忍びが転生したら〝異世界珍道中〟になった件   作:にゃんころ缶

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 お待たせしました。240 話です

 ツキハ

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 コハク

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 傭兵商会ルヴナン・真の紋章


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 ※〝打刀〟
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240話 封印から解かれしモノ()

 

 

 遺跡調査三日目。

 

 

 最下層の扉の前からのスタートであった、が。

 

 最下層扉の魔法解除と、中層部の探索に分かれて行動する事となった。

 

 

 今日のリムル達は、見守る事に徹する。

 

 ミリムとゴブタ、そしてランガは、黒猫に変幻(ヘンゲ)したツキハを背中に乗せて見回りチームに加わっている。

 

 

「暇ですね、リムル様」

「そうだな。なら、働いている皆さんにお茶でも入れてはどうだ?」

「わかりました!」

 

 リムルの一言で、シオンはいそいそとお茶の支度を始める。

 

 確かにシオンの言う通りリムルも暇だったが、たまに隊員達からの質問が飛んで来るので、意外にそうでもなかったのだ。

 

 シオンがテキパキとテーブルを用意し、携帯式魔法コンロでお湯を沸かし、コーヒーを()れるさまをボンヤリと見ていたリムル。

 

(う~ん。あれだよなぁ、ちょっと前までは、シオンに口に入れる物を触らせるのは御法度だったんだよな。まあ、練習台に活躍? したのは主にゴブタだったんだけどね。そのお陰で、毒耐性を身に付けてしまったんだから、何とも言えない感じが、ね。あのサンコですら、試食して気絶したものな。それを(かんが)みても、努力の様が滲み出てると言うか、感慨深いね。うん、頑張ったよ、シオン) 

 

 そうこうしてる内に、お茶の用意が整い。

 

「用意出来ました! 皆様、少し一服されてはどうですか?」

 

 シオンの一声で、皆が休憩に入る。

 

 温かいコーヒーとオヤツのクッキーは好評で、(しば)しの穏やかな時間が過ぎて行く。

 

 

 リムルもティータイムにホッと一息をつきながら、ぼんやりと忙しく動き回るシオンを見ながら暫しもの思いに(ふけ)る。

 

(密かに襲撃を受けるかと思っていたけど、仕掛けて来ないな。まあ、無いには越したことはないんだけど、警戒は怠らないでおこう)

 

 オヤツのクッキーをポリポリと(かじ)り食べ、思考を巡らせていくリムル。

 

(俺がヴェルドラと離れている今が好機なハズだし、どこで仕掛けて来るか、なんだけども……。カガリ女史に隊員達をざっと『解析鑑定』したみたが、どこも怪しい点はなかった。皆が自己申告した通りの能力だったし、〝欲望〟に染まっている気配もない)

 

 リムルは、ふーむと静かに唸り、『魔力感知』で周囲の気配を探るも、どこにも不穏なものは感じなかった。

 

(ま、あれだ。ツキハとミリムが隊員達には何ら警戒を示していないのも、安心出来るのはある、が。カガリ女史に関しては、どうにも微妙というか、何だろうなこの感じ方は……。どちらにしても、今のところは怪しい点はないからいいかな。油断はしないけど)

 

 カガリ女史に対してリムルは、まんじりともしない何かを感じてはいるものの、そこまで警戒はする必要はないなと思う。

 

 そこでもの思いを止めて、リムルはゆっくりとコーヒーを楽しむ。

 

 魔法ランプに照らされた空間は、淡く暖かい光に包まれ、何とも平和的な時間を生み出していた。

 

 

 それから(しばら)くすると、ミリムとツキハが大量の品を抱えて帰って来た。

 

 

「リムルよ見るのだ! 戦利品が一杯あるのだぞ!!」

「いやあ、大量大量♪ これ、高ランク冒険者や好事家(こうずか)達に売り付けたら、すんごい儲かるわ。ニャハハハ♪」

 

 と、のたまう二人だが、何と手ぶらである。

 

 正確には、ミリムはランガに(またが)り、ツキハは黒猫のままランガの頭に座っていた。

 

 隊員達やゴブタが色々なモノを抱えされていたのだ。

 

