忍びが転生したら〝異世界珍道中〟になった件   作:にゃんころ缶

54 / 239
 お待たせしました。五十四話です









54話 魔王レオンとリムルとシズさん(〝魔王達の宴の始まり〟)

 

 零時を回り、リムルは豪華な扉の前に来ていた。

 

 

 扉の前にいたミザリーが、「どうぞこちらへ」とリムルを席に案内する。

 

 周りをゆっくりと見渡し、意を決したように扉の先へと進む。

 その扉の先は、そのまま会場に繋がっていた。

 

 会場の真ん中には、大きな円卓が設けられていて、等間隔で十脚の椅子が用意されていたが。

 上座に辺る椅子の両隣には、その椅子を挟むように左右一脚ずつ椅子が置かれていた。

 

(ん? おかしいな、魔王は十人しかいないはずだよな? 現在はカリオンは行方不明だし、俺が座っても二脚余るよな……。昔は十二人の魔王が、いたのだろうか……) 

 

 そんな事を考えながらリムルは、ミザリーに案内された椅子に着席する。

 

 席次は魔王になった順番で決まるようで、リムルは一番手前の末席に座っていた。

 

 椅子に座ったリムルは周囲に意識を向けてみる。

 

(今いるのは、二人か……。一人目はラミリスか、一番奥の上座席ね。そう言えば、アイツも古参だったな。足をぶらぶらせて楽しそうだな、ラミリスの奴)

 

 見るからに楽しそうなラミリスを放置し、ラミリスの右隣椅子一つ分先にいる妖艶な赤毛の男に、リムルの真正面にいる男に目が止まる。

 

(なんだあの寛いでいる美丈夫な男は……。目を閉じているが、何か……ヤバイな。俺の『解析鑑定』でも大した事の無いように見えるが……逆に不気味だな)

 

 リムルは『解析鑑定』による情報に疑いを持ち、直感でヤバイ奴と認識した。

 

魔素量(エネルギー)はカリオンに並ぶ程に多いけども……波長にムラがあるな。この違和感はどこかで……)

 

 リムルは、一見すると魔素量(エネルギー)はそれなりだが妖気(オーラ)を制御できていない未熟者に見える赤毛の男を見て、ある事を思いだす。

 

 それは――

 

(これどこかで……最近……!? アイツらだ! 〝番外魔王〟のツキハとコハクだ。最初に見た時に、こんな感じだったんだよなアイツらも。て、事は……やっぱり、情報の偽装だろうな)

 

 これがもし、『大賢者』の解析能力だと騙されていただろう。

 

 ツキハとコハクの時も『智慧之王(ラファエル)』が情報偽装隠蔽の疑いを示唆した。

 という事は、この男も能力(スキル)を偽装隠蔽していると、リムルは考えた。

 

 リムル(いわ)く、実力は隠すもの。

 妖気(オーラ)をなどを抑え、敵に一切の情報を与えない事に意義を見出している。

 

 だが、赤毛の男は情報を読む相手の力すらも利用していた。

 

 そう、(ふる)いにかけているのだ。

 

 

 情報を読む力があるか。

 無ければ論外、読める者はその反応を見る。

 

 この偽の情報にビビる者は、相手にする価値無しと切り捨てるのであろう。

 

 そして、これに気付いた者には、この者の底知れぬ力の一端を見せて、逆らう気を奪うのだ。

 

 

 だがしかし、リムルはある事に気付く。

 この見せても良い情報で、カリオン並みの魔素量(エネルギー)が、あると。

 

(まてよ、これじゃあ本当の実力など予測できないよなぁ。その理屈がわかっていても、恐怖するなというのは、無茶だろう……) 

 

 思考を巡らせリムルの出した答えは――

 

(明らかに別格だな、アイツが――〝ギィ〟だ)

 

 そう結論付けたリムルは、ラミリスから聞いた〝番外魔王〟の事を思いだす。

 

『あの二人さぁ。ギィと初めて会った時に、初っ端から喧嘩売ったのよさ。命知らずと言うか、おバカというか。それからもね、自分から喧嘩売りにいってたのよさ。まあそれで、なんやかんやでギィが気にいってしまってね。でさ、魔王になれと言ったら、絶対嫌だと言ったのよ二人が。それでギィが「野放しには出来ねえ」と言ってね、〝番外魔王〟という地位を与えて、監視? 管理? うーん、まあそうなったワケ! とにかくそれで、今に到るワケよ!』

