忍びが転生したら〝異世界珍道中〟になった件   作:にゃんころ缶

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 お待たせしました。242話です

 ツキハ

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 コハク

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 傭兵商会ルヴナン・真の紋章


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 ※〝打刀〟
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242話 〝強欲〟者が望むは、勝利のみ

 

 

 リムルの前に立つ少女。

 

 それは、開国祭の時に見かけた少女であり、危険な気配を漂わせていた本人である。

 

「気が合うね、俺も同意見だよ。俺は魔王リムルだ。君は?」 

「初めまして、なのよ。私はマリアベル、貴方の敵なの」

 

(フッ。中々に大胆な敵だな。もっと狡猾(こうかつ)で、裏から暗躍して決して表に出ないタイプだと思っていたんだけど、違ったな)

 

 リムルは少し乾いた笑いを漏らすも、それが嘲笑(ちょうしょう)ではなく、敵が自分の前に姿を現した事への高揚感に襲われたモノのだったのだ。

 

 人の心を残しつつも、魔物、いや魔王としての精神面が成長したのであろう。

 

 そして、マリアベルの隣には三名の姿があった。

 

 

 変わり果てた姿になったガイと、騎士服の男。

 

 そして、不気味な笑みを浮かべている、神楽坂優樹(ユウキ・カグラザカ)

 

 ユウキの姿を見て、あからさまに動揺するカガリ女史と隊員達。

 

「ギ、ギルマス!? な、何故貴方がここに?」

「まさか……魔王を狙ったのは、貴方なのか? 答えて下さい、ギルマス!?」

「嘘でしょ? それならどうして、私達に遺跡調査を命じたのですか!?」

 

 様々な疑問を口々に投げかけるが、ユウキは冷え切るような笑みを深めていくだけだった。

 

「ユウキ様、これは一体どういう事なのです? 貴方は、ワタクシ達を裏切ったのですか?」

 

 怒りに満ちた声で、カガリ女史がユウキに言い放つ。

 

(あの怒りは本物だな。でもまあ、今となってはどうでもいい話だ。とりあえずは、目の前の敵からだな) 

 

 リムルはカガリ女史に視線を向け、直ぐにマリアベルに視線を戻す。

 

「そうだな。確かに、敵だ。だが、戦う前に一つ確認したいのだけど、いいかな?」

 

 マリアベルは、まだ十歳になるかならないかという年代の少女。

 

 その人形のように愛らしい顔つきは、普通ならばまだ親に甘える年頃。

 

 しかし、その本質は冷徹で、あまりにも異質である。

 

「何かしら?」

「いいか? 一度しか言わない。俺の傘下に入れ。そうすれば、無用な戦いは回避出来る」

「笑止、笑止なのよ。逆にその言葉、そっくり返すわ。魔王リムル、貴方はここで敗北をするの。それが嫌なら、私の支配下に入るのよ」

「平行線だな。お前の方針は、俺の政策とは相容れない。そのやり方では、どうやっても不要な争いが生じてしまう。一部の者達の富を守る為に、多くの罪なき民が苦しむじゃないか」

「そうね、それは認めるわ。でも、それが何だというのかしら? 力無き者が搾取される、これはとても自然な事なの。魔物だって、弱肉強食でしょ? 番外魔王がいい例じゃない」

「そうだな。だが、俺はそういうのは嫌いなんだよ」

「なら、番外魔王の二人と何故に協力関係にあるのかしら?」

「協力関係といっても、契約の上でしかないんだ、これがね。信じる信じないは、好きにしてくれてもいい」

「そうなのね。馬鹿ね、馬鹿なのよ。自ら獅子身中の虫を買うなんて、愚かだわ。それに、誰もが平等なんて、そんな甘っちょろい事を信じているの?」

「いいや、俺だってそこまで馬鹿じゃない。だけどな、誰もが一度は機会を与えられるべきなんだ。何をやっても駄目なヤツもいるけど、人間の価値ってのはそう簡単に斬り捨てていいもんじゃないだろ?」

 

 リムルは思う――

 

 マリアベルのやり方では、貧富の差が一度生まれたら、それを覆すのは不可能になる。

 

