忍びが転生したら〝異世界珍道中〟になった件 作:にゃんころ缶
会議を終えた、
そこには、まだリムルやラミリス、他の者達が幾人か残っていた。
ラミリスからの情報で、
どうやら、ラミリスの用件はそれだけだったらしい。
リムルは、これ以上の情報は得られないだろうと考え、ふと思いついた事をもう一つ質問してみた。
「そういえば、どうして報せに来てくれたんだ?」
「ん? いや、実はさ、アンタが
ラミリスがこう事無げに言うと、一瞬の間の後に……。
「いい訳ねーだろ! って、なんでそこまで話しが飛ぶんだよ!? 迷宮への入り口って、何を創る気なんだよ?」
「ええーーー!? いいじゃん、細かい事は気にしない気にしない!」
人の話しを聞かず、言いたい事だけを言い募るラミリス。
とんでもなく自由人な妖精なのだ。
「俺は気にするし、お前も気にしろよ! しかも、サラッとベレッタを自分のモノみたいに言うんじゃないよ?」
ベレッタ、ラミリスのゴーレムを破壊した代りに、リムルはベレッタを作ったのだが。
譲渡したわけでなく、あくまでも貸し与えていただけである。
マスター権は、未だリムルなのであった。
「いいじゃん! ツキハ達も気に――モゴモゴモゴ」
何かを言い掛けたラミリスの口をベレッタが、優しく右人差し指で押さえ。
他の者に聞こえない様に小声で、ラミリスに何かを言っていた。
ベレッタはラミリスに仕えてから様々な事をラミリスから聞かされていた、自慢話とも言うが……〝番外魔王〟の事も何やら聞かされてるみたいに感じたリムルだが……。
(ん? なんだ?)と思うも、別段その事は気にしなかった。
何よりラミリスが居座るか、どうかの問題の方が先だったのだ。
その後は、互いに激しく口論をするも、結論は出ず。
とりあえず、その場は解散となった。
ラミリスも用件は終わったとばかりに、マンガの方へ戻って行った。
リムル達も軽く休憩を取る為、遅めの昼の食事を取る……。
食事が終わり、戦争の準備をする為再び大会議室へと戻って来たリムル。
一緒に来たのは、三獣士とミュウランのみ。
他の者では、ベニマル、ソウエイなどの幹部達がいた。
ヨウムとグルーシスは、ファルムス王国へ出発する準備を始めていた。
そこへ何故かディアブロが参加して来た、「私には、準備など必要御座いません」と断言され、まあ参加されたら駄目なわけでもなく、リムルはディアブロの自由にさせる。
そして、何故かラミリスも参加して来た。
「あ、アンタね! これはどういう事? ねえ、どういう事なのさ!?」
リムル達が会議室に入るなり捲し立てて来たラミリス。
ラミリスはこの休憩時間に、食堂へ案内されたらしく。
そこで、ラミリスの相手をしていた者がいたのだ。
そう、
精霊嬢王だった頃に仕えていたトレイニー達は、一目でラミリスに気付いたらしい。
それで、下にも置かぬ扱いで、ラミリスを持て成していたのだと。
「良かったじゃねーか」
「良かったわよ! 最高だったわよ!! だからさリムル、アタシもここに住む事にしたってワケ!」
ラミリスはこの街を、とても気にいったようだった。
この街を案内され、そこで見た光景に心を奪われ、ここに住む決意をしたのだと言う。
「だから、勝手に決めるなって言ってるだろ! トレイニーさん達は、このジュラの大森林の管理もあるし、住んでる場所も違うから、お前の相手だけをしてる訳にはいかないんだぞ」
ラミリスの後ろに控え、幸せそうな様子のドライアド三姉妹。
それを見つつリムルはラミリスを諭すも……。
「ケチケチケチーーーーッ!! いいじゃん、何かあっても、この最強のラミリスさんが手伝ってあげるからさ!」
聞く耳を持たないラミリスであった。
「リムル様、ラミリス様の面倒は我々が見ますので、是非とも前向きに御考え下さいませ」
「「「お願い申し上げます!!」」」
ラミリスだけではなく、トレイニー達からもお願いされるリムル。
(うーん……でもなぁ。どうみてもトラブルメーカーになりそうなんだよなぁ。今後人間との交流も盛んになるし、フラフラ街を出歩かれると、思い切り目立つしな……)
リムルはあれこれ考えるも、とりあえずこの件は保留にする事にした。
「わかった、考えておくよ」
「ホント!? さっすがリムル、話がわかるわね!」
リムルは、今後ラミリスがこの街に住んだらどうなるか、ゆっくり考える事にした。
ラミリスがマンガのところへ戻り落ち着いたので、作戦会議を始めていく。
