忍びが転生したら〝異世界珍道中〟になった件   作:にゃんころ缶

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 お待たせしました。247話です

 ツキハ

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 コハク

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 傭兵商会ルヴナン・真の紋章


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 ※〝打刀〟
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 ※作中使用の特殊フォントは、〝ライム酒〟様作成の特殊フォントを使用させて頂いています。 

 特殊フォントの反映には時間が掛かる場合がありますので、ご了承ください。










247話 BLACK HOIY(黒キ聖なるモノ)

 

 

 ユウキとの戦いに、一応ながら決着を付けたリムル。

 

 

 そして、カオスドラゴンを抑えているミリムとツキハのところへ急ぎ行くのだった。

 

 

 

 〝その前の時に、少し戻してみよう〟

 

 

 強大な力を持つカオスドラゴンと対峙するミリムとツキハ。

 

 

「あちゃ~。アレ、マジにヤバくね? それに、めっちゃデカいし。しかもチヨメの〝憎念〟で憎しみを強化しやがってるし。あんの馬鹿陰険変態女が、余計な事しかしやがらねえッ!」

「大きさは全長百メートルはあるな……しかし、何としてでも抑えねばならぬのだ。でなければ、下にいるリムル達が大変な事になる」

「あいよ。何とかして抑えようかね」

「すまぬ、ツキハ。お前の憑依体は万全では――」

「いいよ、友達だろ? それ以上は言葉はいらないよ」

「……そうか」

「じゃあ、やろうか、ミリム」

「うむ!」

 

 そう言うとツキハは妖刀時雨(しぐれ)鯉口(こいくち)を切り、空中での足場を確保する為に、足裏に重力操作で疑似的な力場を発生させる。 

 

 ミリムもカオスドラゴンの攻撃に備え構えを取る。 

 

 

 ゴルルルルルルルッ。

 

 己の前にいるミリムとツキハに対して、低く重低音からなる威嚇の唸り声を上げるカオスドラゴン。

 

 そして、クワアッと大きく口を開けると、黒く渦巻く巨大な魔力弾を二発放つ。

 

「はいッ!? ただの魔力弾じゃない?」

 

 自分に向かって来た魔力弾を一刀両断した時に、妖刀時雨が激しく震えたのだ。

 

「これは? ツキハ、この魔力弾には別のモノが含まれているぞ!」

 

 同じく魔力弾を弾いたミリムの右手が、黒く薄い(もや)のようなものに覆われ、霧散した。

 

「ミリム。これ、〝憎念(ぞうねん)〟で作られた魔力弾だわ」 

「お前がこの間話してくれた、東の帝国〝忍び〟の女の仕業なのだな?」

「そゆこと。まあ、ミリムの精神耐性なら影響はほぼほぼないけど、油断しないでね。あの〝憎念〟は、純粋な憎しみの(かたまり)だから」

「うむ、わかったのだ。ワタシの手に纏わりついたアレは、凄まじい憎しみの念を感じたのだ……」

 

 お互いにカオスドラゴンを挟むようにしながら魔力弾を、始末していくミリムとツキハ。

 

 しかし、カオスドラゴンから放たれる魔力弾が速さを増し、次々と放たれる魔力弾に二人は(さば)き切れなくなっていく。

 

「クソッ! 一発斬り損ねた。多過ぎんだろ、これはッ!」 

 

 これは、ただ単に斬ればよいというものではなく、斬ってその威力を減退させ霧散させる。

 

 その一連の作業を一瞬で行わなければいけない。

 これをツキハは、襲い来る魔力弾に対して行っていたのだ。

 

 しかも、ただの魔力弾ではなく、〝憎念〟で強化されたそれを。

 

 地表に激突し爆散した魔力弾は、地下遺跡の内部まで揺らす。

 

「マジで、多過ぎるのだ。これでは、いつまでも捌き切れないのだ、ツキハ!」

 

 ミリムもまた、ツキハと同じ作業を拳のみで行っていたのだ。

 

 魔力弾を殴り空中で爆散させる。

 

 自分もその爆発の余波を受けるのだが、ミリムの『多重結界』と『精神耐性』はそれぐらいではびくともしなかった。

 

 本来なら、カオスドラゴンを全力で倒さなければならないのだが。

 

 ミリムは、どこか躊躇(ちゅうちょ)していた。

 

 そして、ツキハもそれをわかっていたので、何も口を挟まなかったのだ。

 

 

