忍びが転生したら〝異世界珍道中〟になった件   作:にゃんころ缶

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 お待たせしました。227話です

 ツキハ

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 コハク

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 傭兵商会ルヴナン・真の紋章


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 ※〝打刀〟
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227話 どうしてこうなった?

 

 

 混迷を極める会議。

 

 

 各議員の要望や横槍が飛び交う中、議長による説明が終わった。

 

 

「――以上を以て、ジュラ・テンペスト連邦国の加盟に対する条件とする。リムル陛下、何か異論はありますかな?」

 

 ここで異論を述べねば、提示された条件を承諾したものと見做されてしまう。 

 

 普通ならば、書面に起こした上で事前に知らせるものだろう。

 

 しかし、この条件は今会議で初めて提示させられたものだったのだ。

 

 この会議の場で返答を求められても、即答できない場合はどうすればいいのやらと思うリムルだったが。

 

 これは恐らく嫌がらせだろうなと、内心で苦笑いを浮かべる。

 

 その間にも、智慧之王(ラファエル)が口頭での説明を詳細に検討し、リムルの手を使って自動筆記で文書を作成していた。

 

(マジ、万能だよ、智慧之王(ラファエル)さん) 

 

 既に書き終えた文書に目を通しながら、リムルは喜ぶ。

 

 そして、提示された条件に対して反論を開始する。

 

 

「全ての条項を検討したが、それぞれに疑問点と改善案を用意した。それが受け入れられるなら、当方としては何の問題もないと考える」

 

 そう言ってリムルは、書き起こした文書を後ろで控えるベニマルに手渡す。

 

 受け取ったベニマルは、そのまま議長へと届けた。

 

 威圧されたように受け取る議長は、その文書に目を通すと驚いたような声を上げる。

 

「――なっ!?」

 

 リムルは、提示された条件に大筋で賛同はしている。

 

 ただし、利用されつつも実利を取れるよう、一部の記載を変更していたのだ。

 

 更に、ルヴナンに関しての条件は、魔国側には口を出せる案件ではないので、評議会からの直接交渉を進める案を提示していたのである。

 

 リムル達を魔物と侮っていた議長は、自分の説明が一文一句漏れなく記載された書面を見て、顔を青褪めさせていた。

 

 その上、誤魔化しは利かぬとばかりに、赤字による修正までされていたのだから、ぐうの()も出ないとはこの事だった。

 

「何か問題があるのなら、協議には応じますよ?」

 

 この提案が受け入れられれないのなら、無理に加盟する必要はないとリムルは思う。

 

 万人に認められるのは時期尚早だったと諦めて、自分達を認めてくれる国家とだけ相互関係を深める方針に転ずるだけ。

 

 これだけでも長い目で見れば、いずれは魔国連邦(テンペスト)が貿易の中心になるのは目に見えている。

 

 魔国連邦を支持する主要国を繋ぐ、〝魔導列車〟。

 

 そして、〝魔導列車〟が輸送した物資をガットエランテの輸送部隊が、〝魔導列車〟が及ばない国々や村などに、その物資を届ける。

 

 必然的に、魔国連邦(テンペスト)を拒否した国々は、この流れから取り残される事になってしまう。

 

 だからリムルは、加盟には執着はしない。

 

 

「いえ、何も問題があるという訳では……。ただ、少しだけ、リムル陛下の案を検討する時間を頂戴したい」

 

 議長も馬鹿ではなく、たかが魔物、そう侮った事を後悔し、リムル達が一筋縄ではいかぬと気付いたのだ。

 

 だから、その文言に文句を付ける訳でもなく、文書の精査と打開策を講じる事にしたようである。

 

(俺達には検討に時間すらくれなかったのに、それか)

 

 と思ったものの、ここは反対しても得はないので、その要求に応じる事にしたリムルは。

 

「ええ、構いませんよ」

 

 と、にこやかに告げた。

 

 

 ………………

 

 …………

 

 ……

 

 

 どうしてこうなった?

 

 

 リムルは立ち上がると右足を真上に振り上げ、そのまま勢いよく目の前の机に振り下ろした。

 

 

 バゴオォォォォォンーーーーッ!!

 

 

 轟音鳴り響き机が真っ二つに割れ、その衝撃波は割れた机を宙に舞い踊らせる。

 

 くるくると回る二つに割り砕かれたつ机は、ツキハとコハクの真上から落下して来た。 

 

 コハクは座ったままで左手で袂から呪符を指に挟んだまま取り出し、無造作に落下する机の片割れに投げた。

 

 

 ヒュゴオオオオオォォォォッ!! 