 リムルにはそれが、どうしても納得出来ない。

 

 

 人は千差万別。

 

 

 芽が出るのが遅い者もいる。

 隠れた才能を持つ者もいる。

 働くのは苦手でも、芸術的な才能に開花する者もいる。

 

 リムルが人間であった頃に歩んだ人生。

 

 マリアベルが元いた世界で歩んだ人生。

 

 リムルはリムルで、暴漢に襲われるまでは、極々普通のサラリーマン人生だった。

 

 マリアベルはマリアベルで、世界の経済界の中で生きる人生だった。

 

 歩んだ道が全く違う二人の考えが交わる事は、ないだろう。

 

 言葉を尽くして語り合おうとも、元々の思考、文化が違うのだ。 

 

 

 それでも。

 

 

 リムルは、勿体ないと思う。

 

 斬り捨てていい人間など、いないのだと。

 人の才能には、無限の可能性があると信じたいのだ。

 

 

 だが――

 

 

「くだらない、クダラナイのよ。まさか、こんな子供みたいな夢想家が魔王だなんて、信じられないくらい馬鹿げた話なの」

 

 やはり、マリアベルにはリムルの思いは届かなかった。

 

「そうか。じゃあ、仕方ない。たった一つの簡単な方法で、どちらが正しいか決着をつけよう」

「望むところなの。現実を教えてあげるのよ」

 

 決して交わる事のない二人の議論には、悲しいかな、最初から戦いによってしか答えは出なかったのだ。

 

 人類全てが理解し合える日など、決して訪れる事はないのだろう。

 

 だがそれこそが、人の多様性の証明でもあるのだ。

 

 その正しさは、戦いに勝利した者だけが、主張出来るのである。

 

 

 リムルとマリアベル。

 

 主義主張の異なる二つの正義が、今ここに、正面からぶつかり合う。

 

 

「叩きのめすのよ!」

 

 マリアベルの合図で、真っ先に動いたのはガイ。

 

 ガイは、リムルへの憎悪の炎で目を真っ赤に血走らせて駈け出す。

 

 あの開国祭の時の屈辱から始まり、先の会議からの更なる屈辱の上塗りで、その心は憎しみで染まり切っていたのだ。

 

 異端審問官に捕らえられたガイが何故ここにいるのか、リムルに取ってそんな事はもうどうでも良かった。

 

(どうやってマリアベルの下に来たのかな、アイツ。いや、敵として俺の前に立つのなら、キッチリ相手をするまでだ)

 

 既に戦闘態勢に入ったリムルには、手加減という文字は消えていた。

 

 そこへ。 

 

「フンッ! 貴様如きがリムル様に挑もうなどと――」

 

 そう叫んだシオンが、ガイの前に立ちはだかろうとした時、その動きはユウキによって邪魔をされてしまう。

 

「君の相手は僕がしよう」 

「ほう、面白い。そこの女に支配されるような軟弱者など、私の敵ではないわ!!」

 

 眉を吊り上げ鋭利な目付きで|紫焔(しえん)妖気(オーラ)を身体から立ち昇らせ、シオンが()えた。

 

 凄まじい妖気(オーラ)はシオンが本気になった証拠だ。

 

 シオンは、大太刀を構える否や目にも止まらぬ速さで動き、上段からありったけの力を込めてユウキに向かって大太刀を振り下ろす。

 

 そしてユウキも腰に下げたブロードソードを抜き放ち、それを迎え撃つ。

 

 ガギュンッ!!

 

「何ッ!?」

 

 激しい火花が散り、必殺の一撃を受け止められたシオンは素早く後ろに飛び退(すさ)った。

 

「それじゃあ、始めようか」

 

 ユウキはそう言うと、シオンと剣で切り結ぶ、 

 

 双方、激しい斬撃の攻防を繰り広げる。

 

  

 そんな中、もう一人の男も動き出す。

 

 それを迎え撃つは、ゴブタとランガ。

 

 

「ゴブタよ、四天王の力を見せる時が来たぞ!!」

 

 ユウキと斬り結ぶ中、シオンが叫んだ。

 

 

(ああ、そんな設定もあったな。すっかり忘れてたわ)

 

