忍びが転生したら〝異世界珍道中〟になった件   作:にゃんころ缶

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お待たせしました。252話です

 ツキハ

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 コハク

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 傭兵商会ルヴナン・真の紋章


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 ※〝打刀〟
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252話 最後の置き土産

 

 

 ここは、豪華な館の一角。

 

 

 怪しげな一団が、テーブルを囲むようにソファーで寛(くつろ)いでいた。

 

 

 この館は、秘密結社‶三巨頭(ケルベロス)〟の西側での拠点の一つである。

 

 館の主(あるじ)は、ボスの一人である‶女〟のミーシャ。

 

 ここは元々、ある富豪が所有する館だったが、紆余曲折(うよきょくせつ)を経て、ミーシャが裏で買い取った館であり、ルヴナンにはバレてはいない拠点の一つになっていたのだ。

 

 重要関係者の出入りは『転移魔法陣』で行っている為、外部に漏れる事はない。

 

 ミーシャの側近たる侍女が、全員分のお茶を並べてから一礼をして部屋を出る。

 

 それが会議の始まりの合図となった。 

 

 

 「なるほど、上手く行ったようだね」

 

 ユウキは報告を聞き、嬉しそうに言うとお茶を一口飲んだ。

 

「やっぱり、ボスの狙い通りだったんだね! アタイもさ、最初はラプラスが失敗したのかと疑っちゃったんだけけどね」

「ホッホッホ。ラプラスは用心深いですが、交渉事は得意ではありませんからねえ」

「ちょ、待ちや。自分等よりマシやで? 番外魔王の姐さん二人を相手に、交渉して来たのは誰やっちゅうねん」

 

 こういう時だけ息ピッタリのティアとフットマンに、不貞腐(ふてくさ)れた様に文句を言うラプラス。

 

「まあまあ、いいじゃないの。貴方達がレオンを前にしてちゃんと我慢出来ただけでも、ワタクシは嬉しいわよ」

「そうだね。実はさ、君達が暴れるかもって覚悟はあったんだぜ?」

 

 実際、そうなってもレオンとの交渉窓口がなくなるだけで、西側諸国での活動の自粛を決めた今では大した問題ではなかったのだ。

 

「酷いお人やで、ホンマに。それで、レオンのヤツに子供達の事を教えたんは、どういう意図があったんでっか?」

 

 笑うユウキに、諦めたように問うラプラス。

 

 それに対しユウキは、苦笑いを混ぜつつ答える。

 

「いや、そんなに大した意味はないさ。レオンが不完全な子供達を集めている目的だけど、それは十中八九戦力増強で間違いないと思う。だけどね、もしかしたら別の目的があるかもって、少しだけ気になったんだよね」

「それで魔王リムルの所に五人の子供達が保護されている、言うて暴露しはったんですか?」

「それだけじゃないさ――」

 

 そう言うとユウキは、自分の考えを皆に説明していった。

 

 先(ま)ず、レオンが子供達をどう扱っているのかは、自分達の推測に過ぎず。

 

 魔王リムルが子供達に精霊の力を使えるようにして救ったのを、レオンは知らない。

 

 ならば、このままでは死を迎えるだけの子供達の存在を知って、ヤツがどう動くのか、その点にも興味があったと言い。

 

 それを聞いたカガリは確かに興味深いと頷き、「反応次第ではレオンの行動目的が推測できる」と、言った。

 

「せやな。今のところは、手がかりナシやもんな。多少の揺さぶりは必要やろうな」 

 

 ラプラスも同様に頷く。

 

「そうだろ? ま、半分以上が興味本位だったんだけどね。小さな事が気になる性分なんだよ、僕は」

 

 それを聞いてカガリ達も納得をする。

 

 そして、ユウキが言うには――

 

 魔王レオンは、いくら五人の子供達の為とはいえ、魔王リムルと事を構えるほど愚かではないとも付け加えた。

 

 もし、この予想を反して魔王リムルと、何らかのいざこざを起こせば、レオンには明らかな別の目的があると確証出来るとユウキは言う。

 

 そこでティアがユウキに。

 

「そうそう、商品達の名前を流した際に、一人の名前を言い返したんだよね。フットマンがクロベ・ホエールって言った時にさ、『クロエではなく、本当にクロベなのだろうな?』ってね。名前なんか気にしないって言っててさ。で、あれだからね」

「ふーん、レオンがねえ……」

 

 ティアの言葉に、暫し考え込むユウキ。

 

「どう思う?」

「本当に興味がなければ、反応しないと思いますわよ?」

 

