忍びが転生したら〝異世界珍道中〟になった件   作:にゃんころ缶

55 / 239
 お待たせしました。五十五話です









55話 我等が宴を!

 

 

 リムルが会場入りして、既に一時間は経過していた。

 

 淡々と過ぎていく時間の中リムルは、クレイマン軍との戦争はもう終わったのだろうかなど、考えていると……。

 

 いきなりそんなリムルに『思念伝達』が届いて来た。

 送り主は、ベニマル。

 

 異界にあると思っていた会場に『思念伝達』が届いた事でリムルは、(あれ? 異界じゃない?)そう思っていると。 

 

《解。配下の魔物達とは〝魂の回廊〟が確立しています。それを通じて、意思のやり取りが可能です》

 

(あー なるほど。そういう事ね。どうやら、〝祝福(ギフト)〟を配る際に、智慧之王(ラファエル)さんがついでに〝魂の回廊〟を繋げていたのか)

 

 リムルはさっそくベニマルの報告を聞く。

 

 戦争は、開戦から一時間足らずで終結したとの事。

 作戦通りに、一方的な勝利だったと。

 

 テンペスト・獣王国混成軍には怪我人多数だが、死者はゼロ。

 

 かたやクレイマン軍の死者は、確認された死者だけで約千人。

 そして、獣王国に住人を狩る為に投入された狩り魔部隊三千人が生死不明で、未だ行方が掴めていないとの事。

 

 これに関しては、ベニマルが〝番外魔王〟の眷属達の仕業ではないかと推測を述べ、リムルもそれだろうなと、その推測に頷く。

 

 ただ、一切の証拠が残っていない為、断定は出来ないなと。

 あくまでも〝番外魔王〟の眷属達が怪しいと、そう二人の考えは一致した。

 

 思った以上に死者が少なく、生きてさえいれば回復可能なこの世界では、これが当然なのだろうとリムルは思う。

 

 とにかく捕虜も確保出来るし、万々歳だなとリムルはこの勝利に満足する。

 

 次に、敵の指揮官ヤムザが、何故かカリュブディスになったと報告が上がる。

 

 それを〝番外魔王〟の眷属サンコが上空からカリュブディスを蹴り貫き、ベニマルが焼滅させたと告げられた。

 

(はい? 蹴り貫いた? で、ベニマルが焼滅(しょうめつ)させた、と……。ちょっと何言ってるかわかりませんね。てか……さ、『魔力妨害』がある暴風大妖渦(カリュブディス)を、どうやって?)

 

《解。複数の技術(アーツ)能力(スキル)をユニークスキル『大元帥(スベルモノ)』で複合させて、〝黒炎獄(ヘルフレア)〟を制御しています。個体名サンコに関しては、極超音速で加速した膨大な物理エネルギーぶつけたと断定します》

 

(ふーむ。『魔力妨害』を上回る制御で以って、膨大な熱量を直接ぶつけた訳ね。で、眷属のサンコは、極超音速で加速した膨大な物理エネルギーを、これもまた直接ぶつけたと。ベニマルしても眷属サンコにしても、かなりの技量(レベル)が必要なはずだ。ベニマルのヤツ、俺の想像以上に強くなったな、大したものだ。それにしても、アイツらの眷属も中々に侮れないな)

 

 ベニマルの報告を聞きながら、しみじみ思うリムルである。

 そして、〝番外魔王〟の全眷属千匹が、戦場に遊びに来ているとの報告にリムルは、素で吹き出し掛けて慌てて体裁を繕う。

 

(遊びにって、何なんだアイツらは! ププッ。おっと、いけないいけない。でも千匹かぁ、いや千人か? まあいいや、どっちでも。だからベニマルのところにサンコが来ていたのか。後、ゲルドのところにも姉のニコが来ていたな。智慧之王(ラファエル)さんが言ってた、俺が魔王の進化を遂げるのを見届けに来ていた、眷属……。ベニマルが言っていたな、敵だが、敵とは思えない何かがある、と。そうなんだよなぁ……あの二人も、善ではないが、極悪といった感じでもなかったんだよな。まあ、油断は出来ないのだけども……)

