忍びが転生したら〝異世界珍道中〟になった件 作:にゃんころ缶
ツキハの結界に閉じ込められたカオスドラゴンは、ミリムと対峙しつつ、その暴威を制限なくぶつけた。
ドオン ドオンッと、結界内で轟音が響き、周囲の空間が震える。
それほどまでにカオスドラゴンの力は凄まじかった。
「チイッ、何て力なのよ。これ、数え三百持つの?」
自問自答
カオスドラゴンの連続
大きく開けた両手の
「ぬおおおぉ―ッ! コハクじゃないけど、ア、アカン。予想以上に力が強い、わ。って、弱音を吐くかぁー、ボケエェ―ーッ! うんにゃろぉーーーー!!」
気合でまた結界を抑えるツキハ。
「ツキハ! 無茶をするのではないぞッ!」
「わーってる!」
カオスドラゴンの
現状を把握してても、そう言うミリムであった。
〝数え二百二十〟
(マ、マズイのだ。このままでは、ツキハの憑依体が完全に崩壊してしまう……)
既に、ツキハの右腕が赤い魔素粒子を巻き散らしながら、
ミリムは『魔力感知』でそれを見ながらも、リムルが早く来る事を願わずにはいられなかった。
(リムル……早く来てくれなのだ……)
カオスドラゴンを倒すなら、ミリムには出来る。
しかし、倒す事は前提にせず、周囲に被害を出さずに抑えるのはいかなミリムでも無理があった。
だからそれを、ツキハが結界で抑えているのだが、それも限界がある。
八方塞がりに
それほどまでにカオスドラゴンの力は、強大だったのだ
〝数え、百九十〟
ついに、ツキハの右腕が崩壊して盛大に赤い魔素粒子を巻き散らす。
「くそがあーーッ!」
ツキハは叫ぶと、瞬時に右腕を再生した、が。
身体のあちこちから、赤い魔素粒子が吹き出し始めていた。
ゴルルッ!?
一瞬、結界が緩まったのを感知したカオスドラゴン。
結界の外で、ツキハの身体から魔素粒子が吹き出してるのを見て、赤い目が
そして、目の前のミリムを無視して、結界に向けて
放った
ドオォーーンッ! 激しい爆破音と共に、結界を形成している空間が揺らぐ。
「何をしてるのだ! ワタシはここにいるのだ! こっちを向くのだッ!!」
カオスドラゴンが攻撃対象をミリムから結界の破壊に変えたのを見て、何とか自分に攻撃を向けさせようと叫ぶミリム。
そんなミリムを無視して、巨体にグッと力を入れ大きな翼を羽ばたかせると、カオスドラゴンは真上に向かって砲弾のように飛び体当たりをする。
ダアァーーンッ! 凄まじい激突音が
「ちょッ!?」
ツキハが声を上げた瞬間、憑依体が完全に崩壊した。
バシュッと何かが破裂する音と共に、魔素粒子が辺りに飛び散った。
「ツキハ!」
ミリムも大きく目を見開き、ツキハの名を叫ぶ。
「ど、どうすれば、ん?」
結界の破壊を覚悟したミリムだったが、何故かギリギリでツキハの張った結界が維持されていたのだ。
「まだ、そこにいるのか、ツキハ!?」
再度ツキハの名を呼んだミリム。
すると。
「こんにゃろぉーーーーーまだまだぁーーーーーーーーッ!!」
今までツキハがいた場所に、後ろ足だけで空中に立ち、前両足で不可視の球体結界を押さえ付ける、黒猫が魔素粒子を巻き散らしながら現れた。
「ツキハ、お前……」
ツキハは、既に人型の憑依体を形成する事が出来ず、何とか黒猫の憑依体を創り、残る全
それに気付いたミリムは、言葉が出なかった。
「ミリム、あたしの心配はしなくていい! カオスドラゴンに集中しな!」
ツキハがそう言うと、ミリムはキッとカオスドラゴンに視線を向け、再び結界に体当たりをしようとするカオスドラゴンの前に大きく手を広げ立ちはだかった。
〝数え、百と三〟
ここで、リムル達との時間とリンクする。
「やめるのだ! もう、これ以上はやめてくれなのだッ!」
悲痛ともいえるミリムの叫びが、空を裂く。
