忍びが転生したら〝異世界珍道中〟になった件 作:にゃんころ缶
リムルが手に持つアイテムに、四人の視線が集中した。
そして、リムルは言う。
「みんな、注目!」
四人は期待感に満ちた顔で、固唾を飲んで次の言葉を待つ。
「ここにあるのは、特殊なアイテムだ。以前より俺が開発を進めていたもので、画期的な発明だと思う。これは、今迷宮で起きている問題の解決にも役立つし、我々の生活に新たな楽しみを提供してくれる事だろう」
そう言ってリムルは、四人に一つずつ、そのアイテムを配っていく。
ミリムが今日来るのは想定外だったのだが、どうせ実用化した際には呼ぼうと決めていたので問題はなかったのだ。
このアイテムは、以前にエラルド公爵の用いていた
仮初の肉体を用意するなら、ちょっと面白い事が出来そうだとリムルは考えたのだ。
「なんだ、これは?」
「見た事ないんだけど? 食べ物?」
「んや? これって……?」
「ふむ、我が思うに、魂の器に似た構造をしておるな。ツキハも気付いたか?」
「うん、何となく」
と、四人がそれぞれの感想を口にした。
(ラミリス、食べ物の訳ないだろう。ツキハは何となく気付いたか。答えはヴェルドラが近いかな)
そうこれは、リムルが開発した魂の器を疑似的に作ったものなのだ。
正式名称を、〝
「ヴェルドラが正解に近い。ツキハも、よく気付いたな。これは、魂の器を模したものだ。〝魂〟そのものは流石に用意出来ないので、疑似的な代用品を作ってみたんだよ」
「ほう。何故そのようなものを?」
ヴェルドラがアイテムの機能を早く知りたくて、その作った理由をリムルに問いかけて来る。
「まあ、そう焦るなって。慌てない慌てない」
ニヤリとリムルは返し、説明を始めていく。
「じゃあさ、次はこれだ。今からこれを持って、思い思いに好きな魔物を想像してみてくれ」
〝
拳大のそれを見て、ヴェルドラとツキハが首を傾げた。
「む? それはどんな姿でもいいのか?」
「ねえねえ、漫画とかにあるロボット? とかでもいいの? 存在しないけども」
「ああ。既存の魔物でもいいし、とんでもないヤツでもいい」
「へえ、何でもありかぁ」
ツキハがそれを聞いて、目を輝かせる。
そして、 次にラミリスがリムルに聞いて来た。
「ってことは、ゴブリンやオーク?
「ん? いいぞ。ただし、好きな魔物にしろよ。後になって、これは嫌いとか文句は言うなよ?」
「ふむ。魔物、か。それを作り出して、迷宮への挑戦者を撃退するつもりか……?」
「そんなとこだよ(相変わらず、こういう時は鋭いヤツだなヴェルドラって)」
リムルの言葉に納得したのか、それぞれが黒い玉を持ち、念じ始める。
とそこへ、リムルがツキハに声をかけた。
「あ、そうだ、ツキハ。ちょっといいか?」
「ん? なに?」
「さっき、何でも良いと言ったけど。出来ればロボットではなく、魔物にして欲しいんだけど、駄目かな?」
「なんで?」
リムルからさり気なくロボットはやめてねと、お願いをされて、ツキハは凄く残念そうな顔をした。
「理由はあるんだよ。TPOっていうか、雰囲気というか――」
「ティーピーオー? 何なのそれ?」
「ああ、これはな、俺がいた世界での言葉なんだが、詳しい説明は省くとして。まあ簡単に言えば、その場に応じた最適な行動や服装とか言葉使いとかいう意味でさ。地下迷宮に合わせるなら、やはり魔物が一番適してるんじゃないかなと、思うんだ。ゴーレムとかなら雰囲気に合うけど、流石に漫画に出て来るロボットは地下迷宮に対して浮いてしまわないかなと、俺は考えたんだよ。どうしてもロボットがいいなら、俺は構わない。けど、迷宮の雰囲気に合わせてくれたら俺は嬉しいかな」
「そっかぁ、雰囲気かぁ……」
ツキハはリムルからお願いをされて、暫し腕を組んで考え始めた。
そして……。
「そうだね、リムルが言ってる事はわかるよ。確かにさ、漫画のロボットはやり過ぎかもね。迷宮はアンタの管轄だし。いいよ、魔物にする」
「おお、わかってくれたか。ありがとうツキハ」
ツキハが嫌だとゴネるかと思えば、アッサリとロボットを諦めたのに対して、リムルは軽く礼を言う。
基本、自由奔放で傍若無人なツキハだが、ここという時は空気の読める
こうしてツキハも、再度黒い玉に念じ始める。
この黒い玉、リムルは〝
〝
最初にカリュブディスと戦った時に、リムルはカリュブディスの残骸を『胃袋』に隔離してあったのだ。