 

 〝番外魔王〟達の事を考えていると。

 

 竜を祀る民に関しての報告が来た。

 ミリムの信奉者だけあって、異常に強い戦闘集団。

 

 今回は彼等に本気で戦うつもりがなかったからこそ、こちらに犠牲が出なかったんだとリムルは思う。

 

 この世界の戦争は集団ではなく、個人の力に左右される。

 それを理解していても、リムルは頭に残っている常識がそれを忘れさせるなと思い、これに関しては気を付けねばならないと、今一度気を引き締める。

 

 いい例が〝番外魔王〟とミリムである。

 

 過去に、二人で小国とはいえ、二つの国を滅ぼしている。

 そしてミリムは、たった一人で一国を滅ぼしているのだ。

 

 

 そうしてベニマルの報告も終わり、リムルにはクレイマンの狙いがおおよそ検討が付いた。

 

 ヤムザ率いるクレイマン軍やミッドレイ達は、カリオンの裏切りを調査するという名目で動いていた。

 魔王達を裏切り、クレイマンの配下を殺し、リムルと繋がっているという証拠を集める為に。

 

 いや、集める為ではなく……。

 

 

 証拠を、捏造する為に。

 

 しかし、これはリムル達の勝利により、クレイマンの目論見は(つい)えた。

 

(後は、どんな言い訳を言って来るか不明だが、それが他の魔王に賛同される事はないだろうな。まあ、どうせ最後はクレイマンを潰すのだから、それを邪魔する魔王がいるなら、一緒に潰すしかないな。でも、そうならないように、出来るだけ楽に勝てるように話しをもっていこう。)

 

智慧之王(ラファエル)さん、期待していますよ!』

《……》

 

(よし、智慧之王(ラファエル)さんもやる気だ。これで一安心、だよな?)

 

 

 そこへ、ソウエイからも報告が入って来た。

 

 ソウエイは、クレイマンの本拠地を落としたとリムルに報告をする。

 

 ハクロウとソウエイの不死系魔物(アンデッド)との戦い。

 シュナとアダルマンとの激闘。

 

 そして、一番活躍したのはシュナだと、ソウエイとハクロウの意見だった。

 

 それで色々あり、何故か不死系魔物(アンデッド)達が仲間になったとも、ソウエイが告げる。

 

 リムルが『何でそうなるんだ?』と尋ねるも、ソウエイは『詳しい話しは後でシュナ様から――』と、何故か口を濁してしまう。

 

 ソウエイが口を濁した後も報告は続く。

 

 そうして、重要な事が二つわかった。

 

 一つ目は、クレイマンの城にはカリオンは囚われていなかったという事。

 

 二つ目は――

 

『クレイマンの宝物庫を発見しました。只今、ゲルドを呼び寄せ運搬作業に取り掛かっております。その中にはクレイマンと中庸道化連との繋がりを示す証拠も御座いましたので、どうぞお役立てください』

 

 リムルはソウエイの報告を聞き、(容赦なしだねえ)と心の内で呟き、これで国庫も潤うなと満足気であった。

 

 しかし、これ窃盗に当たるのか? など考えていると、シュナの報告から宝物庫にある財宝関連で、全体の三割程が既に強奪された形跡があるとソウエイが告げて来た。

 

 また不思議な事に、古代金貨はあるがドワーフ金貨はただの一枚も無かったと。

 

 それに関しては、シュナが霧の湿原で〝番外魔王〟の眷属達の集団を目撃したとも報告が上がり、それも証拠は無いが〝番外魔王〟の眷属達が怪しいとリムルは結論付けた。

 

 それから数々のクレイマン策謀の証拠が、ゲルドを通じリムルの『胃袋』に送られてくる。

 

 これで、リムルは万全の態勢を整えクレイマンに挑む事が出来る。

 

(さて、予想より大幅に早くクレイマンの勢力を完膚なきまでに叩き潰せたな。後は、相手がどう出てくるだが……)

