忍びが転生したら〝異世界珍道中〟になった件   作:にゃんころ缶

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 お待たせしました。四十四話です







44話 魔王達の宴(ワルプルギス)

 

 

 新月の夜。

 

 

 ツキハとコハクは、隠れ家の庭にあるベンチに腰掛けていた。

 

 何とはなしに夜空を見上げている二人。

 

 その顔は……凄まじく、不機嫌な顔である。

 

「あぁー めんどくさぃー ねえ、あたしらが行く意味あるの?」

「そんなん知りまへん。ギィがなんか、企んでるんやろ」

「そう? で、クレイマンの奴さぁ。ミリムをあんなガラクタで支配とか、めっちゃ笑うんだけど?」

「せやねぇ。まあ、ミリムもあんな感じで〝支配〟されてますのやから、好きに遊ばしとき」

「そうなんだけどさぁ。なんかさ、最古の魔王舐め過ぎじゃない? たかだか魔王になって三百年あまり……勘違いもここまで行くと逆に清々しいわね」

「ええんちゃいます? しょせんうちらは魔物や、強いか弱いしかあらへん。ギィは、これを機に――魔王を名乗る資格が無い者を淘汰する腹ですやろな。それにうちらは、魔王ではあらしまへんが……あんま新参者に、軽う見られるのは腹立ちますから、なぁ」

「だねぇ~。なんなら、三千年前みたいにぶっ殺してもいいんだけどねぇ」

 

 二人は話しながら剣呑な顔と、身を斬るような殺気を放つ顔を交互に見せながら、呟いていた。

 

 三千年前、とある新参魔王から二人は喧嘩を売られた。

 

 〝番外魔王〟? ふざけんてんのか? 事ある毎にそう因縁を付けて来ていたが、二人は相手にもしなかった。

 

 ある日、その新参魔王は配下二千を引き連れ、 ツキハとコハクをとある平原に呼び出し――

 

 愚かな事に、襲った。

 

 結果は……。

 

 配下共は、コハクが放った〝核撃魔法〟により、一瞬にして塵と消えた。

 

 新参魔王は、ブーストされた知覚すら及ばない、ツキハの放つ神速の抜刀術により――

 

 〝魔核〟ごと体を両断され、即死した。

 

 そう、繰り返される〝天魔大戦〟を生き延びて来た魔王達と、〝番外魔王〟。

 ここには、越えられない壁が確かに存在したのだ。

 

 そして、今――

 

 この壁に、手を掛けた者が現われた――

 

 

 ――それは、リムル――

 

 

 

 準備も整い、魔国連邦(テンペスト)魔王達の宴(ワルプルギス)の会場までの案内を待つリムル。

 

 リムルは場所を知らないので、ラミリスに同行する形にしたのだが、因みにラミリスもその場所を知らないらしい。

 

 なぜ知らないのか? とリムルが尋ねると。

 

「いっつも誰かが迎えに来てくれてたから!」

 

 という、なんとも納得のいく返答が返って来た。

 

 そろそろ二十三時を回る頃、お迎えではなくベニマルから連絡が入る。

 

『どうした? 何か問題か?』

 

 何事かと応答すると、落ち着いた声でベニマルがリムルに要望を出して来た。

 

 それは――

 敵勢力との交戦が始まり、既にその戦力と力量を見切ったと――

 

 ベニマルはリムルの覚醒で得た、〝祝福(ギフト)〟により、進化した。

 そう、妖鬼(オニ)へと。

 

 シュナ、ソウエイやハクロウなども妖鬼(オニ)へと進化した。

 種としてはかなり高位の存在へと進化し、一種の精神生命体ともいえる。

 

 ベニマルが得た能力(スキル)――

 ユニークスキル『大元帥(スベルモノ)』――

 

 力を制御する事に特化した能力(スキル)

 

 この力は、個人の戦闘だけではなく軍勢を率いた戦闘でも、その力を発揮する。

 兵の動きを力の流れに見立て、予見に近い精度で勝敗を読み解けるのだ。

 

 これは、あらゆる戦況に対して即座に対応し、全軍に指示を出せる。

 

