忍びが転生したら〝異世界珍道中〟になった件   作:にゃんころ缶

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 お待たせしました。二十四話です







24話 魔王への進化(ハーベストフェスティバル)

 

 

 絶叫と恐怖が渦巻く、阿鼻叫喚の戦場。

 

 一際豪華な天幕の中で、哀れにも抱き合い怯え震えるエドマリス王とレイヒム。

 

 薄暗い天幕の中は、入り口から差す日の光で仄かに明るくなっていた。

 

「レイヒムよ、どうすれば? どうすればよい?」

「お、落ち着きましょう、落ち着きましょうぞ! エドマリス王」

 

 様子を見る為に外に出た近習(きんじゅ)が、一瞬にして殺されたのが、つい先程。

 

 先発部隊を今しがた送り出し、続々と到着する騎士達を誇らしく眺め。

 この遠征の勝利と、誇らしき栄光を確信していたのに……。

 

 それはものの数分で、撃ち砕かれた。

 

 眩く煌めく閃光が、縦横無尽に乱舞し。

 ただそれだけで、この戦場は死で溢れ返っていた。

 

 しかし、この天幕だけには、死の光は降り注がなかったのだ。

 

 そこへ。

 

「王よ、御無事ですか!」

「騎士団長フォルゲン、只今参上致しました!」

「おお、フォルゲンよ! よくぞ来た。それにショウゴも。(はよ)う、早うこの戦場から逃げようぞ! 一旦国に戻り、態勢を立て直すのじゃ!」

 

 ファルムス王国最強戦力の二人が来た事で、エドマリス王にも少し余裕が出来たらしい。

 早くこの戦場から逃げたいが為、捲し立てる。

 

「さあさあ、早くせよ! 急ぐのじゃ! ラーゼンはどこなのじゃ? ヤツの『転移魔法』で早くこの場から――」

 

 天幕の入り口から光の乱舞が、エドマリス王の目に飛び込み。

 ヒイィーッと頭を抱え、その場にへたり込むエドマリス王。

 

「落ち着いてくだされ、王よ。儂はここですじゃ」

「――なんと、ショウゴが? は? いや、そちがラーゼンなのか?」

「左様で御座います。王よ」

「おおおおおおおお!! ラーゼンよ。よくぞ、よくぞ参った。さあさあ(はよ)う、早う帰ろうぞ」

「お待ちください、王よ。色々と報告したき儀が御座いますが、今は置いておきましょう。一番重大な点を申すれば。今現在ここら一帯は、魔法が使えぬのです。故に、なんとか騎士達を集め、その身を盾として撤退戦を敢行せねばなりませぬ」

「なんと!?」

「その、あの、大丈夫なのですか? 騎士達の数は、そのう……」

「御安心召されよ、レイヒム大司教。この私がユニークスキル『統率者』で、生き残っている騎士達を強制的に集めております。その者共を肉の盾として、エドマリス王とレイヒム殿を守って御覧に入れましょうぞ」

「おお、おおおお。流石、流石じゃフォルゲン!」

「ありがたい! 流石は頼もしきフォルゲン殿!」

「では、私は部下に状況を伝えてまいります故。皆様方は、撤退の準備を!」

 

 その声に三人が頷き、外へ駆け出るフォルゲン。

 

 ラーゼンはエドマリス王とレイヒムに、最高級の魔法道具:飛翔靴を渡す。

 この魔法道具は既に魔法効果が発動しており、魔法不能領域の影響を受けない。

 使用者の移動速度と疲労を軽減する魔法道具であり、熟練者には飛ぶような速度で走れるのだが、エドマリス王とレイヒムには、そこまでは期待できない。

 しかしながら、撤退には自分の足で走ってもらう為、少しでも効率が上がれば良いと言う算段なのである。

 

「では、宜しいですか王よ。次の光が舞った後、一気に外へ駆けだしまする。レイヒム殿も、よろしいか?」 

「うむ。心得た」

「了解しましたぞ。ラーゼン殿!」

 

 そして、光の乱舞が走る。

 

「今です!!」

 

 一気に外へ走りだす三人。

 

 外に出たエドマリス王の前に、フォルゲンが大きな背中を見せ立っていた。

 

