忍びが転生したら〝異世界珍道中〟になった件   作:にゃんころ缶

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 お待たせしました。五十一話です


※猫に関する簡単説明です。

 猫を飼ってる皆様は御存じの行為で、知らない皆様にはなんだそれ? 
という事に関してなのですが。

 猫の行為で尻尾の毛が逆立つ、ボワッと毛が膨らんだように逆立つ行為。
 これは、驚いた時や警戒心露わにした時、めっちゃ怖い時などに行う行為です。

 後、猫が尻尾を忙しなく左右に振ったり、パシンパシンと床などに叩き付ける行為はイライラしてる時やものすごく落ち着かない時などにやります。

 そして、嬉しい時は尻尾をピンと真上に真っすぐ立てます。
 この尻尾を真上に立てて体を擦るつける時は甘えてる時や、相手にあなたが大好きよと表す行為でもあります。

 最後に、猫が飼い主とか好きな猫に自分の匂いを付ける行為なのですが。
 これは、自分以外の匂いが付いていたりすると、この人は私のものよと、猫の自己主張というか、猫の大事なもの? みたいな感じです。
 
 私の家も猫を三匹飼っているのですが、風呂から上がったりすると、つけた臭いが消えたの確認しに来て、三匹が代わる代わる体を擦り付けに来ます……(笑

 作中でこういった尻尾で感情を表現する描写を書いたりしますので、少しだけこの説明の事を参考にして読んで頂けると幸いです。









51話 Killier neko(殺し屋) 集団、襲来(前編

 

 

 零時になると同時に、シュナ、ソウエイ、ハクロウの三名は行動を開始していた。

 

 濃い霧に包まれた湿地帯。

 そこを抜けた先に、クレイマンの本拠地がある。

 

 本拠地の居城を目指し、密かに湿地帯へと侵入する三人。

 

 

 そして、それを察知したロモコ達。

 

『それじゃあ皆さん~、時間が無いから聞き逃さない様にお願いするわよー。聞き逃した子は、ワタシから、熱ーいお仕置きをプレゼントす・る・か・ら、ね!』

『『『『『お、おう(いらんわ、そんなもん!!)』』』』』

 

 ロロロオ(六百六十六雄)の『思考加速』付き『思念伝達』に、(オトコ)が一斉に嫌な顔で返し、(オンナ)は半目で無言になっていた。 

 

 

『まず一つ。皆気付いてるでしょうけど、この霧は『魔力感知』を妨害してるのは、御存じね? 二つ目。『空間干渉』系の効力もあるの。ワタシ達の幻想領域に酷似しているかしらぁ? 三つ目。ここを守るアダルマン……拠点防衛特化型の不死系魔物(アンデッド)。魔王に匹敵する魔素量(エネルギー)を持ってるわ。と、言ってもただそれだけなのだけれど、ね。それでも、油断は出来ないわよ。霧の中では『思念伝達』や『空間転移』すらも妨害する……そして、迷わせ誘き寄せる事も、ね。まあ、まぎれもなく死の領域かしらね。ここは、ウフッ』

 

 後ろ足で二本足立ちして、腰に両前足を当てたまま説明をするロロロオ。

 それをいつになく真剣な顔で聞く九十九匹の〝忍魔猫〟達。

 

『そして、いい? ここからが重要なの。今から(みんな)は、自分を幻想領域で包みなさいな。出来る限り小さく、自分の身体だけを包むのよ。でも、そうすると現世との接点が無くなって幻想領域内でしか行動出来なくなる訳だけど。でも、そうならないようワタシの幻遁で、特殊な空間領域を創ってあげるわよん。ようは、霧が発する魔力妨害の外で行動できるの。そうすれば、『思念伝達』も距離は短くなるけれども使用できるし。何より、アダルマンに探知されずにここを抜けれるわよん。あ! 言っておくけど『空間転移』も出来るけども、しちゃだめよう~。座標が狂うから、どこに転移するかわからないからねえ。ウフフッ』

 

 ねっとりと妖艶に(のたま)うロロロオに、引きつった顔の(オトコ)達の尻尾の毛が一斉にボワッと逆立つ。

 

『それで、この幻遁を縦に長く掛け。効果範囲を前後に展開して、貴方達の幻想領域に重ね掛けするわねえ。個々を連結して架空領域で包むのよ』

『何故ですか?』

 