 更に率いる軍には、大幅な補正が掛かっていた。

 このユニークスキル『大元帥』には、『軍勢鼓舞』という効果もあり、個々の力が三割増し、ひいては軍勢の強さも三割上昇するという、全軍バフ。

 

 もうこれは、反則に近い力であった。

 

 そんなベニマルだからこそ――

 

 開戦と同時に勝利が見えたらしい。

 

 そして、リムルにある提案をする。

 

『リムル様。こちらから敵本陣に攻め込みたい。せっかくだから、霧の先にあるクレイマンの城を落としてやろうと、思ってな』

『危険じゃないか? まだ開始早々で勝敗も決まってないし……ってか、なんで霧の先に城があるなんて、断定できるんだ?』

 

 ベニマルの提案にリムルは、なんで敵の城の位置が確定でわかった? という疑問を口にした。

 

 それにベニマルは――

 

『ああ、これは。〝ある者(サンコ)〟が、教えてくれた情報なんです。この情報に嘘はありません。大丈夫です、確実な情報です』

 

 リムルはそこで気付いた、恐らく〝番外魔王〟の手の者だろうと。

 ベニマルの自信に満ちた言葉にリムルは、それならばと許可を出す。

 

 そこでベニマルが、攻め込む者の名を告げようとすると――

 

『お待ちを、お兄様!!』

 

 リムルとベニマルの『思念伝達』に割り込んで来たのは、シュナだった。

 一応秘匿回線なのに、簡単に割り込まれて驚くリムルとベニマル。

 

『お、おお。どうしたシュナ?』

 

 うわずった思念(こえ)で答えるベニマル。

 

『どうした、ではありませんよお兄様! クレイマンという魔人は、人を操る危険な力を持つそうではありませんか。危険すぎます――』

『いや、それなら対策を講じて――』

『――駄目です!! どうしてもと言うのなら、私も参ります!』

『『え!?』』

 普段大人しいシュナがとんでもないことを言い出し、タジタジになるリムルとベニマル。

 

 更に――

 

『と言う訳ですのでリムル様、私に出撃許可を下さいませ!』

 

 と、にこやかにシュナに言われ、戸惑うリムル。

 危険な場所にシュナを生かせたくないが……シュナの言う分にも一理ある。

 万が一、城に突入した者が操られても困るしなと、リムルは内なる葛藤で頭を悩ませる。

 

 そこへ――

 

『リムル様、御心配には及びません。自分がシュナ様をお守りします』

『ワシもおりますれば、敵本丸の様子を覗くくらいならば問題ありますまい』

 

 ソウエイとハクロウが『思念伝達』に加わり、リムルを説得する。

 どうやらシュナが援軍として、二人を呼んだようだ。

 

 シュナの我が儘は珍しいので、リムルは許可を出したい気持ちはあるが、もし万が一、という思いがリムルに二の足を踏ませていた。

 

「リムル様、私とて怒っているのです。クレイマンを許せぬこの気持ちを、抑えるのが難しいのです!」

 

(ああ……その気持ちはわかるよ……。俺だけじゃなく、皆もやるせない気持ちを抱いていたんだな)

 

 そしてリムルは、シュナの思いに――

 

『わかった、シュナの参加を認めよう。ただし、ソウエイとハクロウはシュナの安全を優先する事。いいか、絶対に無茶はするな。想定外の戦力を確認した時は、迷わず引け。いいな?』

『私は転移出来ますので、万が一の時でも大丈夫です。リムル様』

『そうじゃな、ワシの方が逃げ遅れそうじゃ』

『我々は精神攻撃への耐性はありますので、そうそう遅れは取らぬでしょう。それに、シュナ様がいるので、その心配は皆無です』

 

 シュナが微笑みながら返し、逃げる気などさらさらないハクロウが言い、ソウエイが言葉を付け加える。

 

 オーガ――ジュラの大森林に住んでいた戦闘集団であった。その元オーガの里の姫、シュナ。

 

 シュナも守られるだけの存在ではなく、武人ベニマルの妹であり――

 妖鬼の姫であり、武人なのだ。

 