 頼もしい騎士団長を見たエドマリス王は、フォルゲンに問い掛ける

 

「守備はどうじゃ?」

 

 Aランクオーバーの強さを持ち、〝異世界人〟にして、ファルムス王国が誇る歴戦の勇士。

 だが、エドマリス王が頼りとする腹心が一人のフォルゲンからは、何も返っては来なかった。

 

「フォルゲン、答えぬか!? どうしたのじゃ、フォルゲン!」

 

 恐怖と混乱、怒りの混じった声で怒鳴り、フォルゲンの肩を激しく叩く。

 

 すると。

 

 グラリ、その大きな身体がゆっくりと傾き、重く低い音を立て倒れる。

 

 よく見れば、後頭部に穴が空き、反対側の眉間にも同様の穴が空いていた。

 その穴からは白く細い煙が漂い、焼け焦げた為か血が流れ落ちていない。

 

「うひぃあおおおおおおおおお!!」

 

 エドマリス王は恐怖で失禁しながら腰を抜かし、奇妙な雄たけびを上げ、もといた天幕目掛け這いずっていく。

 咽び泣きながら恐慌状態に陥るエドマリス王。

 もう王の威厳など、微塵も感じられなかった。

 

 フォルゲンが集めた騎士達は、あっさりと壊滅。

 今や戦場は、無法地帯と化して、生き残った者は自分の事に必死で、理性も何も消え失せる。

 もうその場には、規律も、何も存在しない……。

 それは只の力なき烏合の衆以下の、何か。

 

 

 その時――

 

 戦場の空気が一変した。

 

 逃げ惑っていた兵士達や騎士達が動きを止め、空の一点に視線を釘付けにされる。

 それに釣られてエドマリス王も、空を見上げた。

 

 

 そこには――

 

 この惨劇の元凶がいた。

 

 ゆっくりと天空より舞い降りて来るその姿は、黒い蝙蝠(コウモリ)のような黒い羽根を生やした人物。

 

 背はそれほど高くなく、顔にはヒビの入った仮面を被っていた。

 その仮面のヒビは、まるで泣いてるかのような模様となって……。

 

 来ている着物は黒い神々しいものを羽織っていた。

 装備は、下緒(さげお)を目一杯伸ばし鞘の後ろに辺る(こじり)から三分の一程戻った位置に巻き付けていて、それを右肩から掛けて腰までぶら下げるように、直刀の打刀を下げていた。

 

 戦場ではあまりにも、軽装ではあるが。

 

 しかし、その身に纏う覇気は――

 

 そうした常識を感じさせない圧を、放っていた。

 

 

 あれは……悪魔? いや、いや、あれは――

 

 魔王だ!! エドマリス王は直感でそう思った。

 

 その時になって、ようやくエドマリス王は……自分の犯した最大の過ちに気付く。

 あの風格、あの出で立ち、あれこそこがあの国で作られた美しい布の、一品。

 

 この存在こそが、間違いなくあの国の主。

 

(と、言う事は……あの西方聖教会の魔女とも言われるヒナタが、失敗したのか!?)

 

 その事実に思い至ったエドマリス王は、全身を震わせ蒼褪める。

 しかし、恐怖が限界を突き抜けてしまい、冷静さを取り戻してしまう。

 

 エドマリス王は、考える。

 

 西側諸国最強と謳われる魔女ヒナタが、魔物の国の主を討つ最良の手段だった……。

 だけども、その者はここに存在している、とてつもない圧を放ちながら。

 

 されど、あの計算高く冷酷な魔女ヒナタが失敗したなどと、聞いた事が無い。

 あの一件を除いては……あの秘密裏に行われた〝番外魔王〟討伐、そして討伐の失敗。

 だが、あれは古くから生きている魔物であり天災級(カタストロフ)の魔物、ある意味失敗は必然だったとも言える。

 

 しかし、しかしだ――

 

 あの魔物の国の主は、一体なんなのだ?