 カガリがユウキの問いに、さもありなんといったように返す。

 

「だけどさ、いやいや、流石に……こんな偶然があってもいいのかい?」

「因果が巡っているなら、‶絶対にない〟とは言い切れないですわね……」

「となると、もしかして本当に……」

「ええ、魔王レオンの目的が、あのクロエって子供である可能性がある、という事になりますわ」

「マジかよ」

 

 パンと膝を叩き、絶句するユウキ。

 

 もしもその可能性が高ければ、魔王レオンに対する切り札を、そうとは知らずに簡単に手放した事になる。

 

 ユウキ以上に悔しいのはカガリだった。

 

 もしそうならば、クレイマンを失う事もなかったものを――と、憤懣(ふんまん)やるかたない表情になる。

 

「えっ、えっ!?」

 

 自分の発言からとんでもない可能性が飛び出し、驚きを隠せないティア。

 

「おいおい、冗談やろ?」 

「まさか、本気で行ってるのですか?」

 

 ラプラスとフットマンも同様に驚く。

 

「まあ、あくまでも可能性だね。こうなると無視は出来ないけど、まだそう確定した訳ではないさ。しかしさ、ルヴナンとの取引がおじゃんになったのは悔やまれるねぇ。アイツ等絶対に真相を掴んでいるハズだから。出来れば、大金を積んでも買いたくなるよ、この情報を……」 

「せやねえ。こればっかりは悔やんでも悔やみきれまへんな。この推測を確実にする情報が、買いたくても買えんっちゅうんが、腹立たしいねん。まあでも、この推測に行き当ったってだけでも、大金星ちゃいますか?」

 

 ユウキが悔しそうに言葉を吐き、それに呼応するようにラプラスが声を吐き出す。

 

「そうですわね。ルヴナン、裏から手を回せればいいのですが……現時点では無理でしょうね。

 でも、これを上手く利用すれば、厄介な魔王同士をぶつけ合えます。

 そうなれば、ワタクシ達の留飲も下がるでしょうね。

 ただし、ルヴナンが、いえ、番外魔王コハクがどう動くは予測できませんが、万に一つがあれば魔王同士の争いには介入しないかも知れませんわ。

 ワタクシの記憶が確かならば、あの二人が番外魔王となってからは、魔王同士の争いに介入したという話は聞きませんでしたわ」

「うん。その時は、どっちが勝っても構わないしね。まあ、番外魔王の二人が介入しない事を祈りつつ、楽しみが増えたと考えようか」

「ホッホッホ。考え過ぎだと思いますが、我々に損はありませんし、番外魔王の二人にだけは注意しておいた方が良いでしょう」

「ま、期待し過ぎるんは禁物やで。何でもかんでもそう都合よくいってたまるかい。あの姐さん等二人は、間違いなく来るで、そういう人や。ワイの勘がそう言っとる」

 

 皆の気の緩みを察して、ラプラスが釘を刺すように言う。

 

「そうだねえ。あの二人さ、もしかして、盛大な茶番劇の舞台前に陣取って、演者が出揃うのを今か今かと、待ち焦がれてたりしてね?」

「演者って、ワイらでっか?」

「うん。悔しいけど、その演者のその他大勢かな」

「それは……せやねえ、ホンマ何考えてるか分からん、姐さん二人やからなあ。マジ、何もんやっちゅうねんあの姐さんらは」

「だよねえ。本当に何者なんだろうね……」

「ですわねえ。本当に不気味な魔物ですわ」

「うん、アタイもそう思うよ」

「こればっかりは、どうにもこうにも、ホッホ」

 

 ユウキの最後の言葉に皆が頷(うなづ)き、この話は終了となった。

 

 ミーシャが侍女を呼び、お茶のお代わりを用意させる。

 

「それで、ボスの方はどうやったんですか?」

 

 一服の後、ラプラスが質問をした。

 

「クロエの件は気になるけど、それは後でゆっくり考える事にして。それでは本題に入るとするよ」

 

 ユウキはラプラスに向けて一つ頷き、ニヤリと笑う。

 

「僕は皆も知る通り、マリアベルに操られていた、という事になっている。なので、全ての責任はマリアベルに帰する訳だ。それと、言い遅れたけど、僕が‶三巨頭(ケルベロス)〟のボスだという事が番外魔王コハクにバレた」

「まあ、遅かれ早かれ、そうなるとは思っていましたわ」

「せやな。いずれはバレると思ってましたで」

「だよねえ。寧(むし)ろ遅いくらい?」

「ホッホッホ。流石に番外魔王は侮れませんね」

 

