忍びが転生したら〝異世界珍道中〟になった件   作:にゃんころ缶

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 お待たせしました。三十五話です








35話 人魔会談(前編

 リムル達が大会議室に戻ると、混乱も既に収まっていた。

 

 しかし、フューズやエレン達はグッタリとして、突っ伏していた。

 

 そんなフューズ達にリムルが声を掛ける。

 

「大丈夫か? 気分は落ち着いたか?」

 

 と、声を掛けると恨みがましい目で答えて来た。

 

「聞いてませんよ、そんな重要な話し――」

「ちょっとぅ、酷すぎですよぅ。私も何も聞いてなかったんですけどぉ……。ヴェルドラ、さん? さま? が、友達だったなんてぇ、教えてくれましたぁ?(コハクちゃん、ツキハちゃんが仲良くしてたのは、知ってたんですけどもぉ)」

 

 矢継ぎ早に愚痴が飛び出て来る。

  

「あれ? 言ってなかったっけ? 言ったような無かったような……? まあ、過ぎた事はもういいんじゃないか? そんな事より、会議再開しようぜ!」

 

 爽やかな笑顔で言い放つリムルに、一斉に突っ込みが入る。

 

「「「さらっと流すなーーーーッ!!」」」

「は、ははは、そうだよね――」

 

 誤魔化し笑いを浮かべながら言うリムル。

 

(コイツ等、中々に図太い性格してないか……? しかし、俺が魔王になったのに、以前と変わらない態度なんて……なんか、嬉しいな)

 

 以前と変わらない態度に、何か嬉しさがこみ上げるリムル。

 そんな思いの中、(もう少し敬意ってものをだな)とか思うも、(これはこれで、いいか。ククッ)クスリと心の内で笑みを漏らす。

 

 

 こうして皆がヴェルドラを受け入れるまでに一時間を要した。

 しかし、この受け入れ方には少し差があった……。

 

 それは、リムルの配下達である。

 

 そう、リムルの配下達はヴェルドラがツキハと見せたやり取りで、ヴェルドラに対しての受け入れ方が割とすんなりいっていたのだ。

 

 最強の〝竜種〟があんなやり取りをみせれば、皆の恐れが緩和されるのは当たり前である。

 恐らく配下達皆の印象は――〝少しお茶目な暴風竜〟というようになっているのであろう。

 

 

 再開された会議はリムルのヴェルドラとの出会いの話しから始まり――

 ゴブリンとの遭遇、ランガ達との戦い……それからゴブリン達への名付け。

 そこからドワルゴンへと向かい、ガゼル王との対面。

 オークロードとの戦いはサラッと説明して流し、そうして町が出来ていき……。

 今や町から街へと変わりつつある魔国の事や、ある事でイングラシア王国へ行く事となった経緯を話す。 

 

 それから、〝番外魔王〟の事はヴェルドラから許可が出た範囲で、皆に説明していった。

 

 ヴェルドラが復活してすぐに、〝番外魔王〟の二人が魔国連邦(テンペスト)に来た事。 

 そして、次に来るときはこの〝番外魔王〟と戦いになると、話すリムル。

 

「ち、ちょっと待って下さい、リムル殿。〝番外魔王〟って、あの〝番外魔王〟なのですか!?」

 

 リムルの話にフューズが慌てて口を挟んだ。

 

「ん? そうだが。何か問題でも?――」

「いやいや、あの悪辣で有名な〝番外魔王〟ですよ! 気に入らなければ国をも滅ぼす事など、微塵の躊躇もしない危険極まりない魔物なんですよ!」

 

 フューズの言葉はもっともで、伝承に残る記実は悪評極まりないものばかりである。

 それにヴェルドラも加わり、更に強烈なものとなって伝わってる事にリムルは内心で、苦笑いを浮かべていた。

 

 まあこれも、ヴェルドラに言わせれば――この恐れが広まれば広まる程、本人達は喜んでるらしい。

 この恐れにより、自分達に舐めた真似をする(やから)が減るからと。

 

「それに関しては、既に手は打ってあるから心配は御無用。あの二人もこちら側の非戦闘者には、絶対に手は出さないと約束をしてくれたからな」

「しかしですな。あの〝番外魔王〟なのですよ!?――」

「それは心配あるまい。あの御二人が言ったのなら、必ずそれは守られましょうな」

「であるな。〝番外魔王〟の悪評は極まれりだが、一度口にした言葉は曲げぬからな」

 