 

 

 その片割れを真っ赤な炎球が包み込み、超高温により一瞬で灰すらも残さずに焼き尽くした。

 

 

 と、同時に。

 

 

 立ち上がったツキハが、小袖の裾を(めく)り。

 右足で落ちて来る机の片割れを真上に向かって蹴り抜く。

 

 バガアァンーーーーーーッ!!

 

 蹴られた片割れが二重にブレたかと思うと、〝打震〟を打ち込まれた事により粉々になり、無数の細かい木くずとなりツキハの前にパラパラと音立て舞い落ちていく。

 

 

 止まったかのような時の中、ヒナタの視線がとても冷たく三人に突き刺さる。

 

 やっぱりやったわね――と、言葉に出さなくとも痛いほどに伝わる視線だった。

 

 それを感じたリムルは、やっちゃったものは仕方ない。

 と、椅子に踏ん反り返って腕を組み座り足も組んだ。

 

 

 リムルは、最初は我慢していた。

 

 

 自分は、忍耐力の塊と自負している。

 確かにそれは、嘘偽りはないだろう。

 

 ミリムの相手やツキハのやらかしなどもお手の物なのだから。

 

 そう、広い心があるから、二人の愚行も許せる。

 

 

 だがしかし……。

 

 

 欲に塗れて可愛げが全くない、欲望で目をギラギラさせた議員のオッサンどもならどうだろう?

 

 その答えが、目の前で粉砕された大机であった。

 

 

 三時間もの昼休みを挟み、会議が再開した

 

 ここで問題が発生。

 

 リムルが提出した書類に対し、議員連中は要望書という謎の文書を作成し、リムルに渡して来たのだ。

 

 

 疲れたような顔した議長を見たリムルは、議長の意志とは別なんだろう思う。

 

 だが、その同情も吹っ飛ぶほどの内容が要望書にあった。

 

 チラッと見ただけで――

 

()るか。さっきから胸糞悪いモン(・・・・・・)が漂ってるし」

 

 と、ツキハが小さく呟き。

 

「ええで、()りなはれ。どこのどいつやろね、その胸糞悪いモン(・・・・・・)を巻き散らしてるアホは」

 

 と、コハクが問答無用でツキハをけしかける。

 

「お前ら、待て。それ相応の返しはさせもらうから、それは無しな」

「そう。リムルがそう言うなら、それに従うよ」

「仕方ありまへんな。〝契約主〟の御意向に従いましょ」

 

 ツキハとコハクの暴走を止めながらも、リムルも完全にブチ切れたのである。

 

 

 その内容とは――

 

 

 一つ。

 〝魔導列車〟をイングラシア王国まで開通させる事。

 それにかかる工事と費用は、魔国連邦(テンペスト)側が負担するものとする。

 

 一つ。

 高品質の武具の無償提供。

 西側諸国の軍備増強を目的とし、魔国連邦(テンペスト)側に協力を求めるものとする。

 

 一つ。

 魔国連邦(テンペスト)に出現した迷宮は、人類共通の宝である。

 故に、その運営に評議会を加えるものとする。

 

 一つ。

 評議会に加盟するにあたり、毎年一定額の税を納めるものとする。

 また、議員の選出に関しては、安全面を考慮して人間のみを認めるものとする。

 

 一つ。

 魔国連邦(テンペスト)と契約を結んでいる傭兵商会ルヴナン側は、人類に敵対しないと確約を示す為に、イングラシア王国に支店を開き、その運営を評議会に一任する事とする。

 (なお)これは、魔国連邦(テンペスト)が評議会に加盟する条件の一つとする。

 

 一つ。

 傭兵商会ルヴナンの支店を開く事に関して魔国連邦(テンペスト)側は、ルヴナンの暴走を未然に防ぐ為に一部戦力をイングラシア王国に常駐させるものとする。

 

 一つ。

 傭兵商会ルヴナンの支店は、売り上げの四割を税として評議会に納めるものとする。

 

 等々。

 

 好き放題に書かれていた。

 

 その結果、リムルもツキハもコハクも、三秒でプッツンする事になったのだ。

 

 こんな条件など検討する価値もない。

 

 リムルはこれを見た途端、こんなのを締結するくらいなら人類との共存を諦める方がマシだと思い。

 

 この会議を、ツキハとコハクに死人と怪我人が出ない程度に暴れてもらい、ぶっ潰そうかと考えたほどだった。

 

 

