忍びが転生したら〝異世界珍道中〟になった件   作:にゃんころ缶

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 お待たせしました。222話です

 ツキハ

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 コハク

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 傭兵商会ルヴナン・真の紋章


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 ※〝打刀〟
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222話  白? 黒?

 

 

 招待状が送られて来てからの、魔王リムル。

 

 

 日常には変わりなく、忙しく雑務をこなす日々であった。 

 

 

 それから、ほどなくして会議の日にちが迫り、本会議が始まる前日にイングラシア王国入りをしたリムル一行。

 

 リムルの供は、ベニマルとシュナの二人。

 

 そしてソウエイは、影で動く密偵として先にイングラシア王国入りをしていた。

 ちなみに、ソウエイは会議には参加しない。

 

 大人数でいくと面倒事が多くなりそうだったので、この人選になったのだ。

 

 お約束の如くシオンが行きたがったのだが、まだ他の国の大都市に連れ出すのに一抹の不安を覚えたリムルは、部下の育成を頼むと命じて留守番を頼んだのだった。

 

 ゲルドは、ミリムの新王都建造の総指揮を執っており動けない。

 

 ディアブロは、放浪の旅に出たまま。 

 

 ハクロウはモミジに連れられて、長鼻族(テング)の隠れ里へ。

 

 ガビルはミッドレイと連れ立って、忘れられた竜の都を訪ねていた。

 そこには飛空龍(ワイバーン)の生息地があるらしく、捕獲して飼い慣らすつもりらしい。

 

 ガビルは最近〝飛龍衆(ヒリュウ)〟の戦力向上を考えていた。

 そのきっかけは、ガビルが知り合いになり良く酒を酌み交わす仲になったルヴナンの眷属の一人から、あるちょっとした情報を聞かされていたのだ。

 

 これは東の帝国の情報だったらしく、この情報が酒の席で迂闊にもたらせられたモノなのか、意図的にガビルにもたらせられたモノかの真偽はわからない。

 

 ただリムルは、あの眷属が酒の席であっても、こんな情報を漏らすとは到底思えなかった。

 

 そう、何か魂胆があっての情報リークだと考えていて、智慧之王(ラファエル)の意見も同様だった。

 

 だからガビルは、飛空龍(ワイバーン)を騎獣にした航空戦力を試す事にしたのだ。

 

 これに関してはリムルも大いに賛成し、恐らくコハクの差し金だろうと思いつつも、結果を楽しみに待つ事にしたのだった。

 

 そんな訳で、幹部達は皆それなりに忙しいのである。

 

 

 リムルは二人を引き連れて、ツキハとコハクと共にイングラシア王国を訪れた。

 

 途中ツキハがちょっと野暮(やぼ)用を済ませてくると言い、三十分ほど姿を消して戻って来た。

 

(ああ、あそこに行って来たのか)

 

 恐らく、ツキコとしてイングラシア王国の酒場街にある〝子猫亭〟に行ったんだろうと察するリムル。

 

 

 そしてツキハが戻って来て、リムル達はソウエイと合流する。

 

 

 それからどこへ行こうかと皆と話していたリムルは、シュナが服飾関係の店を見たいと言ったので、そこに向かう事にした。

 

 

 服飾関係の店が立ち並ぶ通りを歩くリムル達。

 

 現代に日本のように、ガラス張りの飾り棚(ショーウインドー)に様々な衣装が飾られている。

 

 それを眺めて楽しむ通行人もいて、イングラシアの王都がいかに都会であるかを物語っていた。

 

 このショーウインドーは、この世界では恐ろしく高い。

 ガラス製品はそれなりに出回ってはいるが、一枚ガラスでこれだけのサイズとなると、下手な家が買えるほどの値段となる。

 

 それを展示用として使えるのだから、こうした店はかなり儲かっているのだろうとリムルは思った。

 

 

 そして、一軒の服飾専門の店に入るリムル達。

 

 ショーウインドーに飾られた最新の衣類を、興味深げに見つめて回るシュナ。

 

 各種の店を見て回ったリムル達だが、どの店も魔国にはない奇抜なデザインの服も多かった。

 

 シュナ達が縫製している服は、リムルの記憶から再現されたものが大半である。 

 

 だがここには、服飾の職人達が自分で考えたデザインの服で溢れていた。

 

 競い合うように飾られた、服の数々。

 

 シュナはそれらを食い入るように見つめ、心を魅了されるのだった。

 

 そして――

 

「私も負けてはいられません。もっと精進しないと!!」

 

 と、シュナが静かに決意を込めて、そう呟いた。

 