 ユウキの遅れた告白に、カガリ達は驚きもせず、普通に納得を示した。

 

「何だ、皆意外に普通なんだね」

「何言うてますねん。それ、とっくにバレてると思てましたで」

 

 ユウキの意外な声に、ラプラスがお道化(どけ)たように返す。

 

「そうか。じゃあ、話を戻そうか。僕の目的は、マリアベルを殺す事だった。正直、‶強欲〟を奪えるかは賭けだったんだけど、ルヴナンの情報は正しかった。それに、彼女が死ねば、僕が自由に動いても怪しまれないからね。そうした立場を固めた上で、ロッゾ一族のグランベル翁と交渉しようと考えたのさ」

 

 そう、今回ユウキの狙いの本命は、マリアベルだった。

 

 自分の西側での立場を完全に失わないように、マリアベルの目を誤魔化す必要があったのだ。

 

 その結果が前回の騒動になる。

 

 マリアベルを始末すれば、ユウキが自由に動ける立場を得られる。

 

 しかも、自分が行った悪事も全て、命令だったという事に出来る訳なのだ。

 

 番外魔王コハクに素性がバレるも、邪魔をされる事もなく、寧ろ頑張れというような言葉をかけられたのは、ユウキとしても本当に意外だった。

 

 内心、殺される事も覚悟していたのだから。

 

 その心配もよそに、ユウキの狙い通りに事は運び、グランベル翁との交渉も成し遂げたのである。

 

「それじゃあ結論から先に言うけど、東に向かう前にもう一仕事する事になった」 

「「「「!?」」」」

 

 その言葉に驚く様子の一同を見回し、ユウキは表情を真面目なものへと改める。

 

「いいかい? 最初から詳しく説明するよ」

 

 そう言ってユウキは、グランベル翁との会談内容を皆へと語り始めたのだ――

 

 ユウキの、‶西側での最後の置き土産〟といえる、策謀を。

 

 

 

 

 ★戻って来た日常★ 

 

 

「平和だ……」

 

 執務室の窓から差し込むお日様の光を全身で浴び、そう呟くリムル。

 

 開国祭以来、人間の来訪者も増え続けている、魔国連邦(テンペスト)。

 

 入国手続きのブルムンド王国方面の門とドワーフ王国方面の門は、長者の列で賑わっていた。

 

 商人や旅人、それに冒険者などがひしめき合う盛況ぶりである。

 

 マリアベルの一件も片付き、今は通常業務に追われているリムルであった。

 

 

 平和に感じる昼下がり。

 

 

 リムル達はいつものように、幹部会を開いていた。

 

 この幹部会は、マリアベルの一件で魔国が五大老に成り代わった事により、新たな問題が山のように出て来たからである。

 

 西側諸国の意思決定に重要な役目を担うのは、、何と言っても西方諸国評議会(カウンシル・オブ・ウエスト)である。

 

 評議会では、各国議員による議決で法案の可否が決まるのだが、これは送り込む議員数によって発言力が決定するのだ。

 

 各国の弱みを握った今、魔国連邦(テンペスト)から送り込まれる議員に求められるのは調停役としての責務だった。

 

 皮肉な事に、西側諸国への影響力が増大に比例して、苦情も陳情も増大の一途を辿(たど)っていたのだ。

 

 それこそ、言うだけならタダと言わんばかりに、様々な要求を好き放題に奏上される始末。

 

 既にリムルは、これに辟易(へきえき)し始めてもいた。

 

(わかってはいたけども、ここまで酷いとは正直思っていなかった。

 

 大体さ、こんなの見れば世界征服など馬鹿馬鹿しく思えるわ。

 

 支配者って、絶対に楽出来ないと思う……特に精神的に。

 

 俺以外の魔王達が、自分の領土以外興味がないのは当然だろう。

 

 一度、あの二人にお前達は世界征服とか考えた事ないのかと聞いたら。

 

 コハクが、『世界征服? アホちゃいますか? そんなん面倒くさい事などしますかいな』と言い。

 

 ツキハが、『世界征服? やだよ。有象無象の相手など、誰が好き好んでやるのよ』と吐き捨てるくらいだし。

 

 まあ、下手に貧乏な領地など持つと、そこの地方の住民の不満を解消する必要が出て来るものな。

 

 更に適当にあしらってると、この世界なら謀反を起こしかねないし、なら、規律を厳しく雁字搦めにしても、いつかはその不満が爆発する、盛大に。

 