無情にもミリムの声は届かず、カオスドラゴンは憎しみに満ちた咆哮を上げると、ミリム目掛けて突進した。
「グウッ!」
突進を受け止めたミリムは呻き声を上げ、そのミリムを鼻っ
だがしかし、結界面に激突する寸前にカオスドラゴンは自身の顔を横に向け、背中から結界面に激突した。
轟音が響き渡り、結界面が激しく空間ごと振動する。
「お前……?」
ミリムは、自分ごと結界面に激突しなかったカオスドラゴンを見て、何故だと言うように言った。
そして、ミリムを鼻っ面に捉えたまま二度、三度と結界面に体当たりを繰り返すカオスドラゴン。
「お前、お前はワタシの事を覚えているのか? なあ、覚えているのかッ!?」
必死に呼びかけるも、やはりカオスドラゴンにミリムの言葉は届かなかった。
偶然なのか、たまたまなのか、それとも、記憶の奥底に
それでもミリムは、カオスドラゴンに言葉を投げかけ続ける。
「やめるのだ、やめてくれなのだ。ツキハが、ツキハが、死んでしまうのだ」
体当たりをやめない、カオスドラゴンの渾身の突撃。
〝数え、四十〟
パキイィーーンッ 空間が避けるような破裂音が鳴り響き。
〝四神護法 黒キ聖なる結界・ブラックホーリー〟が、とうとう破られた。
「ごめん、ミリム。ここまでだわ……」
力なくツキハが言うと、黒猫の憑依体がバッと粒子状に崩壊してしまう。
「ツキハあぁーーっ!!」
ミリムが叫び、カオスドラゴンから離れてツキハがいた場所に飛ぶも、もうそこにはツキハの気配はなかった。
激しく首を動かし、辺りを探るミリム。
すると、ミリムの真下から微かにツキハの
何とか
「ふ、ふにゃ、ふにゃあ~~~」
意識は
首には、妖刀時雨に巻き付けられていた
(どうする、どうすればいいのだ……)
カオスドラゴンかと対峙するミリムは、ツキハを助けに行きたいが。
今動くと、結界が壊れた現在、カオスドラゴンの意識はミリムに向けられているので、ミリムの後ろにあるジスタ―ヴに被害が及ぶ恐れがあった。
カオスドラゴンを助けたい、ツキハも助けたい。
四面楚歌のミリムは、あらゆる事を想定して思考を巡らせるが、どれもいい結果を生まない案しか出て来なかった。
そうしてる内に、子猫化したツキハが地面に叩きつけられる瞬間、フッとその姿が消えると。
「待たせたな、ミリム!」
「リムルか、待っていたぞ! ツキハが、ツキハが!? 無事だったのだ、な……」
リムルの左手に乗せられたツキハに気付いて、ホッと胸を撫で下ろすミリム。
「ああ、無事だ、もっとも
「ふにゃにゃあぁ~。だ、だいじょぶよぉ~、ギリ、生きてるからぁ……」
「ツキハ!? よ、良かったのだ、本当に良かったのだ」
半泣き状態でツキハの無事を喜ぶミリムだった。
そして。
「リムル、
大粒の涙を
(倒すだけなら簡単だったんだろう。だからミリムは、ツキハと協力してカオスドラゴンを止めていたんだな。まあ、余りにも強大すぎてツキハがこうなったと。しかし、即興で新たな結界を創り上げるなんて、どういう戦闘センスしてるんだよと、俺は言いたい! 本当にこの世界の魔物なのか……? と、そんな事はどうでもいいか。とにかく、二人が無事で良かったよ)
そう、
そしてそれを、ミリム達のところへ『空間転移』する前に分かりやすく纏めてリムルに報告していたのである。
リムルは、そんなミリムの心情を察し、安心させるように笑って見せた。
「もう大丈夫だ。俺に策がある!」
「ほ、ほら、何とか、なった、でしょう~」
「うむうむ! 頼もしいのだ。それで、ワタシは何をすればいい?」
キラキラした瞳でリムルを見るミリム。
そんなリムルは、半端ないプレッシャーを感じつつも自信満々という態度は崩さず、ミリムとツキハに作戦を説明する。