 それを聞いたリムルは、嬉しそうに頷き言った。

 

「これからも頼むよ! って事で三人とも、どれでもいいから、好きな服を選ぶといい。俺が買ってやるから」

「えっ!! よ、宜しいのですか?」

「俺も?」

「……自分はこのままで」

「いいからいいから! 君達には給料も払ってないし、こういう時くらい、俺に恰好付けさせてくれ」

 

 普段からの感謝の気持ちとして、三人に服をプレゼントする事にしたリムル。

 

 今日のリムルの懐は、めちゃくちゃ暖かいのであった。

 

「あ、そうそう。ツキハとコハク」

 

 既にコハクが、ツキハに服をプレゼントするべく服を選んでいるところに、声をかけて来たリムル。

 

「「ん?」」

「お前達にも色々と世話になっているからな。今日はお前達二人も好きな服を選んでくれ」

「さよかぁ。ほな遠慮のう頂きますえ」

「じゃあ、遠慮なく選ばせてもらうね」

 

 リムルの好意を嬉しそうに受けたツキハとコハク。

 

 そしてツキハは、リムルの方を一瞬チラッと見て、クスリと笑みを浮かべた。

 ツキハはリムルの懐具合に感づいていたのだ。

 

 そうあの時、イングラシア王国の地下闘技場で大勝ちしたリムルは、それ以降使う暇がなくて、儲けた金貨の大半をそのままヘソクリしていたのであった。

 

 という訳で、皆がそれぞれの服を選びに店内に散って行った。

 

 

 …………

 

 ちょっと なにしてんの?

 

 あんさんの服を選んでるんやで

 

 いや自分で選ぶし 

 

 ……

 

 ねえ 向こう行けって 邪魔だし

 

 アカン ツキハは放っておくと 無粋な服しか選ばんさかいな

 

 あたしが着るんだし ほっとけよ!

 

 …

 

 シュナ達が服を選んでる最中に、何やらツキハとコハクが小声で言い争うのが聞こえて来ていた。

 

(うーん。コハクがツキハの服を選ぼうとしてるのか。そして、ツキハが怒り始める、と。お約束の如く、喧嘩が始まらなければいいんだけどな)

 

《告。その可能性は九十%を超えると推測します》

 

(だよなあ~)

 

 リムルの嫌な予感に、智慧之王(ラファエル)がダメ出しで可能性の高さを示唆する。

 

 そうしてる内に三人が服を選び終えた。

 

 

 ベニマルとソウエイは、テーラードジャケットと白シャツにスキニージーンズを選んでいた。 

 

「ほお。中々に良いチョイスだな。似合ってるじゃないか」

「そうですか? ありがとうございます」

「……」

 

 二人の服を褒めたリムルに、どこか照れたような表情を浮かべるベニマル。

 対してソウエイは、無表情のように見えるが、どこか嬉しそうな雰囲気を醸し出していた。

 

 

 そしてシュナは――

 

(おおっ!!)

 

 心の内で歓喜の声を上げるリムル。

 

 ふわふわとした白のスカーチョと、アイスブルーのニットベストで極めていた。

 

「いいなその感じ。似合ってるよ、シュナ!」 

「ありがとうございます! 嬉しいですわ、リムル様」

 

(うんうん。やっぱ、巫女服もいいんだけど、こういうカジュアルな服もいいよなぁ) 

 

 普段見慣れない姿だから、どこか新鮮に感じるリムルであった。

 

 そんなシュナに見蕩(みとれ)れつつリムルは、シオンへのお土産として、薄い紺色のオールインワンを選ぶ。

 

(アイツは見た目だけならクールなので、きっと綺麗に着こなすだろう)

 

 と、思いながらそれを店員に頼み包んでもらう。

 

 

 後は、ツキハとコハクだけなのだが……。

 

「ちょっ! なにあたしの入った試着室に入って来るのよ!」

「ええやないか、ツキハ。これ、あんさんに似合うと思うんよ。穿()いて見なはれ」

「はあっ!? なに思いっ切り短いスカート持って来てるのよ! 蹴りを出したら、パンチラどころかパンモロじゃん!!」

「アカン! 女子(おなご)がそんな無粋な動きをしたら、あきまへん」

「やかましわッ! ちょ、ちょ、ちよっとぉーー さわんな!!」

 

 ゴト ゴトトッ ゴトッ ガタタッ 

 

 試着室で揉み合いになるツキハとコハク。 

 

(あーあ。仕方ない。迷惑防止に結界を張るか)

 