 

 あらゆる事柄が脳内を駆け巡る。

 

 あれは、あの魔物には――

 触れてはいけなかったのだ。

 

 ブルムンド、ドワルゴンのように、国交を結ぶべきだったのか?……。

 

「お、いや、魔物の国の(あるじ)なのか!? まさか、本当に、生き残っておったのか……」

 

 エドマリス王の耳に、唖然としたラーゼンの声が飛び込んでくる。

 その言葉を発した瞬間ラーゼンは、眉間を射抜かれ絶命した。

 

 ラーゼンの考えが自分と同じだった事で、エドマリス王に取って信じたくはない事が、確信に変わった。

 

 やはり――

 

 魔女ヒナタは、失敗したのだと。

 

(どうする? どうすればいい? どうやったら生き残れる?)

 

 生き残る為、エドマリス王は必死に考えを巡らせた。

 

 

 地上に降り立ったリムルは、ゆっくりと周囲を見渡す。

 

 リムルを見た生き残りが恐怖でへたり込み。

 叫びながら命乞いをする。

 

「ひいぃーー 助けて! お願い、た――」 

 

 リムルは視線を動かしただけで、その生き残りの眉間を射抜く。

 『大賢者』の演算力により、的確に急所を射抜く事が出来るのだ。

 

 周辺の生き残りを片付けた時。

 

《確認しました。ユニークスキル『心無者(ムジヒナルモノ)』を獲得……成功しました》

 

 久しぶりの〝世界の言葉〟だった。

 

 いらねえよ、そんな能力(スキル)と、内で毒づくも。

 得てしまったのはしょうがないと、どう言う能力(スキル)か確認しようとした時、エドマリス王が話し掛けて来た。

 

「ま、待て! 貴様があの国の主だな? 余は、エドマリス。ファルムス王国の王である! 伏して控えよ! 貴様に話があるのだ」

 

 下手に冷静さを取り戻したエドマリス王は、またもや(みずか)ら虎の尾を踏みに行く。

 

 リムルは、股間を濡らし顔は涙と鼻水、涎でクシャクシャの小汚い者エドマリスを一瞥して、吐き捨てた。

 

「あぁ? 影武者なのか? 安心しろ、本物には手を出さないやる」

 

 目の前のめんどくさい物体をさっさと始末しようと、視線を動かそうとした時に、ふと考える。

 もし? 本物だったらと考えると――

 

「か、影武者ではありませぬぞ! この、西方聖教会大司教である私、レイヒムの名において証明致しましょう!」 

 

 いきなりレイヒムが割って入る。

 

 リムルは二人の服装を観察し、騎士には見えない豪華な服を着ているのを見て、とりあえずレイヒムの言葉を信じる事にしたが、一応の確認を入れた。

 

「それじゃあ、お前以外の者は、皆殺しにするけど、本物の王はいなんだな?」

「待て待て、余が王で間違いない! し、しかし、皆殺しじゃと!?」

「ヒィ! ま、待って下さい! わ、私だけでもお助け下さい! 私は西教会内部でも、大きな発言力を持っています! 貴方様が人間の敵ではないと、証言も致しましょう。なにとぞ、なにとぞ御慈悲を!」

 

 レイヒムはすがる様にリムルに申し出て来て、リムルはコイツ何かに使えそうだなと思案する。

 とりあえずレイヒムは生かすことにし、もう一人の小汚い者に目を向けた。

 

「ま、待て待て! 話があると言ったであろうが!」

「なんだ? 聞くだけは、聞いてやる」

「無礼であるぞ! 余は大国、ファルムス王国の王であるぞ! 本来ならば、下賤の者の貴様など、口もきけ――」 

 

 視線だけを左腕に向け、一閃。左腕が斬り飛ばされる。

 

 ザシッと音を上げ、地面に転がるエドマリスの左腕。

 

 左腕を斬り飛ばした後、リムルはすぐに『黒炎』で傷口を焼き止血する。

 エドマリスはその事に思考が追い付かず、呆然と斬られた左腕を見ていた。

 

 礼を尽くして接すれば、こちらも礼を尽くす。

 だが、非礼には非礼をもって対応する、リムルに取ってエドマリスが王であろうと無かろうと、関係ないのであった。

 

「いいか、相手を見てものを言えよ? 俺が寛大だからと、調子に乗るな。発言を許す、続けろ」

 

 思考が理解に追いつき、それと同時に猛烈な痛みがエドマリスを襲う。

 

「うおぁぎゃおおおおおおーー!!」

 