 

「見よ、これなんていい感じに魔素に馴染んでいるのだ。これだけあれば、収穫として十分なのではないか?」

「そうそう。まさに、棚から牡丹餅(ぼたもち)だわ、ウハハハ♪」

 

 ミリムとツキハの言う通り、戦利品のほとんどが武具だったのだ。

 

 作られた年代も古く、それなりの腕を持った職人が作り上げたのだろう。

 

 長い年月を経た事で、〝魔鋼〟が完全に馴染んで性能が飛躍的に向上していたのである。

 

 ミリムがランガから降りて、掲げた一本の剣は見事な〝特質級(ユニーク)〟の剣だった。

 

「おお、本当だ。美術品としての価値は低いけど、実用的な武器が多いな。ツキハが言った事に納得だな」

 

 それにリムルが感嘆の声尾を上げ、得意そうに笑みを浮かべるミリム。

 

 と、そこへ――

 

「っていうか、コレ、どこにあったの? これだけの品を、クレイマンが理由もなく放置していたとは思えないんだけど?」

  

 そんな貴重な武具の数々に、リムルが疑問の言葉を二人に投げかけて来た。

 

「実はな、間違って作動させた罠があったのだが、魔人形(ゴーレム)がワラワラと出て来たのだ。ソイツ等が持っていたのだぞ」

「ツキハがいても?」

「いくらあたしでも、判別が難しい罠もあるんよ? いつもなら怪しい場所ごと破壊するんだけども、隊員の皆さんにそれだけは止めてと懇願されたからね。仕方ないじゃん」

「う~む……」

「そうなのだぞ、リムル。通路に入った瞬間に作動して来たのだ。お前でも回避するのは難しかったと思うぞ?」

「そうっすよ! 通路ごとにツキハ様が、魔法や長年の勘で察知しながら進んでたっす。決して油断していた訳じゃないっすよ!」

「そうそう。タチの悪い事に、巧妙に『魔力感知』を騙す術式が組まれた罠もあったし、古代の遺跡の魔法術式は複雑でありながら無駄も多いんだよね。その無駄を意図的にやってるから、一番厄介なんだけども」

 

 ミリムやツキハにゴブタの報告は、決して気を抜いていた訳ではないとわかるものだった。

 

 隊員達の証言からも、一部の罠に生体反応のパターンを記憶させたものがあり、これにより認識パターン以外を排除するものだったと説明がなされ、嘘ではない事がわかった。

 

「それなら仕方ないな。というか、そういう複雑な仕掛けもあるんだな」

「うむ。とても勉強になったのだ。だから、我等の迷宮にツキハの仕掛けた罠は、あんなにもエゲツないのだな。仕掛けは単純なのだが、アレは掛かった者の心にトラウマを植え付ける罠なのだぞ」

「エゲツない言うなし」

 

(登録者以外を排除する通路か。だとすれば、この階層そのものが墳墓(ふんぼ)への侵入者対策なのかも知れないな) 

 

 罠に関してはまだまだ奥が深いなと、そう感じるリムルであった。

 

 カガリ女史も何事か(つぶや)きながら思考を巡らせ、隊員達も先程の再度魔人形(ゴーレム)で得たデータを検証しようとした時――

 

 遺跡を含むこの地方一体を、巨大なエネルギー反応が襲う。

 

 天井からはパラパラと小さな石片(せきへん)が落ちて来る。

 

 隊員達の足下にカンコンと音を立てて地面に跳ね落ち、それがより一層、圧迫感と恐怖感を増長させていた。

 

「きゃっ! 何が、何が起きたの!?」

「不味いぞ、早く逃げないと崩れるぞ!!」

 

 女性隊員が悲鳴を上げ、男性隊員も動揺して声を上げていた。

 

「静かに、落ち着きなさい!! これは地震ではないわ。これだけ頑丈な建物なら、そう簡単に崩れたりはしません。落ち着いて避難行動を取りなさい」

 

 そんな隊員達を一喝して落ち着かせるカガリ女史。

 

 

「今のは何だったんすかね?」

 

 ゴブタは落ち着いたもので、リムルに聞いて来る。

 

「う~ん、デカイ衝撃波が地上部を吹き荒れたみたいだぞ。かなりの規模だったから、城にも影響が出たかも……」

 

 リムルはいざとなったら、『転移門』があるので慌てる事はないだろうと考え、そうゴブタに返した。

 

(しかしそれにしても……。カガリ女史が言うように、これは地震ではないな。局所的なエネルギー反応だったから、間違いなく人為的なものだろう。ん? ツキハがいつもの姿に戻っているな。猫耳がせわしなくあちこちに音を探す? ように動いているし、何かを警戒してるのか?)