 シオンの声を聞いたリムルは、それを思い出す。

 

 

「はいっす! じゃあ、オイラの取っておきを見せるっすよ!!」

 

 シオンの声に応じるゴブタが、次の瞬間。

 

 ゴブタはライ○ーポーズのような構えを取り――

 

『変身!!』

 

 と、叫んだ。

 

 ここで何故そのような構えを取ったのかは、リムルが作っているマンガからの知識であろう事は明白だった。

 

「ワオーーンッ!!」

 

 ランガが高らかに吠え、ゴブタの真上にジャンプすると。

 

 ゴブタとランガが(まばゆ)い光に包まれ、カアーッと光り輝きが辺りを照らす。

 

 そして、その光が収まった時そこに立つは。

 

 ヘンシン――『魔狼合一』を終えた、ゴブタであった。

 

 一欠けらもゴブタ要素がない、カッコイイ人狼の姿がそこに合ったのだ。

 

 ミリムとの厳しい(〝凄惨な〟)修行を乗り越え、力の制御を覚えたゴブタは以前とは違う。

 

 相対する騎士風の男は相当な難敵だが、今のゴブタなら大丈夫だろうとリムルは判断した。

 

(あの男の装備は、元は聖騎士だった? そういや、ヒナタが俺達と争った時から、一人行方がわからなくなった男の聖騎士がいたと、言っていたような気がする。ふ~ん、アイツ、〝十大聖人〟級の力を持っているな。まあ、今のゴブタなら問題ないだろう。それよりも――)

 

「ウガアアアァッ!! よくも俺様に、屈辱を、辱めを、この恨み晴らさべておくものかあっ! この魔物風情がああああああああっ!!」

 

 奇声を上げ、リムルに向かって猛ダッシュするガイ。

 

 リムルはおもむろに自分の妖気(オーラ)を右手に集め。

 

 右手指を人差し指と中指だけを立て後の指は握ると、ガイに向け手の平側を上に向け、ピッと立てた二本指を無造作に上に向けた。

 

 

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 ヒュゴウッ! 

 

 ガイの足元から無情な蒼い閃光が立ち昇り、一瞬にしてガイを(ちり)へと変え消滅させた。

 

 それを冷徹な表情で見るリムル。

 

(マリアベルの〝強欲〟に染まり、実力以上の力を得ていたようだけど。己を知り敵を知ろうともしないお前では、俺の敵には成り得ないよ)

 

「俺と戦いたがっていたよな? 良かったな、死ぬ前に願いが叶って」

 

 淡々とそっけない言葉を、死者への手向けとして送るリムル。

 

 その貫禄(かんろく)は、既に魔王のそれであった。

 

「嘘ッ!? 何よ、何なのよ、その力は――ッ?」

「何って? これが俺の本気だよ。お前、ただの魔物ではない俺を、魔王を、舐め過ぎじゃないか? まあ、それを理解する必要はない。散々俺の周りを引っ掻き回してくれたんだ。二度と転生が出来ないように〝魂〟を喰らい尽くしてやるから、精々俺の(かて)となれ」

 

 その心(しんたん)寒からしめる言葉は、以前のようなようなリムルとは明らかに違った。

 

 マリアベルを敵と見定め、本気になったリムルの姿である。

 

(敵は殺す、それだけだ)

 

 自分にそう言い聞かせて、リムルはマリアベルに向けて一歩踏み出した。

 

 

 マリアベルは悟る。

 

 今自分が相対する者は、この世で最強たる八星魔王(オクタグラム)一柱(ヒトリ)なのだと。

 

(冗談じゃないわ、冗談じゃないのよ。評議会での一件も、魔王リムルにとっては無礼千万だったはず。それなのに、それほど怒っている様子ではなかったわ。なら、何故……まさか、まさかまさか、まさかなの!? 評議会での一件も、ルヴナンに知られていた? だから番外魔王コハクは、最後に私の前に現れた? 温厚という評判は、作られたもの? そうすれば辻褄が合うの。そして、それをやったのがルヴナン。ルヴナンの情報操作は、ここまでのモノなのね。御爺様があれほどルヴナンに対して油断はならぬと再三言っていたのは、この事だったのね。迂闊よ、迂闊だつたの。もっと、ルヴナンを警戒すべきだったの……)