「さて、会議ばかりで皆も大変だろうが、もう少し我慢してほしい。今回の議題は二つ、『クレイマンとの戦争』と『
「ハッ!」
リムルの挨拶の後、ソウエイからの報告が始まる。
「軍を率いるのは、どうやらクレイマン本人ではないようです。数多の魔人を従え、他と一線を画する魔素量を誇るようでしたが、それでもせいぜいが三獣士の皆様方と同程度。あれが魔王クレイマンだとしたら、あまりにもお粗末すぎます」
そう断言し、ミリムの領土で軍を休ませ、軍団の編成を行ってるとも報告をする。
どうやら、クレイマンの配下で三獣士に匹敵する者は、三名いるとミュウランが発言する。
先ず、
これが、クレイマンの誇る五本指の内の三名だとミュウランが言う。
因みにミュウランは、
後、
もう一つ気になる中庸道化連に関しては、ミュウランは何も知らないと言った。
そして、ソウエイの見た将の特徴を聞いたミュウランが答える。
「指揮官は恐らくヤムザです。氷結魔剣士ヤムザ。卑怯で残忍で、悪徳を極めたような下種ですが、実力だけは本物です。クレイマンに自ら忠誠を誓っているという点で、私とは折り合いが悪かったですね」
クレイマンから与えられた氷結の力を秘めた高価な魔剣を使う事で、付いた呼び名だとミュウランが説明する。
クレイマンの軍勢は、このヤムザ率いる三万の魔人達。
個々の力はマチマチ。
ソウエイの見立てでは、Bランクが八割、残りは殆んどがA⁻で、上位者にはAランクの者がいるらしいがゲルミュッド程度の力しかないという。
更にソウエイは、詳細な軍団の配置を地図に示した。
これは流石に、極一部の内部の者しか知り得ない情報なので、如何にソウエイといえども、この情報を掴むのは無理じゃないかとリムルは思い、ソウエイに尋ねてみるリムル。
「ソウエイ、この情報は、どうやって掴んだんだ?」
「これです」
そう言い、ソウエイはリムルの所まで行き、懐から一つのゴルフボール大の水晶球を会議机の上に置く。
リムルはその小さな水晶球に右人差し指で触れ、ほんの少し魔力を送ってみた。
ポワーッと空中に地図の映像が映し出されて行き、そこに軍団の詳細な配置が書かれていた。
「これは、どうしたんだ?」
リムルが更に疑問をソウエイに問い掛けた。
するとソウエイは、少し困った顔をし、答える。
「実は、隠密調査中に、ソーカの頭の上に落ちて来たのです。これが……」
「え? 落ちて来た?」
「はい。落ちて来たのです。どこからともなく」
落ちて来た、その言葉を聞きリムルは頭を捻り思案する。
(これ、内部にいる、それも一部の者しか知らない情報だぞ……。誰が密告した……いや、違うな……もしや)
リムルの考えに――
《告。あらゆる情報を検索した結果、このような事が出来るのは、〝番外魔王〟の二人しかいないと推測します》
(だよなぁー。でも、何でこっちに有利な情報を送るんだ? しかもタダで)
《解。何らかの漁夫の利を狙ったのか。もしくは――〝嫌がらせ〟を狙ったものかと推測します》
それを聞いた時、何かを見たスフィアがいきなりプッと吹きだし、笑いを堪えるのに必死だった。
リムルがその視線を追ってみると――
(あぁー あれか。クックククク)
リムルが見たモノは――映し出された地図の
それが、片目を
これは、〝傭兵商会・ルヴナン〟の紋章であり、リムルは知らなくても察したのである。
「何がしたいやらだな、番外魔王の二人は。これ、後で法外な金額を請求されるんじゃないだろうな? ククッ」
堪え切れずに吹き出すリムルに、アルビスが答える。
「それは、御座いません。リムル様。もしそうなら、請求書付きで、この水晶球は送られて来ますわ」
アルビスは当たり前のように答え。
番外魔王の二人は、獣王国には自由に出入りする権利をカリオンから貰ってるとも告げた。
たまに訪れては、カリオンと手合わせし、一部の戦士団に戦闘の手解きもしていたと。
その一部に自分達がいて、特にツキハ、コハクから可愛がられていたとも言う。
「ツキハ様からは、体術の手解きをしてもらってたんだ。小さい時からな」
にこやかにスフィアが答える。
フォビオは何か思い出したくない事があるのか、心なしか笑顔が引きつっていた。
「そうなんだ。アイツら、色んな所に出没してるんだな」
リムルは〝番外魔王〟の知らざれる一面を見た気がしていた。
終始笑みを浮かべながら話すアルビス、そして嬉しそうにツキハの事を話すスフィア。
フォビオは、笑顔が引きつりながらも、やはりどこか慕ってる様に見えた。
