忍びが転生したら〝異世界珍道中〟になった件   作:にゃんころ缶

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 お待たせしました。216話です

 ツキハ

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 コハク

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 傭兵商会ルヴナン・真の紋章


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 ※〝打刀〟
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216話 準備万端

 

 

 まず最初にリムルが皆に言った事。

 

 

 それは、この〝仮魔体(アバター)〟に慣れる事であった。

 

 次に重要なのが装備である。

 

 なんど死のうと復活出来るように、回数制限無しの〝復活の腕輪〟をリムル達は装備した。

 

 だが、これだけでは足りない。

 

 リムル達の〝仮魔体(アバター)〟はまだ生まれたばかりの、低位の魔物でしかない。

 

 そう、悲しいかな雑魚魔物である。

 これでは、どんな不意打ちをしようがチーム〝緑乱〟には勝てない。

 

 しかし、ある程度の装備さえあれば、そうリムルは考えたのだ……。

 

 そこでリムルは、クロベエの工房へ出向く事にしたのである。

 

 リムルは皆に、一旦『憑依』を解除するように告げた。

 

「元に戻るには、『離脱』と念じたらいい。それで戻れるから」

 

 リムルは元に戻って見せて、〝魔魂核(アバターコア)〟を懐にしまう。

 

 〝魔魂核(アバターコア)〟は、一度生み出した魔物を登録する。

 一個に付き一体で、所有者の変更は不可なのだ。

 

 皆に大切に保管するように付け加える、リムル。

 

 そしてリムルは、皆とクロベエの工房へと向かった。

 

 

「クロベエ、いる?」

「おお、リムル様だべか? 今日は何の用で?」

 

 声をかけると、直ぐにクロベエがリムル達を出迎えた。

 

 しかし、ヴェルドラやラミリス、ミリムにツキハまでが一緒なのを見て驚いていた。

 

「うん。ちょっと武器が欲しくてね」 

 

 そう言いつつ、リムル達はズカズカと工房へ入って行った。

 

 久しぶりに来た工房にリムルは。

 

(ほう。人もだけど、魔物も増えているな。しかし、暑い。俺は熱の影響は受けないけど、中にいる者は相当だろう。鍛冶場の音がそれを余計に増幅させているようだ)

 

 そう思いつつリムルは、工房内を見回した。

 

「弟子が増えたみたいだな」

「ええ、お蔭さまだで。まだまだだべが、中には優秀なの者もいるだよ」

 

 リムル達が会話をしつつ工房に入ると、弟子達が声に気付いて顔を上げた。

 そして、リムルを見て一斉に立ち上がり礼をする。

 

 その勢いにリムルは驚いたが、クロベエは慣れたものだった。

 

「手を止めるでねえ! さっさと作業に戻るだよ」

 

 大声で怒鳴りつけ、弟子の作業を再開させている。

 

(まあでも、彼らの気持ちもわかるよ。いきなり職場に社長が来たら、緊張するよな。下っ端なら尚更だ。実感は余りないけど、俺ってこの国の王様何だよなぁ。サラリーマンやってた時とは、大違いだよ……)

 

 少しだけ元いた世界のサラリーマン時代を思い出し、どこか懐かしさを感じるリムルだった。

 

 

 と、余談だが――

 

 リムルが知らぬ事であったのだが、弟子達の緊張した理由はリムルが魔王だからという理由だけではなかったのだ。

 

 リムルの気付かぬ間に、魔国連邦(テンペスト)では密かに人気投票が開催されていたのである。

 

 その三大アイドルの一人に、リムルが選ばれていたのだ。

 

 リムル、シュナ、シオン。

 

 驚きの人気ぶりであったらしい。

 

 

 更に、番外人気投票では、ミリム、ツキハ、コハク、ラミリスが、凄まじい人気だった。

 

 番外人気では、ミリムとコハクがトップを争っているとの事。

 

 

 それを知ったリムルは、(全く、嘆くべきか成長を喜ぶべきか。コソコソ隠れて何をやっているんだよ)と、後で聞いて呆れたらしい。

 

 

 弟子達が作業に戻ったのを確認したクロベエがリムル達を私室に招き入れ、リムルに工房に来た目的を聞く。  

 

「リムル様、どんなのが必要だべか?」

 

 要望を聞かれたので、リムル達は思い思いの希望を伝える。

 

