忍びが転生したら〝異世界珍道中〟になった件   作:にゃんころ缶

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 お待たせしました。四十七話です


※作中で魔猫の種を、三毛猫とかキジトラ猫とか、現存する種で表現していますが。
 これは読者の皆様に、表現的に伝わりやすいかなと考え、現存する猫種で書いています。

 転スラの世界にも似たような猫はいるだろうと作者の考えであり、そこは御容赦の程を頂ければ有難いです。









47話 ぴゃっ? 御役目完了っす! 

 

 戦場に木霊(こだま)する、倒され命の灯が消え屍と化す魔人達の断末魔。

 

 有利な戦況のはずが、逆にこちら側の圧党的な劣勢に陥り、混乱するクレイマン軍勢。

 

 やけくそに敵に突っ込む集団もいれば、在る者は戦意を完全に失いその場にへたり込む者。

 闇雲に逃げ惑う魔人達など、クレイマン軍の指揮系統は完全に機能しておらず、それはもう……万単位の烏合の衆と化し、もはや(いくさ)と呼ぶには言い難い、あまりにも一方的な有様であった。

 

 そして。

 

 ヤムザは、戦場からの報告を受け……激しく困惑していたのだ。

 

(なぜだ、なぜに、こうなった……。ありえん、ありえんぞ!)

 

 圧倒的に不利な状況、本来ならこちら側がそうなるはずだった――いや、約束された勝利のはず、だった。

 しかし、現実は違った……もはや、態勢を立て直すのも困難な状況に追い込まれていた。

 

 敗北など考えたくも無い、ヤムザ。

 

 クレイマンの怒りに触れるのは明白、なんとかしてこの状況をひっくり返し、勝利をもぎ取らなければならない。

 

 だが、次々と入って来る絶望的な報告に、もはや不可能と言うべきだろう。

 

 それを理解出来る程には、ヤムザにも理性が残っていた。

 

 ヤムザは考える……他に動かせる戦力がないか、と。

 

 そんなヤムザに匹敵する魔人は、示指(じし)のアダルマンと母指(ぼし)九頭獣(ナインヘッド)のみ。

 

 アダルマン、本国の防衛を任された死霊(ワイト)

 

 生前は名のある司祭だったが、死んだ今となってはそれは意味をなさない。

 クレイマンの呪法により魔物としての力を増大させ、数多(あまた)不死系魔物(アンデッド)を従える死霊の王(ワイトキング)となっていた。

 

 生前に有していた聖なる力は、生者を呪う不浄なる力へと変換された、アダルマン。

 

 その力は膨大だが、知能が低いのが弱点で会った。

 クレイマンに与えられた命令――侵入者の抹殺しか出来ないのである。

 だから、この(いくさ)には、参加させられなかった。

 

 もう一方の九頭獣(ナインヘッド)、彼女は超希少な最上位の魔物であり、妖狐(ようこ)

 だが、まだ三百才と非常に幼く、その尾は三本しか生えていない、成長すれば九本の尾を持つ妖狐となる。

 

 そんな九頭獣(ナインヘッド)魔素量(エネルギー)はヤムザを凌駕し、クレイマンに並ぶ程であった。

 しかし、九頭獣(ナインヘッド)はクレイマンと共に、魔王達の宴(ワルプルギス)に同行している。

 

 そうなると……。

 

(――やはり、アダルマンに頼るしかないか)

 

 問題は、どうやってアダルマンをここに呼び寄せるかだが……。

 

 いや、ここに今すぐ呼び寄せるなど出来るはずも無かった。

 

 ならば、一旦魔王ミリムの領地に逃げ込み、そこへアダルマンを呼び寄せて合流――

 そして、一気に反撃に移る……それが、最善の手かと、ヤムザは考える。

 

 アダルマンを動かすのは難しいものの、やってやれない事はないだろう、と。

 

 どちらにせよ、このまま敗北を(きっ)すればヤムザが粛清されるのは間違いないのだ。

 

(クレイマン様は恐ろしき御方……。私であっても簡単に切り捨てられるはず……。運よく生き残っても、精神を壊された操り人形などなりたくはないぞ……)

 

 自分の末路を想い描き、如何にこの状況を切り抜けるか、思考を巡らせる。

 

(忌々しいが、この場での敗北は認めよう。だが、最後に勝利するのは私だ!)