これは、
大型の魔物の核であり、力の根源であるそれは、リムルが魔王になる際に、その負の力まで全て消費してしまったのである。
なので、今は完全に抜け殻になっていたのだと。
しかしながら、魂の器を保護するのには、丁度良い媒体になっていたのだ。
それこそが――この〝
暫くすると、空気中の魔素が〝
「どうだ、面白いだろう? ヴェルドラの言う通りこの魔物達を使って、挑戦者の迎撃を行う。それこそが、今回皆に集まってもらった要件なんだ」
リムルが話す中、皆がそれぞれ自分が生み出した魔物を見て、感動している様子。
そんな四人を横目に、リムルも自分の魔物を生み出した。
それは薄く透ける身体で、ふわふわと宙を漂う人魂、
特殊能力として、<物理無効>を習得していた。
幽霊、言わば実体はないので物理攻撃は効かない。
物理的攻撃手段を持たず、魔法攻撃のみを主体とする魔物であった。
次にヴェルドラだが。
骸骨が立っている。
魔法は使えないが、成長すれば習得可能。
上位個体に進化すれば<気闘法>も習得出来るだろう。
続いてミリム。
プヨプヨとした
だが、手足はない。
色は真っ赤で、目立つ事この上ない。
そう、
(おい……)
リムル、ジト目になる。
「おいおい、何でスライムなんだよ。俺への嫌がらせか?」
「いや、だって……。大体な、好きな魔物と言うからだ! 文句はないだろ!?」
リムル、ミリムに逆ギレされる。
「あ、うん、何か、スマン」
(まあいいや。本人は目を輝かせて、「スライム」と喜んでいるし。だけど、何故真っ赤なのかは問い詰めたいけども)
そんな事を思うリムルであった。
で、ラミリス。
騎士? 大きな、鎧?
それは、
一応は
ラミリス自身、身長が小さい事がコンプレックスだったのかも知れない。
だから、大きな魔物を生み出したと思われる。
しかし、中身がないのはお察しで、実にラミリスらしいと言えるだろう。
そして最後に、ツキハ。
ちっこい竜? いや、ドラゴン?
体長60センチ 体高100 尻尾120センチの全長180センチ
背中についた翼は、片側広げたら140あり、二対広げれば280センチもの大きさである。
それは、ちょっと可愛らしい顔したチビドラゴンだった。
しかしこのチビドラ、見た目と相反して、口から吐くブレス特化に作られていて、内臓器官に火炎袋と魔電粒子を溜める袋が形成されている、が。
現時点では、そこまで凶悪なブレスを吐く事は出来ない。
しかし、成長が進めば凶悪極まりないブレスを吐く事も可能になるだろう。
ちなみに、〝超魔電粒子〟は、流石にこの魔物の身体では変換生成は出来ない。
そこまで超高性能の身体は出来ないのだ。
どうやら、ヴェルドラをベースにイメージして作ったらしく。
本人
大きさは、素早い動きを出す為にこの大きさにしたみたいだった。
皆、自分が生み出した魔物を興味深げに眺めている。
(フヒヒヒ。ヴェルドラと、お・そ・ろ♪ おそろのカラダぁ~♪)
ツキハなどは、どこかにやける顔を抑えきれずに、表情が緩みぱっなしであった。
だが、驚くのはこれからである。
「みんな、聞いてくれ。ヴェルドラが指摘した通り、今生み出してもらった魔物を使って、迷宮への侵入者を退治しようと思う」
「む? 侵入者――?」
「そうだ。この魔物達は、この迷宮を守る者達、すなわち、ガーディアンだ。ならば、やって来る者達は侵入者だろう?」
「なるほど、そういう事か」
リムルの説明にヴェルドラがいち早く理解を示す。
「え、えっ?」
「ああ、言い得て妙だけど、そういう事ね」
続いてツキハもヴェルドラに続く。
「はいっ!?」
ラミリス、今の状況が摘めず。
「ふむふむ。ラミリスよ、我等は迷宮側に立っておるのだから、挑戦者と言う呼び方がおかしかったのだよ」
「なるほど、言われてみれば確かに!」
「うむ。ワタシもそう思っていたのだ」
ヴェルドラがリムルの代わりに説明をすると、ラミリスもようやく納得をする。
そして、知ったかぶりを発揮するミリム。
「さて、この魔物達で侵入者達を撃退する訳だが、可能だと思うかね?」
「無理に決まっておろう。弱すぎるぞ」
「だよね。強くなるまでに結構時間がかかるわよ、このチビドラ」
「アタシの鎧はカッコいいけど、ちょっと無理だと思うワケ」
「リムルよ、お前には失望したぞ。ワタシは賢いから――」
「誰が?」
――ズゴン!