 暫く、魔力弾を放ち続けていたカオスドラゴンがそれを止め。

 

 口をガパリと大きく開けると、ヒュゴオオオッと周囲の空気を吸い込む様な音を立て始める。

 

 

 それを見たツキハが何かを察した。

 

 

「おいおいおいおい、何をする気だよ、って、〝憎念〟を増幅しやがっているのか、アレ?」

 

 カオスドラゴンの胸の中心が赤黒く輝き始めていた。

 

「ツキハ。アレは何をしようとしてるんだ?」

「えーっと、多分アレ、咆哮(ほうこう)だわ」

「咆哮だと?」

「そっ。激しく渦巻く憎悪を、咆哮と共に周囲に音として巻き散らす、音波精神攻撃みたいなもの。アレを聞いた者は精神をやられて即死コースだわ」

「ちょっと待て! 下にはリムル達がいるのではないか!?」

「地下は深い岩盤とかで音が遮断されるから大丈夫だと思う。〝憎念〟は音に乗せて来るから、影響はないハズ、と思う」

「ツキハ、地表にはソーカ達が残っているのだ。今から保護するには間に合わぬ……ワタシが、カオスドラゴンを――」

「多分大丈夫だから、ちょっと待って!」

 

 そう言うとツキハ、地表にいるソーカ達に『思考加速』付きの『思念伝達』を急ぎ飛ばす。

 

『ソーカ、聞こえる?』

『はい? ツキハ様?』

『今、めっちゃヤバイ状況だから、手短に言うね』

『はい』

 

 ツキハがそう言うと、ソーカは即座に状況を把握し、ツキハの言葉を聞く。

 

『もうすぐにカオスドラゴンの咆哮が放たれる。それを聞いた瞬間、アンタ達は即死する』

『ええっ!?』

『でも、今から対抗策を教えるから、すぐにやりな!』

『『『『『はいッ!!』』』』』

 

 ツキハの説明に、ソーカ達が答える。

 

『いいかい、コレは〝憎念〟を含んだ音波式精神攻撃だ。対象の憎しみを極限にまで増大させ〝魂〟を砕くんだと思う。だから、まず耳を(ふさ)げ』

『え? 耳をですか?』

 

 ソーカが(いぶか)し気な反応を示す。

 

 それにツキハが、もう、というように返した。

 

『イメージだよ、イメージ。何も聞こえないと言う強固な意志を持つんだよ。そして、体内の魔力と妖気(オーラ)を全力で活性化させな。それで、精神を覆い尽くすようにイメージするんだよ。アンタ達なら一回は耐える事が出来る、いや、リムルの配下なら、眷属なら出来る!』

『『『『『はいッ!!』』』』』

『そして、地面に身を小さく丸めて伏せな。音を(さえぎ)る一つの岩のイメージを思い浮かべるんだ。アンタらは『空間移動』で逃げれるけれども、タイミング的にギリギリなんだよ。アレを無防備な状態で喰らったら終わりだ。(かす)っただけでも、同じ。急げ!!』

 

 ツキハが叫ぶように言うと、ソーカ達は言われた通りにそれを実行した。

 

 

 その一秒後。

 

 

 ギャオオオオオオオオオオオンッ!!

 

 

 地を揺さぶるような、(おぞ)ましい咆哮が鳴り響いた。

 

 

 この周辺にいた魔物達は一瞬で〝魂〟を砕かれ絶命した。

 

 

 キイイーーンッと、耳鳴りのような音が空間を震わせ、次第に小さくなり、やがて消えていった。

 

 

 ゴルルルル。

 

 

 訪れる静寂(せいじゃく)の中、カオスドラゴンの重低音のような唸り声だけ響いていた。

 

 

 両腕をクロスさせ防御したミリム。

 

 ツキハは、眼前で妖刀時雨の刃の切っ先を真上に向け、左手で刃の(みね)の部分に()えて防御していた。

 

 

「かぁーっ、なんて咆哮なのよ。それよりも……ソーカ達は、無事だったか。良かったぁ~」

 

 無事なソーカ達を『魔力感知』で確認し、すぐに『空間移動』でこの場を去ったの見届け安堵するツキハ。

 

(さーてと、どうしようかね、カオスドラゴン。殺すならやりようはあるんだけど、あれも元は〝竜種〟なんだっけ? ミリムなら確実に()れるんだろうけど。元は大事な友達だからなぁ、その選択は選ばないだろうね。ミリムは何とかしたいけど、その手が見つからない、まあ、あたしもそうなんだけど。リムルなら何とか出来るかな? 仕方ない、これは苦手なんだけどなぁ、やるしかないかぁ)