「なあ、君達。俺を舐めてるのか? というより、俺より遥かに長く生きていて人類に対して恐怖を振りまく番外魔王の怖さを、この世界の住人である君達が、伝わる伝承などを絵物語か何かと思っている訳ではないよな? それに、どんな権限で魔王である俺に要望を出しているんだ? 〝八星魔王(オクタグラム)〟の一柱である俺が断言するが。この二人は、魔王ギィや魔王ミリムともタイマンを張れるくらいの実力を持っている。いいか、魔王になれないじゃない。魔王になりたくないから、番外魔王などという地位を嫌々やっているだけだ。そこのところは、俺より君達の方が良く御存じではないのか、ね?」

 

 机を蹴り割ったお陰で、少しだけ冷静になったリムル。

 

 怒りを押し殺し淡々と、顔を(うつむ)けている議員連中に問う。 

 

「リムル様が質問なさっていますよ。黙っていないで返答して下さい」

 

 妖艶なる笑顔のシュナが追い打ちをかける。

 今は亡きオーガの里の姫であり、現魔国連邦(テンペスト)の姫巫女シュナの威圧感に吞まれ、議員達は額に脂汗を流し始めていた。

 

「君達は、勘違いをしている。我が国は既に、巨大な経済圏の構築に王手をかけているんだ。それでも俺が西方諸国評議会への加盟を望んだのは、俺達が人類に敵対しないという意志表示になるからに他ならない。しかし、君達がそれを望まないのであれば、俺としては無理に事を推し進めるつもりなどないんだ」

 

 静まり返った会議場に、リムルの声だけが静かに響く。

 

「そして、一つ言っておく。傭兵商会ルヴナンと契約を結んで協力体制は築いてはいる、が。同盟を結んでいる訳でもなく、まして、番外魔王の二人と友誼(ゆうぎ)を交わしている訳でもない。俺は、我が国は、ただの契約主の立場であると、いうだけだ。君達の中には、傭兵商会ルヴナンと契約を結んだこともある国もあるだろう。その契約の条項に記載されてる一文も知っているのではないかね? もし、過度にルヴナンを利用したり裏切り行為を働いたり、秘密を暴こうとした時は即時契約解除、そして、それ相応の報復がある、と。記載されている事を」

 

 そう言うとリムルは、扇情に広がった一、二階席の議員達をゆっくりと見回して足を組み直す。

 

「俺の言わんとしてる事は、賢明な君達なら理解出来るだろう。〝触れざる者(アンタッチャブル)〟。西方聖教会が何故、番外魔王の二人にこの認定を施したのかを、もう一度よく考えては如何かな。要望書に書かれた項目の一つは、ルヴナンの禁忌に触れる行為だと、何故認識出来ない? ハッキリ言おう。これにより契約が解除され、ルヴナンが報復行動に出た場合――俺は、止める(すべ)を知らない」

 

 このリムルの言葉により、議員の顔から血の気が引き青褪(あおざ)めていく。

 

 ルヴナンの報復。

 

 それは、番外魔王の眷属千体と、番外魔王ツキハとコハクが動く事に他ならない。

 

 そして、魔王リムル自身がこうなった場合、一切の介入はしない宣言であり。

 この矛先が、企んだ者、もしくは企んだ国へと向く事を示唆していた。

 

 どよめく事すら出来ない議員達は、無情にも言葉を失う。

 

 リムルは別に『魔王覇気』を使った訳でもなく、というより、人間に使ったりすれば恐慌状態になるならまだマシで、下手をすれば発狂したり狂死したりする。

 

 勿論精神操作をして、洗脳などもしない。

 

 ただただ、怒りに任せて机を破壊して、淡々に自分の意見を述べただけのリムルである。

 

 この言葉の重みは、今この場に番外魔王ツキハと番外魔王コハクがいる事により、最大限に発揮されたのだ。

 

 

「い、いや、リムル殿、我等はそのようなつもりで申し上げたのではなく……ましてや、傭兵商会ルヴナンの秘密を暴こうなどと思うハズもなく……」

「さ、左様ですぞ! 我等としても、貴国と友誼を深めたいとの思いから、つい甘えた意見を出してしまったのですじゃ。傭兵商会ルヴナンに関しては、貴殿ならあの番外魔王の二人とも対等に話が出来るのではと、考えた結果でありますのじゃ」

 

 完全にうろたえて、必死に言い訳を始める議員達。

 

 それを冷ややかな目で見る、リムル、ツキハ、コハク。

 