 

 リムルは全ての報告を聞き終え、思考を切り替えていると。

 

 

 そこへ。

 

 ようやくクレイマン達が姿を現した。

 

 

 意外にもハンサムで神経質そうな男――高級服を着た、いかにもお洒落な魔王。

 

 それが、リムルのクレイマンを見た第一印象だった。

 

(ふーん……そこかしこに特質級(ユニーク)の装飾品を付けてるのか。それだけでも、結構な戦力になるよな。油断ならないヤツだな、クレイマン)

 

 そう思いながらクレイマンが腕に抱く狐に目がいく。

 

 とんでもない妖力に、そして魔素量(エネルギー)

 下手をすれば、その力は魔王に届きそうであった。

 

(これが従者の一人、いや一体か。配下の層も中々に厚いな) 

 

 そう見ながら、今度はクレイマンを『解析鑑定』するリムル。

 

(……ふむ。拠点を落としたからと舐めて掛からずに、〝仕上げ〟は慎重にやらないとな)

 

 クレイマンの後ろにミリムが続き、これで魔王達が出揃った。

 気になるのはギィの両隣の席だが、リムルは大した事ないだろうとそれを無視した。

 

 『解析鑑定』――リムルはレオンにも『解析鑑定』をしている、結果は……。

 

 解析不能だった。

 

 あの智慧之王(ラファエル)が解析不能と言い切ったのだ。

 

 これが意味する事は――

 

 リムルと同格の能力(スキル)――究極能力(アルティメットスキル)を有しているという事になる。

 

 そして、その瞬間にリムルは気付いた。

 

 ギィやツキハとコハクが偽情報を読ませていた意図――それは、究極能力(アルティメットスキル)への対策では、と。

 

 究極能力(アルティメットスキル)で解析不能ならば、それは相手も究極能力(アルティメットスキル)を持つ証明になる。

 

 であるからこそ、適当な偽情報を流しているという側面があった。

 

(見せていい情報で相手を油断させる……。魔王ギィ……ヤツの偽情報は見事だった……だがしかし、それ以上に――)

《解。情報の偽装、隠蔽。それに一番()けてるのが〝番外魔王〟の二人。個体名ツキハと、個体名コハクだと断定出来ます》

(だよなー。となるとギィも当然、究極能力(アルティメットスキル)を所有しているし、ツキハとコハクも間違いなく所有している。ミルス? も怪しいし、レオンも、完全に保有者だ)

 

 そう考えるリムルであった。

 

 

 究極能力(アルティメットスキル)の性能は、ユニークスキルの比ではない。

 獲得するには、本人の資質と運と偶発的な要素が絡み合う。

 

 真なる魔王ですら獲得出来るとは限らない、稀有(けう)能力(スキル)

 それこそ、切り札とも呼べる力なのだ。

 

(迂闊だったな……。俺が究極能力(アルティメットスキル)の保有者だと言う事は、既にギィにはバレたとみていい。そして、〝番外魔王〟の二人にも。老獪な魔王達を相手にするのだから、もっと警戒すべきだった……な) 

 

 リムルはバレたものは仕方ないと思考を切り替え、まず智慧之王(ラファエル)は絶対に隠し通すとして、何か一つ見せても良い究極能力(アルティメットスキル)を一つ披露する。

 

 そうする事で、隠し通せる切り札を持てるのではないか? そう考えるリムル。

 

 これは四つも究極能力(アルティメットスキル)を持つリムルだからこそ可能な、大胆な隠蔽工作であると言えよう。

 

(後は、披露する究極能力(アルティメットスキル)なんだが――)

《案。隠すのが難しいのは『暴食之王(ベルゼビュート)』です》

 

(そうだな、確かにそうだ。放出系の攻撃は喰って消滅させられるし、攻防に優れた能力(スキル)でもあるんだよな。おれの戦闘は『捕食』が基本となる場合が多いし、『暴食之王(ベルゼビュート)』を公開するのがいいだろう)

 