 フューズの焦る発言にエラルドとガゼルが割り込んだ。

 そのフューズをジト目で睨み、何か言いたげなエレンもいた。

 

 リムルは、エラルドとガゼルが如何にも〝番外魔王〟の事を知ってる風に言ったのを、ん? と一瞬首を傾げたものの、(まあ王や、大貴族なら〝番外魔王〟の事ぐらいは知ってるだろうな)と、そこはあまり気にせず流してしまう。

 

 後に、この二人が〝番外魔王〟から情報を買っていたことが判明するのだが、それはもう少し先の事である。

 

「え、あ、あぁ。御二方がそう言いうのなら、心配はないのでしょう。取り乱して申し訳ない、リムル殿」

「いや、構わないよフューズ殿。あの〝番外魔王〟が絡んで来るんだから、心配になるのも理解してるさ。でも安心してくれ、迎え撃つ手は準備してあるから」

「わかりました、リムル殿」

 

 フューズが納得をしたところで、リムルは話を再開した。

 

 ヒナタとの戦闘の話に移り、改めてヒナタのヤバさを痛感するリムル。

 そのヒナタを退けた〝番外魔王〟の実力も、合わせてヤバいと感じる。

 

 そこにフューズが――

 

「ヒナタ・サカグチ、ですか。あの方は一見冷酷で、恐ろしい殺人者という印象が強いでしょうね。ですが、我々が掴んだ情報によると実情は少し違うんです。そう、ですね……。例えば、彼女を頼った者には必ず手を差し伸べているんですよ。で、その手を握った者は助けているんです。でもまあ、助言を聞かなかった者は、二度と相手にはしないそうですがね。彼女は、かなり理性的ではあるんですよ」

 

 ヒナタを知っているのかフューズは、かなりヒナタを庇う勢いで説明をした。

 

「ふん。流石は情報操作に長けた、ブルムンド王国のギルドマスターだな。まあ、〝傭兵商会・ルヴナン〟から仕入れた情報もあるだろうが、貴様が掴んだ情報の正確さは、我が国の暗部に匹敵する。その情報は、余の知りうるものと同一だと証言しておこう」

 

 フューズの言葉を裏付けるようにガゼルも、言葉を添えた。

 

(ん? フューズ殿も〝傭兵商会・ルヴナン〟から情報を買ってるのか? んん? あそこ運営してるの確か、アイツらだったよな? フューズ殿は〝番外魔王〟があそこの運営者だと、知らないのか……?)

 

 リムルは思案を巡らせながら疑問に思うも、この事は敢えて口にしなかった。

 何故なら、多分推測だが人化した二人に合ってると、思ったからである。

 もし、会っていたのが〝番外魔王〟と知れば……後は、お察しであろう。

 

 そう、ツキハとコハクは情報を売り買いする時は、いつも人化していたのだ。

 そして、〝番外魔王〟である事を隠し偽っているのが、ツキハの権能――〝猫騙し〟であった。

 自分の本性、能力を隠し偽る、恐るべき権能である。

 

「だけどアイツ、俺の話をまったく聞いてくれなかったぞ?」 

 

 それである、ヒナタは最初からリムルを目の仇にしていた。

 誰かに入れ知恵されたとしても。

 

「それはですね、ルミナス教の教義に〝魔物との取引禁止〟という項目があるからでしょう」

 

 エラルドがその疑問に答える。

 どうやら、魔導王朝サリオンでもヒナタは有名らしく、思わぬ所までヒナタの評判は知れ渡っていたのだ。

 

 フューズ達の話を聞き、ヒナタの人物像が見えて来たリムル。

 

 冷酷な言と冷徹な行で有名なヒナタだが、彼女が教義を破った事は一度もないらしい。

 もっとも模範的な騎士がヒナタであり、純然たる法と秩序の守護者な訳だと。

 

 となると、各国が行ってるという召喚儀式を阻止しないのは何故なのかと、疑問が沸き上がる。

 

 フューズが西方諸国評議会では、召喚儀式は禁止事項に指定はされてはいるが、水面下で秘密裏にやられれば掴みようがないと、言い。

 たとえ、召喚者がいたとしても、やってない、保護したと突っぱねられれば、いかに西方聖教会といえども確かな証拠がない限り内政干渉はできないと、フューズが説明をする。

 