 ジト目で揺れる試着室を見ながら、リムルはそっと手を翳すと試着室ごと結界で包んだ。

 

「やめ、やめって、うらああッ! なに下を脱がそうとする、このエロ猫があッ!!」

「ほらほらほら、早くこのミニスカを穿()きなはれ、うふふふ、()よぉ()よぉ~」

「やめろって! ゴラアあぁーーーー!!」

 

 コハクは興奮気味に、ツキハの半股引(はんだこ)を強引に引きずり下ろす。

 

 しかし、ここでコハクの目が()わり、低い声で言い放つ。

 

「……何やこれ!?」

「何って、あたしのパンツじゃん。何言ってんのよ」

「ちゃう!! なんやこの色気のくそもない白パンツはッ!!」

「知らないの?」

「何をや!?」

 

 下に穿いたスパッツ状の半股引(はんだこ)を強引に半分下ろされ、見えたツキハのパンツを見て激怒するコハクであった。

 

「これ、女性用のボクサータイプのパンツだよ。知らんの?」

「知らへん」

「これねぇ、めっちゃ動きやすいんだよぉ。特に激しい動きをしても、尻に食い込まないのがいいのよ」

「アホなこと言いなや。もう、アカンアカンアカン、アカン! 女子(おなご)がおしゃれを忘れたらアカンッ!!」

「はあッ!?」

 

 そう言いながらコハクは、ガバッと自分の穿いている半股引(はんだこ)を下ろし、自分の穿いているパンツをツキハに見せ付ける。

 

 そのパンツは、黒の地獄蛾(ヘルモス)(シルク)製のパンツで、お尻のところに花模様のレースがあり薄っすらと透けているパンツだった。

 

「うわぁ……」

「なんや?」

「これは、ないわぁ、マジ、ないわぁ……」

「なんやねん!?」

 

 コハクの黒パンツを見て、ドン引きするツキハ。

 

「アンタがド変態なのは昔からだけど、とうとう本物のド変態になったんだね。残念だよ、コハク」

「何が残念やねん!! これが、おしゃれなパンツや。ドアホッ!」

「はあっ!? 超絶エロ猫にドアホ言われる筋合いはないわッ!!」

「頭の上から足の先まで脳筋馬鹿猫よりマシやねん!!」

「うっさいわッ!! エロ猫ド変態女が、少しはまともなパンツ穿けやあああッ!!」

「あんさんこそ、少しはおしゃれなパンツくらい穿かんかい!!」

「アタシの勝手だろが、ほっとけやッ!!」

「はんッ。オヤジ猫娘。オ・ヤ・ジ・ね・こ・む・す・め。プフッ」

 

 激しい言い争いの中コハクが、口に手を当て小馬鹿にしたような笑いをしながらツキハに言い放った。

 

 すると、ツキハの顔がみるみるうちに真っ赤になり、ブチ切れた。

 

「ぶっ殺すぞ、テメエ!」

「やってみなはれ、そっ首、叩き斬ってやりますえ!」

 

 結界は張っていても音だけは遮断してなく、ツキハとコハクの口喧嘩は周囲に駄々洩れだった。

 

 おしゃれから、パンツ争いになり、店の店員達は何事かとヒソヒソ話し始めていた。

 

 既にベニマルは素知らぬふりをしながら、他の服を眺め。

 ソウエイは、完全に気配を消していた。

 

 シュナは、「まあまあ」とコロコロと笑いながら、それを見ていた。

 

 リムルはハアーッと深い溜息を吐きながら、次に起こるだろう魔物的災害に備える。

 

 

 そして――

 

 

「うらあッ!! ――」

「きゃうん!」

 

 ズバンッ! ガタタッ ガタッ ガタ。

 

 ツキハの怒号が聞こえたと同時に、激しい衝撃音が鳴り響き、店内が微かに揺れ、試着室が振動で小刻みに揺れていた。

 

 店員達は顔を見合わせ、何が起こったのか理解出来ずに、周りをキョロキョロと見渡していた。

 

 

 やがて、試着室のカーテンがふわりと開くと、ふらふらとコハクが出て来た。

 

「は、はわわぁ~」

 

 そして、ガクッと店の床に両膝を付くと、パタリと尻を突き上げた格好で前のめりに倒れ伏す。

 

 

 〝天牙影千流柔術、死打・双破激掌(そうはげきしょう)

 

 そう、ツキハがブチ切れてコハクに放った技。

 

 コハクのこめかみを両手の平で合わせ打ったのである。

 

 