 リムルは、クレイマンとの戦いは『暴食之王(ベルゼビュート)』を主として戦い、他の能力は隠すという戦法を取る事にした。

 

 とりあえず今はこの戦法でいき、生きて無事ここを出られたら、その時にまた新しい戦法を考えればいいと決める。

 

 

 そんな風に考えを纏めていると、リムルは驚くべき光景を目にした。

 

「さっさと歩け、ウスノロ!」

 

 クレイマンがそう言い、いきなりミリムを殴ったのだ。

 

 あの、ミリムを。

 

「ノロマめ、さっさと席に着きなさい」

 

 いかにも自分が上だとばかりに、ミリムに指示を出すクレイマン。

 

(なっ!…………)

 

 リムルは怒りが爆破しそうになるのを、寸前で止めた。

 今にも立ち上がり、飛び出しそうになる脚を押さえながら。

 

(それにしても、ミリムはどうしたって言うんだ?)

 

 ミリムの余りの大人しさに、リムル心の内で驚愕の声を漏らす。

 

 

 暴虐のミリム。

 

 これが逆にクレイマンが殴られたなら、それは日常風景である。

 ああ、憐れな奴、それで済む話。

 

 だがしかし……。

 

 ミリムを殴るといった暴挙を仕出かしたにもかかわらず、クレイマンが断罪される事はない。

 文句も言わず、しかも全くの抵抗も無く、言われるがままに自分の席に座るミリム。

 

 

 これは異常だ、やはり操られているのかも、そう考えるリムルだが。

 

 驚いたのはリムルだけではない。

 ダグリュールやディーノ、他の魔王達も戸惑うような表情を見せていた。

 

 ギィは、全く表情が変化せず、何を考えているか不明である。

 

 

 クレイマンはというと、得意の絶頂という様子で、優越感に満ちた表情をしていた。

 

 

 その顔を見て、リムルの怒りが再燃する。

 

(楽に死ねると思うなよ、クレイマン。俺の友達(ミリム)を殴った報い、キッチリと支払わせてやるからな)

 

 リムルは、そう心に誓った。

 

 クレイマンの〝死〟は、確定したのだ。

 

 

 この宴に参加する魔王達は以下の通りになる。

 

 十大魔王中カリオンを除く魔王、九名。

 

 

 悪魔族(デーモン)――〝暗黒皇帝(ロード・オブ・ダークネス)〟ギィ・クリムゾン。

 

 竜人族(ドラゴノイド)――〝破壊の暴君(デストロイ)〟ミリム・ナーヴァ。

 

 妖精族(ピクシー)――〝迷宮妖精(ラビリンス)〟ラミリス。

 

 巨人族(ジャイアント)――〝大地の怒り(アースクエイク)〟ダグリュール。

 

 吸血鬼(ヴァンパイア)――〝鮮血の覇王(ブラッディーロード)〟ロイ・ヴァレンタイン。

 

 堕天使族(フォールン)――〝眠る支配者(スリーピング。ルーラー)〟ディーノ。

 

 有翼族(ハーピィ)――〝天空女王(スカイクイーン)〟フレイ。

 

 妖死族(デスマン)――〝人形傀儡子(マリオネットマスター)〟クレイマン。

 

 元人間(ヒューマン)――〝白金の剣王(プラチナムセイバー)〟レオン・クロムウェル。

 

 

 そしてもう一人、新たな魔王を僭称(せんしょう)する者、リムル。

 

 ギィの配下レインが、涼やかな声で紹介していく。

 

(ん? 〝白金の悪魔(プラチナデビル)〟と聞いたはずだけど……〝白金の剣王(プラチナムセイバー)〟とか恰好いい呼び名になってる。 自分で決めれるのか?……いや……言うまい。これは触れるのはやめよう……)

 

 と、少しお馬鹿なことを考えたリムルである。

 

 そして、紹介が終わるもそれは始まりの合図ではなかった。

 

 紹介が終わると、クレイマンが立ち上がり――

 

「さて、本日は――」

「――まだだ」

 

 クレイマンの声を遮るようにギィの声が響いた。

 

「まだ、とは?」

「ゲストがまだだ」

 

 そうギィが言うと、皆が初めてギィの両隣にある二つの椅子に注目する。

 

(誰が来るんだ?)