 

 何かを考え、意を決したツキハは、妖刀時雨の刃を(さや)に納めると、角帯に軽く巻き付けている下緒(さげお)をポンと叩き、下緒の空間収納に妖刀時雨を仕舞う。

 

 それを見たミリムが、妖刀時雨を仕舞ったツキハに対して、その行為を問う。

 

「ツキハ、何をしているのだ? 時雨を仕舞ってどうするのだ!?」

 

 その問いにツキハは、いつになく真剣な顔付でミリムに『思考加速』付きの『思念伝達』を返して来た。

 

 カオスドラゴンは、〝憎念〟を付与した魔力弾も咆哮も防がれた事に警戒し、ミリムとツキハを睨みながらうねうねと長い尻尾をくねらせ、憎悪で紅く染まった目で二人を睨んでいた。

 

『ミリム。一つだけ聞いてもいい?』

『うむ。なんなのだ?』

『アンタはさ、あの子を助けたい? それとも倒したい?』

 

 そう問われたミリムは(うつむ)き下唇をキッと噛み、今置かれている現状を考え、言葉が出て来なかった。

 

 その心中を察したツキハが柔らかく言葉をミリムに投げかけた。

 

『ねえ、ミリム。助けたいんでしょ? なら、そう言いなよ。二人で駄目なら、三人で助ければいいじゃん』

『三人?』

『うん。ユウキとの戦いが終わればリムルが来るよ。リムルが来たらきっと何とかなるって、ミリム』

『リムルが……』

『そっ。リムルと三人で助けようよ。その間の時間稼ぎはあたしがやるからさ』

『何ッ!? 一体何をする気なのだ?』

 

 ツキハの言葉に、どこか危ない予感がしたのかミリムは声を荒げた様に聞いて来た。

 

『今から、アンタとカオスドラゴンを広域結界で包み込む。そして、リムルが来るまでの間、カオスドラゴンをアンタが抑えるんだ。カオスドラゴンの攻撃の余波は全部結界で封じ込めて行動も制限する』

『でも、しかし、お前は――』

『うん。あたしはコハクみたいに広域結界は上手くない。ってか、苦手だ。キヒヒッ』

『笑い事ではないのだ、ツキハ! 今のお前の〝憑依体〟にそんな負担を賭けたら、本当に死んでしまうぞ! 少なくとも、百年以上は復活出来ないではないか!』

『そうだね』

『お前らしくもない、悪党のお前がそこまでやる理由がどこにあるのだッ!!』

 

 ミリムは怒りそう言ったが、本当にツキハの事を心配して言ったのだ。

 

 ツキハとコハク、眷属達の復活の仕組みは受けた攻撃の強さでほぼ決まる。

 

 殺されるような攻撃は、その威力で復活の時間に関わる。

 

 千年以上も前の事だが、ギィは攻撃力を加減してツキハとコハクの復活にかかる時間を調整していた事があり、これをギィから聞いていたのだミリムは。

 

 そして、想定外の攻撃を受けると〝心核〟が崩壊して復活しても、依然のツキハではなくなり、事実上、本当に死んだと同義となる事を、知っていた。

 

 その、想定外の事が起こせる存在、それが今対峙しているカオスドラゴンなのだ。

 

『心配してくれるんだ、ミリム』

『当たり前なのだ! 古くからの友達を心配してどこが悪いのだッ!!』

『じゃあさ、そっくりそのまま言葉を返すよ。あたしはね、しょせん悪党だ。でも、一度本当に友達になったら、裏切らないし、助けようとするんだよ。まあ、他の悪党はどうか知らんけど』

『ツキハ、お前……』

『そんなしょげた声出さないの。アンタは最古の魔王の一人なんだから、もっとドンッと構えなよ。いつもみたいに、ワーッハハハ、何でもないのだって、笑いなよ。そんなアンタはあたしより強いんだからさ、カオスドラゴンをキッチリ抑えててね。あたしがくたばるのが早いか、リムルが来るのが早いか、賭けだよコレは』

『ツキハ』

『なに?』

『分の悪い賭けは嫌いではなかったのか?』

『いんや、分があるからやるんだよ。アンタがいるからね、ミリム』

『そうか……わかったのだ。頼む、ツキハ』

『あいよ』

 