 ロロロオの言葉にロモコが問いかける。

 

『何故って? それはね、その方がワタシの負担が少ないの。全員を包むと、ワタシの高速移動がちょっと困難になるのよん。理由は、この術が魔素(エネルギー)をドカ喰いするからなの。だから、皆の幻想領域を触媒にしてワタシの負担を減らすのよん。皆はロモコを先頭に、縦一列の一列縦隊での移動になるからねえ。相手の尻尾から体一個分の距離でついて行くのよ。わかったかしら?』

 

 そこで一度『思念伝達』を切り、一同を見回すロロロオ。

 

『で、ワタシの架空領域は特殊で、現世と亜空間の狭間に対象を隔離するの。しかも両方の空間にアクセス出来るわよん。だから、霧の影響は受けないし、現世との行動にも支障はないのよん。でも――この範囲から出てしまうと、即座にアダルマンに探知されるわよ。いい? 死に物狂いで前の相手に喰らいつくのよぉ。まさか……(あるじ)様の配下でありながら、そんな間抜けは、いないわよ、ねえ?』

 

 ロロロオは最後の言葉を、どすの利いた『思念伝達』で言う。

 

 

『『『『『いねえわ! アホが!!』』』』』

 

 (オトコ)達がそれに返すように言葉を吐き捨る。

 

 すると……。

 

『『『『『誰がアイツの前後にいくんだ?』』』』』

『オレはいやだ』

『俺も嫌だぞ!』

『お前行けよ?』

『オマエこそいけよ!』

『僕は遠慮する』

『はあ? 何が遠慮するだ、ぶっ殺すぞ!』

『あ、オイラいやだからね』

『私は除外で頼む』

『ふう……皆我が儘だな。しかし、(わし)は御免(こうむ)るがな』

 

 

 そこで、更に尻尾の毛を逆立て、誰がロロロオの前と後ろにいくかで言い争いを始める始末。

 それを(オンナ)達の内二匹が、仕方ないと言ったようにロロロオの前後に、『『私が並ぶ』』と言う。

 

 それを聞いたロロロオが哀し気に『そんなにワタシの前と後ろが、嫌なのかしら……』と言い、しょげ返る。

 

 そこへ――

 

『『『『『いいから、早よやれ!!』』』』』

 

 (オンナ)達が、一斉に『思念伝達』で叫ぶ。

 

 

『はいはい、わかったわよ。もう雌達(オンナ)はガサツなんだから。それじゃあ、いくわよー』

『『『『『あ゛あ゛ッ!?』』』』』

 

 雌達(オンナ)が声を荒げても気にもしないロロロオ。

 おもむろに両前足を眼前で叩き合わせて、ロロロオは幻遁を発動させる。

 

 〝幻遁 架空陣・仙界(せんかい)〟 

 

 『空間操作』に()けたロロロオの、架空領域忍魔術。

 それに合わせて皆が、幻想領域で自分を包んでいく。

 

 そして、ロロロオを真ん中に九十九匹が前後に一列縦隊で並ぶ。

 

『ロモコ、貴女の突入の合図と共に、皆が貴女について行くわ。号令よろしくね』

『ええ、ロロロオ。それでは、皆さん――準備を!』

『『『『『おおっ!!』』』』』

 

 

 霧の領域に入って来たシュナ達を注視し、霧の領域に突入するタイミングを計るロモコ。

 〝忍魔猫〟達が背を低くし、いつでも飛び出せるようググッと力を、四本の足に溜めていく。

 

 薄く波打ち、空間ごと姿が揺らめきながら、〝忍魔猫達〟はロモコの号令を待つ。

 

 

 そして――

 

 シュナ、ソウエイ、ハクロウの三人が完全に霧の領域に入る。

 

 

 湿地帯の先には怪しげな沼が多数あり、ゴポゴポと嫌な音を立てガスが湧き出ていた。

 それが霧の原因になっているようで、不気味な雰囲気を醸し出していた。

 

 三人は侵入して直ぐに視界が霧で覆い隠され、ハクロウが『魔力感知』を妨害されているのに気付き。

 ソウエイもそれに頷き、以前調査に来た時にこの霧が原因でここの調査を断念したと、シュナとハクロウに告げる。

 