 

 そして、リムル以外が察した。

 

 特に魔王ヴァレンタインの従者の美少女が、凄まじい殺気を込めた目でその二つの椅子を睨む。

 

 ラミリスは「え? マジ来るの?」と言い、ダグリュールは何やら険しい顔付になり、、魔王ヴァレンタインも同じく険しい顔付になる。

 

 ディーノは……相変わらず机に突っ伏して眠っていた。

 レオンは、やはり少し険しい顔付になっていた。

 

 クレイマンは想定外だったのか、少し戸惑った表情を見せるも、直ぐに落ち着いた表情に戻る。

 

 

 そして……。

 

 

「御二人がお付きになりました」

 

 ギィのもう一人の配下ミザリーが、扉の前で凛と通り声で言った。

 

 と同時に、会場に二人の少女が入って来る。

 

「ちーっす。あぁー、めんどくせー」

「こんばんはどすえ。はあー、さっさと終わらせて帰りたいどすなぁ」

 

 面倒くさそうに〝番外魔王〟の二人が姿を現した。

 

 凄まじく不遜な態度、言い換えればこの場にいる魔王達全員に喧嘩を売りにでも来たかのような態度。

 

 それを見たリムルは……。

 

(……何でコイツらが来たんだ? 魔王じゃないよな? 何で? ラミリスのヤツ、俺に嘘吐いたのか?)

 

 少し困惑気味のリムルの横を、チラッと見ながら通り過ぎていきながらツキハが、『思念伝達』でコハクに話しかける。

 

『ねえコハク。あいつ、めっちゃ目から殺すぞ光線を出してるんだけど? まだ根に持ってるよ、あの吸血鬼』

『仕方ありまへんな。何せ、ヴェルドラはんとうちらで、あの吸血鬼女の国を灰にしたおすからなぁ。そら恨みもしますえ。もうめんどいから、ほっときなはれ』

 

 ツキハとコハクはリムルの左側から回っていき、魔王ヴァレンタインのいる席を回避した。 

 

(あぁ、何か凄い勢いで睨んでるな、吸血鬼の美少女。やっぱり、あの美少女が〝ミルス〟なのか?)

 

 そんな事を思いながら見ていると、いきなり魔王ダグリュールが口を開いた。

 

「コハクよ、いい加減ワシの領地で核撃魔法をぶっ放すのはやめよ。迷惑千万であろうが」

「久しぶりやな、ダグリュールはん。そんなん()うても、あんさんの領地の(はし)っこでやってますんや。 被害者はいてまへんやろ? そのくらい大目に見なはれ」

「な!? だから、ワシの領地でやるなと言っておる!」

「ええやおまへんか、ちょっとした実験なんやから。荒涼とした大地の隅っこが、ほんの少し荒れるだけや、うるさいこと言わんとき。なんなら、領地のど真ん中でやりましょかぁ?」

「コハク! お前な――」

 

 ダグリュールが立ち上がってコハクに抗議するも、コハクはそれをのらりくら(かわ)していく。

 

 そんなやり取りを見てリムルは。

 

(何なんだコハクの態度は……全く魔王達を恐れてないと言うか……。進んで喧嘩を売りにいってないか? 〝番外魔王〟、魔王であって魔王で無い者、か。あの様子じゃ、ダグリュールとも一戦交えた事あるみたいだなコハクのヤツ。ほんと、同じ転生者とは思えない……。そうか、そうだったな、あの二人は俺とは違う時間軸の世界から転生して来たんだったな。同じ日本人でも、別の日本人であり、忍びか。それも、魔法じみた術式が発展していた世界。戦乱の世にいた忍びという、〝異形の(やから)〟。何か、この世界の魔人みたいだなって、それはないか――)

 