 

 そんなリムルの直感に反応があった。

 

《告。敵意反応を感知しました。現時点を以て遺跡の防衛機構が作動した模様。多数の魔人形(ゴーレム)の起動を確認しました。それと、遺跡への侵入者です》

 

 智慧之王(ラファエル)が告げたと同時に――

 

 ブォーン ブォーン ブォーン 角笛に似た警告音が遺跡内に鳴り響き。

 続いて機械音声のような何者かの声。

 

『アムリタへの侵入を確認。排除せよ!! アムリタへの侵入を確認。排除せよ!!』

 

 その繰り返す声からは、危険な予感しか感じさせなかった。

 

 

 事態は、突然逼迫(ひっぱく)したのだ。

 

 

「そんな馬鹿な!? この遺跡の――アムリタの防衛機構が勝手に動いたというの!?」

 

 カガリ女史からは、さっきまでの余裕が嘘のように消えていた。

 

「侵入者もいるみたいだし、ソイツ等が罠に引っ掛かったのかもな。まあ、そんな事は防衛機構には通じないんだけね」

 

 そう答えるリムルだが、内心ではカガリ女史を疑っていた。

 

 扉に近い位置にいるカガリ女史は、リムルの目を盗んで防衛機構を作動させる事が出来たかも知れないのだから。

 

 それに、このタイミング。

 

 侵入者が来ると同時に警報が鳴るなど、狙ったとしか思えなかったのだ。

 

 

「ミリム、問題はあったか?」

「いや、今は何も聞こえなかったのだ」

 

 ミリムならば、『思念伝達』や〝魔法通話〟といった秘密の会話など全て筒抜けになる。

 

 なので隠し事などは無意味なのだが、今回は反応がなかったようだ。

 

(ふーむ。侵入者とカガリ女史が繋がってるんじゃないかと思ったんだけど、どうやら考え過ぎだったらしい。となると、カガリ女史は白かな?)

 

《告。断定は出来ません。〝魂の回廊〟が繋がっていれば、秘匿回線による『思念伝達』が可能となります》

 

(うーむ、安心するにはまだ早いか。どちらにしろ、敵は来る。やるしかな、ない。そういう事だ、智慧之王(ラファエル)さん) 

 

《了》

 

 そう決断したリムルは、何時でも戦闘態勢に入れるよう智慧之王(ラファエル)に告げた。

 

「状況は悪い。侵入者とは間違いなく、俺を狙った組織だと思う」

 

 リムルが隊員達に告げると、その反応は様々であったが、素直に驚きを口にしていたので怪しいところはどこにもなかった。

 

 リムルが心配しなくとも、君達は俺が守ると宣言し二度驚かれたのは、リムルにとって少し心外ではあったが今はそれに気を取られる暇もなかった。

 

 そこへミリムが、真剣な顔付でリムルに問う。

 

「リムルよ、お前の狙い通りだな?」

「ああ、釣られたのか、釣ったのかは定かじゃないが。ここはキッチリ、白黒つけようじゃないか」

 

 リムルと智慧之王(ラファエル)の読み通り、敵は(リムル)に喰いついた。

 

 そしてツキハも、恐らくこれを予見していたのは間違いないだろう。

 

 

 どちらにしろ、この事態は想定済み。

 

 

 ならば、迎え撃つまでとリムル達は迎撃体制へと移行するのであった。

 

 

 そこへ――二度目の揺れが来た。

 

 

 地鳴りのような音が遺跡内に響き渡り、微細な震動が地面を伝わって皆が警戒を強める。

 