「えっとね、ガルムには防具を作ってもらうつもりだから、また共作してくれても面白いと思う」

「そうだべな、じゃあ、オラもガルムのとこさ行くだよ」

 

 そんな話の流れになり、リムル達はクロベエを伴ってガルムの工房へと場所を移した。

 

 ガルムの工房へと着いたリムル達。

 

 そこでもひと騒動起きたのだが、クロベエのところと似たようなものだった。

 

「魔物用の装備ってか!? いやはや、旦那も相変わらず面白い事を考えるもんですな」

 

 呆れたようなガルムを前に、リムル達はそれぞれ自分の仮魔体(アバター)に『憑依』してみせた。

 

 暫し、じっくりとリムル達を観察するクロベエとガルム。

 

 …………

 

 ……

 

「わかっただ。要望通り、いやそれ以上の品を用意する打で!」

「任せてくれ。俺も創作意欲が湧いて来たから、人間には扱えないような凄いのを作ってみせるぞ!」

 

 クロベエとガルムは、快くリムル達の武具の制作を請け負う。

 

 製作には数日はかかるとの事で、リムル達はその場を後にしたのであった。

 

 

 こうしてリムル達は、仮魔体(アバター)に慣れる為迷宮で訓練に明け暮れる事になる。

 

 迷宮の上層で魔物と戦ったり、初心者丸出しの冒険者パーティを襲ってみたり。

 

 ここ数日で、各々の役割分担も様になって来ていたのである。

 

 しかし、ここまでになるには大変だったのだ。

 

 最初は、上層で初心者パーティにも負けていた。

 

 ツキハなどは愛くるしい顔で、キュイと鳴いて命乞いしたら。

 容赦なく攻撃魔法を叩き込まれ、あげく戦士に大剣で真っ二つに斬られてしまい、あっけなく倒される始末。

 

 その時のツキハは、「クソがあああぁッ! 幼気(いたいけ)なミニドラをボコボコにしゃがって! アイツらに慈悲の心はないんか!!」と、激怒するも。

 

 ((((いや、お前がそれを言う?))))と思いながら、リムル達はジト目でツキハを見ていた。

 

 また、自分達が迷宮の罠にて全滅するという、笑えない事態も発生したりした。

 

 それに腹を立てて、迷宮の罠の発動を防ぐ魔法道具(マジックアイテム)を作ったりしたのも、いい思い出となったであろう。

 

 落とし穴に嵌ったのはラミリスで、巻き込まれたのはヴェルドラとツキハ。

 

 ツキハは間一髪逃げようとしたところに、光の速さでヴェルドラに尻尾を掴まれ、一緒に落ちてしまう。

 

 リムルは宙に浮いていて、ミリムは天井に張り付いていたのである。

 

 落とし穴がある事に注意喚起をしなかったとはいえ。

 ラミリスよ、お前が罠に嵌ってどうするんだ? と、皆で突っ込みを入れたのは言うまでもない。

 

 そんな感じで苦労しつつリムル達は、寝る間も惜しんで訓練に明け暮れていたのだ。

 

 チームで戦闘を行う時に一番重要なのは――連携である

 

 普通なら声を掛け合ったり、視線などで合図を送ったりするものなのだが。

 しかしツキハを除いて他は、そういう技術などないに等しかった。

 

 何しろ、個にして最強を地でいくような、ヴェルドラとミリムがいたからだ。

 

 だが、皆には反則的な能力(スキル)がある。

 

 皆と『思念伝達』で連絡を取り合い、そこでリムルが的確な指示を送った。

 一応そういう事に()けているツキハにリムルがお願いをしたのだが、遊びに専念したいからという理由で断られたのだ。

 

 そこで、リムルを司令塔として、ヴェルドラ、ツキハ、ミリム、ラミリスが手足となって動く事になったのである。

 

 こうして、リムル達は急速に力を付けて、ある程度の実力を得るに至ったのだ。

 

 

 そして……。

 

 

 とうとう、チーム〝緑乱〟が四十階層を突破し。

 

 そのままの勢いで、四十九階層目前まで迫って来たのだ。

 

 

「ヤツら、とうとう四十九階層目前だぞ。どうするのだ、リムルよ?」

 

 焦ったように言うミリム。

 

 そう、明日には決戦の地に入りそうだったのだ。

 