 打震で激しく頭と精神体を揺らされたコハクは、極度の酩酊状態を引き起こし、倒れたのであった。

 ほとんど手加減無しで打ち込まれた技だが、コハクは打ち込まれる寸前に自分の尻尾の先で、体内に打震を打ち込み、ほぼツキハの打震を相殺したのだ、が。

 

 そこは脳筋ツキハの打震。

 

 流石にコハクといえども、打震全部は相殺(そうさい)し切れなかったのだ。

 

 半股引(はんだこ)を半分下ろしたまま尻を突き出した格好なので、黒のシルクパンツが丸見えだった。  

 

 ベニマルは一瞬見てしまったがサッと目線を()らし、ソウエイは素早く後ろを向いていた。

 

「死んどけ、エロ猫」

 

 ツキハはそう吐き捨てると、シャッと試着室のカーテンを閉める。

 

 こんな他愛もない二人の喧嘩だが、お互いに手の内を知り尽くした仲なので出来る芸当ではある。

 

 そうは言っても、店にとっては迷惑極まりない事だろう。

 

 

 そこへ、シュナが素早くコハクのところに行き、ササッと半股引(はんだこ)を上げ直すと、何事もなかったようにリムルの傍に行き、ベニマルとソウエイを見た。

 

 シュナの目線から逃れるように二人は、服を手に取っては、「ほう」とか「ふーむ」とか言いながら逃れるようにその場から離れて行く。

 

(なーにやってんだか。しかし、あのパンツ……何か凄いエロくね? うん、眼福眼福)

 

「リムル様、どうされました?」 

 

 ギクッー!

 

「え、あ、ああ。何でもない。何でもないよ?」

 

(ヤバッ! いかんいかん、コハクのパンツをチラ見したのが、バレた?) 

 

 とリムルは、シュナが微笑みながらリムルの顔を覗き込んで来たので、それにタジタジとなる。

 

 そんなプチ騒動を起こしたツキハとコハクが選んだ服は。

 

 

 ツキハは、白のゆったりとしたTシャツに黒のパーカー付きジャケット、下はデニム生地のショートパンツ。

 

(へえー。活発な女の子というイメージだな。可愛いじゃん)

 

 ツキハの選んだ服を見て、内心で感嘆の声を上げるリムル。

 

 

 そして、いつの間にか意識を取り戻したコハクが選んだ服は。

 

 グレーの丈が長めのレディーステーラードジャケットに、中は黒のシャツで同じくの黒の膝上丈のスカートを選んでいた。

 

(ほお~。シンプルだけど、どこかお姉さんという雰囲気がそこかしこに。ふむ、コレもいいかも)

 

 コハクにしては意外なチョイスの服を見て、これまた感嘆の声を内心で上げていた。

 

 

 最後にリムルだが、悩んでも違いはわからないと考えたのか、店員に選んでもらいその服を買った。

 

 すると、ツキハがメンズ用の服があるところに行き、一着の展示用の魔獣の皮で作られた革ジャンの前で足を止める。

 

 そして、両手をいっぱいに広げ、何かブツブツと呟いていると。

 

「うん。これサイズが合うね。ヴェルドラにプレゼントしようっと♪」

 

 そう言いながら店員を呼んで、買うと告げると。

 

 店員が驚いたような顔をして、「お客様。申し訳ありませんが、この革ジャンは、希少な魔獣の皮で作られていますので、金貨五十枚は致します。宜しいのですか?」と、問うと。

 

「やすっ」

「え?」

 

 そう言ったツキハは〝がま口財布〟を取り出すと、ジャラジャラと金貨五十枚を取り出し、支払いをするカウンターの上に置く。

 

「お買い上げ、毎度ありがとうございます!」

 

 にこやかに丁寧なお辞儀をする店員達。

 

 寸法合わせもその場で済ませ、皆は早速選んだ服に着替えた。

 

 リムルも支払いを済ますと、これまた大きな声でにこやかに礼を返された。 

 

 ツキハは、ヴェルドラにプレゼントする革ジャンの包みを大事そうに抱え込み、口元が緩みまくっていた。

 

 

 そして服を着替えた後、リムル達は吉田氏が経営していた喫茶店へと向かう。

 

 今は弟子が引き継ぎ、そこそこ繁盛していた。

 

 それもそのはず、材料などは魔国から納入していたのだ。

 

 この材料輸送は、魔導ドライブ搭載補助動力付きの新型馬車を引くガットエランテの別働隊が行っていた。

 

 

 リムル達が喫茶店に入ると、奥にある個室で談話が出来る特別室に案内された。

 

 ここにはもう一人、待ち合わせをしていた人物がリムル達を待っていたのだ。

 

 

 





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