 

 最後の悪あがきみたくヤムザは、まだ勝利に固執していた。

 

 そう思い戦場に目を向けると――

 ヤムザの目に飛び込んで来たものは、驚愕すべき光景だった。

 

 先頭を緩やかに歩む者、金と黒のまだら髪の妖艶なる美女、アルビス。

 金色の錫杖(しゃくじょう)を手に、無人野を行くが如く悠然と向かって来る。

 

 その周囲を守るは、獣王の最高戦力。

 個々が一騎当千の強者達。

 

 象の獣人ゾルや、熊の獣人タロスの姿もあった。

 三獣士には及ばないものの、覇者たる獣王の配下に相応(ふさわ)しき猛者達である。

 

 それらの獣人の他に、紅い衣の集団が追随していた。

 紅い衣の集団は、高火力の炎術を用い、後方に控えさせていた予備戦力を焼き滅ぼしていく。

 

 ヤムザからすれば取るに足らぬ者共とはいえ、配下である魔人達より精鋭である事は間違いなかった。

 

 これは、非常に不味い状況に陥っていたヤムザ。

 

「馬鹿な……何故ここに三獣士いるのだ!? まさか奴等、軍勢を置いて自分達だけ救援に駆け付けたのか? しかし、それにしても……いや、そんなはずは……」

 

 信じ難い人物の登場で、ヤムザの困惑は極まった。

 

「もしかして奴等、こちらの本陣に最高戦力を差し向けたのかぁあああ!? 見張りは、何をしていたぁーーーー!」

 

 怒鳴るヤムザ同様、腹心の部下たちの怒鳴る声が響く。

 困惑しているのはヤムザだけではなく、上位魔人達にも動揺が広がっていたのだ。

 

「恐れながら申し上げます! 見張りと連絡が取れません、何者かに殺された模様です!!」

「なんだとぉーーッ!?」

 

 テンペスト獣王国混成軍の動きが余りにも早すぎて、ヤムザ側の対応が完全に出遅れていた。

 それに気付いた時には、既に致命的なまでに手遅れとなっていたのだ。

 

 見張りは始末された? 厳密に言えば殺されていない。

 〝忍魔猫〟達が意識だけを刈り取り、あたかも死んでいるように見せかけていたのだ。

 ようは、仮死状態にしていたのである。

 

 

 ヤムザは悟った……。

 

 もう、軍勢の立て直しとかそういう問題ではなく、このままでは脱出すら困難だと、顔を蒼褪め理解した。

 

(不味い、不味い不味い不味い不味過ぎる――ッ!! このままでは、私が生きてここを逃れる事すら困難になる!?)

 

 焦りという感情が、ヤムザを支配していく。

 

 一騎打ちならまだしも、あれだけの戦闘集団を相手に勝てると思う程、ヤムザは自惚(うぬぼ)れてはいなかった。

 

「時間を稼げ! 私は一度本国に戻り、アダルマンを連れて戻る。ヤツならば、死霊を召喚し軍勢を立て直す事も出来るだろう。急げ!」

 

 言い訳である。

 

 既に負けを悟ったヤムザは、全力で逃走する事に決めたのだ。

 

 幸いにもヤムザは自ら志願しクレイマンに忠誠を誓っていたので、他の五本指のような制約など何も受けてはいなかった。

 

 このままクレイマンに従うのは自殺行為、ならばこそ、さっさと見切りを付けるヤムザであった。

 

「ハハッ!」

「三時間は持たせて見せましょう!」

 

 腹心達が決意を込めた顔で言うも、そんな事はヤムザにはどうでも良かった。

 馬鹿な奴等だと、思うだけである。

 

 ヤムザは急ぎ転移魔法を発動させようとしたが――

 嫌な異変に気付く。

 

「発動しない? これは……『空間封鎖』か!?」

 

 何もかも、手遅れだったのだ。

 

 ヤムザ達がアルビスを視認した時、アルビスもまた、ヤムザ達を視認していたのだから。

 

 アルビスの能力(スキル)天蛇眼(ヘビノメ)

 