 

 ラミリスらしく大幅に端折(はしょ)った話しを思いだしながら、リムルは内心クスリとする。

 

(生まれて数百年も経ってなくて、まだ弱かった頃の事か……。てかっ、アイツら無謀過ぎんだろ! よく今まで生きて来たな、アイツら。いや、あのギィとガチで喧嘩出来るなら……アイツらも相当、ヤバイよな……)

 

 そんな思案も終わり、会場へ(とも)も連れずに一人の大男が入って来た。

 

 会場を圧する程の存在感、この男が巨人族(ジャイアント)の魔王ダグリュールだろうと、リムルはみた。

 

 ダグリュールは迷う事無くギィの右隣椅子二つ分飛ばして、踏ん反り返るように席に着く。

 

(ん……右隣二つ目の開いた席は、ミリムの席かな? という事は、ギィを中心にして席を左右に振り分けているのか。しかし、あのギィの両隣の席は……誰なんだ?)

 

 そんな事を考えながらリムルは、ダグリュールに注視する。

 

 ヴェルドラの好敵手だった、魔王ダグリュール。

 

 そのダグリュールの魔素量(エネルギー)を『解析鑑定』でみたリムルは、(なんて、出鱈目な魔素量(エネルギー)なんだ)と、心の内で呟く。

 

 そして、魔王ダグリュールも、要警戒と断定付けた。

 

 

 次に会場に入って来たのは――

 豪華絢爛(けんらん)な衣装を着た、筋骨隆々な美男子だった。

 

 そして特徴的なのは、唇から覗く二本の犬歯。

 吸血鬼族(ヴァンパイア)――魔王ヴァレンタインなのだろうと、リムルは判断した。

 

 ヴァレンタインはラミリスの隣に座る。

 

 そこでリムルは、ヴァレンタインの従者に目がいく。

 

 一人は老齢の執事を思わせる男性。

 

 二人目は……。

 

 

 美しく輝くような銀髪の美少女。

 透明感のある肌に、青と赤の妖しい輝きを放つ金銀妖瞳(ヘテロクロミア)

 少女から大人へと至る一瞬を抜き取ったような、妖しい美貌をした美少女。 

 

 その美少女が、メイド服っぽい黒いドレスに身を包み佇むその姿は――

 

(これ、戦闘メイドじゃね!?)

 

 と、リムルの内なる男の浪漫(ロマン)が叫びを上げる。

 

 

 それはさておきと、リムルが美少女を注意深く観察してみる、と。

 

(ん? 何だ……これは……)

 

 その少女と目が交差した瞬間、リムルが何とも言えぬ違和感に気付く。

 

 そこへ――

 

《解。『解析鑑定』の結果、対象者の方が魔王ヴァレンタインより魔素量(エネルギー)が多いと推定されます》

 

(あ、やっぱり)

 

 この少女の魔素(エネルギー)の総量は読めないが、少なくとも彼女の主であるはずの魔王ヴァレンタインより、多いと判断したリムルの考えとラファエルの解が合致した。

 

(俺のように究極能力(アルティメットスキル)を所有しなければ、見抜けないような隠蔽工作なんて、魔王って奴等、ほんと油断ならないな。とすれば、この少女がヴェルドラとツキハとコハクが認めた魔王ミルス(・・・)なのか? 代替わりは千五百年以上も前との事らしいし、それを知る魔王は少ないよな。いや、黙認……あるいは、本当に気付いていない? もしくは興味がない? という事に……。どっちにしろ、この少女も要警戒だな)

 

 思案を巡らせながら、ヴェルドラから聞いた一つの話しが頭の中を過る。

 

(そういえば、ヴェルドラが〝番外魔王〟の二人を誘って灰にした王国の魔王ならば……ヴェルドラと〝番外魔王〟の二人を恨んでいても、不思議ではないよなぁ……なんちゅう相手を怒らせとるんや! あぁ……これが噂の『頭痛が痛い』状態ってヤツか……)

 

 考えたくもない事が、次々とリムルの頭の中でダンスを踊り――

 

(ヴェルドラと俺の関係がバレませんように……。〝番外魔王〟の二人とは無関係だから、ノーカンだよな? とにかく、万が一バレても尻拭いしないで済みますように……)

 

 と、そんな事を祈るリムルであった。

 

 

 暫くして、五人目がやって来た。

 

 これがまた、何とも眠そうな目で歩いてくる。

 二本の剣を腰に帯びてはいるが、それだけの軽装であった。

 