 リムルが話し合いに応じてくれれば敵対しなくて済むんだがと、こぼすと。

 すかさずディアブロが「私が出向き、始末してまいりましょう」と言い。

 それにシオンが「貴方如きが出向くなら、私が終わらせてきます」と、言い出し。

 

 終いにはどちらかが出向くのなら、どちらが強いのかハッキリさせようとシオンが言い放ち。

 ディアブロがそれに乗り掛けたところでリムルが「ハッキリさせんでよろしい!」と、一喝してその小さな争いは終わったのだ、が。

 

 そこへ。

 

「クハハハハ! 我の出番と言う訳だな? よかろう、ちょっと行ってこ――」

「いかなくていいよ! 向こうが来るなら、それに対処すればいいし。もう一度言うけどな、西方聖教会と敵対したい訳じゃないんだからな!」

 

 リムルは溜息を吐きつつ、(ヤバいな……問題児ばかりだ)とボヤくのであった。

 

「とりあえず、ヒナタ及び西方聖教会についての議論は以上だ。事は慎重に対応しないとマズいので、相手の出方を見る事とする!」

 

 リムルがそう宣言し、この話を打ち切った。

 

 そう宣言した後リムルは『思考加速』を掛けつつ、しばし思案に耽る。

 

(ヒナタは俺の事を知っていた)

(そして、俺を〝先生の仇〟だと言ったヒナタ)

 

(先生、シズさん――そう俺が最初に出会った〝召喚者〟であり、上位精霊イフリートを支配下に置いていたが、支配力が弱まりイフリートに意識事身体を支配され、荒れ狂う〝爆炎の支配者〟となり)

(俺との壮絶な戦いの末……やむなく、俺が殺す事でその暴走を止め――最後を見取った女性、シズさん)

 

(この時に俺は、自分の〝胃袋〟にシズさんの遺体を収めたが、これは俺しか知らない)

(〝抗魔の仮面〟も元はシズさんが被っていた物を複製した……)

 

(密告があったとヒナタは言った、な)

(俺がシズさんを殺したことを知る人物は……)

 

(エレン、カバル、ギドの三名と、フューズとブルムンド王国の数名)

(最後に……ユウキ・カグラザカ、自由組合のギルマス)

(後は、この街に住む俺の仲間達だけ)

 

(そうすると、いや、だが……)

 

 これに智慧之王(ラファエル)が、疑わしき人物を導き出す。

 

(だよなぁ、俺もそう思う)

 

 リムルもそれと同じ答えを導き出すが、思案はそこで終わらなかった。

 

(もしかして、俺の知らない存在がいる可能性も……)

(いや思い込みで行動は駄目だな。証拠も無く人を疑いたくないしな。これは心に留め、油断はしないようにしよう) 

(後〝番外魔王〟、アイツらも恐らく多方面に絡んでいる可能性は、恐らくだがある)

(そもそもアイツらの情報源はどこから集めて来るんだ? 多方面に情報を売る程に、凄まじい情報収集能力を持ってると、言う事か……マジにアイツらも油断出来ないな)

 

(そもそも、俺とヒナタを戦わせた目的は何なんだ?)

(俺かヒナタを始末するのが目的だったのか?)

(俺が街に戻るのを邪魔したかった?)

(それとも、ヒナタを誘き出したかった?)

 

《――或いは、それら全て》

 

 その考えに智慧之王(ラファエル)が即答する。

 

(マジかよ、欲張り過ぎだろ!)

(まあ、相手の思惑が不明で、いいように利用されたのは癪にさわるが、今は我慢だな)

 

 そうリムルは考え思い、思案を終える。

 

 『思考加速』により、ほんの一秒にも満たない時間の中リムルは現実に戻り、話を進めて行く。

 

 ヒナタとの戦いから戻り、ファルムス王国が抱えている〝異世界人〟による、乱暴狼藉。

 ここでリムルは、犠牲になった者達をなんとかしようと、魔王になる事を決意したと説明するが。

 

 そこにリムルが言うより先にエレンが先に口を出し。

 

「どうせパパにはバレてるんでしょう? というかぁ、ここに来た目的もそれでしょう?」

 

 と、上目遣いで聞く。

 これは反則である、可愛いのだ、その仕草が。

 