 エキストラスキルであり、各種状態異常――麻痺、毒、発狂、等々を敵に付与する力。

 視界に入った者に影響を及ぼす、凶悪な力だった。

 逃れるには、抵抗(レジスト)するか耐えるしかないという、恐るべき能力(スキル)

 

 そして、もう一つの切り札――

 ユニークスキル『制圧者(アッスルモノ)』。

 

 これは空間系の能力(スキル)であり、その効果は『思考加速・空間制御・空間移動』でありながら、敵の行動を阻害し、味方へ有利な状況を生み出す為の能力(スキル)である。

 

 アルビスの一瞥――ヤムザの部下の有象無象は、(ことごと)く無力化されていく。

 

 そして、ヤムザの転移魔法も『空間制御』によって打ち消されていた。

 だが、その『空間制御』をも上回る範囲で幻想領域を展開し、万が一にも絶対にヤムザをこの場から逃がさぬ絶対領域を、六匹の〝忍魔猫〟達が展開していた。

 

 五番から十番までの〝忍魔猫〟である。

 

『ナコ、あんたさ、もう少し力抑えなよ。バレるぜ? アルビス嬢ちゃんに』

『わかってるわよ。ウッサイわねトウコは。でも、あの影に潜んでいる者はなんだろうね?』

『ん? あれか? アルビス嬢ちゃんの影に、なんか隠れてるな。あれだ、隠し玉とかいうやつじゃねえか?』

『そうね。侮れないわね、テンペストの連中は』

 

 共にロシアンブルー種の魔猫の、ナコ(七子)トウコ(十子)である。

 

『もう二人共、じゃれ合うのは後にしてくださいな。手出し無用、これが主様からの(めい)ですよ』

『だがよイツコ。ニコの姐さんは、一人ぶっ殺してるぜ。今更じゃないか?』

『ムツオ、それはそうですが。今回はあくまでも影に徹する、これが私らの仕事ですよ』

 

 短毛白黒ブチ模様に長い尻尾が、綺麗な縞模様になってるイツコ(五子)。 

 全身白い短毛で、鼻の周りだけ黒いムツオ(六雄)

 

『しかし、あれだな。戦場に来て、戦いは無しとか暇すぎねえか?』

『まあ、そう言うなムツオ。たまにはよかろうよ。こんな時も必要じゃて我々には、な。がははは』

『ははっ、それもそうだな。主様からのゆっくりしろという(めい)だ、楽しむとしようや。なっ! (みんな)

『いや、もうゆっくりしてるし』

『だな! ここは見学と洒落込もうぜ! お手並み拝見だ! アルビス嬢ちゃんの』

『そうですね。ここは、お手並み拝見ですわね。三獣士アルビス殿の』

 

 白黒模様のキジトラ種コオ(九雄)が楽しそうに言い、茶色毛の雑種ヤオ(八雄)がそれに答え、ナコとトウコ、イツコも相槌を返す。

 

 

 これでこの領域でのヤムザの逃亡は、不可能となった、

 アルビスの『空間制御』に〝忍魔猫〟六匹による展開された広域幻想領域、これを突破できるのはもはや魔王クラスでしか無理な話である。

 

 

「仕方ない。本気で相手をしてやるか」

 

 この言葉に部下達は活気付き、「おお、ヤムザ様!」「共にいきましょうぞ!」「本気を出されたヤムザ様ならば、三獣士など恐れるに足りませんぞ!」と、口々にヤムザを称える。

 

 それを聞きながらヤムザは、愚かな者達だと思う。

 

(あの方が信じるものは、純然たる力のみなのだ……)

 

 ヤムザがどれだけ忠誠を捧げようとも、クレイマンは決してヤムザを認めはしない。

 使える駒、有能な部下のみとして、その寵愛(ちょうあい)を注ぐだけ。 

 褒美として、与えられてる特質級(ユニーク)氷結魔剣(アイスブレード)も、ただヤムザを強化するという理由があっただけ。

 

 それでもヤムザはクレイマンを敬愛していたし、クレイマンの持つ財を与えられる事で、利害の一致も得ていた。

 

 だが、クレイマンに命まで捧げる気など、毛頭なかった。

 

(……そろそろ潮時だな。ここを生き延びて、私は必ず返り咲く!)