ミリムの言葉にツキハが返すと、凄まじい打撃音が響き。
ツキハが頭を両手で抱えながらうずくまっていた。
そう、茶々を入れて来たツキハの頭に、ミリムがゲンコツを落としたのだ。
「いてえ! なにしやがるッ!」
「もう一発いるか? ツキハ」
「あ、いや、ゴメン……」
うずくまったまま文句を返すツキハに、ミリムは見下ろしたまま拳にハアァーッと息を吹きかけながらマジ顔で言い放ち、ツキハを黙らせる。
「でだ、リムルよ。こんな魔物には期待は出来ぬのだ」
(クックックッ。俺の予想通り、好き勝手に言ってくれる。それにしても、ラミリスにミリムよ、何故にそうも上から目線なのか。ツキハはツキハで、変な茶々を入れてミリムから制裁を喰らってるし。まあ、ここは大人として我慢しておこう)
どうにも納得がいかないリムルだったが、それを呑み込み話を続けていく。
「いいか、よく聞いてくれ。これはな、生み出して終わりではないんだよ。ここからが本番で、お前達も椅子に座って寛ぐ姿勢になってくれ。それから、〝
リムルの言葉にヴェルドラ、ラミリスにミリムは半信半疑の様子だったが、ツキハだけは言われた事を瞬時に理解した様子だった。
そして、各々が言われた通りに好きなように寛ぐ姿勢を取った。
勿論ツキハも、こんな面白い事はやらないと損とばかりに、皆と同じようにする。
猫は、好奇心が大せいなのだ。
皆が寛いだ姿勢のままで、一斉に唱えた。
「「「「「憑依」」」」」
その途端、手に持っていた〝
そして、魔物の中で〝魔精核〟と完全融合した。
憑依の鍵となる、〝
と、同時にリムルの意識も暗転し、すぐに視界が切り替わる。
(こ、これは……)
常時発動していた『魔力感知』の効果範囲が狭くなり、視界が一気に悪くなった感じを受けるリムル。
(ああ、これが憑依した感覚なのかな……? うん、疑似的な五感はある。転生した頃よりはだいぶ、マシか。けれど、俺とツキハ以外の三人はそういう体験がないので、割と苦労してるんじゃないか?)
そう思いながらリムルは、グルリと視界を回すと……。
狭くなった視界に、屈伸運動をするスケルトン。
異常な速度で動き回るスライム。
素早い動きで、タッタタと、威嚇するように反復横跳びみたいな動きをしているチビドラ。
そして、壊れたブリキのように、ぎこちなく動くリビングアーマー。
四者四様、それぞれが自分の魔物への『憑依』に成功したようだ。
(おおう……自分でも馴染むのを感じるわ)
思った以上に違和感がなくて、まるで自分の身体と錯覚するほどの感覚を覚えたリムル。
ただし、性能は一気に落ちるので、動きは結構鈍る。
だがそれも、一旦その動きを認識すれば、反応の予測は簡単であった。
だから、思いのままに動かせるのもすぐだったのだ。
そして、それは四人も同じだった。
「「「「凄いな、これッ!!」」」」
しばらく自分の新しい魔物の身体を確かめた後、四人が口を揃えて叫んだ。
「だろう? 俺の研究成果はどうよ?」
「素晴らしい。実に素晴らしいぞ、リムルよ!」
「ほんとほんと。結構良いわ、この魔物の身体は!」
「やっぱ、リムルよね! アンタは凄いヤツだと思っていたワケ!!」
「やはりな。ワタシは最初から信じていたのだ!!――」
「ほんとに?」
ズバンッ!!
「うきゃああー」
ミリム、ツキハに渾身のスライムボディアタック。
それを横目で見ながらリムルは。
(見事に、手の平クルックルだな、コイツら。全くもう、だよ、ほんと……。だがまあ、喜んでくれてるようだから何よりだ)
と、思うのであった。
「よしよし。どうやら成功だな。では諸君、この魔物に乗り移った今、何をするべきなのか。言わなくてもわかるよな?」
「クックックッ。愚問だな。魔物達に任せるのではなく、我等が出向くのか。面白い事を考えるな、リムルよ」
「その通りだ。本当は、この姿で迷宮を攻略したかったんだけどな……」
「あたしはさ、迷宮攻略より、侵入者達を撃退の方が面白そうで、ワクワクしてるよ」
「ククッ。我は知っておるぞ。そうか、これはゲームだな!」
「あ、それ、前に教授に聞いた事あるよ」
「何だと? それは本当か、ヴェルドラ!?」
「師匠! では、我々はこの姿で敵を倒すのですね? そして、この身体を成長させる……?」
(流石は、ヴェルドラ。こういう事になると理解が早い。それにツキハは、教授からゲームの事も聞いていたのか)
そう、リムルがやりたい事それは――
疑似的MMORPGなのだ。
MMORPGとは、マッシブリー・マルチプレイヤー・オンライン・ロール・プレイング・ゲームの略。
リムルはこれを、〝
(まあ、大規模ではないから、MMOというよりもMOかな? まあ、どっちでもいいんだけども)
しかしこれは、リムルに取ってどうでもよかったのだ。
何故なら、せっかく作った迷宮を自分達でも楽しみたい、というのがリムルのコンセプトなのだから。
四人は意気揚々とリムルの前に集まった。
さっさとチーム〝緑乱〟の邪魔をして、しばらくは下層階への挑戦が出来ないよう仕向ける為に。
その為には、と――
リムルは更なる悪巧みを考えるのだった。
この作品を読んで頂きありがとうございます!
次回の更新も宜しくお願いします!