忍びが転生したら〝異世界珍道中〟になった件 作:にゃんころ缶
〝番外魔王〟が去ってから翌日の
ソウエイ達も戻って来て、収集したクレイマンの情報を元に作戦会議が開かれていた。
一方クレイマンも
だが、そんなクレイマンにも一抹の不安とも恐れとも言えない、不可思議な感情があった。
(ファルムス王国軍勢の監視を任せていた、小指のピローネが死んだ原因は……。偶然なのでしょうか? あの悪魔の屈折させた核撃魔法:
自室で思案に耽るクレイマンは(まあ、いいでしょう)と独り
その後は、来るべき
それからはあの魔国を制圧し、〝あの方〟とカザリーム様の為に〝真なる魔王〟に覚醒するのみ。
〝番外魔王〟にも最後の依頼――
番外魔王から、
クレイマンは開催中も開催後も大して変わらないだろうと判断し、それを了承した。
自分の策略が大詰めを迎えた今。
些末な事には関わってられないと、クレイマンは己に言い聞かせ、
そのクレイマンが〝番外魔王〟に最後の依頼をする少し前。
〝超変化〟で人化したツキハとコハクは、ブルムンド王国の高級宿屋で休息を取っていた。
ベッドで横になり
部屋にある豪華なテーブルに着き、お茶を飲んでいるコハクの元へ、一つの魔法通話が入って来る。
それは、〝
『よお! お前ら、相変わらず無駄に元気か?』
『……あ? だれ?』
『……誰や? あんさん』
『おいおい、つれないなぁ。オレだよ、オ・レ』
『……しらん』
『うちに、オレなんてスカタンの知り合いは、いてへんで?』
『でだな、今回はお前達に重要な事を伝える』
『『チッ!』』
煽ろうとするも、華麗にスルーされて壮絶に舌打ちをするツキハとコハク。
『あれこれお前らに言うのは骨が折れるから、単刀直入に言うぞ。今度の
『いやだ、ふざけんな!』
『アホいいなや。シバキますえ? ギィ』
『ハアッハハハハ。相変わらずの辛辣さだな、ツキハ、コハク。いいか? 今回だけはお前達も特別参加だ。異論は認めねえ! いいから、今回だけは出席しろ!』
『だるい、めんどい。以上』
『そんなん知らんわ。以上どす』
『はあっ~。何でお前らは、いつもそうなんだ? まあいい。だがな、最近色々キナ臭い事にお前らもガッツリ絡んでるよな!? 四の五の言わずに出ろ! それとも、ヴェルザードにお願いされる方がいいか?』
『よし、わかった! でよう!』
『ほんま、いけずやわぁ。仕方ありまへん、出ましょ』
『はあぁーっ。ほんとお前ら……たまには、素直に〝はい〟とか言えねのか? 毎回これだから、ほんと――いい加減に魔王を名乗りやがれ! ツキハ、コハク!』
『『却下!!』』
『……まあ、いい。いいか? 三日後の新月の夜だ。逃げたら――ヴェルザードがお前らに、超長いお話しをする事になるからな? 以上だ』
『いくよ、絶対にいくよ!』
『はいはい、いきますえ』
そこで魔法通信は切れ、ベッドの上で荒れるツキハに。
コハクはテーブルに置いてあるワインボトルを掴むと、一気に飲み干し、ドンと荒くボトルをテーブルに置く。
「くっそー、あたしらは出なくてもいいんじゃなかったのか!? めんどくさい!」
「プッハ~。まあ、仕方ありまへんわ。どうも、
「あー、また巨人オヤジの領地で核撃魔法ぶっぱして、遊んだんだろ?」
「違います! 実験や、新しい魔法の実験してたんやで? それだけや。広い荒涼とした地で、ほんのちょっとやっただけやで?」
「へえー、どうだか――」