「武具はなくとも、我等の連携は様になった。このまま、奴らに仕掛けてみるか?」

「そうだね。あたしの火炎ブレスもどうにか強力になって来たし、やる?」

「アタシも賛成! 遂にこの剛腕で、アイツらを叩きのめせるってワケよ!」

 

 血の気の多い発言は、ヴェルドラにツキハ、それにラミリス。

 

「うーん、どうすっかなぁ……」

 

 リムルが判断しかねていると。

 

 コンコン。

 

 会議室の扉を叩く音が響いた。

 

「リムル様、クロベエから連絡で、『用意出来ただ』との事です」

 

 涼やかな声でシオンが告げる。

 

 それを聞いたリムル達は、途端に悪い顔になり、顔を見合わせてニヤリと笑い合ったのだった。

 

 

 完成した、リムル達の仮魔体(アバター)専用の装備。

 

 

 リムルの武具は、死神の鎌(デスサイズ)冥府の衣(ヘルクロース)

 

 幽霊でも装備出来るのが、魔法武具(マジックアイテム)の特徴である。

 

 

 ヴェルドラは、死神の片手剣(デスバスタード)と、冥府の全身鎧(ヘルメイル)の一式だ。

 

 左手には獄門の大盾(ゲートシールド)を装備した、完全武装である。

 

 

 かたや、ミリムのスライムは簡単な物しか装備出来ない。

 

 死神の一撃(デスピックル)を飲みこみ、紅の羽衣(クリムゾンケープ)でその身を覆った。

 

 その途端、真紅の羽が生えて、不思議な進化を遂げてしまう。

 

「アイテムは、装備しないと効果が出ないのだぞ♪」

 

 と、ご機嫌な様子。

 

 

 そして、ラミリス。

 

 注文していたのは、重厚な全身鎧(ヘヴィフルプレート)だ。

 

 だがしかし、問題は装備出来るのかどうかである。

 

 ラミリスは動く鎧(リビングアーマー)に『憑依』して、少し不安そうに鎧を受け取ろうとした瞬間。

 何と、鎧が入れ替わったのだ。

 

 ガラガランと、音を立てて、ボロボロの鎧が地面に転がり落ち、塵となって消えてしまう。

 

 動く鎧(リビングアーマー)は、動く重鎧(ヘヴィリビングアーマー)へと変化したのである。

 

 これは装備するのではなく、どうやら武具そのものが丸ごと入れ替わるみたいであった。

 

「ちょ、なにこれ! 凄い動きやすくなった!!」 

 

 今まで油の切れたようなギコチない動きだったのが、スムーズに動くようになっていた。

 

 そして、喜ぶラミリスに武器と盾を選ばせる、が。

 

「ふふん! アタシには盾なんていらないさ!」

 

 そう言って、両手用の大きな武器を選んだ。

 

 死神の大斧(デスアックス)である。

 

 

 で、最後にツキハ。

 

 注文したのは、二つ。

 

 まず、チビドラに『憑依』し。

 尻尾の先辺りに小さな魔鋼製のリングを嵌めた。

 

 そして、ツキハが念じると、リングが長さ三十センチの両刃のショートブレードへと変化した。

 尻尾の先から、ちょうどキャップを被せるように柄に変化して、その先にショートブレードが付いているか形である。

 

 ツキハは尻尾をしならせて、ピュピュンと風を切るように動かすと、満足そうに笑みを浮かべた。

 

 次に、魔獣の皮で出来たチョーカーを首に付けた。

 

 ベルトの部分は黒で、真ん中にピンクのリボンがあしらわれていた。

 

 このチョーカーには魔力火炎増幅と、魔電粒子を加速させる術式が組み込まれていた。

 

 ただ、ガルムには、魔素粒子を加速させるという概念はなかったので、これだけはガルムが教授に協力を仰いだ品である。

 

 これは、チビドラの身体では十分に魔電粒子を活かせず、火炎が主体になるのを良しとしないツキハが依頼した一品。

 

 目指すのは、SF怪獣漫画の怪獣が吐く、超高熱ブレスなのだ。

 

 漫画の表現が実現出来る、魔導科学と精霊工学に、能力(スキル)の世界。

 何とも末恐ろしいものがあると、異世界人は考えるだろう。

 

 そして、ツキハが何やら試していると。

 

 ――うーんと、火炎をいったん魔力に変換してぇ

 

 魔力炎と魔電粒子を、混合、混合……

 

 ボヒュウ~~~

 

 うや? 失敗失敗。

 

 先に魔電粒子を生成してぇ

 

 火の属性の魔力を交ぜてぇ……

 

 まじぇまじぇ……

 

 まじぇまじぇ……

 

 ……

 

 できたあーーー!