しばし三獣士の話が続くも、アルビスが「話しが逸れて申し訳ございませんでした」と、慌てて謝罪し。
それにリムルは「いや構わないよ。むしろアイツらの、知らざれる一面が知れて良かったよ」と笑顔で返し、作戦会議は再開した。
クレイマンの軍勢の分析をしていると、獣王国の戦士達の方が数では負けていても、あきらかに練度と戦闘能力では上だった。
そうして皆の意見は――クレイマンの軍勢は脅威ではない。
しかし、そこでベニマルが呟く。
「まてよ? クレイマンの狙いは、この街とは違うのではないか?」
この一言にリムルは。
(ああ、そうだ、確かに勘違いしていたな。ラミリスもクレイマンが俺を狙っていると言ってたからな。てっきりここが、本命だと思ってたな)
リムルは、クレイマンの軍勢が、獣王国を抜けた時点で、挟撃をすれば勝てると思っていた。
しかし、もう一度軍団配置図を見てみると、獣王国よりに多数の軍勢が配置されていたのだ。
そう、この配置図は、一見獣王国を抜ける様に見えるが実のところ、後方に位置する部隊は一直線に獣王国に向かえるよう配置されていたのだ。
これは、この配置図がもし敵方に知れてもいいように、獣王国を抜けて
情報戦――この時点でソウエイが持ち帰った情報に、番外魔王からもたらされた情報。
後手に回ったリムル達が、一気に情勢をひっくり返せる程の情報であったのだが……。
「獣王国が本命だってのか!? あそこに残ってるのは避難民ばかりだよな?」
「はい。残ってる戦士は一万強です。質で買っても、数で押されれば負けるかと……」
リムルの問いに、アルビスが厳しい顔で重く答える。
「狙いがこの街であったとしても、クレイマンが背後の危険を危険を見過ごす事はありません。必ず禍根を断ってから行動するでしょう」
アルビスの言葉の後に、ミュウランが断言する。
「禍根を断つ、だと……。おい、それはつまり、クレイマンは獣王国の戦士を皆殺しにするつもりなのか!?(いや、戦士だけで……済むの、か……?)」
《解。魔王クレイマンの行動を推測しました。狙いは自身の〝真なる魔王〟への覚醒である確率が、百%です。この街を計算に入れているとは思えません。ただし、その手段は稚拙であり、不正確な推論にて、獣王国ユーラザニアの命の灯を狩り尽くすつもりなのでしょう》
(やはりか……マズいな。もう避難民を狩る部隊が出ている、可能性もあるな……)
クレイマンの狙い。
それが判明した今、会議室の空気は重くリムル達に伸し掛かって来る。
「クレイマンは情報収集能力が高い。だからこそ、三獣士とカリオン軍の本隊がこの街に避難している事を知っているでしょう。そしてここから戻るとなると、どんなに急いでも二日は掛かるわね……」
アルビスが、してやられたと言った顔で呟く。
完全に後手に回ってしまったリムル達。
もし、皆殺しが達成されてしまったら? リムルがふとそんな事を考えると。
《解。効率は悪くとも、大量の魂を獲得するものと思われます。クレイマンの覚醒成功率は――七十八%です。尚、この状態から短い期間で追加の魂を獲得したならば、より成功率は上昇するでしょう》
(厄介極まりないな。断固阻止だ)
「ベニマル阻止しろ!」
リムルの命令が飛ぶ。
「ああ、任せろ――じゃなくて、お任せを!!」
熱くなるとつい地の口調が出るベニマル。
そんなベニマルをリムルは、ああわかってるさ、と言いたげな笑みで返す。
避難民虐殺阻止に向けて、具体的な作戦を練ろうとした時――
ソウエイに緊急の『思念伝達』がソーカから入る。
ソーカからの報告を聞いたソウエイの目が一瞬クワッ見開かれ、次に安堵と訝しんだような顔つきになり、『思念伝達』を終えたソウエイが、リムルに報告をする。
「リムル様。ソーカからの緊急報告が入りました。獣王国に残っていた避難民の一部が、ここに向かって来てるとの事です」
「「「「「!?」」」」」
ソウエイの報告に一同が驚き、何が起こったんだというように、顔を見合わせる。
「ソウエイ、何が起こったんだ?」
「はい。現在、獣王国からの避難民の一部が、到着したと報告がありました」
その言葉に、三獣士の面々はホッと胸を撫で下ろす。
「しかし、よく無事にここまで避難出来たな」
「それが、避難民を率いた戦士が言うには、追手の迫る気配が近付きつつあったのが、急にパタリと気配がなくなったと。そして、気が付いたら、ここ、
「ふむ……。何者かの手助け? それともワザとこちらに誘導? あるいは、別の何か……?」
リムルが避難民を助けた者達について、その真意を探っているとソウエイが更に報告をして来た。
