忍びが転生したら〝異世界珍道中〟になった件 作:にゃんころ缶
長くて面白くもない会議も終わり、リムル達は最初に来た喫茶店に来ていた。
リムルとベニマルとソウエイはスーツを着崩し。
シュナとツキハにコハクは、リムルに買ってもらった服に着替えて、ヒナタは会議での恰好のままで各々が寛いでいた。
『空間転移』でさっさと帰っても良かったリムル達だが、まだソウエイの『分身体』とリンコが暗殺者を確保していない。
なので、とりあえずは喫茶店で待つ事にしたのである。
それにしても酷い会議であったもので、ツキハなどは座ったまま足を投げ出して、グデーっとしていた。
リムル達がコーヒーを飲む中、ツキハは〝ひょうたん型酒樽君〟を空間収納から取り出し、クピクピと酒を飲み。
「あ~、マジ疲れたわぁ~。ほんと人間は、いつになってもどうしようもないわぁ」
と、疲れたように長い溜息を吐き。
「せやねぇ、ほんま、アホばっかりやねん」
「だよなぁ。お前達って、よくあんなの相手に商売してるよなあ。感心するわ、本当に」
それに、コハクとリムルが思いっ切り同意する。
ヒナタやベニマル達は無言であったが、肯定するように軽く
そして、リムルが会議の時に抱いた疑問を、コハクに対して。
「なあ、コハク。もしかしてだけど、ルヴナンのスパイがさ、何人か評議員の中にいたりするのかな?」
やんわりとコハクに問いかけるリムル。
すると、コハクが。
「はあぁ。あんさんな、ヒナタがおる場所でそれ、聞きはるか?」
どこか呆れたような顔で返す。
「あ、ごめん。何か俺も精神的に疲れててさあ、配慮に欠けてたわ」
「まあ、よろしおすけど」
リムルが謝罪すると、コハクが言ったもんはしょうがないという風に言う。
そして、コハクがチラリとヒナタを見ると、ヒナタはそれを察したように軽く
「いてますで。ほんの数人やけどな」
「へえー。意外に少ないな」
「リムル。多けりゃ良いっていうもんではありゃしまへんのやで。質の良い
「なるほどなぁ。じゃあ、評議会の内容は筒抜けだったという訳だ」
「せやね。古くからの協力者であり、うっとこのお得意さんの国の代表やねん」
「そうかぁ。でも、精神をよく乗っ取られなかったな、そのスパイ」
「ああ、それな。魂を保護する術式を、ちょちょいと掛けてありますねん。精神を汚染されても、
「ああ、アレの応用か。ほんと、アレは厄介で便利な
リムルが一人納得したように返すと。
ヒナタがコハクを見て口を開こうとする、が。
コハクは澄ました顔でコーヒーを飲みながら、それは詮索するなという顔をする。
それを察したヒナタは、そのまま自分もコーヒーを飲む。
こうして、今度の会議までに
和やかに会話が進む中。
「リムル様、暗殺者を確保しました」
と、ソウエイから告げられた。
「おお。確保したかあ。リンコちゃんは大丈夫だった?」
「ええ。負傷はしましたが、ピンピンしてますよ」
「え!? 撃たれたの?」
「はい。右肺を撃ち抜かれてましたね」
「ちょ――」
「既に、俺の『分身体』がポーションで治してますから、大丈夫ですよ」
「そっかあ、って、あれ? コハクもツキハも心配じゃなかったの?」
ソウエイの報告を聞き、ニコニコしながらケーキを食べる二人を見たリムルは、二人がまるで当たり前のような顔をしてたもので思わず問いかける。
「せやね、心配してまへんな。キッチリ仕込んでますさかい、多少の負傷は想定内や。最悪死んでも、うちが叩き起こしますさかい大丈夫やで」
「ああ見えて、へっぽこぶりを演技するの上手いからね、リンコは」
「へえー、そうなんだ。一体どんな訓練をしたんだか」
「ご想像に任しますで。ふふ」
「だねぇ。うひひ」
と、にこやかにリムルに返すコハクとツキハだった。