 

 今回の失敗で、追われる身となり暫くは身を潜める事になるだろう。

 

 それでも、上位魔人の中でも特A級の実力を持つ自分ならば、誰か他の魔王が拾ってくれるに違いない。

 ヤムザはそう考えた。

 

『聞こえるか、アルビスよ。獣人きっての魔人、勇猛なる三獣士の貴様なら、私との一騎打ちを引き受けてくれような?』

 

 ヤムザは賭けに出て、アルビスに強烈な思念を放つ。

 

 ここでアルビスを打ち倒し敵の戦意を挫けば、それだけで流れが変わる可能性がある。

 そう上手くいかなくても、自身が逃亡できる可能性が生まれると考えたのだ。

 

『ええ、いいですわよ。魔王クレイマン配下、〝五本指〟筆頭のヤムザ殿。貴方に、格の違いを教えて差し上げますわ!』

 

 これこそが、クレイマンとカリオンと様の格の優劣を証明するでしょう――

 そういう意図を込め、アルビスが応じる。

 

(乗ったな、馬鹿めっ!)

 

 自分の賭けに乗った事で、内心ほくそ笑みを浮かべるヤムザ。

 

 

 一気に『空間移動』にて、ヤムザの下まで接近するアルビス。

 空間から現れたアルビスに、生き残った部下達が一斉に襲い掛かる。

 

 その行為は策とも呼べぬ策。

 

 獣人は単純なので、挑発には必ず応じる。その習性を利用した、単純極まりない策であった。

 

 自分達が少しでもアルビスを疲弊させれば、それだけヤムザが楽に勝利する確率が上がる。

 そう考えての部下達の特攻であった。

 

「馬鹿め、そんな下策が通用するかぁ!!」

 

 アルビスの叫びと同時に、より強烈な『天蛇眼(ヘビノメ)』を発動させた。

 

(来たっ!!) 

 

 アルビスが力を使うその一瞬こそが、ヤムザが必要とし賭けに出た、必勝の間。

 

「――()った!!」

 

 ヤムザが大地を蹴り、その場に蹴り上げられた土塊が舞い上がる。

 ヤムザは瞬時に間合いを詰め、アルビスを追い越すように背後に回りながら――

 右手に持った氷結魔剣(アイスブレード)を振り下ろす。

 

 その刃がアルビスの背中を斬り裂く、その瞬間――

 

 ギィンッ! 「甘いっすよ! そいう卑怯な作戦は、男らしくないっすね!」 

 

 と、何者かが叫びながらアルビスの影から飛び出してきて、ヤムザの剣を弾いたのだ。

 

 

「チィ、何者だ!?」

「ゴブタっすよ! こういう場合に備えて、隠れ潜んでいたっす」

 

 そんな説明をゴブタがしてる間に、影から次々と飛び出してくる者達がいた。

 

 それは、言うまでもなく『同一化』でテンペストウルフと一体化して四足歩行となった、狼鬼兵部隊(ゴブリンライダー)である。

 

 その高い運動能力と機動力を最大限に発揮し、まだ動ける魔人達に襲い掛かっていく。

 

「あら、私に内緒で? 道理で、何か変な気配を感じると思っていましたわ」

 

 あたかも知らない様に言いながら実は、アルビスは最初から気付いていた。

 それを知っていたからこそ、安心して一人で突っ込んだのである。

 

「へへ、ベニマルさんから命じられていたんすよ」

 

 飄々(ひょうひょう)とアルビスに答えつつ。

 後ろに飛び退きながらザッザッと軽快に左右にステップを踏み、ポンと高くジャンプすると――

 ヤムザに向けて不意打ちで鞘型電磁砲(ケースキャノン)をぶっ放した。

 

 くぐもった音と共に、音速を超える弾丸がヤムザを襲う。

 

 ヤムザの剣を弾いたその時に、ゴブタは勝てるはずの無い実力差に気付いていた。

 故に、ヤムザが小太刀を警戒しているこの時こそ、チャンスだと攻撃に出たのだ。

 

 ガギュンッ! ヤムザの目の前で激しい火花が散る。

 そんなゴブタの不意打ちの一撃は、ヤムザの剣によって無情にも弾かれた。

 

「雑魚が!! 邪魔をするな!」

 