「いいか、どれだけ大きくても必ず〝核〟がある。お前の精密な攻撃なら、それだけを残せるだろう? そしてツキハだが、ボロボロのところ悪いが、お前には〝憎念〟を喰らい浄化して欲しい。流石の俺も、あそこまで膨れ上がった〝憎念〟は手に余る。その為の
「だ、だいじょぶよぉ~。今、ほんの少し分けてもらってるからぁ~」
「え? そうか、話が早くて助かるよ、ツキハ」
ツキハはリムルの説明を聞きながら、『思考加速』付き『思念伝達』でヴェルドラに
少しだけ分けてちょうだいとお願いをしていたのだ。
それを聞いたヴェルドラは、少しとは言わず半分くらい持っていけと笑い言ったが、流石にそれはツキハが遠慮して三分の一ほどでいいと言い。それから
三分の一とはいえ、〝竜種〟の
そもそも、〝竜種〟であるヴェルドラの
しかし、ツキハとコハクは長い年月をヴェルドラと行動を共にして来て、ヴェルドラから漏れ出る魔素に対して耐性が出来ていたのだ。
だからツキハは、竜の姿のヴェルドラの頭の上で昼寝が出来て、漏れ出た魔素も吸収出来るし、同じような事をコハクも出来る。
過去にも、二人はヤバイ時にヴェルドラから
もっとも、耐性
この三人の共通点は、
「で、リムル。あたしは、何をすればいいの?」
「一番危険で、本当にヤバイ事を敢えて頼みたい。報酬は――」
「いらない」
「えッ!?」
リムルにしては、ヤバイ事を頼むのに報酬はいらないとツキハが答えた事に驚きの声を上げた。
「何で?」
「友達の友達を助けるんでしょ? そこに、悪とか善とか関係ないでしょ? だから、そういう事だよ」
「そうか、わかった」
ツキハの言葉にリムルは全てを理解し、静かに
カオスドラゴンの魂を守る
マリアベルの〝強欲〟に塗りつぶされ、更にそこへ〝
だが、魂だけは。
「いいか二人とも、よく聞いてくれ。ミリムの友達だった〝
「あいよ。アンタら二人を信じるから、〝
「だ、だが、あれだけ巨大では、生半可な力では貫けぬ。下手をすれば、ツキハごと全てを消し飛ばして……」
「ミリム、手加減を覚えたんだろう? お前の友達も今必死に頑張っている。ツキハも、今一度身体を張ると言ってくれた。だから、お前も気合を見せろ!」
(追い込むような事を言ってスマン、ミリム。でも、今は勢いが大事なんだ。四の五の言い訳はいらないし、失敗したらなんて考えていたら、成功するものも失敗してしまう。三人だから出来るんだ。今、一人でも欠けたら必ず失敗する。だから、三人でやるんだよ! 俺達三人なら、必ず、救える!!)
リムルは心の内で叫び、己を奮い立たせる。
「俺も協力する。ミリム、お前は俺の指示通りに、全力で魔力を放出すればいい! そして、ツキハが〝
「んや? なーんだ、リムル。あたしへ愛の告白かぁ? でも、ごめん。あたしには、ヴェルドラという愛した男が……」
子猫化ツキハが悲しそうな顔して、前足で顔を隠して残念そうに泣く振りをする。
「違うわッ!!」
「にゃふ♪
そこへ、リムルが即座に否定の言葉を飛ばす。
(ツキハのヤツー。まあ、策があると豪語したけど、何の事はない、ミリムとツキハ頼りだ。でもそれでいいじゃんよ。一人で出来なければ、二人、二人で出来なければ、三人てな具合だ。結果良ければ全て良し! カリュブディスの
リムルも覚悟を決め、一度自分の
「良し、やろう!」
「わかったのだ。信じるぞ、リムルよ! そして、ツキハ!」
「おう。任せろ!」
「まっかせなさーい!」
(この自信に満ちた演技をしてはいても、失敗したらと思うと、とても怖い……だが、この三人なら絶対に出来る。そして、それを導けるのは、俺だけだ。やーーってやるぜ!)
リムルは決意を込めた顔でカオスドラゴンに視線を向け――
(頼むぞ、
最強の相棒に声をかける。
《了。
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