忍びが転生したら〝異世界珍道中〟になった件 作:にゃんころ缶
リムル達の会議は大詰めを迎えていた。
クレイマンとの戦争作戦指揮はベニマルが取る事となる。
現ファルムス王国は、滅亡してもらう事となった。
先ず、現王を解放し
これは、あくまでも名目であり、この賠償問題を利用してファルムス王国を内戦状態に陥らせる事が目的なのだ。
もし、この段階で賠償に素直に応じれば、ヨウムの
先ずそれはない、と
何故なら、二万もの人的資源を失ったファルムス王国に、賠償に応じる資金的余裕はない。
それで、なんのかんのと理由を付けて賠償を無視しようとするだろう。
そこへ、ヨウムがそれに反発し、信義にもとるという理由でクーデター起こすという筋書きである。
賠償を突き付けられた時点でファルムス王国は王が強権を発動しようが、これを不満に思い貴族達が反乱を起こそうが、どう転んでも現ファルムス王国は滅亡する流れになるのだ。
ヨウムが新王国の樹立をすれば、
現存する貴族達が連合を組んで反対に回るとも、それも想定済み。
最初から協力を申し出る貴族は残し、その他は全て国から追放。
それでも邪魔をする者は、残念だが消えてもらう事になる。
こうしてヨウム王誕生の筋書きは決まった。
その時。
《
『ん? いや、いい。敵意はないんだろう?』
《全く感じられません》
『ならいいさ、そのままでいいよ』
《了》
それにリムルは、敵意がないなら放置でいいと答える。
ここまで聞かれたのなら今更だしなと、リムルは言い。
そのまま会議を続けていった。
『……? あらあら、気付かれましたか? 私を見つけるなんて。流石は覚醒魔王と、いったところでしょうか。でも……何も仕掛けてきませんねぇ……。ツキハ様、コハク様と同じ転生者であるも、何とも不思議な魔物ですね、魔王リムルは……』
イチコは小さく独り
一方その頃の、〝番外魔王〟の二人。
「くっくくく。まさか、ファルムス王国軍行方不明にヴェルドラとあたしらをダシに使うなんて、中々に考えたねぇ」
「どすなぁ。どうせあんさんがエラルドに、うちらをダシに使いなはれとでも言ったんちゃいますか? ふふふ」
「くくっ。どうだろうねぇ~」
「ふふっ、それバレバレどすえ。それより、ファルムス王国は潰す事になりはりましたな」
「傀儡ではなく、擁立であの男を王に据えるかぁ」
「まあ、でも。〝ガー坊〟が、あの男を覇気で見極めていたどすから、傀儡はないでっしゃろ?」
「だねぇ。〝ガー坊〟もあの男、ヨウムだっけ? どうやら気に入ったみたいだし、これで
二人が〝ガー坊〟という人物はガゼル王である。
幼少の頃からガゼルを知っており、王になった今でもガー坊と呼ぶツキハとコハクに、もうその呼び方は止めてくれと言うも、二人は未だにこう呼ぶのであった。
「せやなぁ。これで西側諸国のスカタン共がどうでるかやねぇ」
「アイツらも動き出すんじゃね?」
「それや。多分に、アイツらも動き始めるやろうから、中々に面白い情勢にはなりますな。うふふふ」
「でも、もう
「せやね。まあでも、全面戦争仕掛けて来るアホな国なら、あそこしかおまへんやろ?――」
「東の帝国か……。あそのこの情報は集めにくいからなぁ。でも、近い内に動きそうではあるよねぇ」
「動くやろなぁ。ほんま厄介どすな、あそこは……」
とある〝隠れ家〟でツキハとコハクは、
「ところでツキハ。あんさん、ヴェルドラはんに勝つ手立てはありますんか?」
「うーん……。あるにはあるけども。それで勝つ見込みは、三割も無いからなぁ。とりあえず二日は頑張る。後の一日は、〝あれ使う〟わよ」
「あぁー、〝あれ〟どすか? まあ、きばりなはれ。ふふっ」
