね?」
「ですねぇ。人間のオスの匂いがしますねぇ」
「それに、あの
「姿隠しにぃ気配を立つ、術式がぁ、組み込まれていますねぇ」
ツキハとロモコは、『解析鑑定』で
すると、前に立つ男が不意に笑い出した。
フフフ フフッ
フッフッフ
フハハハハハ
ウハハハハハハ
「よくぞ見抜いた、獣人のお嬢さんの二人」
「あたしが、お、お嬢さん?」
「ほえ~、ツキハ様がお嬢さんとはぁ、何の冗談ですかぁ~」
男の言葉にツキハはキョトンとした声を出し、ロモコは何気にツキハをディスって来る。
「こんな夜更けにこんなところを歩くとは、フフッフ、私の餌食になりに来たのですねえぇ――ッ!」
「はい?」
「馬鹿でしょうか、コレ?」
訳が分からず首を傾げる、ツキハとロモコ。
「馬鹿ではない! しからば見よ、お嬢さん方。この私の素晴らしき、姿をッ!!」
そう言うと男は、外套の前を大きく広げ見せた。
ガバッと広げたそこには、真っ裸の男の身体があった。
大の字ポーズで外套を広げフードも落ち、短めボサボサ髪の、どう見ても四十代半ばの小太り中年オヤジの男。
そこそこ鍛えてはいるが、ポッコリと突き出たお腹がそれを物語っていた。
「「あぁ~」」
ツキハとロモコは変な声を出しながら、視線を上下に動かした。
「フフフ。お嬢さん達、私の立派なモノに声も出ないかな?」
ニンマリと嫌な笑みを浮かべ、男は言う。
そこへロモコが、言葉の一撃を放つ。
「立派ですかぁ、ソレ。う~ん、子供チンチンですよねぇ、ソレ」
「シッ! せっかく勇気を振り絞って見せてるんだから、柔らかく包んで言ってあげて」
「でも、どう見ても子供チンチンですよぉ?」
驚きもせず、淡々と言い放つ二人。
「な、な、何だとお―ッ!」
いきなりそんな事を言われて、唇をプルプルと震わせ怒り言う男。
「まあまあ、そんなに落ち込まない。人間の物質体だから、まだ成長するかもよ? 頑張れ、オッサン」
「でもお、その年齢なら、もう成長はしないですよねぇ。どんなに頑張っても、無理でしょうねぇ~」
「こらっ! ロモコ。そんなにハッキリ言ったら、ダメでしょッ! もっと、包んで言わないと、可哀そうじゃん」
「お、お、お前らなあッ! 驚きもせずに馬鹿にするとは、お前ら変態だな!?」
「「お前が言うな」」
男が怒り心頭で言うと、二人はドスの効いた声で返した
「あ、はい……」
あまりの迫力に、意気消沈する男。
今までは、裸体を見せると悲鳴を上げて逃げてしまう女性達ばかりだった。
それが快感でこのような事を繰り返していたのだ、が。
一応は冒険者である男、しかしランクはC。
迷宮攻略で幾度も失敗をやらかし、挙句パーティをクビになり、その悔しさと怒りでこのような事を始めたのである。
パーティのリーダーが女性だった事もあり、女性に復讐という変態行為をしていたのだ。
要は、単なる八つ当たりでしかない。
まあ、殺人や傷害沙汰を起こさない当たりマシではあるが、犯罪は犯罪である。
ここ数日間、酒場通りの路地裏で女性だけを狙った変態行為の正体は、この男であったのだ。
「クソがあああッ! お前らに俺の気持ちがわかってたまるかあッ!!」
「うん、わからん」
「わかりませんねぇ」
「え!?」
何か返って来るものと言ったら、即座に否定を返され、キョトンとなる男。
「あたしは、アンタじゃねえし。わかる訳ないじゃん」
「ですよねぇ。私もそれに同感ですぅ」
「俺はなあ、ちょっと失敗をしただけで、パーティをクビになったんだ。あの女、リーダーだからって、デカイ
「いや、オッサン、アンタ失敗多かったんじゃね?」
「ですねえ。一度やぁ二度の失敗ではぁ、普通クビにはなりませんよねぇ?」
「あああ? テメエらも、俺を馬鹿にするのかあッ!?」