 瞳は綺麗なライトブルーで、一見すると黒に見える濃い紫の髪に銀色のメッシュが入っていた。

 見た目はまだ若く、高校生くらいに見えて顔立ちも整っているが、その眠そうな目と気怠そうな動作で台無しである。

 

 その男はラミリスの横で立ち止まり、挨拶をした。

 

「いよーっす。相変わらずチビだな」

「喧嘩売ってるワケ? ディーノのくせに生意気なんですけど?」

 

 そう言いながら、シュシュっと小さな拳を振り、ファイティングポーズを取るラミリス。

 

(なるほど。五人目は、ディーノだったか。確か、ラミリスと同類っぽい人物だったな。見たところ、ガチの喧嘩といより、いつもの口喧嘩(じゃれあい)という感じだな、あれは)

 

 どやらラミリスが小さいのは、最近生まれ変わったからとリムルの耳に入って来た。

 

(ふーむ。五十年前くらいに生まれ変わって、成長するまでに後百年は掛かるのか……。記憶は……ふむふむ、引き継がれると……精神は体に引っ張られて退化か。なるほどなぁ)

 

 そんな二人の話しを聞いてると、今度はラミリスが従者を自慢しまくっていて、ディーノが――

 

「じゃあ、戦ってみる? 壊してもいい?」

「はあ? 駄目に決まってんじゃん! アンタ、マジで壊したらギィに言いつけて、鉄拳制裁の刑に処してもらうからね!」

(虎の威を借るなんとやらだな。まったくラミリスの奴は……ククッ)

 

 ラミリスの清々しいまでの他力本願に、リムルも思わず苦笑いを浮かべる。

 

 口喧嘩(じゃれあい)という挨拶を済ませたディーノは、フラフラと自分の席に向かう。

 席はヴァレンタインの隣、ディーノも古参の魔王であった。

 

 ヴァレンタインを無視して席に着くと、驚きな事にそのまま机に突っ伏して眠り始めてしまう。

 そのヴァレンタインも気にしてないようで、もしかすると魔王間での挨拶は珍しいのかなと考える。

 

(ふーん……。ラミリスとのやり取りを見ると……以外に軽い性格なのかな。『解析鑑定』はと……やっぱり妨害(ジャミング)しているか。うぉ!? 薄目で俺を睨みやがった……気付いてるな、これは。まあ、ラミリスには丁寧に接してもいたから、敵対はない方向でお願いしたいものだよな)

 

 ディーノに対する観察を終えると次に入って来たのは――

 

 有翼族の女帝(ハーピィ)

 

(ふむふむ、これが以前ミリムに聞いた、魔王フレイかぁ。うーん……この溢れ出るような妖気(エロス)は……)

 

 そのフレイだが、ミリムの席が空席であるのをチラッと眺め、そしてギィの両隣にある席にもチラッと目を向け一瞬訝し気な表情を取るも、すぐにリムルの方へ視線を向けて来た。

 

(いやいや、これはこれは……なんとも……ん!? シオン?)

 

 フレイの視線にリムルが(この流し目に漂う色気がなんとも)など考えていると、後ろに控えるシオンから、不穏な気配が漂って来た。

 

(ヤバイヤバイ、シオンが明らかに不機嫌になって来てるじゃないかー! 俺が色香に惑わされそうになってるのに気付いたか、流石だなシオン。うん、これ以上シオンを怒らせると非常にマズイ……よし、真面目に観察しよう)

 

 そうして、さり気無く探っていくリムル。

 

魔素量(エネルギー)は……特筆すべきところはないか。しかし、問題は質だから、これだけで判断するのは愚か者だな。うーん……多分これは……隠し持った能力(スキル)が多いのではないだろうか? 後従者だが……一人はフレイに匹敵するような巨乳の美少女(ハーピィ)。まだ幼さを残すのに、なんというけしからん身体付なのだぁ……と。いかんいかん、シオンの不機嫌さが増してるじゃないかー)

 

 従者の美少女(ハーピィ)に目がいったリムルに感付いたシオンが、更に不穏な気配をリムルにぶつけていた。

 

 スッと視線を変え、リムルはもう一人の背中に大鷲の翼を持った大男に移す。

 ダグリュールよりは小柄だが、ヴァレンタインに並ぶ筋骨隆々の美丈夫? であった。

 その素顔は獅子の仮面(ライオンマスク)に隠されていたが、リムルはそう判断した。

 

(ん?……獅子?)