 左腕を押さえ絶叫し、転げ回りながら両足で地面を思い切りバンバンと打ち付けるエドマリス。

 

 それは、まるで陸に上がった海老が跳ねてるようで滑稽であった。

 

 この哀れな生き物をリムルは、コイツ本当に王なのか? と、訝しむ。

 

 そして、その光景を見ていたイチコが右前足で口を押え、必死に笑いを堪えていた。

 

 リムルは、転げ回るエドマリスの髪を掴み引き起こし、仮面越しに凄む。

 

「チャンスは一度――次はないぞ?」

 

 エドマリスは恐怖に目を見開き、こくこくと頷く。

 

「誤解なのじゃよ! 全ては誤解から始まっておるのじゃよ!――」

 

 ここからは、いかに自分が正しく、友誼を結ぶ為に来たのであって、軍勢はただ自分の護衛の為に付いて来ただけなのだと、様々な言い訳を力説していった。

 

「はあ? 一方的に宣戦布告しておいて、今更何の寝言を言ってるんだ? 俺の仲間に犠牲が出た以上、お前等は敵だ」

 

 リムルが冷たく吐き捨てるも、エドマリス王は諦めず(まく)し立てる。

 

「待ってくれ! そこに誤解があったのじゃよ。西方聖教会が魔物を敵視しておったので、本当に友誼を結ぶに値するのか、確かめようとしただけなのじゃよ! それに派遣した〝異世界人〟どもは、勝手に暴走しよったのじゃ。余も騙されたのじゃ――」

 

 ベラベラと言い繕うエドマリスにリムルは、仮面越しに冷たい目で見ていた。

 

 そして、あろう事か、ブルムンドみたいな小国より、我が国と国交を結ぶ方が益があると抜かし。

 更に、勝手に賠償問題などを盛り込み始め、その賠償を魔国連邦が支払う事になると、決めつける様に(のたま)う。

 

(ええと……コイツ、人を不快にさせる、天才か? 何で勝手に賠償問題など盛り込んで、俺達がそれを支払う事になるんだ? そんなに、苦痛を味わって死にたいのか?)

 

 そんなリムルの戸惑いに気付かずにエドマリスは、喋り続けていた。

 

 上空で見下ろし監視していたイチコも、嫌悪感混じりに言葉を吐き捨てていた。

 

『不快極まる人間……(あるじ)(めい)が無ければ、私が首を刎ねてやるものを』

 

 そんなエドマリスに辟易したのか、リムルは無造作に右足も斬って黙らせる。

 

「ほおぁあぎゃああああーー!!」

 

 またもや絶叫し転げ回るが、死なないようにしてあるのでそのまま放置した。

 

 そこへ、『心無者(ムジヒナルモノ)』の解析が終わる。

 

 この能力(スキル)の効果は、命乞いをする者や助けを願う者の魂を掌握する力。

 『心無者』を前に戦意を喪失したら、死を意味するのであった。

 

《問。ユニークスキル『心無者』を使用しますか? Yes/No》

 

 リムルは、魔王への進化に必要な魂が集まっていたら、残るものを見逃しても良いと考えていた、が。

 まだ必要分には足りず、迷わずYesと念じた。

 

 心は平静で、痛みも無い、罪悪感もまるで感じない。

 リムルの心が、魔王への進化の準備を始めていく。

 

 その直後――

 対象指定外に設定したエドマリスとレイヒム以外全ての者に、見えざる暴威が襲い掛かる。

 

 一瞬にして、抵抗も許されずに即死する騎士達。

 

 未だ生き残っていた、万に近い兵士達が、一瞬にして死んだのだ。

 

(これは……本当に無慈悲だな。把握はしてるが、各地に逃げ出した兵士もいたけど、この『心無者』の発動でゼロになったな。今後、どう使うかなこの能力(スキル)……)

 

 そんな事を考えていると――〝世界の言葉〟が響き渡る。

 

《告。進化条件(タネノハツガ)に必要な人間の魂(ヨウブン)を確認します……認識しました。規定条件が満たされました。これより、魔王への進化(ハーベストフェスティバル)が開始されます》

 

 〝世界の言葉〟が脳内に響くと、リムルの身体から急激に力が抜け始めた。

 リムルの意思とは関係なく、身体が再構成されていく――

 