《解。その可能性は十分にあるかと推測します。二人の話しを解析した結果、常人を遥かに凌駕する身体能力や呪符忍術など、特殊に発達した能力を使いこなす人間。この世界に存在する魔人に酷似するといっても過言ではありません》

 

(やっぱりそうなるよなぁ。もっと詳しく話が聞けたらよかったんだがな。機会があったら、今度聞いてみるかな)

 

 リムルがそう思案してる傍で、レオンがツキハに何かを言ったらしく。

 ツキハが「あたしは、誘われてやっただけだから、文句ならあっちに言ってね」と言い、レオンの席から離れていった。

 

 そう返されたレオンは、また何かをツキハに言いかけたが言うのを止め、軽い溜息を付く。

 

 そして、クレイマンが何か言いたそうな顔を一瞬見せたが、二人はクレイマンを見もせずにギィの席までやって来た。

 

 そして。

 

「ねえギィ。もしかして、あんたの隣の席とか言わないよね?」

「いや、俺の両隣がお前達の席だ」

「はあ!? ふざんけんな! あたしらは魔王でも何でもないんだぞ! 後ろの壁際でいいじゃんよ!」

「駄目だ」

「あ゛あ゛? テメエ、ぶっ殺すぞ」

 

 いきなり、会場の空気が裂けた感覚に襲われたリムル。

 

(な、なんちゅう殺気なんだツキハのヤツ……マジであり得んだろ、こんな殺気……)

 

 凄まじい殺気が会場を覆う、他の魔王達も顏をしかめるが別段ツキハを止めようともしなかった。

 

 そう、ツキハは〝妖刀時雨〟を出していなかった。

 だから、誰も動かなかったのだ。

 

 ツキハがギィに殺気をぶつけただけだと、わかっていたから。

 古い魔王達は、ツキハがギィとやりあう時は必ず〝妖刀時雨〟を出していたのを知っていたからだ。

 

 因みに、フレイはミリムからこの事を一度聞いていた。

 レオンはギィから度々ツキハとコハクとの戦いを聞かされていた。

 

 クレイマンは知らなかったが、ツキハの殺気に気圧されたのを感付かれない様に平静を務めていた。

 〝ここにはいないが〟、カリオンはこの事を二人から何度か聞いている。

 

 そんなツキハがギィを睨んでいると。

 

「ツキハやめなはれ。いくらあんさんでも、ここで暴れたらただでは済みませんえ。なあ、ギィ。うちらがあんさんの隣に座る訳は、なんえ?」

「フッ。お前らが暴れた時にすぐに抑えられるようにだ。離れてたら、被害が大きくなるだろ?」

「せやなぁ。うちはともかく、ツキハは対処が遅れると大惨事になりますなぁ」

「そういうことだ」

「おいコハク、あんた――」

「ええかげんにしなはれ、ツキハ。 四の五の言わんと早よ座りや! うちは、早よ終わらせてさっさと帰りたいんや」

 

 ツキハが何か言いかけたがコハクにぴしゃりと言われ、ブツブツ言いながらギィの左席に座ると。

 バンと両手を投げだし顔を伏せて、ディーノと同じように机に突っ伏した。

 

「早よ始めろや、魔王ども」捨て台詞付きで。

 

 コハクはギィの右隣の席に着いた。

 

 そこへ、机に突っ伏したままのディーノがツキハに話し掛ける。

 

「ようーツキハ久しぶりだなー。しかし、相変わらず態度悪いなぁ」

「あぁーディーノかぁ、久しぶりだねぇ。あんたも相変わらず眠そうだよねぇ」

「そうかぁ? でも珍しいなー、何で今回来たんだ?」

「知らん。ギィが無理やり来いと言ったんだよ~。もう帰ってもいいかぁ、ディーノ」

「流石にそれは駄目じゃねえ?」

「あんた魔王の一人なんだから、邪魔だから帰れと言えばいいんだよ~。ってか、言え」

「それは、どうみても無理があるだろう? 俺がギィから怒られるじゃーん」

「うん、怒られろディーノ。そうそう、あんたに金貨千枚貸してるよねえ。それ言ったら、〝借金チャラ〟にしてあげるぞぉ」

「ええ―マジかぁ!? どうすっかなー。じゃあ――」

「――却下だ」

 

 ズゴンッ!