「あいよ。くくっ」
ツキハとコハクは顔を見合わせ、クスリと笑い合い。
二人はテーブルに置いてある自分用の〝酒樽君〟をそれぞれ掴み、コクコクと中の酒を飲んでいく。
「さて、クレイマンはどうするんだろうね?」
「せやなぁ。ファルムス王国軍勢消滅にうちらが絡んでいたと――信じてましたからなぁ。ヴェルドラはん復活も、想定外やろうし……今頃やけ酒飲んでると違いますかぁ? うふふふふ」
「だね、くくくくっ。あ! そうだ。〝あの件〟はロモコ達に伝えた?」
「ふふっ。しっかり伝えましたえ。抜かりはあらしまへん」
「クレイマンの奴言いたい放題言いやがったからなぁ。その分は頂かないとね! くくっ」
「せやねぇ。しっかり頂きましょかぁ。ふふっ」
「そう言えば秀吉様に雇われてた時は、よくむちゃぶりを言われたよねぇ~」
「せやなぁ……あの半兵衛様も、むちゃばかり言いましたな」
「そうそう、あれの首取ってこいとかさ――」
「敵陣に忍び込んで、暗殺してこいとか、ほんま難儀どしたな」
「ねっ。うくくくくっ」
「ほんまに……あの頃はあの頃でしんどい事も多かったどすけども、なんやかんやで楽しおしたなぁ。ふふふふっ」
ツキハとコハクの笑い声が部屋に響き、部屋にあるベッドの上ではニコとサンコが丸まって寝ていて、二人の笑い声に身体をピクッと震わせ、寝ぼけ眼で欠伸をしていた。
〝番外魔王〟の二人は何を企み、何をやるのか? 嬉しそうに笑い酒を飲み交わすツキハとコハク。
この
そして、ツキハとコハクは秀吉に雇われて
同時刻、大会議室のリムル達。
ガゼルはヨウムの覚悟を確かめ。
エラルドはフューズにブルムンド王の思惑を確かめていた。
そんな会議も終わりに近づき。
そろそろ纏めに入ろうと、すると――
そこへ!
バアアアアン!!
扉が勢いよく開かれ。
何者かが入って来た。
そして――
「話しは聞かせてもらったわ! この
と、言い放つ小さな女の子。
その姿からは誰も信じないであろうが。
これでも十大魔王の一人、
ラミリスは、リムルがイングラシア王国で先生をしている時に受け持った〝召喚者〟の子供達を助ける為に、精霊を宿す為に潜った迷宮で知り合ったのだ。
子供達は五人いた――召喚者でも子供達は、〝不完全召喚者〟と呼ばれ。
世界を渡る時にその身に大量の
それ故に成長途上の肉体に、身の丈に合わない大量の
それを防ぐ為にリムルが思い考えていると。
『大賢者』は、魔王レオンが
シズは幼少の頃に第二次世界大戦の最中、本土空襲による爆撃での火災の中召喚された。
身体に大やけどを負い、尚且つ体内に大量の
その時に、魔王レオンが上位精霊イフリートを召喚、シズに宿らせたのだ。
これが意図的に助けたのか、そうでないのかは……魔王レオンにしかわからない。
リムルは、シズがイフリートを宿し苦しんでいた記憶を垣間見ている。
そして、魔王レオンを一発殴ってやるとこの時決めていた。
シズは召喚されて数年経った頃に出来た友達を、ある事がきっかけで――殺すつもりは無いのに殺している。
正確には――体内に宿したイフリートが勝手にやったのだが、シズはこの事を激しく悔やみ。
泣く事もこの日から止め、魔人として生きる決意をしたのだ……。
無理やりこの世界に召喚され……望まないのにイフリートを宿し、苦しんでいた、シズ。
その思いを魔王レオンに、伝える為に。
その情報を元にリムルは、上位精霊を召喚し子供達の体内に宿らせ――
精霊探しの為に入った迷宮で出会ったのが、ラミリスであり。
探索中にラミリスの迷宮で魔人形に襲われたのだが、それを撃退したら。