「馬鹿にするも何も、むしろ可哀そうだと思ってるよ? オッサン」
「オヤジぃ、アンタはぁ、自分の力量を知らないとぉ、駄目ですよぉ」
「そうそう。自分の失敗を他人のせいにしたらダメじゃん。その失敗から、何が悪かったかを学ばないと」
「え? 何で、何で俺を責める?」
「責めてないし。己を知れと言ってるだけ」
男を
それに男は、訳がわからないといった表情になる。
「とりあえず、オッサン。そのプラプラさせてるモノを仕舞え」
「ええ? 何を?」
「子供チンチンを~、仕舞えって言ってるんですぅ。もうぅ、燃やしても良いですかぁ、アレ?」
「ダメ。我慢しなさい、ロモコ。ほら、
「え、あ、はい」
ツキハの
「アンタさあ、魔国で犯罪はマズイよ?」
「えと、死刑とか、生涯牢獄とかなのか?」
「チンチン出したくらいで、死刑とか終身刑とかはないけども。ここの女性幹部に見つかったら、多分、確実に半殺しよ? 運よくて、物凄いお説教くらいかな。あとはね、暫くの強制労働くらい?」
「それだけ? 半殺しくらいなら、我慢できるから大丈夫だな。強制労働? 問題はない!」
「えとね、勘違いしてるようだけど、女性幹部の一人の半殺しは、こんな感じよ?」
「ん? ……ほわああーーーッ!? なんじゃこりゃあああああああああッ!」
ツキハは『思考イメージ』で、何と、シオンがエドマリス王にした拷問をこの男に見せたのだった。
この男に取って、それはあまりにも衝撃的で
それは、屈強な冒険者でも顔を
ならば、この男の精神ではもたいないのは明らかであった。
「あ、あぁ……ああ……」
力なく声を発すると、男は目がグルッと白目になり、口から泡をブクブクと吹き上げ。
両膝をガクッと地面に付くと、空を見上げたまま気絶して、盛大に失禁してしまう。
空しく地面に広がる、水溜り。
「クサッ! コイツ、漏らしやがったよ」
「ツキハさまぁ、アレを、普通みせますかぁ? 猫が悪過ぎですよぉ」
「え? アレくらい、どうって事ない?」
「そんな事言うのはぁ、ツキハさまくらいですよぉ?」
「それなら、アンタならどうなのよ!?」
「私ですかぁ? アレ、見た時は、笑っちゃいましたあぁ」
「あたしより酷いじゃん!」
「ええ? お互いさまじゃないですかぁ。馬鹿ですか? ツキハさま~」
「いや、アンタよりマシだと思うけど」
「もう、何でもいですぅ。ほらほら、ロロロオのお店に行くですよおぉ」
「はいはい。じゃあ、ソーカに伝えるから、ちょっと待っててね」
そう言うとツキハは、『思念伝達』をソーカに飛ばす。
『ソーカ。今、手が空いてる?』
『あ、ツキハ様。どうかされましたか?』
『いや、アレ、夜に出て来るド変態が今目の前で気絶してるんだけども、捕縛する?』
『はい? えーと、最近酒場通りの辺りを騒がせている、変態ですか?』
『そう、ソレ』
『なんと! わかりました、直ぐに向かいます』
『じゃあ、空間座標送るから、あたしはもう行くね』
『はい、ご苦労様です、ツキハ様!』
そこで『思念伝達』を終えるツキハ。
「すぐに来るって」
「それじゃあ、ロロロオのお店にゴーゴーですぅ~」
気分を変えて、ロロロオのお店へと歩き出す二人。
それはまるで、主と配下という関係ではなく、まるで長年の友人のようであり姉妹のようだった。
そして、ソーカ達が現場に着くと、目にしたのは。
「きゃああああああ! 何ですかこの男は、気絶して盛大に漏らしてるじゃないですかあッ!」
人が増えれば、このような
千差万別。
様々な人や魔物が集う
ソーカや街の警備をする者達の苦労は、絶えないのであった。
この作品を読んで頂きありがとうございます!
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