「それと、もう一つ。避難民の子供達が不思議な事を言っていたと。優しい風が頬を撫でていって、〝安心してね~ もう大丈夫だよ~〟と囁いていったと言ってたそうです。それで、子供達もパニックにならずここへ安全に辿り着いたと」
「うーん。ますますもってわからないな。避難民を助ける、謎の第三者か……」
「後、まだ他の避難民がここに向かっているそうです。聞けば、獣王国に残っている避難民の三分の一が、ここに向かっていると」
「そうか、わかった。何者か知らないが、これを好機と捉えよう。これより、獣王国ユーラザニア防衛戦を立案する」
そして、獣王国に行く部隊の編成を話し合うリムル達。
先んじて足の速い速度特化型の獣人部隊を先行させるべきか……。
しかし、その数は四百、鳥獣型は稀少で百にも満たない。
ガビル達と合わせても二百そこそでは先行させても無駄死になるとの判断で、この案は見送った。
向かう地形が見通しのいいだけに、少数部隊では直ぐに発見されるのは必至。
そこで作戦は基本に戻る事になる。
先ず、各地の戦士に伝達し、可能な限りの住民を集め、避難させる。
とにかく迅速にジュラの大森林へ向かってもらう。
魔国連邦へ入ってしまえばトレイニー達の援護もあるので、生存確率も上がるだろうと。
だがしかし。
リムル達に取って朗報だったのは、クレイマン軍勢本隊とは別に送り込まれていた、狩り魔部隊千と追加派遣された二千の総勢三千は――既にロモコ達によって、人知れず壊滅させられていた事だ。
この、証拠も残さず始末された事により、本隊への伝達が遅れ若干のタイムラグにより、リムル達の作戦準備が間に合う事になる。
森の管理者であるトレイニー達にさえも、気取らせない〝忍魔猫〟達。
その全貌は未だ誰も知らない、極一部の者を除いては。
リムルは大量の人員を送る方法を模索していた。
思い付くのは、『空間移動』に『転移魔法』などを考えてみるが……。
(大部隊を一瞬で転送する事は、俺の『空間支配』で出来ないか?)
《解。転送魔法は小さなコストで物質の転送が可能です。異空間を通して転移先の座標と繋ぐのですが、その際に大量の魔素を浴びるので有機物質の転送には向きません。しかし、『結界』によって身を守れる者ならば、転送による影響を受けません。それが『転移魔法』の原理となります》
(えっと……。転送と転移で違うのは、対象物を守る為の術式を組み込み、その分の消費魔力が増えるのが原因なのか!? えーと……あれ?)
《つまり、魔人や魔物ならば魔素にも抵抗がある為、自力で『結界』を張れる者ならば、転送しても問題ありません。もしくは、対象者の保護を組み込んだ完全転送術式を用いても可能です》
(そうか。大量の魔素を浴びても死なない強さがあれば、異空間を通れるわけだ。『空間移動』はそれを利用する
《解。術式は既に開発してあります。尚、エクストラスキル『空間支配』を併用する事で、消費魔力の大幅削減に成功しました》
(まあ素敵! なんだろう、この
リムルは一気に兵員転送問題が解決した事で、歓喜した。
それを見たシュナが、時折聞こえて来た呟きに、転送や、転移が出て来ていたのを耳にしていたので、心配そうにリムルへ話し掛ける。
「リムル様、転送魔法で軍を送るのは、危険が大き過ぎます――」
シュナも転送魔法の危険性を知っていて、リムルに忠告して来たのだが。
「ああ、シュナの言う通りだ。だが、たった今、新たな術の開発に成功した!」
「おお!!」
「なんと!?」
「たった今!?」
「そうだ。これで、クレイマンの策の上をいく。後はお前達次第だ、必ず勝て!!」
「「「「「ハハーーッ!!」」」」」
リムルの言葉に、その場にいる全員が沸き立つ。
これで後手に回ったリムル達が、先手を打てることになる。
げに恐ろしきは、
もし、
〝番外魔王〟からの
そして、
クレイマンに取って、これほど不幸な事は無かった。
敵に回しては絶対にいけない魔物、リムル・テンペスト。
そして、深く関わってはいけなかった〝番外魔王〟の二人。
クレイマンのミスは、この二点に他ならないのだが……。
クレイマンの想い描いた策のパズルが、少しづつ欠けていき始める。
重要なピースが二つ欠け、それは加速していく。
そして、最後の重要なピースは……
未だ沈黙を守る。
三十八話を読んで頂きありがとうございます!
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