 

 後悔の念よりも、あれほど慎重に事を起こして来た自分の無様を呪うマリアベル。

 

 マリアベルは、魔王リムルに対して、ルヴナンに対しても脅威を感じざるを得なかった。

 

 

(仕方ないの。躊躇してる暇はないのよ)

 

 

 だからこそ、早々に奥の手を使う。

 

 〝聖浄化結界(ホーリーフィールド)〟――対魔物の切り札ともいえる最強の『封殺結界』である。

 

 マリアベルは用意周到に、〝血影狂乱(ブラッドシャドウ)〟を城の外周に潜ませていたのだ。

 

「大きな口を叩く前に、思い知るといいのよ。人と魔物の知恵の差を!」

 

 マリアベルは、リムルに対して大見得を切った。

 

 同時に、〝魔法通話〟によって命令を下す。

 

 

「あれ!? 身体が重いっす――」

「この感じ……記憶にあります。あの時よりも強力、なるほど、これが本物の威力でしたか」

 

 ヘンシン人狼は戸惑いを見せ、悪鬼(オニ)は不敵に笑う。

 

(何なの、あの魔物は。忌々しいの) 

 

 そうマリアベルは、歯噛(はが)みする。

 

(何て馬鹿げた戦力なの。正面切って戦えば、ヴェルドラが出なくても私達に勝機はないのよ。でも――)

 

 と今は、決定的に状況をひっくり返したと確信するマリアベル。

 

 魔王は自らを過信する余り、このような場に無防備な姿を曝し、それが命取りになるのだと、マリアベルは小さく(わら)う。

 

 だがしかし、そんなマリアベルの思いを打ち砕くように、リムルが口を開いた。

 

「やっぱりな。こんな手は当然取るだろうと予測していたさ。俺を誰だと思っているんだ? だから、それに対して対策を取らない訳がないじゃないか」

 

 魔王リムルは、そう言って不敵に笑った。

 

 と次の瞬間、発動したばかりの〝聖浄化結界(ホーリーフィールド)〟が消失したのだ。

 

 

 〝聖浄化結界(ホーリーフィールド)〟を発動させる為に城の東西南北に術者が散り、その術者を守る為に数人の護衛がいた。

 

 そして、潜んでいたソーカ達がそこを急襲して術者ごと殲滅していたのだ。

 

 あっという間に三ヶ所を潰したソーカ達は、残る北方面に向かう。

 

 

 北方面。

 

 聖浄化結界(ホーリーフィールド)〟を張っていた術者が、異変を感じた。

 

「何ッ!? 聖浄化結界(ホーリーフィールド)〟が消えただと?」 

「東西、南方面に何かあったのか!?」

 

 護衛数人と術者が騒ぎ立てていると、そこに。

 

 黒い、外套(がいとう)を着た者が現れた。

 

「何奴ッ!?」

 

 護衛の一人が叫ぶと、男は外套を静かに脱ぎ捨てた。

 

 

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「お前はッ!?」

「ヤスケ?」

「死んだはずでは!?」

 

 死んだと聞かされていたヤスケが目の前にいるのに、動揺する〝血影狂乱(ブラッドシャドウ)〟の面々。

 

「……」

 

 ヤスケは黙ったまま刀の(つば)に親指をかけ、鯉口(こいくち)を切ると。

 

「御免つかまつる」

 

 そう言い、その場から砂塵(さじん)だけを巻き上げ一瞬で術者のところへ接敵し、一撃で斬り伏せ。

 返す刀で数人を次々と斬り伏せていった。

 

 それは圧巻であり、元〝血影狂乱(ブラッドシャドウ)〟の刺客(シカク)であり、そこの頂天に君臨していたヤスケに(かな)うはずもなく、敢え無く惨殺されたのであった。

 

 ヤスケは、血糊(ちのり)が付いた刃を一度右斜め下に振り、懐から取り出した紙束で残った血糊を拭うと、ばさりとその紙束を地面に投げ捨てた。

 

 そして、右手で拝むようにして、小さく呟く。

 