 

「ウゴッ……」

 

 机に突っ伏してツキハとディーノがお馬鹿なやり取りをしていて、ツキハの提案にディーノが言いかけた時。

 

 ギィの鉄拳がツキハの後頭部に炸裂した。

 ゲンコツを喰らわされ変な声を出したツキハは、ギィの鉄拳制裁で精神体を揺らされ暫く大人しくなる。

 

「まず最初に言っておく。今宵の〝魔王達の宴(ワルプルギス)〟は特別だ。新しい魔王の誕生が何をもたらすか? それが、今回の鍵だ。だから、ツキハとコハクも呼んだ。コイツ等も無関係ではないからな」

 

 そう言いながらクレイマンを見るギィ。

 そんなクレイマンは、微塵も表情を崩さず笑みを浮かべていた。

 

「ようは、ツキハとコハクも今回は見届ける義務があるという事だ。〝番外魔王〟と呼ばれてはいるが、オレ達魔王となんら変わらねえ。だから呼んだ、異議があるなら言ってくれても構わないぜ?」

 

 そう言うとギィは座ったままゆっくりと皆を見る。

 

(チッ……。少し厄介な事になりましたねえ。しかし、〝番外魔王〟の二人は契約で縛ってるので大丈夫でしょう。それよりもギィです、何を企んでいるのやら……。まあ、いざとなったらミリムを『狂化暴走(スタンピート)』させればいいだけです。何なら〝番外魔王〟の二人にも依頼と称してここで暴れてもらいましょう。そう、問題はない。見てなさいラプラス、私は――勝つ!)

 

 そう考えながらクレイマンは、心の内でほくそ笑む。

 

 誰も異議を唱えないのを確認すると、ギィは右手を軽く振り、クレイマンに始めろと促す。

 

 ここに、ギィの独断と偏見により〝番外魔王〟の二人の参加が完全に決定した。

 

 真幻魔猫人族(ゲシュペンスト)――〝抜刀戦魔(ソードマスター)〟ツキハ・イザヨイ。

 

 真幻魔猫人族(ゲシュペンスト)――〝忍魔閃舞(ソーサリーダンサー)〟コハク・ヤミヨ。

 

 

 ギィを見たクレイマンは席を立ち、優雅に魔王達を見回して……。

 

 両手を大きく左右に広げ会場の天井を仰ぎ見、静かに視線を魔王達に戻すと――

 

「では改めて。本日は私の呼び掛けに応えて頂き、誠に有難う御座います。それでは始めましょう、〝我等が宴〟を! ここに、魔王達の宴(ワルプルギス)の開催を宣言します!!」

 

 声高らかに開催を宣言した。

 

 

 こうしてクレイマンの開催宣言により――

 

 魔王達の宴(ワルプルギス)が開催される。

 

 

 

 ツキハが何か言いかけて、更にギィから鉄拳制裁を喰らったのを合図にするかのように。

 

 

 

 

 




 五十五話を読んで頂きありがとうございます!


 クレイマン編も後半に突入しました。

 今のところラストだけは三パターン考えて仮執筆は澄ませたのですが、未だにラストをどうしようかなぁと、悩んでいます。

 プロットでは、既に東の帝国との戦争までは出来ています。
 プロットと言ってもそんな大層なものではなく、覚書や思い付いたネタを書き留めるみたいなものなんですけど……(汗

 仮〝聖騎士ヒナタ編〟は二話程仮執筆が終わり、その間に入れるオリジナルストーリーなども考えています。

 サンコかニコの話しを作ろうかなと思ってるのですが、需要があるのかなと思ってみたり……
 前作はほぼオリジナルストーリーでしたので、また数話程オリジナルストーリーを書きたいなーと目論んではいますけど……。

 こんな感じで、執筆は進めています。
 
 長々と後書きを申し訳ないです。


 それでは、次回の更新もよろしくお願いします!



  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。