 ヤムザが叫び、剣の切っ先をゴブタに向ける。

 

 それを見たゴブタは、バッと左横に飛び、そのまま左片手で側転をし。

 更に左片手だけで、バババっと連続バク転を決める。

 

「ちょこまかと!!」

 

 剣の切っ先で狙いを定め、ヤムザは魔法を発動した。

 ゴブタに向けて、水氷大魔槍(アイシクルランス)が飛ぶ。

 

「ぴゃッ!」

 

 バク転を終え、地面に左片手を付いたまま、ゴブタもまた小太刀から、水氷大魔槍(アイシクルランス)を放つ。

 

 放たれた二つの水氷大魔槍(アイシクルランス)は空中でぶつかり合い、派手な氷の砕ける音を響かせながら消滅した。

 

「――ッ、この魔剣と同等の威力だと!? しかも、無詠唱とは、雑魚の癖に生意気な……」

 

 そこで初めてヤムザは、ゴブタを敵と認識した。

 だがしかし、ゴブタからすれば既に万策尽きた状態であった。

 

(ヤバいっすよー! さっきの反応も見えなかったし、たまたま魔法だったから助かったけど、剣で突かれたら一発でアウトっすよ。これはもう、逃げてもいいっすよね?) 

 

 本音駄々洩れである。

 

 幸いにも狼鬼兵部隊(ゴブリンライダー)は一定の戦果を収めていたので、ここで退いても文句は言われないだろう。

 

 ゴブタは、撤退を決意する。

 

「それじゃあ、撤――」

 

 命令を下そうとしたゴブタの鼻先を、ヤムザの剣が過る。

 

「ぴゃっ!?」

 

 無意識に及び腰で一歩退いた結果、剣の切っ先が鼻を掠めただけで済んだ。

 

 しかし、ヤムザはそれを警戒する。

 

(この私の攻撃を三度も凌いだ、だと!?)

 

 三度続けば、偶然はあり得ない。

 何よりも、先程の音速を超える攻撃が、目の前の人鬼族(ホブゴブリン)がただならぬ実力者である事を物語っていた。

 

「ふっふっふっ、一騎打ちに助っ人を潜ませるとは、三獣士も堕ちたものよ」

 

 血走った眼で、ヤムザはそう(うそぶ)く。

 

 これはヤムザの策であった。

 三獣士に加えて謎の乱入者、この二人を同時に相手にするのは危険であると、ヤムザは判断したのである。

 

 この言葉に飛びついたのが、ゴブタであった。

 

(やったっす! これであの危険な魔人と戦わなくて、済むっすね!)

 

 歓喜を押し殺し、音よりも素早く――

 

「それじゃあ自分が、この一騎打ちの立会人を務めるっす!」

 

 そう高らかに宣言した。

 

 あくまでも、立会人。

 万策尽きた以上、邪魔になるよりいいのだ。

 

 何しろリムルからは、敗北は許されていても、戦死者を出す事は許されていない。

 

 不名誉な戦死……そんな不名誉な第一号にはなりたくないゴブタ。

 ゴブタも馬鹿ではない、だから不名誉な第一号など願い下げなのである。

 

「あら、なんなら譲ってもいいわよ?」

 

 アルビスが意地悪く言うも、ゴブタはそれを軽妙に聞き流す。

 

「獲物を譲るなんて、獣人の名折れになるっすよ? ここは自分が遠慮するんで、どうぞお好きに戦って下さいっす! それじゃあ、邪魔して失礼したっすよ」

 

 ゴブタ、本日最大の幸運、この意味のわからない言い分が通ったのだ。

 

「あらそう? 残念ね」

 

 軽い笑みを浮かべ、ゴブタに返すアルビス。

 もともと譲る気など、なかったのだ

 

 

 そしてゴブタは……。

 

 

(激ヤバかったすよ! あー良かったっす……)

 

 ほっと胸を撫で下ろすゴブタ。

 

(これで、御役目完了っすね!)

 

 完全上位者との、勝てる見込みも無いような戦闘

 それを、回避したゴブタであった。

 

 しかし、この危険回避能力の高さこそ、誇るべき力の一つなのだろう。

 

 

 

 

 




 四十七話を読んで頂きありがとうございます!

 次回の更新もよろしくお願いします!




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