『では、許可を出す。しかし、くれぐれも状況は見極めるようにな。それでだ、念の為に作戦開始は魔王達の宴(ワルプルギス)開始直後、0時とする』

『『『了解しました!!』』』

 

 こうしてクレイマン本拠地の探索及び襲撃が決まった。

 

 0時を前にしてリムルは、ヴェルドラから魔王について聞いてみた。

 

「我は小物には興味はないのだ」

 

 そう言いながらも、知っている事をリムルに話し始める。

 

 ヴェルドラが封印された後に、魔王になったのはレオンのみ。

 その後は、クレイマン、カリオン、フレイが魔王になったと、ツキハとコハクから聞いたらしい。

 

 ヴェルドラは各地で暴れ回っていたので、戦った魔王もいると言った。

 そう、その時はツキハとコハクが一緒に戦ってた時もあると、言う。

 

 二千年近く前にツキハとコハクを誘い、吸血鬼族の都を一緒に攻め滅ぼした事があると、笑いながら話す。

 その時は、マジ切れした吸血鬼族に追われて大変面白かったと、のたまう。

 

 この吸血鬼族の都を滅ぼしたのは、ツキハとコハクのやらかしにカウントはされていない。

 あくまでも、首謀者はヴェルドラなのだ。

 

 吸血鬼族の中に華奢で美麗な吸血鬼がいて、他と隔絶する強さを誇っていた者がいたと言う。

 そして、その吸血鬼をかなり煽っていたのが、ツキハとコハクだと言った。

 

 その時以降吸血鬼達は姿を消して見ていないと、ヴェルドラは話す。

 ただ、ツキハとコハクは知ってそうな事を言ってたような、そうでないようなと曖昧な事を言い、まあどうでもいいだろうと、笑い飛ばすヴェルドラ。

 

「名は何と言ったかな……。確か、ル、ルルナ? いや、ミルク? ミルスだったかな? うーん……。ともかく、本気ではなかったが我と遊べる程度には強いヤツだったので、せいぜい気を付けるのだぞ? 因みにその吸血鬼にツキハとコハクは、二人がかりでやっとだったな、あの時は。今なら、一人でも十分いけるだろうよ」 

 

 その話しに横から。

 

「ああ、今はヴァレンタインって男が魔王になってるよ!」

 

 一緒に聞いていたラミリスがそう教える。

 

 千五百年前に代替わりしたともラミリスは言った。

 

 リムルは、ヴェルドラへの恨みが消えてるといいなと思い。

 ヴェルドラとツキハとコハク……コイツら絶対に悪友だろと、苦笑いを浮かべるリムル。

 

 

 次に巨人族の魔王ダグリュール。

 この魔王とは、何度か喧嘩して勝負がついていないと話した。

 

 ヴェルドラが名前を憶えているだけあって、かなりの強者だなとリムルは考えた。

 

 後は悪魔族(デーモン)

 

 何度か集団の悪魔族を蹴散らしたと言い、悪魔族は肉体が滅びても時がくれば再生するとも説明をした。

 そして、ツキハとコハクはもこの特性を持っていて、再生復活スピードは悪魔族より早いと笑い言う。

 

 リムルがそんな事言って大丈夫なのか? と問うと。

 ん? この事は二人と戦った事がある者には周知の事実だぞと、当たり前のようにリムルに言ったヴェルドラ。

 

 ただし、その悪魔族達の王とは戦ってない、と。

 北方の大陸の永久凍土に居城があると話し、あそこは寒くて人も住んでいないので行かなかったと、ヴェルドラの弁。

 

「まあ、あんな何もない所には、行く必要もないのだ。そうだ、ツキハとコハクに聞けばよいぞ。あの二人は、度々あそこに呼び出されているからな。クアハハハハハ!」

 

 ヴェルドラは言葉を濁し、笑って誤魔化す。

 

 リムルは、何があるんだろうと聞くが教えてもらえず。

 なんでツキハとコハクが、度々呼び出されているんだ?と聞いても、本人達に聞くとよいぞと逃げ。

 