「何なんすかね? かなり嫌な感じがするっすよ?」

「……」

 

 流石のゴブタも外の様子が気になり、疑問を口にする。

 

 しかし、今のリムルにはそれに答える余裕がなかった。

 

 何故ならば、リムルには視えていたのだ。

 

 遠く離れた空から迫り来る、禍々(まがまが)しい竜の姿が。

 

 

「ヤバイな、あれは、マジにヤバイぞ……」

 

 リムルは遺跡内部から、魔素を辿って外部にまで『魔力感知』を広げていたのだ。

 

 そして判明したのが、凶悪極まりない竜である。

 

 外見はヴェルドラに似てはいるが、サイズは一回り大きい。

 だがしかし、その皮膚は腐食したように(ただ)れており、膨大な妖気(オーラ)が駄々洩れであった。

 

 その秘めたる巨大な魔素量(エネルギー)は、覚醒魔王級を遥かに超えており、その危険度は間違いなく天災級(カタストロフ)であろう。

 

 

「そ、そんなにっすか?」

「ああ、ドラゴンっぽいけど、上位龍族(アークドラゴン)なんて目じゃない。多分、竜王(ドラゴンロード)よりも強大で、あれはもしかしたらヴェルドラの兄弟か……?」

「ヴェ、ヴェルドラ様っすか!?」

「クソがッ!!」

「ひいっ!」

「おおう!?」

 

 リムルとゴブタがヴェルドラの縁者かと口にしたら、ツキハがいきなり怒鳴(どな)る。

 

「あ、ごめん。アンタ達に怒ったんじゃないよ。クソッ、アイツら……よりにもよってアレの封印を解きやがるなんて、いくら悪猫のあたしでもブチ切れんぞッ!!」

 

 いきなり怒鳴ったのを二人に謝るも、虚空の彼方を見るように上空のある一点を凝視して、いつの間にか腰に差した〝妖刀時雨(しぐれ)〟の(つば)に親指をかけていて、いつでも抜ける体制だった。

 

 その怒りは、真紅(しんく)の魔素粒子がツキハを巻くように立ち昇るほどに、凄まじい妖気(オーラ)を漏らすツキハ。

 

「あれは――ッ!?」 

 

 そんなツキハの様子に反応するように、ミリムが突然大きく目を見開いた。

 

「リムルよ、ワタシには急用が出来たのだ。あれは、あの竜は……ツキハ――」

 

 そう言うなりミリムはツキハの名を呼び、ツキハは無言で(うなづ)き右手を差し出す。

 

 ミリムはキッと虚空を睨み付けると、ツキハの右手を掴み、その場から『空間転移』して二人して消えた。

 

 

 ツキハの怒髪天を突くような怒りと、ミリムの慌てた様子から、リムルもおおよその事情を把握する。

 

 

「信じられないが、あれはミリムが封印したという友達だったドラゴンみたいだな。復活したんじゃなくて、誰かが封印を解いて操っているみたいだ。ミリムとは古い友人のツキハは、その事情を聞かされていたんだろう。だから、激怒した」

「何ですって!? それは本当なのですか、リムル様?」

「ああ。メチャクチャ強い波動を感じる。下手すれば、俺でも勝てないかも」

 

 リムルの言った事は事実である。

 

 それは、ヴェルドラの残滓だった暴風大妖渦(カリュプディス)など目ではなく、恐ろしいまでの憎悪と憎しみの波動を感じさせるものだった。

 

 こうなれば、この世を全て滅ぼし尽くすまでは止まらないだろう。

 

 そして恐ろしい事に、その感情は漆黒の闇よりも深い色に、ドス黒く塗りつぶされていた。

 

 つまり、マリアベルの感情支配によって操られてるとしても、その憎悪の色は異常なまでに増大していたのだ。

 

 

「――混沌竜(カオスドラゴン)。まさか、この時代にあの暴君が……」

 

 カガリ女史の(つぶや)きは、否応が無しに皆の耳に突き刺さっていく。

 

 こうして、ロッゾ一族のマリアベルとリムル達の戦いが、ここに幕を開ける。

 

 





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