「――そういうツキハも、ちょくちょくレオンの領地でジョーヌと一緒になって、核撃魔法ぶっぱして遊んでますやろ?」
「いや、あれはね。ジョーヌがどっちの核撃魔法が威力あるか、比べっこしようと言い出したんよ? 言いだっしっぺは、ジョーヌだし……」
「あんさんも、ガッツリ二人で遊んでますやおまへんか!」
「そんなこと言っても……あたしはジョーヌと、ただ遊んでるだけなんだよ?」
「そんなん知らしまへん。流石に、ポンポン核撃魔法を撃つのはあかんで――」
「――何言ってんのよ、コハク。あんたも、そのポンポン撃ってる口じゃない! でもさあ、一番会いたくないのいるじゃん。未だにあの事を根に持ってる、アイツ……」
「どすなぁ~。うちらを見たら、絶対あの事を
そう、ツキハとコハクが
五千年の間に色々やらかしている二人。
現在進行形でもだが……。
今までは
しかし今回は……。
強制出席をギィから言い渡され、下手すると今までの悪さのつけを払うはめになるやもと、憂鬱な二人であった。
なんだかんだ言って魔王達を立てているツキハとコハクは、そうそう無茶はやらないのである。
そうは言っても、いざとなればお構いなしの二人なのだが……。
で、その実力は――
ギィ、ミリムとガチで勝負ができ、ヴェルドラともガチの手合わせが出来るツキハとコハク。
本気になったツキハとコハクを止めれる者は、ギィ、ミリム、ダグリュール、バレンタイン……そしてヴェルドラ、ヴェルザードだけで、レオンとディーノは戦ったことがないので未知数である。
ヴェルドラのもう一人の姉、ヴェルグリントとは未だ出会ってはいない。
だがこれは、〝真なる魔王〟に覚醒する前の事。
現在は間違いなく、これより能力は上がっているであろう。
何故二人にこれほどまでに、ギィが興味を引いたのか?
ツキハとコハクに『解析鑑定』で、ある物が見えたのだ。
後にミリムも、これに気付き今に到る。
〝特殊な魔物〟――
ギィとミリムはこれに気付き、ある物を二人に見た。
その見た物はこの世界に唯一、一つしか存在しないもの。
それをあろう事か、ツキハとコハクは共有していた。
その物が、もしも覚醒したら……。
ギィは、もしもの時の為にツキハとコハクに魔王ではなくとも、魔王と同等の地位を与え。
自分の管理下に置いていたのだ。
このもしもとは――
それはヴェルダナーヴァとギィが出会った頃に遡る。
その時に、〝ある話〟をヴェルダナーヴァから聞かされたギィ。
最古の原初の一柱、ギィ。
長い時が流れる中で、ある時ヴェルダナーヴァから世界崩壊を防ぐ役を任され、〝ある事〟も同時に託されていた。
〝ある事〟を知る者ギィと、〝ある事〟をギィから聞かされたミリム。
この二人が他の魔王には秘密にして、ツキハとコハクを監視していたのだ。
いつしか来るであろう、その時に備えて。
もっともミリムの方は、完全に遊び友達になっているのだが……。
ギィが最初にツキハとコハクに出会って、『解析鑑定』で二人の中に眠るある物を見た時に、それを思い出したのだ。
ヴェルダナーヴァから、聞かされていた事を。
それは二人の種族と関係がある事であり、〝特殊な魔物〟という事も関係していた。
この世界に唯一魔王ではない、魔王と言われる魔物、ツキハとコハク。
ツキハとコハクすらわからない――
何かが存在するもの、それは……。
それが分かる時……二人に何が起こるのか?