そして、リムルがリンコちゃんはどうしたのとソウエイに尋ねると。
「はい。
「おう。そこはルヴナンの傭兵というか、いいのかそれで?」
ソウエイの説明に、リムルは思わずコハクを見る。
「かましまへん。終わったのなら事後報告があるのやけど、既に『思考イメージ』で記憶情報を受け取ってますさかい問題ないやろ」
と、あっけらかんと返すコハクであった。
「あーそうなんだ。しかしなぁ、それで統制が取れてるなんて、ほんと不思議だよなお前のところ」
「モノはやりようやで、リムル」
「ん~、俺のところでは無理そうだわ。ハハッ、ハッ、ハハッ」
眷属を含め、どうにも自由過ぎるルヴナンの傭兵に、苦笑いを浮かべるリムルである。
それからソウエイが、グレンダとの戦いの顛末を皆に語った。
……
…
「――という具合でした」
二杯目のコーヒーを飲み終え、追加で女性陣がケーキを頼んだところで、ソウエイの話が終わった。
そしてついでに、リムルが全員を『思念伝達』で繋ぐと。
ソウエイの見た記憶と、リンコの見た記憶はコハクから受け取り、戦いの映像を再現する。
ソウエイは、見事に相手の手の内を全て曝け出していたのに、リムルが感心して唸り。
リンコの最後の
「あれ、元いた世界の動画サイトで見た、リボルバーの早撃ちの完全上位版じゃん。ほんと、パネェな」
「一瞬で五発とか、しかも五ヵ所を狙い撃つなんて、凄まじいものね。しかし、あれを剣で弾くとなると、ちょっと難しいわね」
「ええ?」
「何かしら?」
「いえ、何でもないです」
リムルは素直な感想を述べ、ヒナタに至ってはそれを弾くという思考になり。
ジト目でリムルが声を漏らすと、冷ややかな視線の笑顔をヒナタに向けられて、これはヤバいと誤魔化すのであった。
それから、確保した暗殺者の尋問をどうしようかとリムルが口にした時――
どこかバツの悪そうにヒナタが口を挟んで来た。
「ちょっと、いいかしら? 黙っていようかとも思ったのだけど。コハクとツキハがいるから、どうせわかる事だろうし、言っておくわね。ソウエイ殿とリンコが戦った相手は、私の部下だった女よ。どんな力を隠してるかわからなかったけれど、思った以上に厄介な
「ああ。普通は対処出来ないよなぁ」
ヒナタ自身は反応出来るとしても、大半の者は反応出来ずにそこで終わる。
それに――
「ソウエイとの戦いの中さ、途中から投げてたのって、アレって
「ええ。あの爆発するボールみたいな物は、そう呼ばれる
「そうそう。向こうの世界にあった武器なんだよ」
《解。個体名:グレンダが魔力にて生成したのだと推測します。『
(リンコちゃんと同じような権能まで持ってるのかぁ。でも、リンコちゃんの記憶では、拳銃一丁とコンバットナイフに
と、そんな事を考えるリムル。
ちなみに、
そして、リンコの権能がそれに当たるのだとも。
グレンダの場合は割と大雑把なものらしく、あまり数は具現化出来ず、似た効果を発揮する紛い物でしかないと
更に
グレンダの拳銃は本人しか使用は出来ないとの事。
何故なら、グレンダの拳銃は本人の魔力波長で登録されているから、他人が持ってもただの鉄の塊でしかないとも言う。
(まあ、それでも十分脅威なんだけどね)
そして、ヒナタが口を挟んで来た。
「そうね。実物は見た事はないけど。映画とかで見たものは、あんな感じだったわね。しかし、グレンダが〝異世界人〟だったとはね。少し、驚きだわ」
「だよなぁ。リンコちゃんと戦闘中の会話の中で、それらしき事言ってたもんな」
「まあいいわ。そんな事よりも、私も尋問に参加してもいいかしら? グレンダが相手なら、聞きたい事が色々あったのよ。彼女が何か知っているんじゃないかと思ってね」
最後には、自分も尋問に参加したいとも言ってきたヒナタ。