 これでは、親馬鹿エラルドなどイチコロである。

 

「エレンちゃん……。パパにはバレてもいいけど、他国の人にまでバレる必要はないんだよ……」

 

 諦め顔で深い溜息を吐きながら言う、エラルド。

 

 そこでリムルが――

 

「とまあそんな流れで、ファルムス王国軍には生贄になってもらったんだ。そうして、俺は無事魔王になる事が出来たんだよ」

 

 こうして、リムルは魔王になったと告げた。

 

 ここで一通りの説明は終わり、今からが本番になる。

 

 

「それでだ、今説明したのが本当の話なんだが、公に発表するにはちょっと筋書きを変えることにする」

 

 リムルの言葉に戸惑う一同。

 

 力が全ての魔物からすれば、そんな事に意味はないし、戸惑うのも無理は無い。

 

 ベニマルがどのような筋書きにするかを、皆の代表で聞いて来てリムルはそれに答える。

 

 まず、魔王は名乗るが、覚醒した事は隠す。

 大前提として、各国は事の成り行きを知らない――故に、調べようがない。

 ファルムス王が強欲というのは周知の事実だったので、自分達の正当防衛が成り立つ。

 

 魔王一人に滅ぼされたというより、戦争に敗北したとする方が受け入れられると。

 

 その上で、その地に流れた大量の血が、眠れる邪竜を目覚めさせたと――そう、ヴェルドラの復活である。

 

 それを、英雄ヨウムとジュラの大森林の盟主として魔王を目指していた自分が協力して、魔物達に多大な犠牲を出しつつ説得した。

 

 ヴェルドラの怒りを宥め、守護者として祀る事で話を付けたとのだと話す。

 

「考えてもみよ。人は、自分が理解できない存在を恐れ、決して認めようとはしない。たった一人で二万もの軍を滅ぼす者に友好を口にされても、信じる事など出来まいよ。〝番外魔王〟に関しては、あれは例外中の例外なのだ。あれはな、冗談みたいな存在なのだからな」

 

 ガゼルの言葉が会議室内に響く。

 

 その言葉を聞いたヨウムやフューズは唸りながらも、理解を示した。

 

 リムルに近しい者でもこの反応である。

 リムルを知らない者からすれば、ガゼルの言う通りの反応であるし、下手をすれば西側諸国全部を敵に回す事になるのだ。

 

「だが、二万の軍勢が行方不明になったというのが、〝暴風竜〟の仕業とするならば、人々が理解をするのは容易であろう。何しろ、〝暴風竜〟は、既にして〝天災〟なのだからな」

 

 ガゼルがそう纏めると、ヴェルドラが「クックックッ。我を〝天才〟と呼ぶとは、中々見所のある男よ」と勘違い全開でご満悦であった。

 

 そこにエラルドが発言をして来た。

 

「私も、この筋書きを支持します。娘のせいでリムル殿が魔王になったと恐れられ恨まれるよりも、リムル殿が魔王になったお陰で、〝暴風竜〟と交渉が可能になったと感謝される方がいいですからね。それと」

 

 ここで少し間を置き、すぐにエラルドが言葉を続ける。

 

「この筋書きに、もう一つ加えたいと思います。それは、〝番外魔王〟です。彼女達は、常に〝暴風竜〟と共にありました。〝暴風竜〟が封印されるまでは。ならば、〝暴風竜〟が復活したとなれば、必ず〝暴風竜〟の元に駆け付けるはず。それは、この世界に住む者であれば、周知の事実なのです」

 

 ここで一度言葉を切り会議室にいる皆を見渡し、コホンと軽く咳払いを一つして、言葉を続ける。

 

「〝暴風竜〟復活に〝番外魔王〟が駆け付け、一緒になりファルムス王国軍を壊滅。それを英雄ヨウムとジュラの大森林の盟主リムル殿が、多大な犠牲を払いながら〝暴風竜〟と〝番外魔王〟を宥め、〝暴風竜〟は守護者として祀る事で話を付け、〝番外魔王〟には〝暴風竜〟自ら説得をしてもらい、引いてもらった。これならば、更に真実味が増すかと思われますが、如何ですかな?」

「確かに。それならこの筋書きにも、更に真実味が増すであろう。何しろ、〝番外魔王〟は過去に、小国を二つ滅ぼしておるからな」

 