 

 すると――

 

 ミニドラの胸の辺りが青白く輝き始め。

 クワッと開けた口の中までもが光り輝きだしていた。

 

「あ? あれ、不味くね?」

 

 それを見たリムルが呟いたと同時に――

 

 『離脱』、そう叫んだミリムが元の姿に戻り、ツキハのところへ飛んで行き、〝お仕置きゲンコツ〟を力一杯落とす。

 

 ゴズンッ!

 

「きゃうっ!」

 

 ボンッ!

 

 ゲンコツを落とされた反動で口が閉まり、吐き出そうしていたブレスが体内で暴発する。

 

 重い破裂音が会議室に響き、ツキハが「あぁっ、ああ~」と声にならない声と白煙を吹き上げながら、パタリと地面に倒れ伏す。

 

「バカモノッ! こんなところでブレスを吐こうなんて、何を馬鹿な事を考えておるのだ!」

 

 倒れたまま目を回しているツキハに、ミリムが叱り飛ばす。

 

「何やってんだか、ツキハのヤツ」

「うむ。流石に、ここでブレスは駄目だと、我も思うぞ」

「相変わらず馬鹿よねぇ、ツキハって」

 

 ジト目になりながら、リムルにヴェルドラ、それにラミリスが呆れたように言い放つ。

 

 とりあえず、あわや大惨事を免れたリムル達。

 

 意識を取り戻したツキハに、リムルが思がままに行動するなと、懇々とお説教をしたのであった。

 

 

 これで各々が、新装備を手に入れた。

 

 気分も一新。

 

 決戦を前に、御満悦のリムル達。

 

 特に、ツキハの薄い笑みがより一層不気味さを増していた。

 

 ここでは各々の仮魔体(アバター)を確認してみよう。

 

 

 まず、自分の幽霊(ゴースト)は――

 

 物理を捨てて、魔法と精神攻撃の特化型。

 

 職業(クラス)法術師(ソーサラー)

 

 ゆくゆくは、<精霊魔法>や<幻覚魔法>なんかも覚えて、魔導師(ウィザード)を目指すらしい。

 

 それに加え、<神聖魔法>も覚える気でいた。

 

 自分で自分を信仰したらどうなるの? という、実験の一環であった。

 

 

 次にヴェルドラの骸骨剣士は――万能型で何でもこなす。

 

 職業(クラス)重戦士(ファイター)だが、魔法を覚えて魔法剣士(マジックナイト)を目指すらしい。

 

 

 そして、ミリムの粘性体(スライム)は――速度特化で一撃狙いの超特化型。

 こういうのを得てして、浪漫型とも言う

 

 職業(クラス)暗殺者(アサシン)

 

 既にミリムは、暗殺の基本をツキハに教えてもらう気でいる。

 

 リムルとしては、『やり過ぎないでくれると、いいのだけど』と思うも。

 

 だがしかし、この二人である。

 それは、無理な話というものであろう……。

 

 

 で、ラミリスの動く重鎧(ヘヴィリビングアーマー)は――攻撃特化型。

 

 職業(クラス)狂戦士(バーサーカー)

 

 別に狂っている訳ではなく、ラミリスが防御をまるで考えない攻撃をするので、そう呼ぶ事にしたらしい。

 

 ある意味、攻撃特化の危険な魔物である。

 

 

 最後にツキハのミニドラは――遊撃特化型である。

 

 職業(クラス)獣魔忍(ビーストシノビ)

 

 機動力を活かして臨機応変に活動する個と化し、チーム連携から偵察、単独迎撃に暗殺まで幅広くこなす、魔獣の忍びともいえよう。

 

 特に厄介なのは、ツキハ達が得意とする天牙影千流の〝隠形術〟が、この身体でも出来る事である。

 

 ミリムのスライムと一緒に待ち伏せ強襲とか、敵にすれば悪夢であろう。

 

 

 これで、準備万端である

 

 

 精一杯頑張って、チーム〝緑乱〟の邪魔をしてやろう。

 

 

 そう意気込んで、リムル達は出陣したのだった。

 

 

 

 





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