遠くない未来に、それは訪れるかも知れないし、訪れないかもしれない……。
そんな初の
一方その頃の
ブルムンド王国自由組合支部長フューズが五十名の兵を引き連れ、
それを嬉しくも思うリムルが、言い出しにくそうに「あぁ-……ファルムス王国の軍勢なんだけど、俺が一人で全滅させちゃったんだよ!」と言い放ち、フューズは「はあ? はあぁぁあ!?」と絶句し固まってしまう。
そんなフューズをヨウムが肩をポンポンと叩き、カバル達が慰めの言葉を掛けていた。
やがて次なる来訪者ドワーフ王、ガゼルが
王自らやって来た事にリムルは(あぁ、あの件だな)と、察した。
真っ先に天馬から降りガゼルがリムルの前に来て、ニヤリとして言う。
「久しいな、リムル。聞いたぞ、〝魔王〟になったらしいな?」
「まあね、ガゼル。色々あってな、魔王になる事にしたんだ。ぶっちゃけ面倒なんだけどさ、それを今から考えようと思ってな」
「そうか、ならば丁度いい。俺もその会議に参加するとしよう!」
〝魔王になった〟、その言葉を聞いたフューズが「魔王? どういうことですか?」と疑問を口にして来て。
とりあえずの経緯をリムルは説明すると、またもやフューズは固まり、現実逃避に入っていった。
まあ、文句を言われるよりましだなと、フューズを暫く放置する事にした。
ベスターから報告を受けていたガゼルが、
「リムルよ。ベスターからの報告、間違いないのか?」
王としての顔になり、リムルに尋ねて来る。
「ああ、俺が二万の――」
「待てリムル。ファルムス王国軍が何故か行方不明になったと聞いたが、何か知っているのか?」
「はい? 行方不明?」
リムルは一体なんの話だというような顔になり、言う。
「ベスターからの報告では、この街に向かっていた二万の軍勢が忽然と消えたそうだが、一体何があったのだろうな?」
ゆっくりと語りながらガゼルはベスターの方に目をやり、無言の圧力を加える。
更にドワーフ王国軍の最高司令官にしてガゼル王の盟友であるバーンが「軍勢が消え失せた原因を、今調査中だと申したが、原因はわかったのか?」と威圧を込めてベスターに言って来た。
「はっ、それがですね、未だに原因が不明でして……」
場を察したベスターが、慎重に言葉を重ね、口裏を合わせて来る。
リムルは「これ……俺がやったことを、闇に葬る方向か?」と小さく呟くと――
ガゼルが小声で「馬鹿者が! 本当の事を言ったら、貴様は人類の敵になるぞ。〝番外魔王〟みたいな例外は無理だ」と囁いて来た。
リムルはそう言われて、なるほどと理解した。
一個体で万の軍勢を殺せるような者など、核兵器以上に厄介で恐ろしいわな、と。
それに、自分は〝番外魔王〟みたいに歴史を重ねていないから、新参の魔物がそれをやれば尚更だなと、思った。
真実を知る者が少ない方がいいし、関係ない国や民衆が知る必要がないのだ。
ファルムス王国軍は魔物の国を侵攻しようとしていたが、原因不明の事が起こり全員が行方不明――
それだけを確かな事実として、各国に伝えればいいのである。
その筋書きにリムルは(流石はガゼル王。俺には無い、したたかさだな)と感じた。
そうするとフューズの方だが、部下の安全が保障されればと、了承をした。
こういう国家間の思惑が絡む場合、下手に騒ぐと口封じをされる場合があるので、賢い判断なのかも知れない。
しかし、フューズも会議に参加すると言い。
これは譲れないとリムルに言うと、リムルは快く参加を了承した。
参加人数が増えた為、大会議室を至急整えるべく準備が始められ。
その間、ガゼル王達が休息できる部屋へと案内する。
すると。
ガゼルがいきなり自分達の後方へと覇気を飛ばす。
リムルが驚いて振り向くと、そこには見慣れぬ一団がいた。
(え? ここまで接近されて気が付かなかった?)