 何にするにしても、今や最大派閥として我が国が立つ以上、各国は見返りを求めて来る訳だ。

 

 コハクに、お前の所で契約管理してる小国を俺の派閥として協力してくれないかと頼んだら、速攻拒否られたしなぁ。

 

 出た言葉が、『アンタが望んでこうなったんや。ちゃんと面倒みなアカン。うっとこを巻き込もうと思うとるなら、うち、怒りますで?』と、来たもんだ。

 

 ほんと、コハクって線引きが上手いというか、利が無いところには絶対に首を突っ込まないから、ある意味、商人の鏡じゃね? とさえ思うわ。

 

 まあ、面倒事が増えるだけで、何も良い事ないもんな、実際……。

 

 とはいえ、愚痴っても仕方ないし、早急に決めないと、だ)

 

 と、皆が意見を交わす中、そんな事を考えてるリムルだった。

 

 

 そう、今皆が意見を交わしているのは、誰を評議会に送り込むか、であったのだ。

 

 

(頭が良くて社交性があり、ある程度のカリスマも必要だろうな。

 

 うーん……コハク姉さんやってくんねえかな? って、いかんいかん、マジに怒られそうだ、コハクに。

 

 どこかにいないかな、有無を言わさず他者を言い負かす事が出来る者……コハク? 違うって!) 

 

 自問自答しながら、頭を悩ませるリムルであった。

 

 そして。

 

(とりあえず、ここは――)

 

「悪いけど、俺は嫌だよ?」

 

 と、こういうのは言ったもん勝ちであるとばかりに、リムルが先手を打った。

 

「俺も無理だな。前回の会議で痛感したが、腹の探り合いなど性に合わん。武を活かす事が出来ぬ戦場では、俺は大して役に立たぬようだ」

 

 ベニマルがリムルに謙遜する。

 

 それに続き、ソウエイも辞退した。

 

 ゲルドもそれとなく、建設工事が忙しいとの事で辞退を申し出る。

 

 ガビルもまた、研究等で手が離せないとリムルに直訴し、リムルもそれを受け入れた。

 

 シュナが候補に挙がるも、本国の業務に支障が出るだろうとリムルが却下した。

 

 後は、ルグルドや他のゴブリンの長老達も同様の理由で、却下された。

 

 

(だ、誰もいねえーーッ!)

 

 リムル、心の絶叫。

 

 

 そんなリムルを、キラキラとした瞳で見つめる者がいた。

 

 シオンである。

 

「リムル様、私が――」

「却下だ」

 

 リムルは迷わずシオンの声を遮(さえぎ)る。

 

「なぜですかっ!?」

 

 それに、ビックリしたように返すシオン。

 

「うーん(何その反応。こっちがビックリだよ)。仮にだ、仮にだが、お前が議員だったとしよう。目の前に、腹の出たスケベそうなオッサンの議員がいます。そして、そのオッサンが馴れ馴れしくお前の肩に手を置きました。さあ、お前はどう対応する?」

「決まっています。右手でその男の手首を掴み捻り上げ、地面に投げ叩きつけ、腕の関節を極(き)め折り、頭を踏みつけ昏倒させます!」

「違うわッ! それ、普通のオッサンは死んでしまうぞ? ってか、その技、天牙影千流の技じゃねえか!」

「す、すみません! リムル様……」

 

 リムルの説教を喰らい、シュンとなるシオン。

 

 それからリムル達は色々と意見を出し合い、最終的にこの場にいないディアブロに白羽の矢が立ったのだった。

 

 ベニマル以下幹部達は、口を揃えてディアブロ殿なら適任ではないかと言う。

 

 シオンも、ディアブロがイングラシア王国へ出向いてくれれば、自分の第一秘書としての重要度増すというものと力説しディアブロを喜んで推薦したが、やや不純な動機が見え隠れするのは、最早(もはや)誰も突っ込まない。

 

 そんなところで、反対意見はナシ。

 

 他に良案も出ず、この件に関してはディアブロが最有力候補として落ち着いた。

 

「そういや、アイツさ。そういう雑用を押し付けられるのが嫌で、自分の配下を探しに行ったんだよね。ひょっとすると、そういう交渉に長(た)けた人物をスカウトして来るかも知れないしな。今の段階ではディアブロを最有力候補としておくけど、変更の余地ありって事でいこう」

 

 と、リムルが保留という事にした。

 

 人選が決まるまでは、評議会に参加するのはリムルである。

 

 

 ディアブロには、早く帰ってきて欲しいと願わずにはいられなかった、リムルだったのだ。

 

 

 

 






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