それを聞いたリムルが。
「わかった。それなら一緒に行くか?」
リムルがそう答えると。
「お願いするわ」
そこで、リムル達は場所移すべく、イングラシア王国を後にするのであった。
***
ここは、リムルの執務室であり、尋問部屋とかではなく、普通に応接室である。
グレンダは既に、ソウエイの分身体によって
そして、グレンダが発した第一声が。
「げえぇ、筆頭――ッ!?」
だった。
リムルの両隣をベニマルとソウエイが護衛して、後は、ヒナタにツキハとコハクである。。
シュナがお茶を用意して、それを飲みながら尋問が開始された。
「久しぶりね、グレンダ。お元気そうで何よりだわ」
先ず最初に、ヒナタがグレンダを冷たく見下ろして話しかける。
相変わらず敵対者には、容赦のないヒナタであった。
動揺したグレンダであったが、すぐに冷静さを取り戻す。
「ハンッ! どうやらアタイもここまでのようだね。殺すなら、殺すがいいさね。捕まった暗殺者の末路なんて、古今東西そんな違いはないだろうさ」
ふてぶてしく言い放つグレンダ。
そこへソウエイが、「黙れ。貴様は大人しく聞かれた事だけに答えればいい」と言い。
更に、「四肢を切り落として、少し素直になるよう躾けましょうか?」と、冷淡な目で言った。
(ちょっと、止めて。ソウエイはやると言ったら本気でやるからな)
リムルがそう思ったところに、意外な言葉が飛び込んで来る。
「ええなぁ、コレ。ズル賢そうで、ええ悪党やないかぁ」
うっとりした目で、そう言って来たコハクだった。
「あーあっ。コハクの悪い癖が出たよ」
そのコハクに、ツキハが小声で
リムルがそれを聞き取って、ん? という顔をツキハに向けるも、ツキハは小首を
しかし、その答えは
「なあ、ソウエイ。四肢を切り落とすくらいじゃ、拷問にもなりまへんで。ポーションを使って何度も、その苦痛を無限に味わせるという手段はわかりますけども」
先ほどのソウエイの言葉に、突っ込みを入れるコハク。
「なるほど。ポーションにそういう使い方も――」
「いや、そんなもん、
ニヤーッと、
「うっとこではな、首を切り落としてそのまま生かして拷問するやり方があるんや。まあ、『時空間操作』の応用でな、首の切り口の空間と胴体の切り口の空間同士を繋ぐんよ。そうしたら、首だけでも生きてるんやな、これが。でな、ここからがおもろいんやでぇ」
更に
それを言われてるグレンダの表情から、みるみる内に血の気が引いていく。
「首が入るくらいの木箱に首を入れてな。そこに、毒虫をぎょうさん入れるんどすえ。首だけのまま、毒虫に食われていく目ん玉や皮膚。小さい赤ムカデなんか、鼻や耳の穴から入り込んで、脳を貪り食うんやでぇ。ふふふ」
グレンダの目は見開いたまま、コハクに固定され固まっていた。
「これ、ポーションで回復させながら何回もやるんどすけど。今まで、二回までしか耐えた者いてへんねん。大抵は一回やっただけで、素直でええ子になるんやでぇ。コレなら、新記録で三回は行けるかも知れまへんな。後は、手足の指の間に、焼けた鉄串をゆっくりと差し込んでいくとかありますで。あ、あれもええな。土の中に首だけ出して埋めてな。木で作ったノコギリで、ゆーっくりと引いていくんもええどすな。一日に
出て来る出て来る、拷問の数々。
(うわあ、コハクってマジ怖いわ。何もんだと、言いた……ああっと、悪猫だったわ。ついつい忘れるよな、コイツらが悪だって事を……)
流石にドン引きするリムルである。
その反面、ベニマルとソウエイは腕を組んだまま、何故かウンウンと
シュナは空になったリムルのカップにお茶を注ぎながら、クスリと笑みを浮かべていた。
(え? 魔物的には、それはいいんだ。敵対者には容赦はしないと、いう事?)