 そう、この世界が認めた〝真なる魔王〟の一柱へと。

 

『これは!?……そうですか。ツキハ様、コハク様と同じ〝真なる魔王〟への――資格を得たのですね。まあ、お二人は魔王を名乗る事はしないんですけどね。しかし……そんなに魔王とは、めんどくさいものなのでしょうか?』

 

 スーッと上空から降りて来て、また天幕の上に降り立つイチコ。

 

 

 グニャリ……リムルの身体が崩れ、スライムへと戻った。

 

 ヤバい、メチャクチャ、眠い……

 

 『魔力感知』が上手く働かなくなってる所に、一つの反応があった。

 それは、一人のもの。

 

 生き残ってると言う事は、心が折れていないと言う事だな……油断出来ないな

 クソッ 眩暈まで、し始め、た

 

 この眠気を何とか出来れば――

 

《告。魔王への進化は、途中で停止不可能です》

 

 なんてこったい、いきなりピンチじゃねえか!? 

 

 リムルは気力を振り絞り、声を出す。

 

「ランガ、いるか?」

「は、ここに。我が主よ!」

 

 リムルの呼び掛けに、影から出現するランガ。

 

「ランガ、最重要命令だ。俺を守って街まで連れ戻れ! それと、この二人も連れ戻る。手出し厳禁と伝え、決して殺さぬように注意しろ」

 

 リムルの意識が闇に吞まれ始め、全ての感覚が薄れ始める。

 

「承知。それと、生き残っている敵が一人。どうしますか?」

 

 ランガもそれに気付き、リムルに伺いを立てる。

 

 リムルは、『心無者』発動した直後には反応が無かったので、一度死んでから生き返ったのだろうと推測した。

 

 意識混濁の中、必死にリムルは考えを纏める。

 

 魂が奪えなかったという事は、かなりの強者か?

 ランガで勝てるとは思うが、ここは慎重にいこう。

 

 しかし逃がすのも癪だし、追って来られるのも面倒だな。

 

 そこでリムルは。

 

「それは別の者に任せる。捕らえたら、お前のもとに運ばせるので、顔繫ぎを頼むぞ」

「はは、心得ました!」

 

 ランガの返事を確認すると、リムルは残った気力をかき集め、集中力を高め。

 一瞬で魔法不能領域を解除し、召喚魔法:悪魔召喚を発動した。

 

 提げる供物は、この戦場に横たわる全ての死体。

 

供物(エサ)を用意してやったぞ、出て来い化け物。俺の役に立ちやがれ!」

 

 襲い来る猛烈な眠気で、適当な言葉になるリムル。

 

 眼前の地面に現れた魔法陣が光り輝き、三体の悪魔が召喚された。

 

 それを見たイチコは――

 

『あれは!? なんてものを、受肉させたの!!』

 

 監視と言う立場を忘れ声を出してしまう。

 

(あぁー、上位悪魔なら三十体位呼び出せるかと、おもったんだがなぁ。まあいいか……上位悪魔ならAランクだし、かなり強力な魔物だからな)

 

 三体しか召喚出来なかったことに、リムルは少し不満を抱きながらも、その悪魔に命じる。

 

「おいお前ら、死んだふりをして隠れている奴が一人いる。そいつを生かして捕らえて、このランガに届けろ」

 

『なんというか……スライムに命令される大悪魔とか、中々にシュールですわね』とイチコがぼやく。

 

「クフフフフ。懐かしき気配、新たな魔王の誕生。実に素晴らしい事です!! そしてこれ程の供物、初仕事。少々張り切ってしまいそうです。今後とも、お仕えして宜しいのでしょうか?」

 

 身体の維持も覚束なくなり意識も朦朧とする中、召喚した悪魔の言葉を半ば聞き流し。

 

「話は後だ。まずは役に立つと証明して見せろ。行け」

「容易い事で御座います。御安心ください偉大なる召喚主(マスター)よ――」

 

 そこでリムルの意識は闇に沈み、閉ざされる。

 

 

 

 ――ここに、この世界に――

 

 新たなる魔王が、誕生した。

 

 

 

 




 二十四話を読んで頂きありがとうございますー!

 次回の更新もよろしくお願いします!









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