 ツキハはそこで『思念伝達』を終え、キリっとした表情になる。

 

 ミリムはカオスドラゴンの少し前に位置取り、両拳を構え、ファイティングポーズを取る。

 

 カオスドラゴンは目の前のミリムを凝視し、怒りとも哀しみともいえない咆哮を上げた。

 

 空気を震わせ周囲に響き渡る咆哮と同時に、軽く吐息(ブレス)を放つ。

 

 ミリムはそれを間一髪で(かわ)すが、その吐息(ブレス)は岩山を吹き飛ばす。

 

 

 暴威。

 

 

 まさに、そう呼ぶには相応しい威力だった。

 

 

 そして、次に放たれた吐息(ブレス)をミリムは全身で受け止め、気合一発でその吐息(ブレス)を掻き消した。

 

 ミリムはその超弩級の魔素量(エネルギー)で、カオスドラゴンの進撃を食い止める。

 

 そんなツキハは、『思考加速』百万倍でどのような結界を張るか模索していた。

 

(さてと、コハクが得意な結界って、何だったかなぁ。やっぱ〝幻巳反鏡(ゲンシハンキョウ)〟か、後は重力操作系の結界だよね。自分に張るならお手の物なんだけど、広範囲となると……。う~ん、呪符忍術はねぇ、ぶっちゃけ苦手なんだよねぇ。だからあたしは、剣術と体術の方を選んだんだけどね、人間の時に……。あーもう、めんどくさい! こうなりゃ、新しく創ってやんよ!)

 

 そう叫ぶとツキハは、パンと両手を眼前で叩き合わせた。

 

(そう言えば、ヒナタ達が使う、性? 違う、聖なる結界だ。あれ、かなり強力だよなぁ。魔を封じ込める結界。あたしがやると、魔が魔を封じるとか、何かの冗談? って感じだけど。あれって、確か四方を結んで結界を展開してたよね。白は正義で聖なる力という定義なんかな。悪は黒かぁ、誰が決めたんだよと言いたい! まあ、悪というか、そんな感じの奴らがポンポンポンポンと、黒い力とか、黒い何とかとか使い過ぎるんよ! 大体、黒い何とか使うんならさ、もっと豪快で強力なモン創れよなと、あたしは思うよ! 黒、使い過ぎでしょがあッ!)

 

 どこか見当はずれな方向で怒りをぶちまけるツキハだった。

 

(あーもう、って、いけないいけない。こんなアホな事言ってる場合じゃないわ。なら、あたしが創ってやんよ。黒キ聖なる結界をね。いいよね? 悪にも聖なるモノがあっても? うん、決めた。これでいこう!)

 

 ツキハは悪による悪の聖なる結界を創ろうと、考えた。

 

(えーと、確かコハクが前に使ってた、死人(しじん)? 違う! 四神(しじん)結界だったか、な? あれを模倣して、なんもかんも混ぜ混ぜして創っちゃうか! えーと東が、青龍だっけ? 青龍ってなに? ……まあいいや、ヴェルドラをイメージして東の、暴、ぼう、うーん、そう、〝暴風竜〟にしようっと。西は白虎だったかな、これはイメージしやすいな。で、南の朱雀(すざく)って鳥だよね。(すずめ)、は違う気がする。(わし)? (たか)? (からす)? あーもうッ、朱雀って何もんだあッ!)

 

 意味不明なブチ切れ方をするツキハ。

 

(朱雀、やめ! あたしが知ってる八咫烏(やたがらす)でいいわ! あたしとコハクの専属部隊にも使ってるしね。さてと、最後の北の玄武だけど、あれは亀よね? えーと、小さい亀しかイメージ出来ないじゃん! 亀、亀ぇ~、亀……でっかい亀のイメージは……おッ! 漫画で見た大怪獣ガ○ラでいこう。よっしゃあ! イメージは出来た)

 

 ツキハのイメージが固まり、創作結界の構築に入る。

 

(魔力と精神波(サイコウェーブ)とぉ、重力操作も付け加えよう。この三種をまじぇまじぇしてぇ……出来たあッ! ラファに術式構築最適化のやり方を教えてもらって、術式の構築が早くなって助かるわぁ、マジこれには感謝だわ)

 

 速さを増したツキハの術式の構築は、以前とは段違いの速さになっていたのだ

 