《告。『解析鑑定』による推定――》

(まさかね、いや別人だろ。波長もカリオンとは違うし。ラファエル(智慧之王)さんに教えられずとも、これぐらいは俺にもわかるぞ)

《…………》

(行方不明のカリオンなら、こんなバレバレの方法で魔王達の宴(ワルプルギス)に出るはずないじゃないか。もっと用心深く慎重に動くだろうさ。世の中には自分に似た者が三人いるというし、他人の空似にだろう)

《………………》

 

 そう言い切ったリムルに、智慧之王(ラファエル)は意味ありな無言で返す。

 

 

 そこへ、冷やりとした冷たい風が吹き込んで来たような錯覚に、リムルは襲われた。

 

 ふとその錯覚を覚えた方向に目をやるリムル。

 

 金髪美女が会場に入って来たところであった。

 神に愛されたかの如き、美貌。

 

 その美貌の持ち主は、真っすぐにリムルに向かって歩いてくる。

 

「お前がリムルか」

「そうだけど(お前誰なんだよ?……!?)――」

 

 リムルは、(こんな美人に知り合いはいないしなぁ)と思ったところで、その正体に思い当たった。

 

 残る魔王は四名。

 一人は行方不明のカリオン、残るはクレイマンとミリム。

 

 そして、レオン。

 

(確か……レオンは金髪。〝白金の悪魔(プラチナデビル)〟と呼ばれる程に美しい、金髪の魔王と聞いたな……)

 

 リムルの中で、この人物が魔王レオンだと確定した。

 

「――そうか、お前がレオンか。俺に話し掛けて来るとは、何か用でもあるのかよ?」

「そう、私がレオンだ。お前に用があったのではない。その姿を見て、ふと懐かしく思っただけさ」

 

 返答を聞いたリムルは、やはりそうだったかと思う。

 

(それにしても、懐かしく思った、だと? 俺の姿は、幼き頃のシズさんの姿でもある。つまりレオンは――)

 

「レオン。シズさんは死んだぞ」

「知っているさ。死ぬのは当然だ。なんせ彼女は、イフリートを受け入れて魔人になるのを拒んだのだから」

 

 レオンは淡々と、それが当然であるとリムルに言った。

 

 その言葉にリムルは――

 

「彼女からお前を一発殴ってくれと頼まれているんだ、殴らせろ」

 

 思わず飛び出したリムルの言葉。

 波風を立てるつもりなど毛頭ないリムルだが、レオンの淡々とした言葉に腹を立てたのだ。

 

 それにレオンは、平然と返す。

 

「断る。私はシズに、自らの生を選択する機会を与えた。彼女は魔人ではなく、人間として生きる事を望んだのだ。イフリートを餞別(せんべつ)にくれてやったのに、殴られる筋合いなどない」

 

 リムルは肩透かしを喰らったようにレオンを見る。

 無礼だと激昂するかと思ったのに、冷静に返されたのだから。

 

 しかも――

 

「――だが、お前にも少し興味がある。招待してやるから、文句があるのならば来たらいい。罠だと思うなら、拒否してくれても構わないよ」

 

 と、レオンはリムルに一方的に告げた。

 

「わかったよ。受けてやるから、招待状でも送ってくれ」 

 

 リムルはそう答えて、沈黙する。

 それにレオンは、煩わしそうに頷く。

 

「ああ、そうしよう。もっとも、お前がこの場で生き残れたら、だがな」

 

 素っ気なく返しレオンは、さっさとリムルの左隣に座ってしまう。

 

 

 そんなレオンを見ながらリムルは、シズが死んだ日の事を思いだしていた……。

 

 

 シズエ・イザワ(井沢 静江)

 

 通称シズ、今はリムルの〝虚数空間〟内で永遠の眠りにつく、〝召喚者〟。

 

 シズは第二次世界大戦真っただ中の本土大空襲の時に――

 魔王レオン・クロムウェルの手によって、幼き頃にこの世界に召喚された。

 

 その折、空襲によって全身に大やけどを負って死にかけていたところを、魔王レオンがシズの体内にイフリートを宿らせその命を救った。

 

 だがしかし、幼きシズにイフリートを制する(すべ)はわからず、この世界の(ことわり)すらもまだ理解出来なかった。

 

 そして……あの忌まわしい事が、起こった。

 

 それは不可抗力、どうしようもない事だった……。

 