(しかし、聞けば聞くほどイライラする。そもそもな、一国の王に対して殿呼ばわり普通するか? ツキハとコハクにしてもただの二人呼ばわりとか、無礼にもほどがあるわ)

 

 相手が一国の王や国家元首ならば、それも許されよう。

 

 国を背負う立場ではない、しかもただの評議会の議員達からそう呼ばれるのは、魔王リムルが見下されていると同義であった。

 

 ツキハとコハクに関しては、人類の恐怖の対象でもあるから致し方ないともいえよう。

 だがしかし、ツキハとコハクは口を挟まずにリムルの行動を静かに見守る。

 

 何故なら、この会議の主役はリムルなのだから。

 

 

(間違いなくコイツらは、俺達の事をたかが魔物と舐めている。さて、どうしてくれようか)

 

「あ? それじゃあ、どういうつもりだと言うのかな? 俺が、我が国の民が、お前達の奴隷として馬車馬のように働けと言ってるに等しいように思うが? それに、傭兵商会ルヴナンの秘密を暴けと暗に言ってるようにしか見えないよな?」

「い、いいえ! とんでも御座いません!」

「決してそのような意図がある訳もなく。ましてや、傭兵商会ルヴナンを敵に回すつもりは、我々には全くないのです!!」

 

 なりふり構わず言い募る議員達。

 

(これが国を代表する貴族とか、頭が痛くなってくる話だな、まったく。俺の寛大な心も、堪忍袋の緒が切れちゃうよ? しかしまあ、こういう狸どもを手玉に取っていたのなら、ユウキはなかなかの狐だね。しかも、その上をいく狐ならぬ猫がいるんだけどな。見習いたいけど、正直俺には無理そうだ)

 

《案。それでは、私が自動対応で対処しましょうか? YES/NO》

 

(ん? 智慧之王(ラファエル)さんが何か言ってるようだけど、気のせいだろう。智慧之王(ラファエル)さんは優秀だけど、単なる能力(スキル)に過ぎないしな。そこまで自由に口出し出来るハズもなく。あれだ、普段から頼り過ぎてる事で、願望が幻聴となって聞こえたんだろう。うん、そうに違いない。気のせい気のせい)

 

 馬鹿な妄想を振り払うように、軽く頭を振るリムル。

 

 そして、議員達を見回して睥睨(へいげい)する。 

 

(うーん、どうしよう、コレ)

 

 冷静になった今リムルは、この事態をどうやって収拾しようかと頭を悩ませてしまい。

 

 『思念伝達』でコハクに話しかける。

 

『なあコハク、コレどうしようか?』 

『せやねえ。もういっその事、死人と重傷者が出ない程度に全員シバキ倒せばええんやないか? こら! ボケナスがあ! なめたらアカンでえ! とか言うて』

『あ、いや、流石にシバいたら駄目でしょ?』

 

 と、リムルがコハクに返すと、ツキハが割り込んで来る。

 

『いいんじゃないの。あたしらに舐めたまねしたんだから、そこは雰囲気的にゴツンと一発お見舞いしよ?』

『だから、ツキハ。俺がゴツンとやったら、アイツら死ぬよね?』

『うん、死ぬね。でも、別にいいじゃん。運が悪かったという事で済まそうよ。何なら、あたしがドついてやろうか? 全員を』

『あ、うん、わかった。暴力は極力止めよう。なっ、二人とも。なっ?』

『まあ、あんさんがそう言うなら、好きにやりなはれ』

『とりあえず、ここにすぐ来いとイチコ達呼んだんだけど――』

『はあっ!? 何でだ?』

『え? あんまり舐めた事言ったからだよ』

『もしかして、十人というか、一番から十番までの眷属呼んだの?』

『そだよ』

『帰して! 今すぐ帰しなさい! アイツら来たら間違いなく刃傷沙汰になるだろうがああッ!! 特に、ニコとムツオは駄目だ。あの二人がキレ散らかすと、お前よりタチが悪くなるわッ!!』

 

 ツキハが一番から十番までの眷属を呼んだという事は、本気であるという事になる。

 

 自分もキレたとはいえ、流石にブラッディカーニバルをここで開催する訳にはいかない。

 

 「ええ? 別にいいじゃん」とかブツブツ文句を言うツキハを抑えて、とりあえず流血沙汰を回避する案を模索するリムル。

 

 

 するとそこへ――

 

《告。問題はありません。主様(マスター)の思惑通り、この場を支配していた精神干渉の影響を確認しました》

 

(はい? 何ですと!? いや、あのね、ぶっちゃけ俺は何も考えてなくて、腹が立つままに行動しただけなんですけど? 何がどうなったの?――)

 

 智慧之王(ラファエル)の言葉に困惑するリムル。

 

《告。多数のサンプルと、ツキハとコハクの証言から精神干渉法則を発見しました》

 

(ツキハとコハク? んん……あ、そうか。あの二人、感情というか魂の色を読み取る事が出来るとか聞いた、ような?)