「なるほどのう。圧倒的にこちらが不利という訳じゃな」

「はい。ハクロウ様は問題なく、俺も『隠密』で気配を断てます。しかし、シュナ様は――」

 

 ソウエイの言う通りハクロウは隠形法の極意〝(おぼろ)〟で、見事に気配を断っていた。

 そのソウエイも、隣に立たれてもその存在を気付かせぬ程に、気配を見事に断っている。

 

「私も大丈夫ですよ」

 

 問題はシュナであったが……。

 

 シュナもまた、完璧に気配を断っていたのだ。

 

「ほう、ワシの〝朧〟と原理は似ておるが、<幻覚魔法>と<妖術>の組み合わせですな。流石はシュナ様じゃ」

 

 それはシュナが編み出した手法。

 リムル程ではないが、ユニークスキル『創作者(ウミダスモノ)』によって、独自の魔法技術を創造していたのである。

 

 それからは、ソウエイが『思念伝達』すら通じないこの霧の領域で連絡を確保する為に、『粘糸鋼』をハクロウとシュナに握らせて緊急時の連絡手段とした。

 

 そして、注意深く霧の中を済んでいく。

 

 

 暫く進むと――

 

「しまった……。私達は罠に嵌められたようです」

 

 進むこと数分経った頃に、シュナが足を止め呟く。

 

「罠ですとッ」

「敵の気配は――何ッ!?」

 

 ソウエイが言い終わらない内に、多数の気配が周囲に満ちていった。

 

「なんと……。これだけの数を、気配も悟らせもせずに……どこに?」

「いいえハクロウ! これは、私達が敵のど真ん中に、まんまと誘き寄せられたのです!!」

「そうか、この霧か! これが俺達の方向感覚を狂わせたのか……」

「なるほどのう、先刻より感じておった違和感の正体はこれであったか」

「その通りです、ソウエイ、ハクロウ。この霧は『空間干渉』を引き起こし、何処からの侵入者であろうと任意の地点まで――」

 

 シュナの説明する言葉が終わるより、その者が出現して来た。

 

『出ましたよ、皆さん』

 

 その者に対してロモコが声を上げ、皆が一斉に体を引き絞る。

 

 

 ソウエイ、ハクロウも周囲に潜む魔物に警戒しつつ、その者に身構えた。

 シュナも口を閉ざし、その者を注視する。

 

 純白の聖職衣を纏った、骸骨。

 それが、姿を現した者であった。

 

「なんという膨大な魔力、ですか……」

 

 シュナは額に冷や汗を浮かべつつ、呟く。

 

 一瞬クレイマンかと思ったシュナだが、それはないと即座にその考えを自ら否定する。

 何故なら、時刻は零時を回り、クレイマンは既に魔王達の宴(ワルプルギス)へ出発してるはずだから。

 

 となると考えられるのは、五本指の誰かという事になる。

 

 だが、目の前の存在は魔王に匹敵するかの如く貫録を漂わせていた。

 他者に仕えているのが不思議な位に、圧倒的な力を持つ魔人。

 

 そこでシュナが思い出したのは、ミュウランが教えてくれた魔人の事。

 拠点防衛に特化した者が、いると。

 

「そうか、貴方がアダルマンなのですね。この地の支配者――数多の不死系魔物(アンデッド)を従える、死霊の王なのですね……」

 

 ハクロウも『天空眼』で同じ結論を出し、ソウエイもまた二人の言葉を疑いもせず、心の刃を研ぎ澄ましていく。

 

 敵が何者であれ、殺す――それがソウエイの行動原理。

 

 まさにソウエイが行動に移ろうとした瞬間、それが先に動く。

 

「如何にも、余がアダルマンである。偉大なる魔王クレイマン様に御仕えする、この地の守護を命じられた者だ。下賤なる侵入者よ、大人しくその命を差し出すが良い。さすれば、苦しまぬよう殺してやろうぞ」

 

 圧倒的な魔素量(エネルギー)を持ち、それは一方的な死の宣告である。

 

 その無尽蔵かと思える魔素(エネルギー)に引き寄せられるように、周囲に万を超える数の不死系魔物(アンデッド)(うごめ)きだす

 