それはラミリスの作った魔人形で、あんたが壊したから代わりの人形を作れとせがまれ。
精霊召喚の協力をする事で代りの人形を作ってやると約束をして、悪魔を召喚して作ったのが、ベレッタであった。
ラミリスの登場に、リムルは……。
真っすぐにリムルを目指し飛んで来る、ラミリス。
その後ろで丁寧に扉を閉める、ベレッタがいた。
そんなベレッタを、リムルはどこか苦労性な感じになっていないか? など思いながら見ていた。
だが真っすぐに飛んで来るラミリスの前に立ち塞がる者が。
高級な執事服に身を包んだディアブロである。
ヒョイと摘まれ、何ともはやあっさりと捕獲されるラミリス。
「ちょ、ちょっと? 何をするだーーー!?」
ジタバタもがきながら口走るラミリスを、相変わらず愉快な奴だ。
魔王の威厳なんて欠片もないなとリムルは思い、苦笑いを浮かべていた。
ディアブロが「不審な者を捕まえました。いかが致しますか?」と聞き。
ラミリスは「げええぇ! アタシの全魔力を以てしても、逃げだせない!? ア、アンタ只者じゃないわね?」と騒ぎ立てる。
(ま、そりゃそうだろう)
魔力量が違い過ぎるから、無理だろうとリムルは思い。
(これでも、魔王なんだよな。ハハッ)
なんというか、魔王が大した事の無いように見えるのは、コイツがいるお陰だろうなと。
心の内で更に苦笑いを浮かべ呟く。
フューズが「リムル殿、その妖精は知り合いですか?」と聞いて来た。
「ああ、ラミリスっていう名の妖精で、俺の知り合いだ。そんなナリしてるけど、一応は魔王らしいよ?」
「アンタ! それどいう意味よ!? これでもアタシはね、十大魔王中最強と恐れられてるんだけどね!!」
ドヤァ! とばかりに、ディアブロに捕らわれたままふんぞり返るラミリス。
威厳も何もあったものではないのだが、知らぬは本人ばかり。
「え? 魔王……?」
「へえ、あれで?」
と言った声があちこちで囁かれ、会議の参加者には大した驚きは見られなかった。
「え? えええーー!? ここはもっと驚く場面でしょ? アタシ、魔王なんですけど?」
ディアブロに捕獲されたまま、言い放つラミリス。
多分だけど皆も呆れてるというか、何とも言えない気持ちになってると内心思うリムルだが、言わないのも優しさだなと、その思いを引っ込める。
皆は口々に「いやあ、〝暴風竜〟復活の方が衝撃的だったしねぇ」とか、「〝番外魔王〟の二人が来た後だしなぁ」など顔を見合わせながら言い、頷き合う人々。
(なるほど。言われてみれば、そうかもな)
このリムルの呟きと皆の反応に不満が爆発したラミリス、盛大に言葉をぶちまける。
「はあ? 〝暴風竜〟って、ヴェルドラが復活したですって? アンタ達、騙されてるよ! ヴェルドラはアタシがワンパンで沈めてやったからね! 〝番外魔王〟? アイツらは子分よ、子分! アタシの、こ・ぶ・ん、なワケよ! まあ、アイツらの時代は終わったってワケ。恐怖するなら、今日からはアタシの事を畏れ敬うがいいのさ!」
一気にまくし立て、高笑いをするラミリス。
口だけ番長絶好調である。
「ヴェルドラ、悪いけど、ちょっとこの子の相手してやってくれる? これでも一応魔王だから、お前の友達になってくれるかもよ?」
「ん? 我は今、大いなる謎を解くのに忙しいのだ」
リムルの頼みをすかさず断るヴェルドラに、リムルは――
「ああ、それな。犯人は○○だから、これで謎は解けただろ? じゃあ、頼むな」
ヴェルドラが読んでいた推理漫画の犯人を、リムルから無慈悲に告げられ、ヴェルドラは『え? 何で先に犯人を言うんだよ!?』みたいに固まり。
ヴェルドラに悪いが、会議中に漫画を読んでるのはNG!