《告。その一団からは、明確な敵対反応が確認されていません》
何故か拗ねたように告げる
それにリムルは、(あ、これは俺が悪かった。ついさっき面倒だと、報告拒否したんだった。うん、これからは、きちんと報告を頼むよ)、そう内心で謝るリムル。
そして、その一団に向けてガゼルが口を開く。
「何者だ、貴様達?」
「これはこれは、地底に引き籠られているのがお好きな帝王ではありませんか。意外ですな、臆病な貴方が魔王に肩入れするとは……」
ガゼルの放った強烈な覇気を受けても尚、その
ワザとガゼルを怒らせるような態度を取ったのは明白で、付き従ってる武官達は、やれやれといった様子を見せていた。
「貴様か。馬鹿みたいに高い所が好きな、
正体を見抜いたガゼルが、不敵に笑いながら挑発し返した。
(ん? どうやら、ガゼルと知り合いらしいな)
リムルはガゼルの態度を見て、一応の警戒を解く。
「リムル様。この者達は、魔導王朝サリオンからやって来られた使者だそうです」
そう告げたのは、ここまでその一団を案内して来たソーカだった。
「相変わらずだな、エラルド」
「お前もな、ガゼル」
二人は苦々しくも言葉を交わす。
それがこの二人の挨拶だったのだ。
「それで、そちらの少女?、は」
「あ、どうも初めまして、この森の盟主をやっているリムルです。よろしく!」
「!?」
エラルドの言葉に、リムルが挨拶をすると――
急に身構えたエラルドが、カッと目を見開いて叫ぶ。
「貴様か! 貴様が私の娘を
そう言うなり超高等爆炎術式を起動し、呪文の詠唱を始める。
(はあぁっ!? なにとち狂ったんだ? 意味がわからん?)
リムルがそれを見て慌てていると――
スパァーーーーンと乾いた良い音が鳴り響き、同時にエレンの叫び声が轟く。
「ちょっとぉ、パパぁ!? 何しに来たのよぅ!!(ツキハちゃんと、コハクちゃんの仕業かぁー!?)」
怒り心頭で割り込んで来て、エラルドの頭を平手で
エラルドは、エレンの父親であったのだ。
怒りに燃えるエレンの説教により、冷静さを取り戻したエラルド。
「いやー、あっはっはは。スマンな、娘が魔王に攫われて、大変な目に合ってると報告を受けたもので、つい慌ててしまったのです」
朗らかな笑顔で言い放つエラルド。
「いいえ、閣下。きちんと報告を致しましたが、後から来た〝追加の報告〟はデマだと何度も申し上げたはずです。それを閣下が、鵜呑みにして早とちりしただけです」
「ほらぁ! パパが悪いんじゃないのよぅ!(〝追加報告〟!? 〝やっぱりあの二人〟かぁー!)」
〝あの二人〟、ツキハとコハクの笑い声が聞こえて来そうである。
秘書らしき女性が冷静に指摘し、それをエレンに責められてうろたえる親父エラルド。
そして、これを仕組んだツキハとコハクが、後にエレンにこっぴどく説教を喰らうのは明白であった。
〝番外魔王〟をちゃん付けで呼べて、尚且つ説教出来る女、エレン――
ある意味最強かもしれない。
場が一段落したのを見計らい、エレンがガゼル王に挨拶をする。
「御無沙汰しております。ガゼル王」
「エリューンか? 見違えたぞ、息災で何よりだ。暫く見ぬ間に、美しくなったものよ」
ガゼル王がそう返すと、エラルドが「ロリコンか? 許さんぞガゼル」とまたもや騒ぎ始めるも、エレンの強烈な張り手で沈黙させられる。
ガゼルは相変わらずだなというように肩を竦めていた。
「リムル様、こちらが私の父で、魔導王朝サリオンの大公爵であるエラルド・グリムワルトです」
「ジュラの大森林の盟主にして、魔物を統べる者よ。今、娘のエリューンより紹介されました通り、私の名はエラルド・グリムワルトと申します。どうぞ、エラルドとお呼びください」
「あ、はい。こちらこそよろしく(また、えらい大物が来たものだな)」
エレンの紹介に驚くリムル。
なんと聞くところによると、エラルドは魔導王朝サリオンの大公爵の当主であり、皇帝の親戚で叔父にあたる人物であり、魔導王朝サリオンで三本の指に入る実力者だったのだ。
ガゼルと気軽に言い合えるだけの立場を持つのも、頷けるものだとリムルは内心思う。
それ以上に驚きべきだったのは、エレンが超絶お嬢様だったという、事実であった。
この事で、エレンが〝国にバレる〟と言った事の意味がリムルに分かったのだ。
ここに、ドワーフ王国のガゼル王。
魔導王朝サリオンからの使者、エラルド大公爵。
そして、ブルムンド王国から駆け付けたフューズ。
この者達を交えて、クレイマンとの決戦に向けての作戦会議が始まろうとしていた。
三十三話を読んで頂きありがとうございます!
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