「いや、アイツらがどこにいるかわかんねえし! 味方でもないから教えてくれないだろう? 下手すると情報料と称して、法外な金額を請求されるんじゃねえか?」と押し問答を繰り広げるリムルとヴェルドラ。

 

 そんなやり取りにラミリスが割り込む。

 

「そうだよね、ギィは強いからね。ギィとミリムとアタシが最古の魔王なんだよ!」

 

 そのラミリスの言葉に、なんだか大した事がないように感じる感覚に、リムルは不思議に思う。

 とりあえず、その話題は保留にしたリムル。

 

 そうしてリムルは、残る魔王は後何人だ? と考える。

 

 会った事があるのは、ミリム、ラミリス、カリオン。

 話に出て来た、ヴァレンタイン、ダグリュール、ギィ。

 フォビアが言っていた、フレイ。

 

 そして、レオンに敵のクレイマン。

 

 残る一人は……。 と考え呟いていると。

 

「ああ、それはディーノちゃんだね。アタシ以上にサボるのが好きな魔王だよ!」

「同類がいた」

 

 ラミリスの言葉に、リムルがポソリと呟く。

 

「同類いうな!」

 

 それにラミリスが怒りながら返す。

 

 そんなラミリスを横目にリムルは、これで十人だなと聞いた情報を頭の中で纏めていく。

 実力の高い魔王が多いし、これは注意しながら行かなければと気を引き締めるリムル。

 

 そこでふと、気になった事を口にする。

 

「そう言えば、〝番外魔王〟の二人は来るのか? 仮にも魔王が付いてるんだし――」

「来ないわよ。ツキハとコハクは、魔王であって魔王じゃないもの。だから、来ないワケ。実力は十分(じゅうぶん)なんだけど、頑なに魔王を名乗らないのよさ。なんでだろう?」

 

 自分で言って、首を傾げるラミリス。

 

「いや、なんでだろうって、俺が聞いてるんだけど?」

「え? あ、うん。あれね、ギィが呼び出せば来るわね。あの二人、たまに呼び出されてギィのところに行ってるのよさ」

「その呼び出しって、なんの呼び出しなんだ?」

「え? 知らない」

「え……?」

 

 リムルの問いに、知らないと答えるラミリス、しばしお互い顔を見合わせ固まってしまう。

 

 そうしているところへ、突然空間の歪が起きる。

 

 お迎えの時間が来たようだ。

 

 

 禍々しい門が、リムル達の前に出現した。

 

 空間が安定すると門が開き、中から暗光色(あんこうしょく)のメイド服を着こなした緑髪の美女が現われた。

 

 そして、ラミリスに向けて一礼する。

 

「お迎えに参りました、ラミリス様。そちらが例の方ですか? 宜しければ、御一緒にどうぞ」

 

 それだけ告げると、門の脇に控えて目を伏せる。

 

 この女悪魔にリムルは、只ならぬ雰囲気を感じた、それは……。

 ディアブロと同じ、同種の威圧。

 

 そう、この女悪魔はディアブロと同じ悪魔公(デーモンロード)

 危険な相手、そうリムルは判断した。

 

「お、ミザリーじゃん。久しぶり! ギィは元気?」

 

 そんな危険な女悪魔を相手にしても、ラミリスは気にしない。

 ある意味、大物かも知れないラミリスである。

 

「私如きが主様の心配をするなど、畏れ多き事で御座います故……」

「あ、そう。相変わらずだね、アンタも。まあいいけど」

 

 そう言うとラミリスは、パタパタと門の中に飛んで行った。

 それに、トレイニーとベレッタが続く。

 

 リムルも、ここで置いていかれると場所がわからなくなると、慌ててラミリスに続いて門の中に入っていく。

 

 

 この先に待つのは――

 

 この世界の支配者達。

 

 

 しかし、リムルは恐れはしない。

 

 何故なら、この世界の最強の一角となったのだから。

 

 

 

 

 

 隠れ家の庭のベンチに座っている、ツキハとコハク。

 

 

 はぁ…… 時間だわ いくか コハク

 

 せやね いきましょか ツキハ

 

 

 

 




 四十四話を読んで頂きありがとうございます!

 次回の更新もよろしくお願いします!






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