ベニマル達の反応を見て、自分も魔物なのを忘れて、どこか納得をしてしまうリムルであった。
それでヒナタはいうと、意外にも顔色一つ変えず聞いていて、腰に下げた
そこへ。
「なあ、リムル。うちが拷問して、自白させましょか?」
コハクがニコニコと言って来た。
リムルはそれを手で制し。
「いや、待ってくれ(流石に、女性相手にそこまでする気はないよ)」
と言い、口を開く。
「さて、グレンダさん。初めましてかな? 俺が魔王リムルだ」
「――どうも。アタイはグレンダ。そこのヒナタ様の部下で、〝三武仙〟の一人さ」
どこか言葉を選んでいるような感じで、グレンダは答えた。
コハクの脅しが効いていたのか、いや、コハク自身は脅しではなく本気で言っていたのだが、どうやらそれで交渉ごとが一切通じない相手だと理解したのだろう。
リムルは笑顔はナシの、至って真面目な顔で質問を始めた。
「今回、君が狙ったのはエルリック王子、これで間違いはないよね?」
「ああ、そうさね」
「じゃあ、次に。それは、俺が殺したように見せかけて、西側諸国から俺達を排除する事、で合ってるかな?」
「恐らく、そうだろうさ。アタイは、詳しい事は聞かされていないし、ぶっちゃけ、暗殺対象を始末しろと命令を受けただけさね」
「なるほど。それじゃあ、次は――」
ここからいくつか質問を重ねて、リムルは一旦思案に入る。
(さて。裏で糸を引く奴は、って、大体は検討がつくんだけど。恐らく、この女は駒だ。それも、他とは違う強力な、駒だ……)
グレンダが嘘を言っていない事は、リムルにはわかっていた。
するとそこへ、ヒナタが質問をグレンダに投げかけて来た。
「次は私が聞いてもいいかしら?」
「なんだい?」
いきなりヒナタに問われ、その身を
ヒナタの質問はこうだった。
――グレンダの担当地区を自由に動きやすいように、商業地区とした。
――この時、ヒナタは忠告として『商人の言葉に耳を貸しては駄目』と言った。
――だがしかし、この時点で既に取り込まれていたのでしょう? と。
――更には、最初から自分達を裏切っていて、本当の意味でのボスともいえる存在から命令されていただろうとも、言った。
グレンダは、問われた事に全て、「ノーコメントさね」と、返した。
――そして極めつけは、『貴方の裏にいたのは評議会を裏で操る者だと思うのだけど、その正体は誰?』と、核心を突くも。
「……」
グレンダは、無言で返す。
「おかしいと思っていたのよ。評議会の動きは、たまに西方聖教会の動向を見据えたようなものだったから。そもそも、あの第三次番外魔王討伐も、明らかに準備不足の上
「だから、さっきからノーコメントって言ってるだろッ!」
「そう。じゃあ、最後に一つ。貴方は、ルミナス様を信じていたのかしら?」
「チッ、神なんざいないさね。信じられるのはアタイ自身と、金だけ――」
その瞬間、ヒナタが
キィィンッ! 澄んだ金属音が響き、ツキハの〝妖刀
「ちょいちょいちょいッ! 落ち着けってヒナタ。なんも聞かない内に首を
鞘から三分の一だけ刃を抜き受け止めていたツキハが、
(
リムルは直刀の
「ツキハ、そんなつもりはなかったわよ?」
「なーに言ってんだか。思いっ切り殺意を刃に乗せてたじゃん。嘘は駄目よ?」
ヒナタは
ツキハは
どこか仕方なそうに
(まったく油断も隙も無い。俺が警戒していてもあの速さかよ。ツキハが止めなかったら、間違いなくグレンダの首は切られていたよな。ヒナタって、意外に短気?)
そんな事を思っていたら、何故か一瞬ヒナタに睨まれたリムル。
(ほあっ!? アイツ、俺の心が読めるのか? う――っ、本当にマジヤバ女が多過ぎやしないか、俺の周りは? どうしてだろう? 何で?)
と、いつもの如く心の内で頭を捻るリムルなのであった。
だがしかし、そんなリムルの思いも
「心配いらへん。首くらい落ちても、うちが即刻叩き起こしてやるさかい」
「そうですよ、ツキハ様。私が蘇生魔法の実験台にしましたから」
ニコニコ顔のコハクとシュナ。
「そうよ、ツキハ。私も神の奇跡:
「アンタらなぁ、蘇生魔法で遊ぼうとするんじゃねえよ。まったく、もう」
三人のニコニコ顔に対して、若干呆れ顔で言うツキハ。
(何だ何だ? あのツキハさんが常識猫に見える。マジかよ……)
ツキハの態度に、まるで信じられないものを見たかのように、目をパチパチとさせるリムル。
それを察したツキハが、ん? というようにリムルを見たら、リムルは素早く顔を
ツキハは無駄な殺しはやめとけと言ってるだけなのだが、状況が状況だけに勘違いしたリムルだったのだ
そして、気を取り直したリムルが口を開く。
「まあまあ、とにかく。ちょっと俺と交代してくれるか、ヒナタ」
「ええ、いいわよ」
ヒナタにはちょっと頭を冷やしてもらおうと、リムルは選手交代を告げた。
(さてと。
《――了。万全を期す為ルヴナンの情報も所望します》
『という事だ。頼めるか、コハク?』
『仕方ありまへんな、ええやろ。
『ああ、了解だ』
あっさりと『思念伝達』でコハクとの取引が終わり。
リムルはグレンダに向き直り、再度尋問が始まる。
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