ということで、リムルは反省をしてもらう意味で告げたのだ。
甘やかすと碌な事にはならない、とリムル談である。
そしてラミリスは、ヴェルドラを見るや、パタリと気絶した。
こうして問題児二人が大人しくなったところで、会議が再開する。
リムルは為すべき事の確認をして行く。
先ずは――クレイマンを叩き潰す。
次に――現ファルムス王国を滅亡させる。
そして――西方聖教会への対応。
この三点を軸に、同時進行させる。
その役割分担の話を、リムルは始めていった。
先ず、捕虜三人の尋問の件をシオンに問う。
「ところでシオン。取り調べは順調か?」
すっかり忘れていた三人の捕虜の事を聞くリムル。
「フッフッフッ。もちろんですとも、リムル様」
シオンは自信満々に答える。
その自信にリムルは、いやな予感がバリバリに走る。
ふとヨウムと、ミュウランに目をやると……。
二人は何故か、気まずそうにリムルから目を逸らし、答えていく。
「ああ、旦那。取り調べ? 尋問? というか情報は喋っていたぜ」
「ええ、そうね……。でもあれは、取り調べではなかったわ。尋問と呼ぶのもおこがましい何かだったわ……」
リムルはそれだけ聞くと、もう十分だと考える。
間違いなくシオンは、やりすぎてる。
それを許したのは自分だし、洞窟に籠っていて連絡取れなかったからな、と。
自分の責任だが、気付かなかった事にしておこう、そうしようと決める。
シオンの所々詰まりながらの説明を、シュナとミュウランが捕捉しながら、説明は進んでいった。
最初にエドマリス王に接触して来た商人がおり、その商人の事を聞くも正体はわからなかった。
しかし、黒幕の正体は判明したようだった。
それは――ニコラウス・シュペルタス枢機卿。
レイヒム大司祭は、神敵討伐の栄誉を以って、中央の評価を得ようとしてらしい。
西方聖教会が、決定的な判断を下す前なら、交渉の余地があるやもと皆が口々に話す。
そこへフューズが「それならば、交渉は俺が」と、交渉を請け負った。
フューズは、評議会を巻き込む策を打ち出し、ガゼル王もそれに乗る。
ガゼル王は、
そしてここで、魔導王朝サリオンが正式に
「こんな事を俺が言うのも何ですが。
いっそう気を引き締めた顔で、フューズが言った。
ドワルゴン、サリオンの大国は、西方聖教会の影響化にない。
しかし、小国ブルムンド王国は、諸外国からの圧力の影響を、まともに受ける事となる。
だが、それは今までの話。
次の言葉で、それは払拭される。
「フフッ。フューズと言ったか、安心するが良い。
そう、ガゼルの言う通りである。
技術革新――サリオンの誇る魔導科学、ドワルゴンが培った精霊工学という別系統の技術が、この地で結び付く。
産業革命の到来。
それを、
ブルムンド王国は情報戦に長けた国家であり、今までこの情報を駆使し、生き残って来た。
ブルムンド王は、情報を読み解くのを得意とし、今回もあらゆる情報を吟味し、フューズに
国家の情報部とは別に、大抵の王は個人的に秘密の情報網を持つ。
サリオンの女帝、ドワルゴンのガゼル王、そして政治に密接に関係するエラルドなど。
その情報は、どこから……?
〝番外魔王〟である。
二人は国家の王にすら、大昔から情報を売って来ていたのだ。
もちろんファルムス王も二人から情報を買っているし、ブルムンド王国の王も買っている。
しかし、このもたらされた情報を、正確に、国と民の利益となるよう活用できたのは――ブルムンド王、その人であった。
だがしかし、ここに誰も知らないもう一つのリムルの隠し玉があった――『
『
〝地球シュミレーターよりも〟、正確に。
リムルはこれで経済効果を算出して、特産物を競合しない様に、上手く各国の富の分配をするつもりであったのだ。
このもたらされた情報を正確に読み取るが出来たブルムンド王と、己の私欲に走ったファルムス王。
これが小国でありながら、大国ファルムス王国と明暗を分けた理由であろう。
五千年もの長き時の中で、あらゆる情報網の闇に巣くう、ツキハとコハク。
それを利用する者は、今も変わらずいるのであった。
そうして、シオンの報告は続いていく。
三十六話を読んで頂きありがとうございます!
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