「許されよ。一度は屋根を共にした身ではあるが。しかし、今は孤高の刺客である故、お主らの敵だ。拙者は、もう〝血影狂乱(ブラッドシャドウ)〟のヤスケではない。一匹狼(アインツェルゲンガー)の、刺客なのだ」

 

 そう言って浅くお辞儀をすると、ヤスケは懐から転移呪符を取り出し、何処(いずこ)へと去っていった。

 

 

 ヤスケが転移した後にソーカ達が北方面に着いた。

 

 

「これ、誰がやったんでしょうか?」

 

 一刀の下に切り捨てられた、数人分の死体を見てサイカが言う。

 

 それを聞いたソーカが、地面に落ちていた紙束に(ぬぐ)ったような血の跡が付いてるのに気が付き、先日ルヴナンからある通達があった事を思い出す。 

 

「ああ、そうですそうです。ルヴナンから今回の一件に、臨時で雇った暗殺者が来るとお知らせがありましたね」

「これが、その者の仕業だと?」

 

 ソーカの言葉にナンソウが問う。

 

「でしょうね。この血を拭いた紙束があるという事は、リムル様と同じ打刀(うちがたな)を使う者。臨時で雇ったと言ってましたから、多分、聖騎士団と争った時にツキハ様が敢えて見逃した、剣士かもしれませんね。では、任務完了という事で、引き続きこの辺りを警戒しましょう。先程からメチャクチャにヤバイ妖気(オーラ)が漂ってますからね」

 

 ソーカの説明に一応は皆納得をして、この場を去っていった。

 

 ソーカが言った、ルヴナンが雇った臨時の暗殺依頼とは、世界を旅するヤスケが路銀を稼ぐ為に、時折臨時の依頼をルヴナンから受けていたのだ。

 

 で、たまたま今回受けたのが、この方面に来た〝血影狂乱(ブラッドシャドウ)〟の暗殺依頼だったという訳である。

 

 そして、切り札を封じられたマリアベルは――

 

「なっ!? 何をしたの?」

「ここまで来て、説明がいるか? まあ、いいさ。こんなあからさまに襲撃して下さいとばかりに出歩くんだから、この城の周辺を配下に警戒させるのなんて、当たり前だろう? 一部飛び入りがあったみたいだけど。お前は俺を罠に()めたつもりなんだろうけど、こっちとしても、俺を囮にしてお前を(おび)き出したんだよ。俺を支配するには、〝強欲〟の能力者であるお前自らが出向かなきゃならないだろうって考えてね」

 

 これが、リムルのマリアベルに対しての返答だった。

 

 その時点で、マリアベルは全てを理解した。

 

 確かに、魂が砕かれて確かに死んだと確信したマリアベルだったが、それは間違いで、グレンダの魂を縛る術式を魔王リムル、もしくは番外魔王コハクが解除したのだと悟る。

 

(そう、そうなのね。自分の力を過信していたのは、魔王ではなく私だったのよ……)

 

 奥の手が潰された今、形勢は非常に不味い状況となったマリアベル。

 

 ガイは既に死亡。

 

 ユウキは優勢だが、悪鬼(オニ)を攻め切れていない。

 

 もう一人、グレンダの仇討(あだう)ちに燃えていた元〝三武仙〟のラーマは、「よくもグレンダを殺したな!」や「グレンダの仇は俺が取る!」などと叫びながら人狼と戦っていた。

 

 その人狼は、「いやいや、生きてるっす! ルヴナンで傭兵になって生きてるっす!」と叫び連呼するも、ラーマの耳には届かなかったのである。

 

 

 ならばと、マリアベルは覚悟を決める。

 

 

(このようなチャンスは、二度と来ないの。だから、全てを出すの――) 

 

 人形のような少女は、今、その本性を剥き出しにする。

 

 自らの〝魂〟を燃焼させ、マリアベルは限界を超えた。

 

 

 〝強欲〟者が望むは、勝利のみ。

 

 

 罠に嵌った事実は(くつがえ)せないが、この状況はマリアベルが望んだ通りのものでもあったのだ。 

 

 ピンチをチャンスに変える、そう願いマリアベルは――

 

 リムルに向かって、ゆっくりと一歩踏み出す。

 

 

 





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