 カタ、カタカタタと骨の鳴る音が響き、ギチギチギチと肉の擦れる不快な音を奏でながら、シュナ達を囲むように布陣していく。

 

「やはり、囲まれています。この霧が〝方位結界〟と連動しているので、『空間転移』による脱出も不可能です。あらゆる通信手段も妨害されていますね……。この場を切り抜けるには、アダルマンを倒すしかありません」

 

 シュナも身構えながら、迷いなく告げる。

 

 その言葉を聞くや、即座にハクロウとソウエイが攻撃に転じた。

 

「ならば速やかに、敵の首魁(しゅかい)を落とすのみ」

「異論はない。俺の一撃は、死者すらも殺す」

 

 そう応じながら二人は、アダルマンに迫る。

 

 だがアダルマンは、そんな二人を前にしても不敵に笑う。

 

「フッフッフッ、身の程を知らぬ愚か者達よ。余が寛大な慈悲を示したというのに……。余の申し出を無下(むげ)にした報い、その身で後悔しながら受けるがいい」

 

 余裕な仕草で、アダルマンは右腕を一振りする。

 

 その瞬間――ギャギィンッ けたたましい金属同士がぶつかる音が鳴り響く。

 

 瞬足で間合いを詰め、仕込み刀から右逆手抜刀で繰り出すハクロウの左逆袈裟斬りを――

 アダルマンの前に出た騎士が受け止めたのだ。

 

 必殺の斬撃を受け止められたハクロウは、驚き一歩後ずさる。

 

 斬撃を受け止めた騎士は、A⁻ランクの魔物――死霊騎士(デスナイト)だ。

 

 しかしハクロウは、その一刀で気付いた。

 強力な魔物であるが、死霊騎士(デスナイト)風情がハクロウの斬撃を止めれるはずがない。

 

「そうか……貴様、只者ではなさそうじゃな。良かろう、本気で相手をするとしよう」

 

 ハクロウは正確に死霊騎士(デスナイト)の脅威を見抜いた。

 その強さは魔物の身体能力に頼るものではなく、鍛え上げた人としての技量(レベル)によるものだと。

 

 ならば、『天空眼』で見抜けるものではない。

 だからハクロウは自らの技量(レベル)で以って、相手をするのみ。

 

「………………」

 

 死霊騎士(デスナイト)は黙して語らない。

 死者の骸を元にした仮初の肉体には、喋る機能がないのだ。

 

 しかし、その窪んだ眼下には蒼白き炎が揺らめき、紛れも無く意思の光を彷彿させる。

 ハクロウからの挑戦を、確かに受け取ったという元人間の、誇り。

 

 人であることを止めても尚、誇り高き騎士なのだ。

 

 両者の魔素量(エネルギー)に、大きな差はない。

 肉体強度もほぼが互角。

 

 あるとすれば――それは……。

 

 そして、ハクロウが胸元に構えた仕込み刀の鯉口を切り――

 

「参る」

 

 ハクロウが一瞬で間合いを詰め、刃がぶつかり合い火花を散らす。

 達人同士の戦いが、ここに始まった。

 

 

 そしてまた、アダルマンに忍び寄ったソウエイだが――

 眼前に湧き出た巨大な影に、その一撃は(はば)まれた。

 

「チッ! まさか、腐肉竜か!?」

「いいえ、ソウエイ! そんな甘い相手ではありません! 魔素量(エネルギー)だけを見れば貴方より上。死せる魔物の頂点――死霊竜(デスドラゴン)です!!」

 

 霧で先も見通せぬ中、シュナが正確に相手の正体を読み取り。

 それを聞いたソウエイも、苦々し気に表情を引き締めた。

 

 この相手にシュナを守りながらでは、勝手が違って来る。

 ハクロウも、死霊騎士(デスナイト)相手に手が一杯。

 

 出し惜しみは無しだと、ソウエイは即断する。

 

「死ね! 操糸万妖斬(そうしばんようざん)!!」

 

 ソウエイの放てる最大の攻撃技。

 

 ユニークスキル『隠密者(シノブモノ)』の『一撃必殺』効果を付与され、万に枝分かれして敵を斬り刻む『粘糸鋼』。

 

 たとえ相手が半精神生命体であろうとも、万華鏡を覗いたかのように美しい血の華を咲かせ死に至らしめる必殺技のはず、なのだが……。

 