 エラルドはにこやかに笑いながらも、その目は周囲を威圧し、反対する者がいないか睨みを利かす。

 ガゼルは深く頷きながら、エラルドが付け加えた筋書きに同意した。

 

「パパ……。流石に老獪な貴族だけあってぇ、狡賢いわぁ……(ツキハちゃんとコハクちゃんが怒っても、知らないわよぉ)」

 

 エレンが褒めているのか貶めているのかわからない発言をして来る。

 リムルはそんなエラルドを見て、ちょっとだけ可哀相だなと思う。

 

 少し騒めいた場が静まると、再びリムルが言葉を続けていった。

 

「それにな、俺に取っての利点は他にもある。人間達から不用意に恐れられずに済むというのも重要だけど、俺を警戒する他の魔王達が、脅威はヴェルドラと〝番外魔王〟のみだと、勘違いしてくれるかも知れないだろう?」

「あのリムル様。勝手に〝番外魔王〟の名を使って、御二人の怒りを買う事になるのではないでしょうか?」

 

 リムルの言葉にベニマルが恐る恐る聞いて来た――

 

「いや、それはないぞ」

 

 ベニマルの問いに答えたのはヴェルドラだった。

 

「ツキハとコハクは、そんな事で怒るなど度量の小さき者ではない、我が断言しよう。ふむ、そうだな……。むしろ、嬉々として喜ぶかも知れんな、アイツ等なら! クワッハハハハハ」

 

 ヴェルドラの豪快な笑い声の答えにより、この筋書きはこれで行く事に決まった。

 

(これで、俺も動きやすくなるな。ファルムス王国軍に大勝した事で、魔王クレイマンも俺を警戒しているだろう。だが、それが実はヴェルドラと〝番外魔王〟の仕業だったと噂を流せば、俺に対する警戒も小さくなるかも知れないしな)

 

 リムルは、ガゼルとエラルドが筋書きを小さな所まで突き詰めていく中、これからの事を考えていた。

 

(ガゼルは友好国のイメージを良くしたいだろうし。俺としても、西側諸国に良く思われたいしな。その上で、敵対する可能性がある者達に、俺を過小評価させて、少しでも警戒心を薄れさせておきたい)

 

 考えを止めガゼル達を見ると、まだエラルドと筋書きの突き詰めを行っていた。

 

(これで、俺達がヴェルドラや〝番外魔王〟と交渉可能だと噂を流せば、下手にちょっかいを出してくる国も減るだろうな。それで西方聖教会が何か言ってきたとしても、素直に従わない可能性が高くなるだろうな)

 

 そう考えリムルは、これが最大の利点だなと結論を出した。

 

 中々突き詰めが終わらない筋書き論争に、ガゼルの出した腹案とエラルドが付け加えた案を叩き台にして、智慧之王(ラファエル)が編集し、完璧な筋書きを作り出した。

 

 ガゼル、エラルド、リムル。

 三者の利害を一致させ、今後の作戦にも利用可能なように纏められていた。

 

 

 これで公表する筋書きは決まった。

 

 

 この噂はすぐに拡散され、魔王クレイマンの耳にも入る事になる。

 

 これを知った魔王クレイマンは激怒し、〝番外魔王〟を呼び付け。

 ありとあらゆる罵詈雑言を浴びせ、今回の不始末の違約金と契約中の依頼は無料でやる事を言い渡した。

 

 それを聞いたツキハが暴れようとするのを、コハクが必死に止め。 

 言われた通りの違約金、金貨三千枚をコハクが支払い、今回の依頼は無料でやる事を確約した。

 

 それで少し気が紛れた魔王クレイマンがもう帰って良しと二人に言い、ツキハはコハクに引き摺られるように連れていかれる。

 

 この時、コハクが帰り際に一瞬薄っすらと浮かべた笑いに、魔王クレイマンは気付かなかった。

 

 魔王クレイマンの巡らせた策の歯車が、ここから少しづつ軋み壊れ始めていく……。

 

 

 リムル達の会議も、魔王クレイマンとの戦いへと話が映る。

 

 刻々と迫る魔王クレイマンとの決戦。

 

 

 その陰で、闇から覗き笑う〝番外魔王〟の二人。

 

 




 三十五話を読んで頂きありがとうございます


 それでは、次回の更新もよろしくお願いします!






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