 

 詳しくは聞いてはいなかったリムルは、その事を何となく思い出す。

 

《告。地下迷宮のお披露目の時、個体名:ガイがそうであったように、この場の大多数の議員達も、何者かの精神干渉の影響下にあった模様。しかし、幾人かの議員達はこれを退け、あたかも精神干渉を受けているかのような欺瞞された状態にあります。これはツキハの権能『猫騙し』に酷似しています。干渉を解除しますか? YES/NO》

 

(勿論YESだけど。何であいつの権能『猫騙し』が、議員達の中の誰かに使用されているんだ!? それも複数いるって、まさかスパイを送り込んでいる訳ないよ、な?)

 

 どうにも釈然としないリムルだったが、とりあえずYESと念じると。

 

 その途端、会議場の空気が一変した。

 

 今まで沈黙を保っていた議員達から、一斉に声が上がり始めたのだ。

 

 

「リムル陛下や番外魔王の御二人が憤慨なされるのも当然だぞ! この失態をどう償えば良いのやら……」

「待て待て、そもそもそんな条件、先の議会では話題にもなっておらぬ!」

「誰だ、誰が勝手な真似をしおったのだッ!?」

「如何にも。こんな不条理な事を画策すること事態、我等が評議会にあってはならぬぞ!」

 

 いきなり流れが変わり、精神干渉からの影響下から続々目覚める議員達。

 

「フフ、あの議員さん達は正気に戻った様だな」

 

 こうなれば、少しばかりカッコつけようとリムルは不敵にそう呟いた。

 

 それに、シュナが反応する。

 

「そうだったのですね! 様子がおかしいと思っておりましたが、まさか、精神支配ですか?」

 

(えと、どうなんですか、智慧之王(ラファエル)さん?) 

 

《解。精神干渉波の一種です。魔素に影響しないので手間取りましたが、同系波長を持つ者が多数存在するのは在り得ません。それに、ツキハとコハクに確認しましたところ、全ての精神干渉波は同一系統でありながらも個々に独立した働きも持っています》

 

(どゆこと?)

 

《解。一つの強い命令ともいえる支配に縛られてはいても、個々の精神によってその支配の性質は変わるものかと》

 

(んん? それってぇ……同じ支配だけども、行動パターンは個人によって変わってくるとかかな?)

 

《是。同じ目的でも、その目的に到る手段は個人により違いが出て来るといえます》

 

(あ~それ、何か厄介じゃね? 要はさ、目的は同じでも、個人によって手段が違ってくるから、支配されているかどうかの判別が難しくなるよな。ところでさ、ツキハとコハクもこれに気付いていたんだな?)

 

《是。ツキハもコハクもこの場に漂う精神干渉に気付いていたと、言っていました》

 

(ああ、なるほどね。ツキハが言っていた、〝胸糞悪いモン〟が精神干渉波だったのか)

 

《是。しかし、主様(マスター)とツキハ、コハクの怒りの波長により〝綻び〟が生じました。そして、先ほどの主様(マスター)の推測通り、議員達の中にルヴナンのスパイがいる可能性があります》

 

(ふあっ!? マジに?)

 

《是》

 

(あ~なんかさあ、もしかしてぇとか思っていたりとかしたんだよ。そうかぁ、会議が終わった後にでも二人に聞いてみるかな)

 

 智慧之王(ラファエル)の説明にどこか納得をしながらリムルは、どこまで暗躍しているんだろうねと、内心思うのであった。

 

 そんなリムルは、何しらぬ顔で座っている二人を交互に見て口を開く。

 

「まあ、そこまで強力じゃないみたい。精神干渉で議員達を視野狭窄(しやきょうさく)にしてた程度だよ」

「なるほど。だからリムル様は、議員達を威圧して動揺させ。それにツキハ様とコハク様が合したと」

「そうだよ、ベニマル。ちゃんと考えた上での行動だったんだ(ホントは即ブチキレ案件だったんだけど)」

 

 とりあえず適当に言って誤魔化すリムル。

 

 

(これでヒナタへの言い訳も断つし、これで良いだろう) 

 

 そう思って安心したのか、リムルはふと疑問を頭の中に浮かべる。

 

 

(この精神干渉は、誰がやったんだ? まずユウキではない。こんな証拠を残すやり方は好まないハズ。いや、敢えて残すという手も有り得る。もし、ツキハとコハクなら、どう出る?)