 確かに精神体(スピリチュアル・ボディ)を斬り裂いた感覚はあった――

 

「馬鹿な、再生しただと!?」

 

 初めて見せる、ソウエイの焦り。

 

 二十メートル級の巨体をバラバラに切断したはずなのに、何事も無くその肉体を復活させた。

 それは『超速再生』をも上回る、『不死』とでも呼ぶべき力であった。

 

「ならば、その魂をも滅して――」

 

 ソウエイが覚悟を決めたその時、シュナの冷静な声が響く。

 

「ソウエイ、落ち着きなさい。冷静に分析できる貴方ならわかっているのでしょう? 死霊竜(デスドラゴン)には、勝てないと」

「しかし――」

「その竜の魂は、あのアダルマンという魔人の中にあるようです。ですから、貴方は私の事は気にせずに足止めに専念しなさい。私がアダルマンを倒します」

 

 ソウエイの前まで来たシュナが、静かにそう告げる。

 

「シュナ様、それは危険です!」

「いいえ、ソウエイ。私はね、怒っているのです」

 

 普段は見せぬ冷ややかな笑みを浮かべ、シュナはソウエイの心配を一蹴する。

 その笑みに隠され静かに輝きを増す瞳は、シュナの激しき気性を表していた。

 

 それを見たソウエイは、言葉を失う。

 

 オーガの部族を束ねる姫巫女だったシュナの言葉には、他者を従える力が備わっている。

 その力は今や、〝異世界人〟水谷希星(キララ・ミズタニ)のユニークスキル『狂言師(マドワスモノ)』より強い。

 

 シュナはもう、皆に守られるだけの存在ではないのだ。

 

 それを知るソウエイの答えは、一つ。

 

「御意。御武運を、シュナ様」

「貴方もね、ソウエイ。その竜は任せましたよ」

 

 ふわりと微笑み、シュナはそう言った。

 

 ソウエイは頷き、死霊竜(デスドラゴン)へ殺意を向け、その場から引き離していき。

 シュナを信じ、自身への戦いに身を投じる。

 

 

 一人その場に残ったシュナは、静かにアダルマンと対峙する。

 

 それを見たロモコが、合図の言葉を放つ。

 

『いきます!』

 

 バンッと弾かれたようにロモコが霧の戦場を駆けていく。

 

 それを合図に、次々と〝忍魔猫〟達が連なる様に、一匹、また一匹と連続で発射された弾丸のように駆けだしていった。

 

 ロモコの駆ける速度が時速九百キロで、固定された。

 超音速にならないよう、亜音速での移動である。

 

 浅く波打つ空間が、一つの蛇のように揺らめき戦場を駆け抜けていく。

 

 

 その微弱な空間の揺らぎを、シュナだけは――捉えていた。

 

(そうですか、ここにも来ていたのですね。霧の領域すらも騙し通す、その能力(スキル)……。中々に末恐ろしいものです)

 

 そう心の内でシュナは呟きながら、右横三十メートルの所を駆け抜ける〝忍魔猫〟達にチラリと目を向け、フッと微かに笑みを浮かべる。

 

『あらーん、あの鬼っ()、ワタシ達に気付いたみたいよん。何か、悔しいわねえ』

『〝真なる魔王〟リムルの配下です。あの術者、侮れませんよ。無駄口はしない、急ぎますよ』

 

 悔しそうに言うロロロオに、ロモコが返し。

 一列縦隊で蛇のようにうねりながら〝忍魔猫〟達は、霧の戦場を駆け抜けていった。

 

 

 クレイマンの居城へと急ぐ百匹の、〝忍魔猫〟。

 

 その架空領域に隠れ移動するロモコ達に気付いた、シュナ。

 

 

 これこそが、魔素量(エネルギー)の大きさが全てではないを、体現している(あかし)なのかもしれない。

 

 

 妖鬼(オニ)シュナ、彼女もまた――テンペストにおける強者(ツワモノ)の一人なのだ。

 

 

 対峙するシュナとアダルマン。

 

 静かに激しく、シュナとアダルマンの戦いが始まろうとしていた。

 

 




 五十一話を読んで頂きありがとうございます!

 次回の更新もよろしくお願いします!






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