 初めて出来たこの世界の友人〝ピリノ〟と二人が面倒をみていた魔獣の風狐〝ピズ〟を、自分が住む魔王レオンの居城に招いてしまったのだ。

 

 そこで運悪く、魔王レオンと遭遇してしまい、ピリノが抱いていた風狐のピズが恐慌状態に陥り、魔王レオンを威嚇した。

 

 その時だ――

 

 シズの意思などお構いなしに、イフリートが牙を剥いたのだ。

 

 それは、シズの主である魔王レオンを守るイフリートの防御本能。

 そこに、シズの意思など不要であるというように……。

 

 シズは――(やめて! やめて!)と心の中で叫びながら、その手でピズを握り、焼き殺した。

 

 その手から溢れる炎は――大事な友人であるピリノにも向けれられ……。

 

 ピリノは悲鳴を上げる間もなく、白く激しい炎に焼かれ灰となってしまう。

 

 

 シズは、狂いそうな悲しみと後悔を、その幼き体で受け止めなければならなかった……。

 大事な友人を……この手で殺してしまった、と。

 

 そして、ある事で魔王レオンの下から離れることになる。

 魔王レオンの居城に勇者が来たのだ。

 

 皆が逃げた後も、シズだけは逃げずに城に残る。

 

 一人残ったシズは、勇者と戦った。

 だが、勇者の圧倒的な力の前では、シズは、無力だった。

 

 殺されると覚悟したシズだったが、「気は済んだ? 貴女はどうしてここにいるの?」、そう勇者が話し掛けて来た。

 

 シズは全てを話した、たとえ信じてもえらえなくても、記憶の片隅にでも残ってくれればと、そう思い話していく。

 

 すると――

 

「もう大丈夫だよ。今まで、よく頑張ったね」

 

 そう言うと勇者は、シズを優しく抱きしめた。

 

 信じてくれた、そう思った瞬間にシズの目には涙が溢れ、勇者に(すが)りつき大声で泣いた。

 

 勇者に保護されたシズは、勇者がシズを残して旅立つまでは一緒に旅をすることになる。

 その時に、イフリートを抑制出来るからと勇者から――〝抗魔の仮面〟を譲り受けたのだ。

 

 勇者が旅立ち一人になったシズは、やがて冒険者となり世界を巡っていく。

 後に教導官となりヒナタやユウキなどを指導し、最後にリムルもイングラシア王国で先生として教えた五人の子供の先生もしていた。

 

 後に先生もやめ、イングラシア王国から旅立って、リムルと出会う事になる。 

 

 

 だがしかし、そこでイフリートが暴走し、苦渋の決断を迫られたリムルは――イフリートを倒す。

 

 イフリートを倒され本来の姿に戻ったシズは、死に際にリムルに言った――

 

『私はねこの世界が――嫌いなんだ。でもね、それでも……この世界が憎めなかった。まるで、あの男のようだ……。この世界に、あの男を重ねて――見ているのかも知れないね……。だから、この世界に取り込まれたく、ないんだ。お願いだ――どうか、私を食べてくれないだろうか………………』

 

 

 その願いに、リムルは答え――シズの亡骸を食べた。

 

 イフリートを捕食した時、そしてシズを食べた時に……。

 

 

 リムルはシズの記憶を――垣間見た。

 

 

 レオンが、死にかけていたシズを救ったのも事実。

 しかし、それがシズを苦しめる事になったのも、事実。

 

 シズが苦しみ、この世界を嫌いだった事も、事実。

 この世界を憎み切れなかったことも……事実。

 

 リムルがシズの記憶を垣間見て、レオンに腹を立てのも当然な事であり。

 

 

 そこに、善も悪も――良いも、悪いも、存在はしない。

 

 

 不幸な事故? 否。

 

 ならば、運命の悪戯(イタズラ)

 それも、わからない……出会うべくして出会い……起こるべくして起こった事なのか……?。

 

 そんな事を考えるリムルは、(シズさんの事は伝える事が出来たから)――

 

(今はこれでいい)

 

 レオンは敵に回る気はないと、そう判断しての事だった。

 

 

 リムルが会場入りしてから、かれこれ一時間は経つ。

 

 

 残るは、クレイマンの到着を待つばかり。

 

 

 

 そして、招かれざるゲスト(番外魔王)の到着も、まだである……。

 

 

 

 

 




 五十四話を読んで頂きありがとうございます!

 次回の更新もよろしくお願いします!



  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。