 

 そんな事を色々考えていると。

 

『なあに悩んでるのよリムル』

 

 と、ツキハが『思考加速』付きの『思念伝達』を送って来た。

 

『え? いやね、誰が精神干渉を仕掛けてたのかなぁってね』

『この場にはいないよ』

『え、わかるの?』

『うん。仕掛けた奴の気配も精神波長も感じられないから、多分イングラシア王国にはいない』

『そうかぁ。ちなみに、その相手は誰かわかる?』

『わかんない、今のところはね』

『今のところ? という事は、もしかして予想は付いてるのか?』

『さあね。そこから先は、代金が発生するよ。それも、超高額の、ね』

『うっ。それはキツイ。祭りが終わった後からも、何かと物入りだからなぁ。代金、負けてくれない?』

『それは駄目。情報の安売りはしない。最初に言ったよね?』

『ああ、わかってるよ。言っただけだし……』

 

 ツキハが即断り、リムルはどこか不貞腐れたように返す。

 

 そんなリムルにツキハが、どこか含み笑い交えつつ言う。

 

『そんなに()ねない。どうせ事が進んでいけば、向こうから顔を出して来るからさ』

『そうなのか?』

『うん。こういう手合いはね、自分の力によっぽど自信を持ってるヤツだよ。だから、ここぞという時に横からぶっ飛ばすのが面白いんだよ。ウヒヒッ』

『お前さ、ホント怖いわ! コハクもだけどね』

『リムル。この仕掛けられた策略の過程を楽しもうよ。魔王のアンタにはそれが出来る。舐めた奴らに地獄を見せる為にさ。ククッ』

『お、おう。でもな、今回はブラッディカーニバルは御免だからな』

『あいよ』

 

 楽しそうに返事を返しツキハは、ここで『思念伝達』を終える。

 

『あ、ちょっとまだ聞きたい事が、って。やっぱりこれは、後からにするか』

 

 そしてリムルは、スパイに関する事を聞きそびれた事を思い出すも、今聞く雰囲気ではなかった為、最初に思った通り会議終了後に聞く事にする。

 

(しかし俺って、ツキハの手の平の上で踊らされてる? いや、違うか。俺に裏社会の勉強をさせているとか? う~ん、これも違うよう、な? いいや、何でも。アイツが楽しめって言うのなら、とことんこの策略を楽しんでやろうじゃないの。この絵を描いたヤツラに目にモノを見せる為にな。フフフ)

 

 ツキハの言葉にどこか吹っ切れるリムルであった。

 

 そしてリムルは、目の前の議員達に視線を戻す。

 

 正気に戻った議員達に詰め寄られる、一部の議員達。

 恐らく、あの要望書を作成した一味なのだろう。

 

 しかし、そんな詰め寄られる議員達の中に、余裕の表情を浮かべる者達がいた。

 

 

(フンッ。来たか。ツキハのいう策略の始まりが)

 

 それに気付いたリムルは、小さく鼻を鳴らす。

 

 

 何名かの視線が、会議室奥の扉に向く。

 

 リムルの耳には、複数の足音が聞こえていた。

 

 ツキハとコハクの猫耳も、ピクピクと動く。

 

 

(衛兵か? または首謀者か、それに(くみ)する者か)

 

《告。そのような動きは感知されなかったので、事前に計画されていたものだと推測します》

 

(ふ~ん。俺とツキハとコハクを暴れるように仕向け、それを取り押さえるつもりなのかな? 魔王と番外魔王の二人に対して、凄い自信だこと。杜撰(ずさん)な計画と、思わなくもないが。魔物の脅威から遠く離れているのが原因なのか、平和ボケするにも程がある。コイツら、被害を被る国民の事など考えていないよな。ツキハとコハクは、躊躇なくこの街を消し飛ばすぞ、馬鹿共がッ!)

 

 リムルは、収まった怒りがまたふつふつと沸いてくるのを抑えつつ、心の内で吐き捨てた時。

 

 そこへ、扉が開け放たれて、十数名の兵士達と一人の大男が入って来た。

 

 

 ヒナタが言っていた〝何かを企んでいる馬鹿共〟が、やって来たのである。

 

 

 

 

 





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