 ツキハが言う教えてもらった最適化とは、ツキハが術などを構築する時に、自動でエネルギー系、それらの制御術式系、攻撃術式系や技などの術式を分類ごとに整理する〝自動整理術式〟であった。

 

 これを智慧之王(ラファエル)は、自分が関与しなくてもある程度の最適解の術式構築が出来るように、ツキハにこの整理術式を提供していたのだ。

 

 しかし、この術式構築の情報はツキハの了承がない限り智慧之王(ラファエル)に提供はされない。 

 

 それでも智慧之王(ラファエル)はこれを提供した。

 

 智慧之王(ラファエル)は、ツキハとコハクがこの世界の魔物と根本的に戦いに置いての考え方が違うという事に気付いたのだった。

 

 それは、能力(スキル)を持っていても、それらを組み合わせて新たな術や技を創作して構築する事にある。

 

 これは智慧之王(ラファエル)にとって、とても興味深い事であり、探求心をくすぐられたのだ。

 

 何故なら、智慧之王(ラファエル)もまた、同じような発想を持つからである。 

 

 

(じゃあ、やろうか。悪による黒キ聖なる結界。これを、ブラックホーリーと名付けようかね。キシシシ)

 

 ツキハは『思考加速』を解除すると、ミリムに向かって叫ぶ。

 

 ミリムがカオスドラゴンと対峙して、まだ三秒も経っていなかった。

 

「ミリム、いくよ!」

 

 ミリムはカオスドラゴンから視線を(そら)さずに軽く(うなづ)いた。

 

 

(りん)(びょう)(とう)(しゃ)(かい)(じん)(れつ)(ぜん)(ぜん)

 

 ツキハは九字切りを唱え、右二本指を立て四縦五横の格子(こうし)状に線を空中に描く。

 

 そして、口元に右手の二本指を立て、左手も二本指を立てたまま左真横に真っ直ぐ伸ばし、言霊(ことだま)(つむ)ぐ。

 

 赤い呪文が空を走る。

 

 来たれ 我が命に応え 具現化せよ

来たれ わがめいにこたえ ぐげんかせよ

 

 東は 暴風竜

ひがしは ぼうふうりゅう

 

 西は 白虎

にしは びゃっこ

 

 南は 八咫烏

みなみは やたがらす

 

 北は 玄武 

きたは げんぶ

 

 ガコオォーーーーンッと大気を裂き、カオスドラゴンとミリムの四方を囲むように、巨大な黒の鳥居(とりい)が空間から出現する。

 

 東の黒鳥居からは、ヴェルドラを模した竜が具現化し。

 

 西の黒鳥居からは、白虎が具現化する。

 

 南からは、大きく羽を広げた三本足の大烏(おおがらす)が具現化した。

 

 北からは、二本足で立つ大怪獣ガ○ラが具現化する。

 

 

「何でヴェルドラ似なのだ? 本当に面白いヤツなのだ。ククッ」

 

 東の黒鳥居からヴェルドラに似た竜が出て来たものだから、思わず驚きの声を上げるミリムだったが、ツキハの事だからと思わずクスリと笑ってしまう。

 

 

 そして、言霊(ことだま)は続く。

 

 

 四方を守り 全てのモノを 拒絶せよ

しほうをまもり すべてをのものを きょぜつせよ

 

 四神護法 黒キ聖なる結界

しじんごほう くろきせいなるけっかい

 

 

 印を八つ切りパンと両手を叩き合わせ、パッと両手を離すと。

 

 その手の間に不可視の大きなソフトボールを掴む様な空間が出来、ツキハはそれを両手で抑え込む様な形を取った。

 

 そして、術名を告げる。

 

「ブラックホーリー!」

 ぶらっくほぅりぃ

 

 

 四方の四神と黒鳥居がクワーッと光り輝き、フッと消えると。

 

 ギキイィーーンッと大気を裂くような金属音が鳴り響き、カオスドラゴンとミリムを直径千メートルの不可視の球体状の結界が包み上げる。

 

 

 ゴルッ?

 

 異変を感じたカオスドラゴンが、その場から動き真上に上がろうとするが、全長百メートルはあるその身体は、すぐにドドンッと見えない壁にその動きを阻まれた。

 

「狭くてごめん、ミリム。それに、あまり持たないけど数え三百は持たすから、頼むよ!」

「任せるのだ、ツキハ!」

 

 

 こうして、ツキハとミリムの――

 

 カオスドラゴンとの数え三百の攻防が始まったのだ。

 

 

 

 





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